日本玩具博物館館長室から(過去の記録ページ)
NO26
全国の達磨が人気です
                                          (2007年12月7日 井上 重義)  

 師走に入りましたが、今年は暖かかった気候のせいか、当館の庭にはまだ秋の気配が漂っています。もみじの真っ赤な葉や木々の黄色い葉が6号館への石畳に舞い落ち、皆様から「建物も庭も素敵ですね。命の洗濯をさせていただきました」と嬉しい言葉をよく頂戴します。
 6号館の恒例の秋・冬の特別展「世界のクリスマス」も好評で、「孫を連れて毎年来ています。今年も素晴らしい展示をありがとう」とお礼の言葉が感想ノートに記されていました。
 学芸員のアイデアで、クリスマス展会場には昔の小学校の木製椅子が5箇所に配置され、その上には各国のクリスマスに因んだ絵本が置かれて、自由に手にとってクリスマスについての理解を深めるよう工夫がされています。昨日も父親が子供に絵本を読み聞かせている微笑ましい光景を目にして、心が温かくなりました。
関東系女達磨
・昭和初期
埼玉鴻巣達磨
・昭和初期
松山女達磨
・昭和初期
博多系男達磨
・昭和初期
博多女達磨
・昭和初期
名古屋鉢巻達磨
・昭和初期
 世界のクリスマス展に続いて、1号館でも企画展「ねずみの玩具とおめでたづくし」が始まりました。日本人が好んだおめでたい造形
関東の達磨
恵比寿大黒、福助、招き猫などと共に日本各地で作られた達磨約100点を、北は仙台から南は沖縄まで地域毎に展示しています。制作年代は昭和40~50年代のものが中心ですが、7・80年も前の昭和10年頃に製作された達磨も約20点展示しており、大変珍しいと思います。
四国・九州の達磨
 達磨は古い歴史を持ち、既に江戸時代初期には商品として売られていました。起き上がる動きが七転び八起きの縁起と結びつき、おもちゃとしてだけでなく縁起物の置物としても親しまれてきました。一堂に並べると東日本の達磨と西日本の達磨とではいろんな点で違いがあります。例えば、東日本の達磨は目無し達磨が中心で彩色もシンプルなものが多く、西日本には鉢巻を締めた達磨が各地で作られており、東日本のものに比べて彩色も派手なものが多いのです。また男達磨だけでなく女達磨も各地でつくられましたが西日本の四国と九州のだるまは派手です。
 今ではお馴染みの目無し達磨は、白目の達磨を買い求めて願をかけ、祈願成就の際には黒目を描き入れるのですが、静岡から関東にかけての地域で作られ、西日本では作られませんでした。同じ達磨なのに地域による大きな特色があり、なぜこのような違いがあるのか不思議です。人々の好みや気質の反映なのでしょうか。不思議発見にぜひご来館下さい。

 関連企画展

ねずみの玩具とおめでたづくし

NO25
地域文化功労者文部科学大臣表彰を受けました
                                          (2007年11月4日 井上 重義)

 秋も深まり、4号館前のサネカズラの実が真っ赤に色づきました。
 この度、嬉しいことに文化財保護に大きな功績があったとして、平成19年度地域文化功労者文部科学大臣表彰を受け、今月1日に東京の如水会館での表彰式に出席しました。文化庁が毎年この時期に全国各地域で芸術文化の振興、文化財の保護に尽力するなど地域文化の振興に功績のあった個人及び団体に対して文部科学大臣表彰を行い、今年度の功労者は全国で84件。個人70名(芸術文化関係39名、文化財保護関係31名)と14団体でした。この賞は都道府県教育委員会からの推薦を文化庁で選考決定するもので、兵庫県内からは他に個人で洋画家の大石可久也氏が受賞。博物館関係者としては私の他に岐阜の大松美術館館長大松節子さんが表彰されました。長年に亘る博物館活動や元香寺町文化財審議委員長としての功績が高く評価されたことを喜んでいる次第です。兵庫県知事や姫路市長など大勢の方からも祝電を頂きました。長年に亘りご支援いただいた皆様にも、心からお礼を申しあげる次第です。有難うございました。

