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NO96
文化の日に寄せて・・・ 博物館の使命とは
                                         (2014年11月3日  館長 井上 重義)
今日は文化の日です。評価されずに消えようとする子供に関わる文化遺産を収集し、保存し後世に伝えることを使命に、当館が開館してこの11月10日
羽子板は、江戸期から昭和まで約400点を収集。
国内第1級のコレクションを構築する。
で満40年を迎えます。これまでも何度も繰り返し申し上げてきましたが、文化遺産を守るために設立された筈の博物館の多くが集客装置化していることは、将来に大きな悔いを残すと私は思います。
 2007年5月、日本学術会議は「博物館の危機をのりこえるために」との声明を発表されました。私は繰り返して声明を読み、博物館のあるべき姿を追い求めてきました。「常日頃から収蔵品を集め、充実したコレクションを形成しておくことが重要である。」「充実した収蔵品コレクションを有する博物館は、活動において様々な可能性を獲得できる。独自の収蔵品による展示自体が魅力的であれば、多くの人々に来館してもらえるだけでなく、遠方からの来館者も期待できる。また、優れた収蔵品は他の館からの貸し出しの対象となる。・・・そのためには収蔵品収集のための中・長期的展望と戦略を立てておくことが肝要である。」との言葉を実践し、大きな成果を上げることができました。ところが残念ながら現在、収集活動に資金を投入し、目的意識を持った収集活動を行っている博物館は少数なのです。
記念誌表紙
 当館は開館以来、コレクションの構築にこだわり、国内では第一級のさまざまなコレクション群の構築に成功しましたが、それが輝き始めました。来館者からも、「たくさんの懐かしい資料や珍しい物を拝見して感動しました」とのお言葉を再三いただきます。

開館40周年記念誌では当館の収集活動について私は、「この10年を振り返って」のなかで、コレクションの構築にこだわるとして書き、コレクションが輝くとして纏めています。また尾崎学芸員は日本玩具博物館・収集活動の記録として、海外の資料の収集状況について詳しく述べ、「消費財があふれかえる社会だからこそ、民族の風格に満ちた本物をきちんと紹介していくことが、物を保存し、物を通して次世代に文化を伝える博物館が果たすべき大きな役割であると私たちは考えています。質量と体積を持った資料は、博物館にとって、それが無くては意味をなさないほどに大切ですが、資料がひきつれている文化こそ、後生に伝えていくべき遺産に違いありません」とまとめています。
さらに記念誌では当館の活動だけでなく、今回も当館を温かく見守って下さっている大勢の先生方から温かい心のこもったメッセージの掲載や、開館30周年と20周年の主な記事を抜粋して掲載し、40年間の活動についてまとめた資料になっています。記念誌はB5版の76頁で、この10年間の記録の頁の写真はカラーにしました。2000部印刷し、1日に納入されました。
「企画展の記録V」はB5判で356頁。500部の発行です。写真は全てカラー印刷です。印刷や製本に時間がかかり、納入は10日を過ぎるようです。
記念誌は定価400円(税込)、企画展の記録集Vは1500円(税込)とさせていただきました。送料は記念誌が100円、記録集が150円です。当館あてにお申込み下されば振替用紙同封でお送りします。






NO95
世界クリスマス紀行が始まりました
                                           (2014年10月30日  館長 井上 重義)
秋も深まり、入り口の白い可憐なのじ菊の花が咲き始めました。間もなく11月です。仕事に追われていたこともあり、この館長室からの執筆が3カ月
のじ菊
余りもストップしていました。何人かから、「館長さんはお元気ですか」とご心配をいただきました。元気ですが、去る14日で6号館の「世界の国の人形展」が終わり、同日の夜から撤収作業が始まりました。私はその前日の13日より、6号館2階の収蔵庫から世界の人形を収める専用の段ボール箱を取り出す作業にかかりました。実は収蔵庫が満杯状態で通路にまで箱が積み上がり、中から目的の箱を取り出す作業が大変なのです。6号館2階東の講座室は収蔵庫から探し出した箱が項目ごとに積み上がり、ご覧になった方はその量の多さに驚かれると思います。「世界の国の人形」は1000体余り、5人のスタッフが2日間がかりで連日夜遅くまで作業にかかり、箱に収めました。それを収蔵庫に戻す作業が私の仕事です。それが終われば、次は世界のクリスマス関係の資料を出す作業とクリスマスツリーの組み立て作業です。クリスマス関係の資料箱は約90箱。そして箱を収蔵庫に戻すのですが、それが終わったのが20日。肉体労働が続きました。

