NO6
 日本の伝統凧の動態展示   (2005年12月25日 井上 重義)

 新春早々の1月8日(日)、姫路公園競馬場で日本各地の伝統凧を大空にあげる第32回全国凧あげ祭りが当館と姫路市の共催で開催されます。今回も当館の呼びかけに応え、各地から凧愛好家や保存会の皆さんが集い、自慢の凧を大空に揚げて披露して下さいます。現在までに決定しているのは、青森県の津軽凧、新潟県今町の六角凧、静岡県井川の扇凧、愛知県豊橋の八つ花凧、奈良県吉野の袖いか、京都の扇凧、山口県見島の鬼ようず、徳島県鳴門のわんわん凧、香川県讃岐の釣鐘いか、長崎県のバラモン・日の出鶴など全国各地の珍しい凧の数々です。他にも10畳大の福助凧、6畳大の提灯凧、全長30mもあるムカデ凧、100枚以上もの凧が連なって揚る連凧など、20畳大の大凧からはがき大のミニ凧まで大小さまざまなユニークな形の凧が揚がり、日本の伝統凧のすばらしさを満喫いただく1日になると思います。また当日、私が大空に揚がった凧の解説を行いますので、さながら大空を展示会場にした凧の動態展示になります。見物人も約2万人。新春、このような規模内容での凧揚げは全国でも例がないと思います。入場も無料です。ぜひ御来場下さい。

 私がこの凧揚げ祭りを始めたのが1975年。当館が開館した翌年の新春からです。その頃、ビニール製三角翼のゲイラカイトが大流行し、日本の空から和紙と竹で作られた和凧が姿を消そうとしていました。そのため日本の伝統凧の素晴らしさを多くの人に知ってもらい、子どもたちの思い出にもなればと、当館前の田んぼで「井上郷土玩具館(創立当時の名称)の凧あげ」を始めたのです。見物人参加者合わせても100人足らず、揚る凧も十数枚、1畳大の讃岐凧でも大凧が揚ったと大喜びでした。しかし当時では珍しい催しであり、新聞やテレビで紹介されたこともあって参加者の輪が地元の兵庫県下から大阪、京都、徳島と広がり大きくなりました。「全国凧揚げ祭り」の名を使い始めたのは第4回目から、大会とせず祭りとしたのは、競い合うのではなく凧揚げを楽しもうと言う趣旨からでした。
凧あげ祭りの風景(6畳「姫路城」凧)

 姫路市との共催が始まったのは第13回目から。会場が手狭になり問題が出てきたため、姫路市と姫路観光協会の協力を得て姫路競馬場に会場を移して開催、現在に至ります。
 伝統的な年中行事としての凧揚げでなく、伝統がない土地での凧揚げ祭りが30年以上も続く例は全国でも少ないです。全国の凧愛好家への参加呼びかけと、前夜祭や当日の進行等が当館の仕事であり、会場設営と整理、駐車場や周辺の交通整理、当日の凧関係者の弁当は姫路市と、官と民とがお互いの立場を守り仕事を棲み分け協力しあったことが、この祭りを続けられた要因ではないかと思います。
 祭りに使う当館の経費は、姫路市から前夜祭他の助成金として23万円の補助をいただきますが、実際に当館が使う費用はその倍以上。当館の趣旨に賛同し協力くださるボランティアも大勢あります。経費も使いますが、当館としては日本の伝統凧の素晴らしさを知っていただき、博物館としての使命も果たしていると考えます。その使命感と無欲な姿勢が、大きな社会的評価(サントリー地域文化賞、政府の「観光カリスマ100選」)にも繋がったと思います。








第33回全国凧あげ祭り
    
第34回全国凧あげ祭り

第35回全国凧あげ祭り

第36回全国凧あげ祭り

第37回全国凧あげ祭り

第38回全国凧あげ祭り




NO5
 世界のクリスマス展によせて   (2005年11月5日 井上 重義)

 今年もクリスマス展が始まりました。「素晴らしい展示ですね」と大勢の皆さまからお言葉をいただき喜んでいます。今ではすっかり当館の名物行事となったクリスマス展ですが、始まったのは1985年。この年の夏、私は北海道教育大学の故伊藤隆一先生のお誘いを受けて北欧旅行に参加しました。フインランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなどを訪ね、各地でクリスマスに因んだ麦わら細工の飾りや、木工品、紙製品などを入手しました。そしてその秋、収蔵していたドイツ、メキシコ、ペルーなどのクリスマス関連資料と合わせて350点を「世界のクリスマス展」と題して1号館で開催、同展は大きな反響を呼びました。
ペルーの大型レタブロ
ペルーの大型レタブロ


 翌86年の秋は他の特別展を開催しました。ところが「クリスマス展を楽しみにしていたのに」との御意見が相次ぎ、以来87年からは毎年開催しています。89年に6号館完成後は会場を同館に移して現在に至りますが、今年は通算20回目の記念すべきクリスマス展になりました。
 その後もクリスマスの季節にはヨーロッパ各地を訪ね、さらにはカナダ、アメリカ、ブラジルなどでも現地採集し、大勢の皆様の協力もあって当館のクリスマスコレクションは世界約50カ国から3000点を超える膨大なコレクションになりました。時期が良かったからで、恐らく国内では右に並ぶコレクションはないと思います。ところでプラハを訪ねたとき、市内のマーケットで売られていた麦わらのオーナメントの大半が中国製であることに衝撃を受けましたが、それが世界的な流れにもなっているのです。