 さて当館はこの10日で開館満33年を迎えます。ここまで充実発展できたことを心から喜んでいます。私は、他館の真似をせず、大切だと思ったことを追求し、当館でないと見ることができない個性的なコレクションの構築に努めてきました。それが大きな力になり、当館のコレクションを見るため、はるばる東北・関東・九州等から、さらには海外からも来館下さるまでになりました。開館当初、私が夢に描いたのは信州の碌山美術館のように、多くの人に支えられ、高い知名度と全国から人が訪れる博物館になることでした。それが個性的なコレクションを築くことによって夢は現実のものになりました。現在開催中の世界のクリスマス展にしても約30年の歳月をかけて収集しましたが、国内では類のないコレクションです。収集の動機は世界の玩具や人形を収集する中で、海外のクリスマスが日本の正月と雛節句をミックスしたような催しであることに気付いたからです。現在収集可能なものは5割もなく、集めた時期がよかったのです。
 当館が収集した資料はこれまで文化財として評価されなかった、子どもや女性に関わるモノが中心です。このような資料の収集は使命感を持つ個人館だからこそ出来たのであり、当館が収集していなければその多くが失われていました。それが輝き、当館の運営にも大きく寄与するまでになりました。現在、全国の博物館の半数が収集費ゼロ、年間予算百万円以下が四分の一と聞きます。博物館で大切なのは、人を呼び寄せ感動させる魅力的なコレクションの構築が大切なはずなのに、これでは博物館の将来に明るさが見えません。
 最近、残念なのは当館より後発の、近隣の複数の公立館が玩具コレクションを受け入れ、玩具に関する展示を始めました。展示数も内容もはるかに当館が勝っているのに、後追いするかのように玩具の展示が再三開催されます。同一地域内にある館は、官も民も関係なく、それぞれが個性を磨き、特色を競いあうことこそが必要だと思います。それこそが地域の魅力を高めることに繫がるのではないでしょうか。








NO24
横浜人形の家を訪ねて                       (2007年9月23日 井上 重義)

 9月も半ばを過ぎ、朝夕はしのぎ易くなりました。今夏は猛暑の影響もあったのか入館者が大きく減少しましたが、秋の訪れと共に賑わいが戻ってきました。とりわけ1号館の企画展「おもちゃで綴る日本の祭」は秋祭りとも連動した催しで、来館者の評判も上々です。

 「館長室から」では、世界華商大会にまつわる当地への記念ツアーや夏休みのおもちゃ作り教室の報告を約束していましたが、その約束が果たせないままになりました。華商大会の記念ツアーは実施日が大会前日であり、参加者が少なく姫路コースは残念ながら中止になりました。夏休みおもちゃ作り教室はどの講座も定員オーバーの状況で、子どもたちは夏休みの大きな思い出を持ち帰ってくれました。

剣術人形を参考に子どもが作ったバトンガール。

<子どもたちの弾ける笑顔と手づくりの作品>

出来上がった木挽き人形を手に持って、記念撮影。


 当館資料による館外での展示は、この秋も日本モンゴル博物館で「世界の鳥~その色と形」、群馬県立の日本絹の里で「暮らしの中のちりめん遊び」が開催されます。今月の13日~18日まで、東京池袋の西武百貨店で開催された「第4回私の針仕事展」には、約300点のちりめん細工を出品しました。パッチワークが中心の催しで、当館資料は会場の3分の1ほどでした。予想外の入場者があり、連日5000人を超え、初日は入場制限までありました。パッチワークの世界の凄さに驚きましたが、大勢の皆様にちりめん細工の素晴らしさをご覧頂く機会を得て喜んでいます。