毎回、世界のクリスマス展は尾崎学芸員の構想で展示作業が始まります。終了すると私は今回の展示が最高だと言ってスタッフに笑われますが、言葉通りの素晴らしい展示です。一つは毎回、新収蔵品が展示されるのと展示能力の向上で
ヒンメリ(フィンランド)
す。作品を単に一列に並べるのではなく、17ある枠が、ひと枠ごとに物語性のある展示になっているのです。例えば東欧のものはガラスや土製品ものが集まったコーナー、麦わらやきびがら細工や木の実の集まったコーナーに分かれています。

それに展示ケース内だけでなく、6号館の天井からもクリスマスに因んだいろいろな飾りが吊り下げられ、部屋の雰囲気を盛り上げています。西の部屋はメキシコのピニャータ、デンマークの切り紙細工の飾り、ベルギーのレースの窓飾り、東の部屋は麦わら細工のハンガリーのキャンドルスタンド、部屋に吊るして飾ると清らかな空気で満たされるというフインランドの「ヒンメリ」がいくつも吊るされています。
麦わらの天使(メキシコ)

新収蔵品はギリシャでクリスマスに飾られる模型の帆船の飾りです。昨年のクリスマス展をご覧になったギリシャから来館された方がギリシャではクリスマスに船の模型にライトを付けて飾る風習があると話され、珍しい風習ですねと申し上げたところ、わざわざギリシャから今春に届けて下さったのです。高さが65cm、巾70cmあります。それに昨年暮れ、私はクリスマスの資料を収集するため、クリスマスツリー発祥の地とされる南フランスのストラスブールやコルマールなどと、隣接するドイツのエスリンゲンやシュトゥットガルトに出かけました。ガラス玉、麦わら、松笠、蜜ろう細工などの貴重なものを手に入れることができました。残念ながら麦わらのオーナメントを売る店は少なく、驚いたのはシュトゥットガルトの露店で売られていた小型のオーナメントが中国製でした。ただ大型のものは現地製と分かり、収集することができました。またドイツのマーケットでロシアの白樺のツリーの飾りや、メキシコの麦わらの天使を売る露店があり、貴重なものが入手できました。このような飾りは日本に輸入されることはなく、貴重な資料が入手できましたので、今回の展示で披露しています。

展示準備が終了後、11月10日が開館満40年になることから、記念誌の編集に追われていました。記念誌は開館20年と開館30年にも出版しましたが、今回はその2冊とこの10年間の記録集を合本したもので、当館の40年間の歩みと、当館を温かく見守りご支援いただいている諸先生方のお言葉で構成されています。この10年間の記録の写真はカラー印刷にしました。美しくよかったと思います。またこの10年間の企画展を集大成した企画展の記録V(347頁)も思い切ってカラー写真にしました11月10日前後の発行となります。次回の館長室でお知らせいたします。


ガラス飾り(ドイツ) お菓子のツリー飾り(フランス) ガラスのツリー飾り(フランス) 白樺のツリー飾り(ロシア)



NO94
珍しい日本と世界の人形が一堂に
                                           (2014年7月9日  館長 井上 重義)
夏の到来を告げるムクゲの花
梅雨のさなかです。各地から豪雨の被害も聞かれますが、大きな被害がないことを心から願っています。
当館の東側の水田は日毎に稲が成長し、庭には可愛いオハグロトンボが飛び交い始めました。館の周辺には色とりどりのムクゲの花が咲き始め、夏の到来を告げています。


当館の開館40周年を記念する、夏の企画展「日本の人形遊び」と特別展「世界の国の人形」が1号館と6号館で始まりました。いずれもが収蔵資料による、人形をテーマにした展示です。その内容に来館者から感動の声が上がっています。
私自身、仕事の合間にできるだけ館内に入り、来館者と言葉を交わしたり、遊びのコーナでは子供たちにコマの回し方などを教えています。昨日来館された方は東京と名古屋から。いずれもがちりめん細工の愛好者でした。館内の雰囲気、展示品の多さ、すばらしい内容に、「来てよかった」と嬉しいお言葉を賜りました。


