NO79
ベルギーのクリスマスマーケット     (2012年12月12日 井上 重義)
旅行会社の「ベルギーのクリスマスマーケット6日間」の旅に参加して、先週の6日〜10日までベルギーに滞在。首都ブリュッセル、北西部の水の都「ブルージュ」、中世の町並みが美しい「ゲント」の三都市のクリスマスマーケットを訪ねました。これまでに私が訪ねたのはドイツ、オーストリア、チェコ、ハンガリー、スペイン、ポルトガルの主な都市のマーケットですが、規模や内容から心に残るのはドレスデンとウイーンです。珍しい麦わらのオーナメントなどを入手することが出来たからでもあります。この時期、ヨーロッパの各地では教会周辺の広場でクリスマスマーケットが開催されて賑わいますが、ポルトガルだけはマーケットが開催されず、教会の周辺は深閑としていました。オーナメントは土産物屋や雑貨店などで入手しました。

ゲントのクリスマスマーケット ブリュッセルのクリスマスマーケット


今回の旅行の主な目的はクリスマスオーナメントの収集でした。しかし、ブリュッセルも、ブルージュも、ゲントも、教会周辺でマーケットが開かれて大勢の人で賑わっ
ブルージュのレース店で入手
いたのですが、売られていたのは食べ物や飲み物や装身具などが中心で日本の夜店に似た雰囲気でした。肝心のクリスマスオーナメントなどを売る屋台は三都市ともに数軒しかなく、それも地元産でない、ロシア製、ドイツ製、メキシコ製といった外国製品でした。レースの本場とされるブルージュの屋台でレースを売る店を見つけ、やっと地元産のものが見つかったと買い求めたところ、後でMade in Germanyであることに気付きました。今回の旅では中国産のものを見かけることは少なかったのですが、屋台でガラス玉にレースが貼られた珍しいものを見つけましたが、確認すると中国製でした。

ベルギーでは、クリスマスオーナメントはマーケットではなく、家庭用品などを扱う商店で売られていました。ブルージュではクリスマスマーケットが並ぶマルクト広場に面した雑貨店Dille-kamilleで売られているのを見つけました。オランダとベルギーの各地に店舗があり、小さな木の人形が布の服を着た可愛いものや木製のオーナメントなど斬新なものが多く、買い求める大勢の買い物客で賑わっていました。

ブルージュの雑貨店で入手したツリーの飾り ブリュッセル郊外のマーケットで入手した
地元の人が作った降誕人形
ポーランド製のガラス玉


ブリュッセルでは8日に、通訳の方の案内で郊外の住宅地で12月初旬の週末に3日間だけ開かれるクリスマスマーケットを訪れました。そこで小さな土の降誕人形と
ポーランド製のガラスのオーナメントを入手しました。有名な広場グラン・プラスの北にある証券取引所近くの家庭用品店MAISONS DU MONDEでもクリスマスオーナメントが売られていると案内いただきました。主として売られていたのはフランスのクリスマスツリー発祥の地とされるアルザス地方で作られたものと聞きましたが、ガラス玉のほかに松かさや蔓や綿などの自然素材で作られた玉など、さまざまなものが売られて大勢の買い物客で賑わっていました。

フランス製のガラス玉 松かさの飾り 綿の玉と銀玉の吊るし


ベルギーは四国の1.5倍ほどの広さの小さな国です。中世の美しい町並みが大切に保存され、郊外には美しい田園風景が広がっていました。しかし近年、手工芸品が急速に姿を消していると聞きました。他国では見かけた麦わら製品とも出合うことはありませんでした。


  

NO78
開館満38年を迎え、コレクションが大きな力に。     (2012年11月24日 井上 重義)
今年は例年になく紅葉が美しく、当館の前の公園や館内の庭は色とりどりの秋の色に包まれました。入り口の野路菊の花も満開で、去り行く秋を惜しむかのようです。
満開の野路菊の花

さて今月10日に当館は開館満38年を迎えました。開館以来、一貫して追い求めてきたのは、評価されないままに消えようとする子供や女性に関わる文化財を集大成し、後世に伝えることでした。開館当初5000点だったコレクションは現在9万点。膨大な数量になりました。その数だけでなく内容も、世界的視野から見てもトップレベルのコレクション群をいくつも構築することに成功しました。


そのひとつが世界のクリスマスコレクションです。1979年の国際児童年に世界の玩具を展示したいと考え、1977年から収集を始めました。ちょうどその頃、ドイツから木製玩具が輸入されるようになり、それが人気を呼んで日本でヨーロッパの木の玩具ブームが起こり、ヨーロッパ各国やアメリカ、カナダなどから良質の木製玩具が続々と輸入されたのです。私はその頃から、東京で国際見本市などがあると出かけてそれらを入手し、輸入業者とも心安くなって貴重な玩具や人形などを入手しました。しかし近年はヨーロッパやアメリカなどからの出展が少なくなり、数年ぶりに今年9月に東京で開かれた国際ギフトショーに出かけましたが、海外からの出展は中国と韓国が中心で、欲しいものは皆無でした。海外のものを出品する国内の輸入業者のブースも衣類や装飾品が中心になり、民芸品的なものを見かけることが大変少なくなりました。世界150か国から3万点もの玩具や人形を集めることが出来たのは、本当に時期が良かったのです。
紅葉に彩られた6号館への小径