 今年の初公開資料で人気があるのが写真のペルーの大型レタブロ(箱型祭壇)です。インカ帝国がスペインに征服されたとき、スペインの牧師が布教の道具として持ち込んだ携帯用祭壇が始まりと伝わります。高さ75cmありますが、中段の聖誕の場面をとり囲むように音楽隊、帽子屋、花屋、壷売りなどが囲みます。登場人物を数えると約200人、壮観です。

 展示をご覧になった皆さまから「展示替えが大変ですね」との言葉をよくいただきます。正直、大変です。6号館は展示ケースの延長が約30m。今回はドイツ展からクリスマス展への移行でした。1000点に及ぶ膨大な展示品を収蔵し、さらには収蔵庫から展示品を出して選定、展示します。尾崎学芸員の計画に基づき、会場の設営から展示と学芸関係者全員(4名)と協力者2名の6名が連日深夜に及ぶ作業を続け、今回は収蔵が容易であったことから約4日間でほぼ完成しました。結果として過去最高の素晴らしい展示になり喜んでいます。





NO4
 愛・地球博を訪ねて   (2005年10月1日 井上 重義)
スーダン

 9月20日と最終日の25日に地球博を訪ねました。地球博の海外館の状況視察と出展品の入手が目的でした。筑波万博も大阪花博もそうでしたが、今回も映像やパネル展示が中心で、暮らしぶりが解るような民芸品や実物資料を展示している館はあまり多くはありませんでした。

 「自然の叡智」がテーマなので、私はそれぞれの館で自然素材を巧みに利用して作られた伝統的な民芸品との出会いを期待していただけに、少し残念でした。我田引水になりますが、当館が所蔵しているようなインドネシアの木の葉凧、パプアニューギニアのドングリこま、ブラジルの骨の笛、メキシコの椰子の葉のガラガラ、北欧などの麦わら細工、といった自然素材で作られた実物が展示されていれば、人々にもっと興味と感動を与えられたのではないかと思いました。と同時に、当館が約30年の歳月をかけて集めた海外の玩具や人形などの資料の価値と重みを改めて認識した次第です。
モーリタ二ア
モーリタ二ア

 当館所蔵の海外資料は、現在145か国から3万点にも及びます。これらは現在、プラスチック製品の出現や中国製の安価なコピー商品が出回るなかで、世界中から急速に姿を消している自然素材のモノが中心で、今後このようなコレクションを構築することは不可能だからです。世界の主な玩具博物館を見学し、情報を得ているので言えるのですが、恐らく世界でも珍しい貴重な資料であると思います。
アルメニア
アルメニア

 小さな町の私立博物館が築いた「世界の玩具文化コレクション」が、いつの日か高い評価を受け、世界的にも認められる日が来ることを、夢見ています。
 最後になりましたが、地球博での展示品の何点かが当館のコレクションに加わりました。スーダン、モーリタニア、アルメニアの人形たちを紹介いたします。

 
       




 関連企画展

アフリカのおもちゃと造形




NO3
 恒例の夏休みおもちゃ教室から  (2005年8月26日 井上重義)

 長い夏休みも、残り数日です。館の前の駐車場には赤とんぼが飛び交い、秋の訪れを告げています。今年の夏休みも大勢の子どもたちで賑わいました。6号館前の休憩所に置いている感想ノートには、来館者が思い思いに感じたことを書き残しています。

 「あー楽しかった。おもしろかった。懐かしかった。」「知らないおもちゃや、外国のおもちゃなどがたくさんあって、とても楽しかった。持って帰って飾りたいものがたくさん。外国の絵本もおもしろかったです。何年か後に、また友達と来たい。」「2歳4ヶ月の孫を初めて連れてきました。大人4人も大変おもしろく楽しい時間を過ごせました。孫がとても喜んでくれ、嬉しく思いました。また来ます。」 来館者の喜びの声に、元気を貰います。

 恒例の夏休みおもちゃ作り教室も、鯉の滝登り、木挽き人形、剣術人形、かくれ屏風など、江戸時代のおもちゃ作りを中心に行ないましたが、どれもキャンセル待ちができるほどの盛況でした。2時間程度で作れますが、子どもたちは「昔の人は賢い、すごい。」と目を輝かせていました。いつの時代でも子どもたちが喜んで作って遊ぶ、そんなおもちゃを教え続けたいと考えています。

 昨25日は大阪で開催された「おもちゃの学校」で、おもちゃの話や手づくりおもちゃの指導をしました。東京から来られていた小学校教師から「『身のまわりの材料を使った伝承手づくりおもちゃ』(井上重義著書・草土文化・1991年刊)を愛読しています。特にストローロケットは子どもたちにも大人気で流行していますよ。」と、嬉しい言葉をいただきました。同書は来月に13刷が出版されます。大勢の子どもたちがモノを作る喜びを体験してくれることを心から願っています。