1号館で開催中の「日本の人形遊び」では、駄菓子屋で売られた懐かしい着せ替え遊び玩具のコーナがあります。A4ほどの大きさの
美智子様着せ替え人形
紙に人形と衣装が着色印刷され、それを切り抜いて「きせかえごっこ」をして遊んだ、女の子用の玩具です。「水の江瀧子と山口淑子のきせかえ」「美智子さまきせかえ」「メイコきせかえ」など12点が展示されています。「美智子さまきせかえ」は、1959年に現在の美智子皇后が結婚された後に流行りました。皇后さまが着せ替え人形になっているのに驚かされますが、当時は皇后さまが子供たちにも親しまれてきたことがよく解ります。
 駄菓子屋の玩具は収集家が少ないことに気付き、1970年頃から収集を始めたのです。時期に恵まれ、今ではこのような資料の収集は不可能に近いです。
 他にも「文化人形」「くるみちゃんのミルク人形」「リカちゃん」などに、懐かしいと熱心にご覧になる方が多いです。姉さま人形や首人形コーナに展示
くるみちゃんのミルクのみ人形
している昭和初期作のものは、遺るものが少ない貴重な資料です。尾崎清次コレクションからで、普段は収蔵していますので久しぶりの公開になりました。


6号館の「世界の国の人形」展は、初めてご覧になる珍しい世界各国の人形の数々に皆さま驚かれています。世界101カ国から、展示総数は1050点にも上ります。世界の人形は2007年以来、7年ぶりの公開です。前回展示したものも多いのですが、新しい展示品も多く、その量と質に感動されています。世界の人形は他に、4号館2階の世界の玩具の常設展示コーナにも約500点が展示されており、合計すると総数で1500点もの世界各地の人形がご覧いただけます。
この世界の人形も収集を始めた時期がよかったのです。1977年からですが、交流のある海外の博物館からの寄贈や、海外にも何度も出かけて収集しました。さらには国内で海外の民芸品を輸入する多くの業者の協力を得て、貴重な資料の数々が入手できたのです。インド、インドネシア、ロシア(ソ連邦)、メキシコ、ペルー、アフリカ諸国など。しかし昨年11月の館長室NO88にも書きましたが、その業者の多くがここ数年来廃業され、入手不可能になったものが多いのです。それに現地でも作られなくなったものが多く、本当に収集時期に恵まれました。
私は他の博物館が収集対象にしていないものに的を絞って集めてきましたが、それが大きく輝き始めました。世界各国の観光土産品ではなく、地域の人々に愛されてきた人形たちが、これほどの数量、一堂に並ぶのは国内では例がないと思います。
ぜひこの機会に、日本と世界各地の珍しい人形たちとお出合い下さい。スタッフ一同、お待ち申し上げています。

 業者の経由で入手できた貴重な人形たち
スマトラ島の土偶(インドネシア) 木の皮の人形(トンガ) ドゥイムコボの土偶
(ロシア)
ウエマナ・サンタ祭の人形
(メキシコ)
チャンカイの土偶(ペルー)


NO93
「国立民族学博物館と神戸新聞」二つの嬉しいニュース
                                           (2014年5月19日  館長 井上 重義)


エゴの花
新緑の美しい季節になりました。椿の季節は終わりましたが、4号館の入り口にあるエゴの花が満開になりました。小枝の先端に白い可愛い小さな花が房のように咲き、風に揺れています。またすぐ傍のアメリカシャクナゲとも呼ばれるカルミアの花も満開
カルミアの花
です。金平糖の様なつぼみと五角形の可愛い花が皆様に喜ばれています。

1号館の企画展「ちりめん細工とつるし飾り」。会期はいよいよ残すところ9日となりましたが、予想を超える人気です。連日、遠方からの来館者をお迎えしていますが、先日は仙台から、昨日も奈良県と広島県からわざわざご来館下さり、来てよかったと嬉しいお言葉を賜りました。正直、ちりめん細工が手芸の世界で、大きな波を起こしていることを実感しています。


先日、吹田市の国立民族学博物館から、思いがけない依頼がありました。同館で企画展「みんぱくおもちゃ博覧会」を開催されるにあたり、期間中、当館との入館料の相互割引ができないかとの打診でした。喜んで協力すると返事したところ、実現したのです。展覧会は今月15日から8月5日までですが、両館の入館券や友の会の会員証を提示すれば8月31日まで、入館料の団体割引が適用されます。国立民族学博物館は一般420円が350円、高・大学生250円が200円、小・中学生110円が90円になります。