世界のクリスマスの展示は1985年に私が北欧に出かけてフインランド、スウェーデン、デンマークでクリスマスにかかわる資料を収集したことから、それまでに収集した世界各地のクリスマス関係の資料と併せて、その冬に1号館で約250点を展示したのが始まりです。そして1987年以来、毎年開催するようになり現在に至ります。その間、世界各地に何度も出かけて収集しました。本年は久しぶりにベルギーのブルッセル、ブルージュ、ゲントなどのクリスマスマーケットを訪ねます。しかし、ヨーロッパ各地のクリスマスマーケットで中国製品が盛んに売られるようになっていますので、ベルギーで確かな資料が入手できるか不安があります。

去る21日にはドイツから、久しぶりにフルベルト古本さんご夫妻がご来館下さいました。早速に世界のクリスマス展をご覧いただきましたが、「ドイツでもこのような内容の世界のクリスマス展は見たことがない、コレクションしているところも知らない」とのお話でした。ドイツでもアメリカナイズされた飾りが流行し、伝統的な飾りがどんどん姿を消しているそうです。身近な存在だったこれらを収集する人は少なく、気が付けばいつの間にか姿を消していたというのが現状でしょうか。ドイツにもこのようなコレクションは例がないとなれば、いつの間にか世界でも例を見ないコレクションを30年近い歳月で築き上げたのです。継続こそ大きな力です。

今年も既に何点かの資料を収集しました。そのひとつがフインランド製の麦わら細工のモビール「ヒンメリ」です。ヒンメリは12世紀頃
6号館の天井から吊されたヒンメリ
からフインランドの農村で作られたクリスマスオーナメントです。「ヒンメリ」は天空を表し、ゆらゆらゆれるヒンメリには天空からもたらされる風の精霊が宿り、飾られる空間を清らかな空気で満たすものとされています。専門業者が輸入したとの情報を得て入手しましたが、早速に6号館のクリスマス展会場の天井に吊るして飾りました。

博物館を取り巻く厳しい状況から、博物館冬の時代と呼ばれるようになって10数年がたちました。この度、現在の博物館の問題点を纏めた書籍が雄山閣から出版されました。題名は『博物館危機の時代』です。編者は東北学院大学の辻秀人教授、他に博物館に深いかかわりを持つ9名の方がそれぞれの立場で執筆されています。主として自治体が設立した博物館の現状や問題点で、公立館の厳しい状況が指摘されています。公立館では資料収集予算をもたない館が61%もあり、1990年までのバブル経済とその後しばらくの間、自治体が守るべき文化財を持たないのに、無節操にハコモノを競って作り続けたツケが来ていること。指定管理者の問題、身分が不安定な非常勤学芸員の増加、さらには集客のために過剰な頻度でイベントや企画展が開催され、そのために調査研究がおろそかになっている問題点が指摘されています。博物館の主たる使命は文化遺産を守り伝えることにあり、魅力あるコレクションの形成が大切なのに、目先の結果を追い求めていては博物館に春は来ないと思います。

このところ、お陰さまで大勢がご来館下さっています。今年も横浜から、クリスマス展を毎年楽しみにしていると来館下さいました。函館からも、ちりめん細工を見たいと来館下さいました。6号館前の感想ノートには「日本のおもちゃから外国のおもちゃまで、大人も子供も楽しめますが、壁に貼ってあるポスターもいいですね。子供のときにおばあちゃんに連れてきてもらい、高校生の時は美術部の見学できました。小4の娘と来ています。どうかここがいつまでも無くなりませんように、またきますね」と綴られていました。魅力的なコレクションを構築したことが嬉しい結果として現れています。本日は神戸の生田神社の加藤宮司がご来館下さいましたが、「よくやった」とお褒めの言葉をいただきました。




NO77
クリスマス展がオープンしました            (2012年10月23日 井上 重義)
今月も多忙な日が続きます。3日〜5日までは丸亀市立資料館で当館資料を基に開催される『おもちゃ百貨展』の展示協力のために尾崎学芸員と共に丸亀市に出かけ
6号館の「世界の鳥のおもちゃ」展を説明する
尾崎学芸員とヒラさん
、14日夕刻からと15日はドイツから来館されたヒラ・シュッツさんをお迎えしました。当初、ヒラさんは観光旅行で来日される機会に行程を変更されて当館に来られるものとばかり思っていました。ところがヒラさんは長年にわたり日独の国際交流に大きく貢献したとして表彰をお受けになり、招聘されて仙台などでの会議に出席後来館されたのです。ヒラさんについては尾崎学芸員が「学芸室から」のNO1とNO100で紹介していますが、長年にわたり玩具を収集研究されて造詣も深く、大いに意気投合して盛り上がりました。ヒラさんは当館の訪問記を寄稿くださる予定で、ヨーロッパの玩具博物館事情に精通された目で当館をどのように見てくださったのか楽しみです。

16日は兵庫県立丹波年輪の里で開催される「丹波の森ウッドクラフト展」のジュニアの部の審査のため丹波市まで出かけ、夕刻帰館後はスタッフと共に6号館の展示替え作業に従事しました。「世界の鳥のおもちゃ」の撤収と「世界と日本のクリスマス」資料の展示作業です。私の仕事は以前にも申し上げたと思いますが、6号館2階の収蔵室から世界の鳥を収納するための専用の段ボール箱を展示会場に下ろし、スタッフと共に収納後はその箱を収蔵室に戻し、次回展示の「世界のクリスマス展」の展示資料を会場に下ろすのが主な仕事です。しかし資料が少数の時は選別する苦労もなかったのですが、現在は収蔵資料数が展示数の倍以上にもなり、収納箱から選び出すのに大きな時間を取られます。嬉しい悲鳴ですが正直大変です。