 池袋西武の展示撤収のために上京した機会に、久しぶりに横浜人形の家に行きました。同館とは「人形の社会的評価を高め、保存展示する」共通の使命や、アポロ社の故遠藤欣一郎コレクションを人形の家と当館とで受け入れた経緯もあり、設立母体の違いを越えて学芸員同士の太いパイプもあり、友好館として太い繫がりがありました。しかし昨年4月、同館に指定管理者制度が導入され、ブリキ玩具のコレクター・北原照久氏がプロデューサーに就任されましたが、残念ながら人形の家のベテラン学芸員全員が離れられ、その後、同館との連絡は途絶えました。その後どうなっているのか、同じ人形文化を守る館として気がかりでもあったからです。それに先般、千葉からの来館者から、横浜人形の家よりも当館の「世界の人形展」の方が素晴らしいと、気になる言葉を聞かされたからでした。
 横浜人形の家は変わっていました。約1年間の工事でリニューアルされ、「『横浜発・世界の人形ふれあいクルーズ』をコンセプトに、いつ来ても楽しく、何回来ても、新たな発見ができる施設として展開していく」とされていましたが、正直言って私は良くなったとは言いがたく、長年に亘り資料を守り続けていたヒト(学芸員)がいなくなったツケは大きいと思いました。展示品も人形の家は良質の資料を多数所蔵されているはずなのに、その資料が出ていないのです。世界の人形コーナーも確かに千葉の方が指摘されたとおりでした。「質も量も」、更に展示手法もです。とりわけ気になったのは展示ケース内の明るさです。人形は布や自然素材の材料が多く繊細です。いくら紫外線カットの光源を使っているといっても、長時間強い光に当てると退色は当然です。直近からスポットが当てられた人形が何点もあります。人形に対する深い愛情があれば、こんな展示にはならないはずだと私は思いました。
 聞けば複数おられた学芸員は1人になり、それも常駐でなく兼務と聞きました。ケース内だけでなく明るすぎる白っぽい館内、人形を見て心を癒したいと訪れる来館者も多いはずですが、その雰囲気からは程遠いものを私は感じ、何か寒々としたむなしさを胸に同館を後にしました。
 指定管理者制度は、地方自治体が「住民の福祉を増進する目的をもって、その利用に供するため」に設けている文化施設や体育施設、公園などの『公の施設』の管理について、「多様化する住民ニーズにより効果的、効率的に対応するため、民間の能力を活用しつつ、住民のサービスの向上を図るとともに、経費の節減等を図ること」が目的とありますが、その制度が本当に文化を守ることにつながるのか、私は大きな疑問を感じました。





NO23 
手づくりの楽しさを子どもたちに      
~夏休み面白おもちゃ教室始まる~                 (2007年7月27日 井上 重義)


 子どもたちにとって楽しい夏休みがやってきました。緑に囲まれた当館は蝉の鳴き声に包まれ、一歩、館内に入れば、子どもたちの楽しい歓声が聞こえます。

牛乳パックの船 今年も恒例の「夏休み面白おもちゃ教室」が始まりました。当館では毎年、夏休み期間中、1号館と6号館で開催の企画展・特別展に関連したおもちゃ作り教室を開催していますが、今年も世界の「船展」と「人形展」に因んだおもちゃ作り教室が始まり、本日は、その第1回目の「牛乳パックで作る船」教室。それぞれに素晴らしい船が完成。子どもたちは目を輝かせて大喜びでした。帰宅後、船を浮かべて遊ぶ姿が目に浮かびます。
 牛乳パックを縦に半分に切って船体を作り、それに割り箸を固定して、水車を輪ゴムで留めて、ゴム動力で水上をスイスイ走る船です。ゴム動力で水車を回転させて走る玩具の木の船は古くからヨーロッパやアメリカにもあり、同じ原理ですが、違いは材料です。牛乳パック、割り箸、竹串、折り紙、輪ゴムと、身近な材料で作るところがミソです。問題は強度です。すぐ壊れるようなものではいけないからです。牛乳パックに割り箸を固定する方法も課題でしたが、ホッチキスで留めることで解決しました。割り箸を持って振り回しても牛乳パックは外れません。

 私は鍛冶屋の息子に生まれ、子どもの頃はよく手伝いました。そんな影響からか、モノ作りが大好きです。博物館設立後、子どもを取り巻く環境が変化し、テレビで宣伝して売る玩具が大流行する中で、おもちゃは買ったもので遊ぶ時代になり、作ったもので遊ぶことが失われているのに気付きました。作る場所もなく、身近に鋸も金槌も小刀などの道具も、竹や木などの材料もありません。それならと講座風景考えたのが、今の身の周りにある道具と材料を使った伝承玩具作りです。牛乳パック、トイレットペーパーの芯、ストロー、割り箸、厚紙、凧糸、輪ゴムを材料に、玩具についての知識を生かして江戸時代の玩具などの作り方を考えました。道具もハサミ、カッターナイフ、ホッチキス、キリなどで充分です。江戸時代から伝わる、吹き矢、木挽き人形、鯉の滝登り、ご来迎、剣術人形、かくれ屏風、風車などを作りました。強度もそれなりにあり、作ったもので遊べて子供たちも大喜びです。そんなおもちゃの作り方を考えたのは実は20年以上も昔。1991年には身のまわりの材料で作る『伝承手づくりおもちゃ』(草土文化)を出版、身近な材料で子どもの喜ぶおもちゃが作れることを大勢の皆様に知っていただきました。その本の掲載作品をベースに改良、新しく考案して、作品の数も増えました。おもちゃ教室ではそれらを中心に教えています。