民博でおもちゃ博覧会が開催されるのは、昨年度、府立大型児童館ビッグバン(堺市)が所蔵していた「時代玩具コレクション」が大阪府から同館に譲渡された記念展です。同コレクションは私も面識がある骨董商の多田敏捷氏が1975年代から収集されたものです。1992年には京都書院から『おもちゃ博物館』として図鑑(24巻)も刊行されています。大阪府立ビッグバンが1999年の竣工時に、目玉的なコレクションとして府が同氏から数億円で購入した資料でした。江戸期から昭和期までの様々な玩具が収蔵されており約1万4千件総数6万点です。本展では、ブリキ製玩具、盤上玩具、マスコミ玩具、カード玩具と4つのコーナーに分けて展示されています。期間中ぜひお出かけください。

神戸新聞の夕刊1面下段に、月・火・水・木・金の週5日、随想が掲載されています。各界で活躍されている11名がそれぞれの立場で660字ほどの文章を書かれるのですが、思いがけず、私に声がかかりました。夕刊の届かない当地では翌日の朝刊の4頁の下段に掲載され、時々読んでいましたが、夕刊では1面と聞き驚きました。どんなことを書けばよいのかと迷い、担当者と連絡を取ったところ、玩具博物館のことなど自由に書いていただければよろしいとの返事で引き受けました。
 毎月2回、5月から8月まで8回掲載されます。その第1回目が5月8日(木)の夕刊に掲載されました。「人生の不思議」と題して、高校生時代はハト少年だったことなどを書いたのですが、反響の大きさに驚きました。何人もの方から次回はいつですかと問い合わせもありました。次回は5月23日(金)、「人との出会い」で橋本武先生のこと、6月9日(月)は「玩具博物館を造る」です。以下、6月24日(火)、7月9日(水)、25日(金)、8月11日(月)、26日(火)と続きます。当館のコレクションのこと、ちりめん細工のこと、博物館の課題などについて書かせていただく予定です。読者は兵庫地域と限られますが、地元の大勢の皆様に当館の現状や私の考えなどを知っていただける、絶好の機会だと喜んでいます。




NO92
春爛漫の季節。「端午の節句」展が始まりました。
                                           (2014年4月22日  館長 井上 重義)


当館入り口の前にある八重桜(関山)が落花盛んです。入り口周辺はまさに花の絨毯といえる状況になりました。当館周辺の桜は遅咲きが多く、2号館
入口は花のじゅうたん
と6号館前の八重の普賢象は今が満開です。
館内の庭の椿も遅咲きが色とりどりに美しい花を咲かせています。先般、奈良からお越しになった椿の愛好家から、ここは「椿園ですね」と嬉しいお言葉をいただきました。確かに専門家の目から見ても珍しい椿が多いようです。当館の庭に椿が多いのは館長室NO62(2011年4月)でも紹介していますが、その多くは市内の勝原にお住まいだった椿愛好家の小林稔さんが苗木を沢山提供下さったからです。それが20数年の歳月を経て大きく成長したのです。昨日、本数を数えると館内の庭と周辺に100本以上もの椿の木が植わっていました。小林さんは一昨年もお越しになり、珍しい椿の苗木を下さいましたが、奥様からのお便りで昨年他界されたことを知りました。長年にわたり当館を支えて下さった方がまたおひとり亡くなられ、本当に残念です。

庭に咲く椿の花

6号館西室での「端午の節句〜京阪地方の武者飾り」が始まりました。今年は京都や大阪で江戸末期から昭和初期にかけて作られた武者人形や甲冑飾
稲屋友七の幕末頃の甲冑飾り
りが中心ですが、来歴の分かったものが沢山展示され、驚かれるのではないでしょうか。例えば、京都の大木平蔵の武者人形・甲冑飾り・座敷飾り、田中弥兵衛の応神天皇と武内宿禰。大阪の心斎橋にあった人形細工所稲屋友七の幕末頃の甲冑飾り、安政5年創業の谷本要助の甲冑飾り、それに初公開は京都製の毛植え虎です。
東室は引き続き雛人形の展示です。豪華な大木平蔵製の桧皮葺御殿や東京製の大正から昭和初期の段飾りをご覧いただけます。格調ある端午の節句飾りと共に、豪華な雛人形が一堂に並び、明治時代から昭和初期に飾られた、贅を尽くした雛人形や格調高い端午の飾りの見事な作品群に感動されると思います。