日本の1960年頃のサンタのツリー飾り
今回も連日夜遅くまで作業が続きました。順調に進み、20日には西館、21日から全館をご覧いただける状態になり、27日(土)のオープンに先駆けてご覧いただいています。毎回、展示作業は尾崎学芸員を中心に行われますが、世界のクリスマス展は1985年から続く冬の特別展で、マンネリ化を防ぐために毎年切り口を変えてきました。今回のタイトルは「世界と日本のクリスマス」、始めて日本を大きく取り上げました。といってもスペース的には会場の1割にも満たないのですが、大正時代から昭和時代の児童書やサンタクロース、ツリー飾り(オーナメント)などの日本製品が並び、皆様から懐かしいとの声が寄せられそうです。

今回の見所は、初公開の日本の1950〜70年代のクリスマス飾りと昨年12月に館長室NO68でも紹介した1960年頃にアメリカで作られたガラス製のツリー飾りとロシア製の豪華なツリー飾りです。他にも現地で収集した資料や現在では入手不可能なツリー飾りの数々が展示されています。チェコのボヘミヤガラスのツリー飾り、ハンガリーの麦わら細工のツリー飾り、セルビア・モンテネグロのお菓子のツリー飾り、ドイツのドレスデンの麦わら細工のツリー飾りと貴族が愛用した錫製の豪華なツリー飾り、フインランドの木製ベルに美しい絵が描かれたツリー飾り、スペインの針金細工のツリー飾り、ポルトガルの鋼線細工入りのガラス玉のツリー飾り、タイの布細工のツリー飾り、エクアドルの藺草製のツリー飾りなど、各国の伝統工芸に基づく貴重な資料であり、その多彩さに感動されると思います。残念なのはこれらが世界中で中国製品に置き換わられ姿を消しているのです。私が資料収集のためにプラハやブタペストを訪ねたのは1999年です。既にプラハのマーケットで売られていたのは中国製品ばかりで、教えていただいた民芸店で伝統的な麦わら細工やお菓子のツリー飾りを入手しました。ブタペストでは中国製品は全く見かけず、麦わら細工などのツリー飾りを入手しました。しかし今春、ハンガリーから来館された方にお聞きすると、ブタペストのマーケットも残念ながら中国製品になったそうです。

1960年頃のガラス球(アメリカ) ツリー飾り(ロシア) お菓子のツリー飾り(セルビア・モンテネグロ)
針金細工のツリー飾り(スペイン) 藺草のツリー飾り(エクアドル) 錫製のツリー飾り(ドイツ)
21日のブルキナファソのミロゴ・ベノアさんの演奏会は、私は丸亀市立資料館での講演のために出かけて不在でした。約60名が参加され、飛び入りで太鼓を演奏される方や近所の子供たちがベノアさんの指導でダンスを踊るなどして盛り上がり、大盛況だったとの報告がありました。この26日はフランス・アルザスの博物館関係者をお迎えします。

NO76
国内外、遠方から千客万来です。                                  (2012年9月29日 井上 重義)

当館の東側に広がる田の稲刈りも終わりました。日毎に秋色が深まり、6号館への小道は可憐な小さな紅色と白色の水引草の花が咲き乱れて、さながら水引草の小道です。
水引草


このところ国内外の遠方から博物館関係者の来館が目立ちます。一昨日の27日は本土最北端の青森県八戸から市立八戸博物館の副館長と学芸員がご来館下さいました。用件は現在開催中の「世界の鳥のおもちゃ展」見学と資料の貸し出しについての相談でした。去る6月13日に文部科学省で開催された全国博物館長会議で私が事例発表したことは前回の「館長室から」でもお伝えしましたが、その会議に出席された同博物館館長が当館に興味を持たれてスタッフを派遣して下さったのです。前回の「館長室から」では発言内容などはお伝えしませんでしたが、同会議で「所蔵資料は大切に保存して後世に伝えることにあるが、その活用も大切で、当館は魅力あるコレクション群を多数所蔵しているので、所蔵資料が少ない施設にお貸しをして、他館の活性化のために協力できればと考えている」などと発表
(注)したのです。それがご縁で、来年夏には同館で世界の鳥関
即席でトーキングドラムを演奏するべノアさん 砂時計型ドラム”トーキング・ドラム”・タマ
ブルキナファソ/木・皮/1980年代
係の資料を特別展示する方向で話が進み始めました。

昨日は西アフリカの国、ブリキナファソからミュージシャンの来館がありました。国内のボランティア組織に招聘されて来日中のミロゴ べノアさんで、開催中の企画展「世界の太鼓と打楽器」に関心を持ち招聘者と共に来館くださったのです。母国の太鼓「トーキングドラム」が展示されていることに驚かれ、思わず大きな歓声をあげられました。そしてトーキングドラムを演奏くださいました。また6号館の「世界の鳥のおもちゃ」では母国のホロホロ鳥とも出会い、感動の連続でした。遠く離れた地の博物館で、母国の資料
6号館で展示中のホロホロ鳥
との思いがけない出合いに興奮気味でした。
べノアさんは10月末まで滞在されるとのことでしたので、当館での演奏をお願いしたところ10月21日(日)に演奏会
(注)を開催していただけることになりました。