 各地の博物館では現在、ものづくり教室などの体験活動が盛んですが、当館のように江戸時代の玩具を数多く教えているところは全国でも例がないと思います。江戸のおもちゃを作った子どもたちは、「昔の人は賢い」「すごい」と感動します。楽しかったと毎年参加してくれる子どもが多いのです。今年も申し込み不要の「江戸のからくり玩具かくれ屏風」(7月29日、8月5日・19日)教室を除き、どの講座も満席ですが、その半数は昨年参加した子どもたちです。基本を教えた後は、子どもたちの個性が輝く作品が仕上がるよう指導していますが、子どもたちの感性の豊かさにしばしば感動させられます。今年も思い出の詰まった楽しい作品の数々が誕生するでしょう。
 おもちゃ教室の様子をこれからも何度か紹介したいと考えています。

作品を持って、参加者の記念撮影


 関連企画展

世界の船のおもちゃ


NO22 
特別展『世界の国の人形たち』によせて             (2007年6月23日 井上 重義)


紫陽花 梅雨の季節に入り、当館は緑に包まれました。アジサイの花が咲き、館の前にある合歓の花のつぼみも大きく膨らみ、まもなく優しい花が来館者の目を楽しませてくれることでしょう。
 夏の特別展『世界の国の人形たち』が6号館で始まりました。去る12日(火)の夜から『端午の節句飾り』の撤収作業を行い、続いて世界の人形の展示作業にかかりました。撤収はスムーズでしたが、展示は膨大な資料の中から選び出す作業が大変で、連日夜の11時頃まで作業が続き、今回は1週間がかりでした。展示は尾崎学芸員の企画構成に基づいて、約1000点に上る人形が勢ぞろい。自画自賛するわけではありませんが、素晴らしい展示になりました。来館者からは、きっと感動の言葉が聞かれるでしょう。


ヨーロッパの木の人形 当館は昭和初期に発行された玩具や人形に関わる文献類も多数所蔵しており、その中に山内神斧(1886~1966)の木版画集『壽々』(200部限定出版)があります。昭和10~13年にかけて浅井忠や小林古径など画家仲間の協力を得て、世界の玩具や人形を収集しそれを描いたものです。今回その中の人形の絵を額装し、モデルとなった人形と対比させた展示をしていますが、70年も前に世界の人形が集められてスケッチされたことに感動しました。その他にも関連する子どもたちの写真を展示して、会場には楽しい雰囲気が漂っています。
 しかし、今回の1000点にのぼる資料も、伝統的な民芸品が世界的規模で急速に姿を消している今日、現在入手可能なものは2割もありません。その寸前に収集出来たのですから誠に幸いでした。無理をしてでも集めておいて良かったと、感慨深いものがあります。博物館は「良き資料があってこそ輝く」のですから。


アジアの人形、版画と写真が展示を更に楽しいものに 来館者を感動させる展示は、資料の裏付けがあるからこそ可能なのですが、いくら資料があっても、無味乾燥な展示では人を感動させられません。ここ数年来、尾崎学芸員の功績ですが、当館の展示手法は大きく進展したと思います。展示品にあわせて床のクロスの色を換え、パネルの色を変え、写真や文献資料を駆使して奥行きのある、暖かなハートのある展示になっています。実は人形がおかれている大小さまざまな台はお菓子の入っていた紙箱をクロスで包んだもので、学芸員の手製です。床の色が変わると、箱のクロスも取り替えます。小さなアクリル台は業者に特注して作ってもらったものです。限られた経費のなか、一部の大きなパネルは外注ですが、写真を入れ込んだパネルの制作もキャプションも、学芸員の手になります。外国人の来館者が増えてきたこともあり、英語表示もしています。

 楽しみなのは開催期間中の9月。神戸で第9回世界華商大会が開催され、大会記念旅行の目的地のひとつに当館が選ばれました。9月14日に世界各地から来られた華商の皆様が、世界遺産姫路城と共に当館にも来館されます。それもあって、1930年代に中国で作られた貴重な資料である「花嫁行列」を特別に展示しました。華商の皆様は、当館をどのように受け止めてくださるでしょうか。