「ちりめん細工とつるし飾り」展も好評です。2年前に続き今回も、はるばる高知からバスで約20名がご来館くださいました。さらに先日、長野からバスが到着。お話を聞くと中野市からちりめん細工展を目的に来館された愛好家の皆様(25名)でした。朝の6時に出発、食事も車内で済ませ、7時間かけて当館にお越し下さったのです。遠くから来た甲斐があったと喜んでお帰りになりました。他にも個人で、仙台、福島、東京、横浜、山口、長崎・・・と、全国から来館くださり、ちりめん細工の愛好家にとって当館は、一度は訪ねてみたいメッカ的な存在になりつつあるようです。
感想ノートから

入館者はこのところ減少し続けていましたが、3月は昨年を上回りました。地元紙の神戸新聞が当館の開館40周年に因んだ記事を何度も大きくカラーページで取り上げて下さったことも影響していると思います。先月16日(日)は久しぶりに300人近い入館者でにぎわいました。それに来館者層が大きく変化していることを感じます。確かに多い時と比べると入館者数は6万人が2万人と減少しましたが、交通至便とは言えない当館に、外国人が再三来館され、国内も全国各地から来館下さいます。
 6号館南の休憩所に置いている感想ノートには来館者の声が記されています。
「何度訪れても楽しく懐かしいところです。来てよかったです。館長さんがこつこつ集められ、私たちに公開して下さって、この館をずっと続けてこられていることに頭が下がります。東大阪より」。「東京清瀬市からやって来ました。御殿雛を見るためだけに夜行バスできました。とても素晴らしかったです」。「京都から来ました。2回目です。今回は喜ぶだろうと思い、母と姉と3人できました。お花も緑もきれいで、とても気持ちがいいです。ゆっくり長居しました」
 そんな皆さんの嬉しいお言葉に、元気をもらっています。





NO91
「ちりめん細工とつるし飾り展」―華やかさに感動の声。
                                           (2014年2月28日  館長 井上 重義)
マンサクの花
 
ユキワリイチゲの花 

当館の庭に咲く、蝋梅やマンサクの木の黄色い花が満開になり、地面には福寿草やユキワリイチゲの花が咲きました。ユキワリイチゲは雪が消えたばかりの地に咲くことから「雪割一華」と呼ばれ、早春の花として有名です。その花の小さな群落が当館の庭には2か所あり、陽の光が当たると薄紫色の可憐な花が咲きます。椿の花も次々に咲き始めて、当館の庭は早春の息吹でいっぱいです。
庭にある5号館のランプの家では6号館の特別展「雛まつり」に併せて昭和初期の雛人形が3組飾られ、ちりめん細工の傘飾りなどのつるし飾りも展示されて華やかになりました。


1号館での企画展「ちりめん細工とつるし飾り」も始まり、企画展と特別展(6号館)が出揃いました。ちりめん細工の特別展示はほぼ2年毎の開催ですが、今回の展示では1月中旬に日本ヴォーグ社から出版された『ちりめん細工つるし飾りの基礎2』に掲載された作品を中心に、これまでの出版物に掲載された作品の中から、春・夏・秋・冬と季節毎にまとめて展示しています。本当に華やかで楽しい展示になりました。ご覧になった皆様から、「素晴らしい展示ですね」と感動のお
蓮の花のつるし飾り
言葉が再三寄せられています。
その『ちりめん細工つるし飾りの基礎2』ですが1月中旬に15,000部発行されたのが、1カ月で増刷になりました。また『ちりめん細工つるし飾りの基礎』も増刷が決まり、10版と版を重ねています。ちりめん細工の作り方を易しく解説した2冊の本は、ちりめん細工の入門書として大きな役割を果たし、愛好者を広げています。

ちりめん細工のつるし飾りと言えば、雛まつりの時に飾るものといった認識が強いのですが、ちりめん細工には四季折々の花など季節感あふれる作品が多いため、それらを吊るして飾る作品の制作に作者と共に取り組んできました。今回の『ちりめん細工つるし飾りの基礎2』でも季節感のある作品が数多く発表されています。蓮の花3点を吊るして飾る作品があり、読者の方からお盆にお仏壇のそばに飾りたいと制作中ですと嬉しいお言葉をいただきました。秋には栗と柿を吊るした飾り、冬にはおめでたい新春を祝う飾りなど、本に掲載された実物作品が皆様をお待ちしています。