 9月10日から始まる『アフリカのおもちゃと造形』も初めての企画展です。これもまた当館の30年近い収集の成果の発表展でもありますが、楽しい、面白い、意外性あふれた展示会になると思います。ご期待下さい。 

■夏休み面白おもちゃ作り教室■
         (2006)


NO2
 水遊びと縁日のおもちゃ展から〜懐かしい樟脳船(しょうのうせん)〜
                                             (2005年7月25日 井上重義)  

 9月6日(火)まで1号館で開催中の「水遊びと縁日のおもちゃ」展には、昔懐かしいブリキの金魚、樟脳船、ローソクで走るポンポン船、水中花などが並び、どれもが懐かしい思い出につながるおもちゃだけに、子どもたちよりも中高年の大人に人気です。これらの多くは夜店からカーバイトの匂いが消えるのと共に、いつの間にか姿を消してしまった、思い出に残るおもちゃたちです。

 そのひとつの樟脳船は、セルロイド製の全長3〜4センチほどの小さな船です。水を入れた盥に浮かべると、ミズスマシが泳ぐようにすいすいと音もなく走り回ります。この不思議な船は「樟脳船」の名の通り、防虫剤の樟脳の小片を船尾に挟んで水に浮かべると、樟脳が溶けるのに従って強まる水の表面張力を利用して走るのです。樟脳船はときたま露店で見つかることがあり、当館では35年ほど前に姫路のゆかた祭りの露店で売られていたものを所蔵しています。また今から15年ほど前にも、大阪の天神祭りの見物に出かけたときに露店で見かけました。どこかで細々と作られているのでしょうか。

 その懐かしい樟脳船をさる所で入手しましたので、当館のミュージアムショップで展示にあわせて売っています。帆掛け舟・屋形船・船頭さんの船・ヨットなど7艘と樟脳がビニール袋に入って800円。他にもブリキ製のポンポン船(800円)と金魚(100円・250円)、カチカチ音がするおもちゃ(100円)など昔懐かしいものが並んでいます。夏休みに入って目立つのはお子様、お孫様連れの御夫婦です。懐かしいおもちゃの数々が楽しい会話につながり、博物館での楽しい思い出がふくらむことでしょう。日本の昔のおもちゃで遊んだり、世界の珍しいおもちゃで遊べる体験コーナーも人気です。楽しい夏休みの一日を、お子様やお孫様とご来館下さい。

お待ちしています。



NO1
 ドイツおもちゃ紀行展によせて〜コレクションの積み重ねが大きな成果に〜

                                        (2005年6月27日 井上重義)

 当館も入館者の減少など、相変わらず厳しい状況が続きますが、このところ明るい話題が続きます。私が観光カリスマに選ばれたことから、ツーリズムビジネス専門誌『TravelJournal』6月6日号に4ページ紹介され、さらに内閣政府広報誌『Cabiネット』6月15日号にも当館が4ページにわたり紹介されました。それにインターネットで検索していて『珍スポ大百科』にも当館がとりあげられているのに気付きました。恐らくこの5月に来館になりHPにあげてくださったのですが、取材者とは何の連絡も面識もありませんが、的確に好意的に当館を紹介くださっています。私を始めスタッフにとっては嬉しい大きな励ましになりました。有難うございました。

 本日、東京から来られたご夫婦の方から「ドイツ展、素晴らしいですね。感動しました。」と、嬉しい言葉を掛けていただきました。30年近いコレクションの積み重ねが大きな成果に繋がりました。1970年代、ヨーロッパでも玩具はわが国同様にプラスチックの時代になり木の玩具は消えつつありました。そんな時代に、わが国ではドイツなどの優れた木製玩具を紹介販売する輸入業者(ニキティキ)が出現、人々のヨーロッパ志向や経済的豊かさを背景にヨーロッパの木の玩具ブームが興り、海外から最高級の木の玩具がわが国に大量に輸入されたのです。当館はそれらを収集、大きなコレクションを築きました。今となっては入手不可能な貴重品が数多くあり、収集にはタイミングの重要性を痛感しています。それ以外にもドイツ統一前には、エアランゲン在住の古本清子様から大量にザイフェンの玩具を送っていただき、1994年2月には古本さんの尽力でニュールンベルグ玩具博物館からも招待され、ドイツ玩具の収集や事情調査のためにドイツを訪問し大きな成果を得ました。その後、ドイツ人ヒラ・シュッツェさんの協力もあり、国内屈指のドイツ玩具コレクションを形成することができたのです。

 「ドイツおもちゃ紀行」開催に当たり、古本様・シュッツェ様には、改めて感謝とお礼を申し上げると共に、入手について長年にわたりご協力をいただいたアトリエニキティキの西川敏子様にもお礼を申し上げます

 関連企画展
ドイツおもちゃ紀行



最新の館長室





Mail:info@japan-toy-museum.org


〒679-2143
兵庫県姫路市香寺町中仁野671−3

TEL: 079-232-4388
FAX: 079-232-7174