大きな収穫は、ブリキナファソでも子供たちはコマやぶんぶんコマ(松風コマ)を手作りして遊んでいることが解ったことです。これまでアフリカにもコマやぶんぶんコマがあると確信して、専門業者やアフリカに関係のある皆様にお願いして探したのですが、手がかりはまったくありませんでした。べノアさんにコマの話をすると「コマは木の実に軸を刺して作り遊んだ」と懐かしそうに話してくださり、さらにぶんぶんコマを回して、このようなおもちゃで遊んだことはないかと聞くと、「ビール瓶のブリキのふたを平らにして穴を開け、糸を通して遊んだ」との答えが返ってきました。ビール瓶のふたを利用したぶんぶんコマはインドネシアなど東南アジアでは広範な地域で遊ばれており、同様のものが西アフリカでも遊ばれていたのです。

他にも10月になると、当館と20年近い交流があるドイツのバードキッシンゲン玩具博物館のヒラ・シュッツさんが当館を始めてご来館くださいます。さらにフランスからも、アルザス自然史博物館の関係者が来館されることになりました。去る7月にはチェコの国立博物館の学芸員が来館下さいましたし、海外の博物館との交流がさらに大きく進展するのではないかと思っています。

5号館(ランプの家)前での演奏


NO75
世界の鳥のおもちゃ展が始まりました                                  (2012年7月1日 井上 重義)

 
6号館への小道
合歓の花
梅雨の最中です。1号館の前にある臨時駐車場入り口の合歓の木の花が咲きました。桃の花のようなな華やかさはありませんが、うす桃色の可憐な花です。6号館への小道も新緑の木々に覆われて、緑のトンネルになりました。

その6号館で昨日からはじまったのが特別展「世界の鳥のおもちゃ」です。世界70カ国から蒐集した鳥のおもちゃ、800点を展示していますが、すべてが当館の所蔵資料です。6号館に足を踏み入れると展示ケース内だけではなく、天井からも鳥が吊されていて、室内は鳥・とり・トリでいっぱいです。世界各地の鳥の玩具や造形物がこれほどの内容で一堂に展示されることは大変珍しいと思います。ぜひ鳥の専門家の皆様にもご覧いただき、ご意見をお聞きしたいと考えています。

土のニワトリ(フィンランド)
世界各地の玩具は約35年前から蒐集してきました。手当たり次第ではなく、いくつかに的を絞り蒐集してきましたが、鳥もその一つでした。展示が完了するといつものことですが、よくぞこれだけのものが蒐集出来たという感動と共に、蒐集時の思い出がよみがえります。このフィンランドの鳥笛は1984年、私にとっては始めての海
木のフクロウ(ブラジル) 土のニワトリ(ブラジル)
外旅行だった北欧旅行でヘルシンキの日曜市で買い求めたものです。またブラジルの先住民の鳥の玩具の数々も、1995年の日本ブラジル修好百周年事業に要請されて当館の日本の郷土玩具をサンパウロ、クリチバ、リオ・デジャネイロの3都市で展示した際に現地の専門家の協力を得て蒐集し、約400点を私と尾崎学芸員が持ち帰ったのです。ブラジルは民芸大国とも言える国なのですが同国の民芸品は商業的なルートではわが国には輸入されておらず、当館もそれ以降は入手できていません。機会を得て貴重な資料が入手できたのです。

世界の水笛
鳥笛だけでも150点余り。ご覧いただくと胴部に水を入れて吹くと音が振動する鳥笛も各地にあり、それに糸と重りで鳥の頭が上下に動き、カタカタと餌をついばむ鳥の玩具も世界各地から約40点が展示され、興味津々の展示内容です。

この夏は、1号館の企画展「幻の神戸人形」も、6号館の特別展「世界の鳥のおもちゃ」も、国内では当館でないと見ることが出来ないユニークな展示です。展示期間が終了すれば今後数年間は収蔵庫での管理となりますのでこの機会にぜひご来館ください。

先月13日に文部科学省で開催された第19回全国博物館長会議での
事例発表ですが、無事終了することが出来ました。ただ出席者の大半が公立館の館長であり、私のような自分の考えがストレートに運営に反映できる個人立館の経験が参考になったかどうかはわかりませんが、博物館にとってはコレクション形成が大切なことやそれが全国から人を呼び寄せる力になっていることなどを発表しました。時間的な制約の恐れがありましたのでパワーポイントだけでなく、発表内容を文章化したものも配布しました。会議終了後の懇親会では何人もの公立館の館長さんからお声をかけていただきましたが、お聞きしたのは厳しい経費削減の状況やコレクションを充実したくとも出来ない現実でした。会議に参加して公立館がおかれている厳しい状況を認識させられました。



NO74
幻の神戸人形展が始まりました                                  (2012年6月9日 井上 重義)