6号館の雛まつり展も好評で皆様に喜ばれていますが、去る13日には東京の目黒雅叙園の企画担当の方4名がご来館下さいました。雅叙園には山腹の傾斜を生かして造られた『百段階段』があり、階段廊下に接して日本画で彩られた豪華絢爛な7つの部屋があります。2010年からその部屋を利用して雛人形を所蔵する日本各地の施設から雛人形を借り、「雛の晴れ舞台」と題して雛まつり展が開催されています。これまでに東北の山形地方、京阪地方、越後・信州・栃木地方と続き、今年は「九州ひな紀行」で、1月24日〜3月3日まで九州各地に伝わる雛人形が一堂に展示されています。期間中は例年6万人もの来場者があり、現在では東京を代表する雛まつり展として有名です。
来年度は山陽路のひな紀行がテーマです。そのため当館に雛人形の貸し出し依頼があり、展示品の見学と撮影に来られたのです。御殿飾り、享保雛、江戸製の古今雛、昭和初期に東京の百貨店で売られた段飾り雛などが東京の「雛の晴れ舞台」に飾られることになりました。
それに合わせて来年度の当館の雛まつり展は、西室が京都と大阪で江戸時代から昭和初期に作られた雛人形、東室が全国各地の押し絵雛や変わり雛などになります。初公開の雛人形も多く、当館の雛人形コレクションの層の厚さに驚かれると思います。1年先の話ですが、東京と当館の2会場での雛まつり展をご期待下さい。


 ←目黒雅叙園の和室
来年、初公開の秋田市で飾られていた京都製古今雛(幕末から明治初期)





NO90
特別展「雛まつり」が始まりました
                                (2014年1月30日  館長 井上 重義)
6号館で恒例の春の特別展「雛まつり」が始まりました。膨大な雛人形関係の資料を所蔵する当館では資料の全てを一堂に展示することは不可能であり、毎年切り口を変えて展示しています。
初公開の京雛の雅楽の五人囃子
 今年のテーマは「江戸の雛・京阪の雛」です。現在では江戸製の雛とか、京阪製の雛といっても、その違いについて関心がもたれることは少ないのですが、江戸時代からの雛人形を所蔵する当館では早くからその違いに着目し、江戸の雛と京阪(京都製と大阪製)の雛に焦点を当てた特別展ができないものかと考えてきました。それが今回、実現しました。近年、全国各地で雛人形展が開催されるようになりましたが、このような切り口での特別展は例がないと思います。
 展示構成は尾崎学芸員の担当です。今回は6号館の西室では江戸から明治時代の雛人形が江戸型と京阪型とに対比して展示され、東室には明治末期から昭和初期にかけて京都や大阪で作られた御殿飾りと東京の百貨店などで売られた段飾りがずらりと並びました。また「今月のおもちゃ」では尾崎学芸員が古今雛の江戸型と京阪型について説明していますので参考にしてください。
初公開の高島屋の内裏雛(昭和初期


展示準備は21日の夕刻から始まりました。私の主な仕事は、6号館2階の収蔵室から撤収するクリスマス関係の収納箱を取り出し、撤収作業が終わった資料箱を6号館2階の元の場所に戻す作業です。撤収と展示にかかわる作業は5名のスタッフで行いますが、収蔵室からの資料の搬出と収納は力仕事だけに私の担当です。しかし増え続ける資料で収蔵庫は満杯状態。通路に置かれた資料を運び出すことから始まり、展示資料を膨大な資料の中から選び出す作業が大変です。それだけに目的の資料が見つかった時の喜びは大きいです。作業は順調に進み25日には西室を公開、26日午後には東室も公開することができました。今回も連日夜遅くまで展示作業に頑張ってくれたスタッフに感謝です。ただ私は雛人形の収蔵箱を収蔵庫に戻す大変な作業が残り、完了したのは27日でした。
 展示替え毎に「今回の展示が最高ですね」と言ってスタッフから笑われるのですが、展示は〈一章〉江戸時代のお雛さま、〈二章〉明治時代のお雛さま、〈三章〉雛飾りのいろいろ(御殿飾り・源氏枠飾り・段飾り)と章毎に見やすく展示され、回を重ねるごとに展示内容と手法
甘夏の実が下がる6号館への小道
は確実に向上しています。