NO21
たばこと塩の博物館『ちりめん細工の世界』盛況裡に終わる       (2007年4月25日 井上 重義)


 たばこと塩の博物館の「ちりめん細工の世界」撤収作業に引き続いて、当館6号館の雛人形から端午の節句飾りへの展示換え作業が終わり、やっとひと息つきました。6号館の端午の節句飾りの展示は、これまで6号館の西室だけでしたが今年は全館を使っての展示です。江戸期の甲冑飾りから現在までのさまざまな端午の節句飾りが一堂に並び、初公開の資料も多く、見ごたえ充分です。ぜひご来館下さい。

 さて2月10日~4月8日まで、当館とたばこと塩の博物館との共催で開催された、企画展「ちりめん細工の世界」は大成功といえる大きな成果を収めました。たばこと塩の博物館からの報告では、期間中の総入館者数は23,412人(1日当たり468人)。1日当たり入館者数では夏休みの塩の学習室を除き、ここ10年来の記録を更新したと嬉しい連絡がありました。人気がある展覧会だと、期間の後半になって入館者が伸びると聞いていましたが、その通りの展開になり、後半、1日で800人を超える日もありました。
 私もある程度の集客は考えていましたが、予想を超える反響に驚きました。何よりも嬉しかったのは、展示に感動してくださった方が大勢あり、リピーターが多かったことです。先日も当館にはがきが届きました。『あまりの素晴らしさに感動して、期間中に知人を誘って何度も出かけました。胸の中にたまっていた、なんともいえない懐かしい思いが一度に満たされ、ため息が出ました』と綴られていました。「来館者を感動させる展示」は、博物館関係者にとっては最上の喜びです。それが実現できたのです。会場がちりめん細工の展示に良く合い、雰囲気が良かったこと、伊豆の稲取など雛の吊るし飾りが人気を呼び、ちりめん細工が認識される中で、江戸から現代までのちりめん細工の歴史を追った展示構成の素晴らしさと質の高さが、感動を呼び起こしたのでしょうか。


 今回、たばこと塩の博物館のご配慮により「主催=たばこと塩の博物館、日本玩具博物館」と、2館が協力しての企画展であることをポスターやチラシなどで表示いただきました。実際の展示作業でも両館の学芸員が和気あいあいに共同で作業にあたり、知恵を出しあってすばらしい展示になりました。首都での展示の大成功は、当館の今後にも大きな影響がでそうです。早速に展示品の「迷子札」が芸術新潮の5月号に4ページに亘りカラーで「明治のファンシーストラップちりめん迷子札」として紹介されます。9月には池袋西武で開催される「第4回私の針仕事展」にも当館所蔵の古作品や文献資料と傘飾りを出品します。8月は鹿児島の長島美術館でよみがえったちりめん細工の数々を展示し、10月には群馬県立絹の里でのちりめん細工の特別展開催が決定しました。


 当館の20数年に亘る地道な「ちりめん細工再興」活動が実を結び、和の手芸の世界に大きな波を起こしています。



好古園 『ちりめん細工・四季の傘飾り展』



NO20
『傘飾りと雛飾り』を発刊しました       (2007年4月1日 井上 重義)


新刊『四季の傘飾りと雛飾り』(日本ヴォーグ社)
 昨年来取り組んでいた『四季の傘飾りと雛飾り』が日本ヴォーグ社より発刊されました。私の監修によるちりめん細工関連の本はこれで10冊目です。内容的にはちりめん細工の傘飾りを季節毎に初級者と上級者向けに2作品を紹介し、さらに雛の季節に因んだ傘飾りと雛の飾りをまとめました。AB版、96ページ(内カラー48ページ)、定価1500円です。これまで出版した本の中では写真もシンプルで美しく、格調高く仕上がっています。何人もの方から「見るだけでも楽しい本ですね」と嬉しいお言葉をいただきました。
 この傘飾りの本は、たばこと塩の博物館で現在開催中の企画展『ちりめん細工の世界』に関連して発刊したもので、展示品の傘飾りの作り方の解説書にもなっています。