当館の東に広がる田んぼの田植えも終わり、夜には蛍が飛び交う季節になりました。館長室と学芸室は3号館の遊びのコーナーの北側に隣接し、窓の外には水田が
雨にぬれて美しい額アジサイの花
(3号館の出口)
広がります。時としては、うぐいすの鳴き声も聞こえてのどかです。
 6号館前の休憩所に置かれたノートに、来館者の感想が記されていました。 
「雨の日の玩具博物館はステキでした。湿った空気、雨にぬれた庭の木々や草花。ほーとよみがえるひとときを有り難うございました。神戸人形、武者人形、お雛様も楽しく、美しく、立派で、有り難うございました。」
 「むかしは、木のおもちゃがたくさんあるということをしりました。見たことのあるおもちゃと見たことのないおもちゃがありました。持っているおもちゃと持っていないおもちゃがありました。はじめて見たにんぎょうや、はじめて見たおもちゃがたくさんありました。知らないことがいっぱいあったけど、それがここで学べてうれしかったです。とても楽しかったです。はくぶつかんはおもしろいところや、たのしいところが、いっぱいありました。でもちょっとこわいところもありました。昔のおもちゃで遊べてうれしかったです。またきたいなとおもいました。」
 来館者が「ワクワク」「ドキドキ」、心をときめかしてくださる博物館になりたいと努力してきたのですが、こんな声を知ると嬉しくなります。

野口百鬼堂の商標
本日から1号館では「幻の神戸人形展」が始まりました。明治中期から現代までの神戸人形が約350点も並びましたが、そのうち200点が明治中期から昭和初期の貴重品です。文字通り、幻の神戸人形たちが一堂に並びました。当館でもこれほどの質と量の神戸人形を公開す
野口百鬼堂のオートマタの西瓜喰い
るのは初めてであり、国内でこれほどの内容を持った神戸人形展が開催されたことは過去にはなかったと思います。この展覧会もきっと来館者の心をワクワクさせると思います。
 当館では2009年に、夏期企画展として「神戸人形と世界のカラクリ人形」を開催しましたが、その時の神戸人形の展示は総数で90点ほどでした。当館の神戸人形コレクションは長年の収集の努力もあって現在は収蔵数が約800点、国内では最高のコレクションになっています。収集は長年の努力とチャンスに恵まれた結果です。
 今回の見所は、神戸人形の創始者とされる野口百鬼堂の作品が50点も並び、百鬼堂の商標のついた作品が3点、それにネジを巻くと自動で動く、国内でも数点しか確認されていないという貴重品が2点も展示されていることです。

これまでも繰り返し申し上げてきましたが、博物館にとって大切なのは、資料を体系的に収集保存し、特色あるコレクションを構
野口百鬼堂の夕涼みのお化け
築することにあると考えて努力してきました。結果、当館でないと見ることが出来ないいくつものコレクション群の構築に成功し、それが全国から人を呼び寄せる力になっています。前回のちりめん細工展も遠く東北や関東からも大勢の皆様がご来館くださいました。確かに入館者数はこの10年間で半数近くに減少し昨年は年間入館者が2万人になりましたが、経済波及効果はそれに反比例して大きく高まっていることは確かです。
 入館者減については、博物館離れ、地域力の低下、交通アクセスの悪化、公立館との競合など、さまざまな要因が複合し、厳しい状況下にあります。

この13日(水)に東京の文部科学省講堂で平成24年度全国博物館長会議が開催され、全国から公立と私立の館長が400人ほど参加されます。基調講演の「これからの博物館」に続き、第1部が「災害と博物館」、第2部が「館長のリーダーシップ」で事例発表です。第2部では全国から2人の館長が選ばれ発表することになっていますが、その一人に私が選ばれ、文部科学省から依頼がありました。もう一人は三重県立博物館の布谷和夫館長で、長年、滋賀県立琵琶湖博物館学芸員として活躍されてきた方です。
 なぜ私が選ばれたのか不思議で、まさに青天の霹靂ですが、名誉なことだとお引き受けしました。当館のこれまでの活動やこれからの展望などについて約25分、パワーポイントを使って発表いたします。


NO73
伊藤三朗コレクション・中国民間玩具を受け入れました        (2012年4月26日 井上 重義)


当館の1号館周辺を美しく彩っていた八重桜の関山も落花盛んです。入り口付近はまさに花びらの絨緞を敷いたような雰囲気です。椿や桜の花の季節は終
美しい八重の山吹の花
わりましたが、周辺はみずみずしい新緑に包まれ、シャガの花や白と黄色の山吹の花が彩りを添えています。

さて館長室NO71でも報告しましたが、中国の民間玩具収集家として有名な名古屋市在住の伊藤三朗氏が収集されたコレクションを受け入れることになり、去る4月16日に当館に到着しました。伊藤氏はこの5月で80歳になられますが、定年後に北京中央民族大学と貴州大学に留学され、文化大革命(1966〜76)後の民間美術復興活動で再現された伝統的な人形や玩具を中国各地を旅行して収集されたほか、中国の民間美術学会の年次総会にも再三出席され、各地の研究者の協力を得て、土人形、土笛、木製玩具、布製の虎、人形、干支玩具、各地の仮面、凧など約1000点にも上る貴重な中国の民間玩具を収集されました。何よりもこのコレクションが貴重なのは、これらの資料が中国美術学会民間工芸美術委員会の協力のもとに産地、名称などが正確に記録されていることです。

整理中の尾崎学芸員
新中国誕生(1949年)後の文化・芸術方針によって、農民の文化を伝承するために長期にわたり民間美術等を収集し、村々の「群衆文化館」で大切に保管されていました。それが文化大革命中に紅衛兵の襲撃によって民間美術は破壊されたのです。そして文革の後の民間美術復興活動の第一線で活躍されたのが故李寸松先生でした。