冬の傘飾り【雪遊び】 作品制作/赤井春子 
 ちりめん細工は江戸時代や明治時代の裕福な階層の女性たちが作り伝えてきた手芸品です。手のひらに乗るほどの小さなちりめん細工の中には、かつては琴爪やお守り、お香などが入れられました。しかし当時とは環境も変わり、現在は各作品の完成度を高めるだけでなく、作品の見せ方が大切な時代になりました。そのことは、ちりめん細工を幾つも吊り下げた雛の「つるし飾り」に大きな関心が寄せられていることでもいえます。それに気付き、これまでにちりめん細工の柱飾りや輪島塗の棒にちりめん細工を吊るすなど、新しい飾り方を提案してきました。


春の傘飾り【桜の宴】 作品制作/南尚代
 今回の傘飾りは、傘が「末広がり」で目出度く、また傘の略字の「仐」が八十に見えることから長寿の祝いにも使われてきたことに注目して、当館のちりめん細工の講師の皆さまと共に、和傘にちりめん細工を吊るす飾りを考えました。
 傘飾りは骨に作品を吊るすため、数多くの作品を作る必要があります。一点ずつ縫うとなれば時間も労力も大変です。そのためこの本では、スチロール玉など新しい素材を利用して簡単に作れる初心者向けの作品も発表しました。また雛のつるし飾りは収納に問題がありましたが、傘は折りたためるため、収納場所を取りません。さらに傘飾りはちりめん細工の取り外しが容易で、吊るす作品の入れ替えもできます。


秋の傘飾り【実りの秋】 作品制作/清元瑩子


 傘飾り用の直径30cmの小さな和傘は岐阜の老舗の協力を得て、従来のものに手を加えて格調高く仕上げていただきました。和傘の振興にも役立てば好いのですが。
 この本により、ちりめん細工の傘飾りが大勢の方に親しまれ、四季折々の生活に潤いをもたらせてくれることを願っています。
 書店にも並んでいると思います。ぜひ手にとってご覧ください。







NO19
好評です。「ちりめん細工の世界」展          (2007年2月22日 井上 重義)


 2月10日から東京・渋谷のたばこと塩の博物館で始まった、企画展「ちりめん細工の世界」は大好評です。初日の10日に行われた私の講演『ちりめん細工の再興活動』も、1時間余り前から聴講希望者が会場入り口に並ばれ、満席状態になって、お聞きい
講演会風景
ただけない方が大勢出ました。関西弁で早口の私の講演でしたが、「良かった」と手紙を下さった方もあり、当館がちりめん細工の再興に取り組んだ経緯を大勢の皆様にご理解いただくことができて喜んでいます。当日配布した講演のレジメをご覧下さい。
 企画展会場はたばこと塩の博物館の4階。エレベータで上ります。私は10日、11日、16日と会場に出かけましたが、エレベーターが到着するたびに大勢の方がお見えくださいました。広い会場は色とりどりの作品や美しい着物で華やかな雰囲気に包まれ、「素晴らしい展示ですね」と大勢の方が感嘆の声をあげて下さるのが心に残りました。初日から3日間の来場者は1500人、今も連日300名を越える来館者で賑わっているようです。私も大勢の皆さまに感動を与える展示ができたことが嬉しく、この会場での開催は正解だったと喜んでいます。




展示風景 展示風景

   

 前回の館長室でも申しあげましたが、展示の設営には当館からは3名が上京。8・9日の2日間、たばこと塩の博物館学芸員の皆様と共に展示作業にあたりました。広い会場を取り囲むケースには、江戸時代から明治期にかけての作品に続いて現代の作品が展示され、壁面には着物を飾りました。中央には大小の傘飾りが美しくライトアップされて来場者を感動させる華やかな会場構成です。ベテランの皆様との楽しい共同作業も大変勉強になりました。
 一昨日も青森の方から「素晴らしい展示だった」とわざわざ電話をいただきました。東京での展示は、関東圏だけでなく東日本の皆様に、ちりめん細工の素晴らしさを認識いただける大きな機会になりそうです。


NO18
たばこと塩の博物館企画展
「ちりめん細工の世界」展によせて
             (2007年2月6日 井上 重義)


 2月10日から東京・渋谷のたばこと塩の博物館で、当館所蔵の資料を中心とした企画展「ちりめん細工の世界」が開催されます吉祥文様五角袋。その準備のため、私と学芸担当者(尾崎、井上)が7日に上京いたします。10日のオープンめざして、たばこと塩の博物館学芸員の皆様と共同で展示作業にあたりますが、学ばせていただくことも多いものと楽しみにしています。
 実はたばこと塩の博物館での「ちりめん細工展」は、私の長年来の夢でした。1994年にNHK出版から私の監修で『伝承の布遊び ちりめん細工』を出版しましたが、所用でNHK出版に行くとき、同じ渋谷にあるたばこと塩の博物館には必ず立ち寄っていました。そして将来、このような立派な博物館で「ちりめん細工展」を開催し、大勢の皆様に日本女性が生み出した伝統手芸の美や心を知ってもらいたいと思いました。その10年来の夢が叶い、嬉しいです。
四季の花袋
 私たちの祖先は暮らしの中からさまざまなものを生み出しました。その人々が作り出した文化遺産を守り伝えるのが博物館の大切な仕事だと思います。博物館は様々なものをコレクションしていますが、大切さに気付かれないままに消えてしまったものも少なくありません。江戸時代から着物などに使われてきた縮緬の端切れで作られた、花や動物、玩具、人形の小袋や小箱の裁縫お細工物(ちりめん細工)もそのひとつでした。私は全国の姉様人形や手まりなど女性にちなんだ郷土玩具を収集する中でち押絵小箱りめん細工の存在を知り、約30年前からちりめん細工を収集し保存してきました。収集は古裂専門店やオークションでの購入、私の監修したちりめん細工の本に掲載された作品の制作者からの寄贈などのほか、大勢の皆様からも古作品の寄贈を受け、約3000点に上るちりめん細工コレクションを形成しました。国内には数千の博物館がありますが、ちりめん細工をこれほど所蔵する博物館は他にないでしょう。このようなコレクションを築くことができたのは「消えゆく子供や女性の文化財を後世に伝え、光を当てること」を当館の使命と考え、人が集めるから集めるのでなく、ちりめん細工に文化的価値を見出し、長年にわたり収集活動を継続、コレクションの形成を図り、体系化してきたからです。
 数が集まればいろいろなことが見え、価値も生まれます。ちりめん細工には花鳥風月が表現されていたり、魔よけや招福の意味を持つものが多く、実用性だけではなく遊び心もふんだんに織り込まれているなど、小さな作品のひとつひとつが、私たちにさまざまなことを語りかけ教えてくれます。日本の女性たちが受け継いできた、小さな布裂も大切にする心、手の技、美的感覚のすばらしさを再発見していただく場になればと思います。
 たばこと塩の博物館は渋谷駅から東へ徒歩で約10分と交通も便利です。ぜひ、企画展「ちりめん細工の世界」にお出かけください。






NO17  
明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願い申しあげます
          (2007年元旦 井上 重義) 

 つつがなく開館33年目の新春を迎えることができました。博物館を取り巻く状況は厳しいものがあります。入館者を増やすことが博物館にとっての最大の課題ではないと思うのですが、博物館の世界にも成果主義の考えが入ってきています。幸いにも当館は、厳しい状況にもかかわらず運営は順調です。昨年度も800点近い資料を収集しましたが、今年も資料の充実を図り、来館者を感動させる博物館でありたいと考えています。
 今年も季節ごとに多彩な企画展(1号館)と特別展(6号館)を計画しており、企画展は春が「ままごと道具の今昔」、夏が「世界の船のおもちゃ」、秋が「おもちゃに見る日本の祭り」を開催します。特別展は春の雛人形に次いで、夏は「世界の国の人形たち」です。
 展示にあわせた楽しい催しも計画しており、新春も1月3日には独楽回し、4日には羽根突き大会、7日には恒例の全国凧あげ祭りを開催しますが、今年で第33回。すっかり播州路の新春の名物行事として定着しました。例年のように山口県見島の鬼ようず、徳島県鳴門のわんわん凧、新潟県見附の六角凧の他、今年は凧合戦で有名な浜松からも初参加、富山県からも久しぶりに参加されます。いずれにせよ日本各地の大小さまざまな伝統凧が新春の空を彩り、例年と同じく大空に揚った凧の解説を私が行います。嬉しいのは凧揚げ祭りを楽しみにしていると、知らない方からも声をかけられることが多くなりました。
 またあと1ヶ月余で東京渋谷のたばこと塩の博物館で当館の資料出品による『和の布遊び・ちりめん細工の世界』が始まります。旧年暮れからその準備にかかっていますが、あわせて日本ヴォーグ社から『ちりめん細工・傘飾りと雛飾り』を出版の予定で作業が進んでいます。今年も多忙な年になりそうです。皆様、本年もどうぞよろしくお願いいたします。    






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