当館の中国民間玩具コレクションは、24年前に受け入れた尾崎清次コレクションの中に1930年代の貴重な中国民間玩具約300点が含まれており、私自身も1993年に浙江省で開催された中国民間美術学会総会に参加するなどして中国の民間玩具を収集してきました。故・李寸松先生が来館された際にも数々の資料の寄贈を受けましたので、今回の寄贈品を合計すると新旧1600点を超える数量になり、国内屈指の中国民間玩具コレクションが構築されたといえそうです。
伊藤氏からの中国民間玩具の数々


文化大革命後に復活した民間玩具の多くは、2002年から始まった市場経済の影響によって、製作や技術の伝承は残念ながら厳しい状況におかれていると聞きます。伊藤氏も「歴史のほんの一瞬の僥倖のときに、貴重な民間玩具を日本に残すことができた」と話されています。同氏は当館にも何度か来館されたことがあり、昨年3月に発行された日本人形玩具学会機関誌『人形玩具研究NO21』に収集の中国民間玩具について報告されるとともに、収集品は当館に寄贈すると発表されていました。しかし膨大な数量の資料を直ちに受けいれることが出来ず、今回、仮の収蔵施設が確保できたことによって受け入れました。資料到着後、尾崎学芸員を中心に資料のチェックが行われていましたが完了しました。「学芸室からNO124」で詳しく報告されていますのでぜひご覧ください。これら資料は来年秋に特別展を開催、公開する予定です。
貴重な資料をお寄せ下さった伊藤氏の労をねぎらうとともに、心から感謝を申しあげます。

NO72
英語と中国語の案内パンフレットができました                        (2012年4月12日 井上 重義)


孔雀椿
白い利休梅や真っ赤な花桃の花が見ごろになりました。5号館前の中庭にはイカリソウやバイモユリが咲き、今年は椿の花の当たり年といえるのでしょうか、当館の庭の椿の多くが見事なほどに花をつけています。6号館の入り口近くの孔雀椿も、垂れた枝先に下向きの優雅な花をいっぱいつけました。一週間ほど前から、うぐいすの鳴き声も聞こえてのどかです。

さて念願だった外国語の案内パンフレットが完成しました。それも英語版だけではなく、中国語版と2ヶ国語です。当館は交通も決して便利と
中国語版表紙 英語版表紙
は言えない地にありますが、日本語の話せない外国人が再三来館され、外国語版の案内パンフレットの作成はかねてからの課題でした。それが文化庁のミュージアム活性化支援事業によって先月末に完成。外国語版の案内パンフレットはJR姫路駅の観光案内所などで配布しています。翻訳は英語版がアメリカ人、中国語は姫路獨協大学教授や中国人留学生の協力を得て翻訳をしました。また来館された外国人のために2号館・3号館・4号館に英語版の案内パネルを取り付けました。

私は収集当初から、郷土玩具がわが国が世界に誇れる文化財であると考えてきました。
それに雛人形やちりめん細工も、世界に誇ってよいものではないかと思い、隠れた文化財とも言える日本の子どもや女性の文化の素晴らしさを知っていただくためには、一人でも多くの外国人に当館のコレクションを見ていただく必要があると考えてきました。そして2001年には、当館HPにアメリカ人J.・ルヤック女史の翻訳で英語版をアップすることが出来ました。さらに今回、ミュージアム活性化支援事業によりHPにドイツ語、中国語、韓国語をアップすることが出来ました。これにより、さらに多くの外国の人たちに当館の存在を知っていただくことができればと願っています。

毎日というほどではありませんが、当館には日本語が話せない外国人が個人でJRを利用してよく来られます。HPの英語版をプリントして持ってこられる方が多いのですが、HP以外にも当館のことが何らかの形で外国人に情報として伝わっているのかもしれません。先週来られたアメリカ人は仕事で数年前に来日、神戸に住み、過去に当館に来て気に入り、来日された知人を案内して来て下さったことが解りました。1週間ほど前にもフランスから博物館に関わる方が来館され、これほどの玩具や人形を収蔵展示している館
英語版パンフレット内側
はフランスにはないと嬉しいお言葉を賜りました。これまでも何人もの外国人から、日本での心に残る博物館のひとつだと嬉しいお言葉をいただいています。
当館の周辺は開発もあまり進んでおらず、昭和中期のごく普通の農村風景が広がっています。当館の建物も土蔵造りの日本的な建物です。それも外国人に喜ばれる要因なのでしょうか。

また国内も、遠く全国各地から来館されるようになりました。先般もご夫婦で浜松から当館の雛人形展をご覧になるため来館くださった方と話をする機会があり、「すばらしい展示で、遠方から来た甲斐があった」と嬉しいお言葉をいただきました。9日は4人連れの女性が高松から雛人形展を見るために来たと話されましたので、どうしてこの
催しをお知りになったのですかとお尋ねすると、高松の県立博物
中国語版パンフレット内側
館で当館の雛展のチラシを手に入れたのでと大切にしまわれていたチラシを見せてくださいました。

当館が開館した37年前、私は信州の碌山美術館のように、展示品を見るために全国から来館されるそんな魅力的な博物館を夢に描きました。確かに入館者は多かった20年ほど前と比べると、半分以下の2万人ほどになりましたが、来館者は全国からと、質は大きく高まり、当館のコレクションを見るために全国から来館されるようになりました。

10日で特別展の「雛まつり」が終わり、昨日の休館日を利用して6号館西室の江戸期の雛人形を「明治から大正時代を中心にした端午の節句飾り」に入れ替えました。展示換えは予想以上に順調に進み、昨夜遅くに展示は完了しました。西室は端午の飾り、東室は雛の飾りと、今から100年も前に作られた豪華な端午と雛祭の飾りは来館者の感動を呼ぶものと思います。本日から6号館は通常通りにご覧いただいています。



NO71

貴重な資料が続々と当館に
                                                  (2012年3月29日 井上 重義)


サクランボが満開です。
桜の便りが聞かれる季節になりましたが、ひと足はやく、当館4号館2階北側の窓の外に枝が広がるサクランボが満開になりました。1年前の館長室NO62でもお知らせしましたが当館の庭にはこの季節、花桃、利休梅、八重桜など春の花が次々に咲き競い、4月
高知から団体でバスを仕立てて、
熱心に見学される来館者
末まで「花の宴」が始まります。特に今年は椿の花が見事です。椿は苗木から育てたのが大きく育ち、咲き競っています。本日、当館や周辺の椿の数を数えたところ100本を超え、その内の半数余りが花を付けています。20年余の歳月を経て椿の園が誕生しました。1号館前の玉の浦、岩根絞りが咲き始め、孔雀椿や月光などの名花はこれからです。

春休みに入り大勢の家族連れで賑わう毎日ですが、特に開催中の企画展「季節を彩るちりめん細工」を見学のた
め、遠方から団体でバスを仕立ててご来館くださる方が増えています。昨日は高知から3時間余りかけて来て下さいました。1週間前にも愛知県瀬戸市から団体でお越しになりました。そして皆様「本当に来てよかった」と喜んで下さいます。特別展の「雛まつり〜江戸と明治のお雛さま〜」も大好評です。豪華な明治時代の御殿飾り雛の数々に素晴らしいと賛辞の声が聞かれ、関東圏などの遠方の方も目立ちます。
昨年の12月1日に出版された日本ヴォーグ社の『ちりめん細工つるし飾りの基礎』は手工芸の世界でのベストセラーとも言える
大正時代の豪華な御殿飾り
売れ行きです。本日、5刷目の再版が決定したと嬉しい連絡がありました。「作り方が解りやすい」「見るだけでも楽しい」と嬉しいお言葉を再三いただきます。

「学芸室から」や「新収蔵品の紹介」で尾崎学芸員も報告していますが、このところ、思いがけない貴重な資料の受け入れが続きます。90年ほど前の源氏枠飾りと檜皮葺の御殿飾りのお雛様は、源氏枠飾りは大阪製と思われる高級品であり、檜皮葺の御殿飾りは大木平蔵(丸平)製の当時の最高級品です。ほかに江戸の「古今雛」の様式を京へ伝えた人形師として名高い玉翁の内裏雛を購入することが出来、今春、当館の雛人形コレクションは大きな進展を遂げました。
ただ、以前から申し上げていますように増え続ける資料で収蔵庫は完全にパンク状態です。頭を痛めていましたが、幸いにも転居され空き家になった近くの住宅を仮収蔵庫として確保できました。暫くは安心ですが、4月には中国の民間玩具収集家として著名な名古屋の伊藤三朗氏のコレクションを受け入れます。託された貴重な資料の数々をどのようにして後世に伝えるか、今後に大きな課題を抱えています。




NO70

展示品に感動の声・・・
企画展「季節を彩るちりめん細工」が始まりました

                                                  (2012年2月18日 井上 重義)

冬空に映える栴檀の実
日本海側各地から、例年にない大雪とのニュースが伝わります。幸い瀬戸内海側にある当地は雪が降ることがあっても、積もるのは年に1〜2回程度。それも2〜3cmほどで午後になれば消えてしまいます。ところが今冬は、雪が積もったことがないのです。
当館の前には栴檀(せんだん)の大木があります。鈴なりの白い丸い実が冬空に映えて美しく、「何の実ですか」とよく質問を受けます。6号館への小道にある椿も数本が咲き始めました。


先月17日夜からの6号館の展示換え作業は、膨大な数のクリスマス資料の撤収と雛の展示作業で大変になると予想していましたが作業は順調に進み、22日にはご覧いただけるまでになりました。展示作業は私も含めて6名で担当しますが全員が学芸員資格者です。いつものことながらスタッフの頑張りに頭が下がります。展示は西室が江戸時代の雛人形と道具、東室は明治時代の雛人形と道具と、100年以上もの歳月を経た雛人形や雛道具の数々がずらりと並び、見応え十分です。近年、雛巡りが町おこしと連動して盛んになり各地で雛人形展が開催されますが、江戸期や明治期の雛人形が解説付きで一堂に並ぶのは珍しいのではないでしょうか。
江戸時代の懐中物
明治期に作られた作品
続いて今月14日夜から15日の休館日を利用した1号館の「十二支の造形」から「季節を彩るちりめん細工」展への展示作業は、1号館が当館の受付がある入り口でもあるため、休館日以外は閉館できないので夜遅くまでハードな作業が続き、16日にはご覧いただける状態になりました。
「季節を彩るちりめん細工」は正式には2月25日がオープンですが、入り口という関係から16日からご覧いただいています。早速に来館者の皆様から感動の言葉が寄せられましたが、展示作業に関わった私も大きな感動と感慨につつまれました。実はちりめん細工の復興活動は26年前の昭和61年春の、この1号館での「明治のお細工物と郷土雛展」から始まったのです。同展をご覧になり、ちりめん細工に関心を寄せられた皆様にお集まりいただき、所蔵の『裁縫おさいくもの』(明治42年刊)をもとに技術伝承のための勉強会を始め、それが今日に至る思いがけない大きな発展につながった、その歩みをたどる展示にもなったからです。

その後、皆様の協力を得て「手工芸の好きな方にちりめん細工のすばらしさや作り方を広めたい」と、私の監修でちりちりめん細工関連の本を平成4年にマコー社から『ちりめん遊び』を出版して以来、この20年間で合計12冊にもなりました。NHK出版が2冊、婦人生活社が1冊、雄鶏社が5冊、日本ヴォーグ社が3冊です。初めの頃は個々の作品の作り方が中心でしたが、ちりめん細工は小さな作品が多いため、見せ方や飾り方が大切だと考え、12年前に出版した『四季を彩るちりめん細工』以来、一文字棒や十文字棒の飾り、輪下げ、傘飾り、一連飾り、2連飾りなどさまざまな飾り方を制作者と共に考えて発表してきました。それが今回一堂に並び、飾り方の集大成ともいえる見応えのある楽しい展示になりました。

展示資料は当館が長年収集してきたものであり、「季節を彩るちりめん細工」も「雛まつり〜江戸と明治のお雛さま」も、当館でないと見れない貴重な資料が沢山展示されています。早春の一日、どうぞお誘いあってお越し下さい。




1号館の囲炉裏端に並んだ傘飾りも 冬のつるし飾りのいろいろ

NO69

全国凧あげ祭りが終わり、
明日から雛まつり展の展示作業です

                                                  (2012年1月16日 井上 重義)


厳しい寒さが続きますが、当館入り口のロウバイの花が咲き始めました。
 新年早々の8日に第38回全国凧あげ祭りを開催しましたが、その対応に追われて新年のご挨拶が今になりました。本年もよろしくお願い申し上げます。
凧あげ祭り前夜祭での
和やかな交歓風景
凧あげ祭り会場での準備風景

第38回全国凧あげ祭りは、今回も当館の呼びかけに応えて凧愛好家が、新潟、富山、石川、山梨、奈良、京都、大阪、岡山、山口、徳島、
香川、鹿児島など、遠方からも大勢ご参加くださり、地元兵庫勢と合わせると約40グループ400名。来場者も1万人を超えて賑わいました。当日は青森の津軽凧から南は沖縄の八角凧まで日本各地のさまざまな伝統凧が揚がり、大空を舞台にした凧の競演に大きな拍手が起こりました。
 この全国凧あげ祭りは、当館が開館した翌年の昭和50年の新春から館の前の田んぼで、消えつつあった日本各地の伝統凧のすばらしさに光を当てようと凧揚げをしたのが始まりです。回を重ねるごとに参加者が増えて会場が狭くなり、昭和62年から姫路市の協力をえて会場を姫路公園競馬場に移して開催してきました。しかし防災用の貯水池工事が始まるため、この場所での開催は今回で最後です。姫路の市街地には他にこれほどの場所はなく、全国凧あげ祭りは今回で幕を閉じる予定です。私自身35歳から始め、38年もの歳月を積み重ねてきた行事だけに感慨無量で、恒例の凧揚げの実況放送も最後は声が詰まりました。
 長年にわたりご支援ご協力を下さいました皆様に、心から厚くお礼を申し上げる次第です。
                                                    
博物館を取り巻く環境は厳しく、当館の入館者数も年間2万人を割り込むまでになりました。しかし博物館にとって大切な、資料収集、調査研究、教育活動といった博物館の基本活動を忠実に守り実践してきた当館に対して、評価が高まってきたように感じます。昨年秋には九州大学の大学院生6名が担当教官と共にはるばる博多から来館され、当館の豊富な収蔵品と技術普及や教育活動への取り組みに感動したと嬉しいお言葉をいただきました。さらに博物館学専攻の学生たちが教官とともに来館されるケースが増え、私自身にも神戸の大学から博物館学専攻の学生に、当館についての講義をと依頼がきました。
 また来月初旬には奈良女子大学付属小学校4年生の生徒が先生と一緒におもちゃの学習のために、はるばる奈良からこられます。
昨年は平凡社から『ふるさと玩具図鑑』、日本ヴォーグ社から『ちりめん細工のつるし飾りの基礎』と2冊の本を出版しました。嬉しかったのは『ふるさと玩具図鑑』を読んだと長崎と岐阜からわざわざご来館くださったことです。また『つるし飾りの基礎』も早々に再版が決定しました。
 本年も文溪堂の「伝承遊びシリーズ」で、当館コレクションをベースにした『お面』の本が出版予定です。さらに昨年の7月18日から、週刊の『全国商工新聞』に毎週、「おもちゃの世界・その歴史と文化」と題して、所蔵資料を基に尾崎学芸員と私が交互で、いろんな角度からおもちゃについて執筆していますが、それも終了後出版したいとの申し出を受けました。

明日17日夜から、6号館での特別展『雛まつり〜江戸と明治のお雛さま〜』の展示作業が始まります。クリスマス展の撤収と雛人形展の展示作業は数量も多く大変ですが、江戸期と明治期に絞った「雛人形展」は初公開の資料もあり、格調高い展示は大きな反響を呼ぶものと期待しています。


初公開の大木平蔵製の花車(明治時代) 初公開の弘化3(1846)年製の古今雛


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