26日午後から6号館全部をご覧いただける様になったのですが会場に居ると、入館者の中年の男性の方から「この博物館の方ですか」と声がかり「ハイ」と答えると、「私は長年、大阪の藤井寺市の佐藤禎三邸の雛人形展の手伝いをしており、各地の雛人形展を見てきましたがこんな素晴らしい雛展は初めてです」と嬉しいお言葉をいただきました。
 今回の展示では初公開の昭和初期の京雛の雅楽の五人囃や高島屋の雛段飾り、それに数年ぶりの公開である東京松屋の雛段飾りなど、興味津々の雛飾りが並んでいます。
 6号館への小道は椿の花も咲き始め、頭上には甘夏の大きな実がぶら下がっています。早春の一日、雛まつり展でお楽しみください。








NO89
開館40周年を迎えて
                                (2014年1月1日  館長 井上 重義)


新年あけましておめでとうございます。寒い季節になりましたのに、当館の入り口の紅白の椿が新春を祝うかのよう
開館当初の外観
に咲き始めました。
当館は今年、開館40周年を迎えました。1974年11月10日に新築した自宅の一部を展示場に、わずか47uでスタートしたのです。それが思いがけない大発展を遂げ、現在、施設は土蔵造りの6棟700uです。開館後、収蔵資料の増加にともなって次々に施設を増築し、1976年に現1号館(76u)、77年には300余名のカンパを基に現5号館(ランプの家)、79年に現4号館(143u)、87年には私の退職金を基に現3号館(95u)、89年に現6号館(180u)、92年には
開館40周年チラシ表
 
開館40周年チラシ裏 
現2号館を拡張すると共に道路側を改修して、現在の様な外観になりました。
資金力もない一個人が施設を拡張できたのは、土地を借用でき、入館者数の増加と銀行から低利で融資を受けることができたからです。開館後、入館者数は増え続けて92〜96年ごろには年間入館者数が平均して6万人を超えました。それに兵庫銀行(現みなと銀行)が当館の趣旨をご理解くださり、低利で建築資金を融資くださったことなどから施設を拡張することができたのです。その他にも大勢の皆様のご支援があったからですが、本当にここまで来れたのが夢のようです。
開館した当時、私は日本一といわれる玩具博物館になりたいとの夢を持ちましたが、それが現実のものとなり、規模と内容から日本を代表する玩具博物館になったとおもいます。それは方向性がよかったのと時期にも恵まれ、家族の理解と優秀なスタッフに支えられ、そして皆様のご支援の賜物だと肝に銘じています。

収集方針は子どもや女性のもので評価されずに消えようとしているもので、当館でないと見ることができないコレクション群を構築することでした。特筆すべきことは個人立の当館に、第一級のコレクションがいくつも寄せられたことです。大正〜昭和初期の郷土
瓶細工(明治時代)
玩具の尾崎清次コレクション、虎の郷土玩具では日本一の長尾善三コレクション、さらに橋本武・川野幸三郎・能勢泰明・田中明・武谷信代ほか、郷土玩具蒐集家として名の通っていた方のコレクションをいくつも受け入れました。また中国民間玩具、リカちゃんやジェニーにかかわる膨大な資料も受け入れました。
さらに寄贈を受け入れるだけでなく、いくつかの分野に的を絞って購入活動を継続しています。昨年は貴重なびん細工や雅楽の五人囃しを含む雛人形セットを購入。年末にはフランスのアルザス地方のクリスマスマーケットを訪ねて資料を収集してきました。世界のクリスマスコレクションもそのひとつですが、当館が35年にわたって収集してきた世界の玩具コレクションは世界でも珍しい内容のコレクションです。いつの日か大きな評価を受ける時が来るのではないかと思うようになりました。
これまでにも繰り返し申し上げてきましたが、当館の存在がなければこれらの資料の多くは四散していたと思います。本来、文化遺産は社会が守り後世に伝えなければならないものではないでしょうか。
私はこの25日で満75歳の誕生日を迎えます。評価されずに消えようとする子どもや女性にかかわる文化遺産を集大成して後世に伝えることを人生の使命として頑張ってきましたが、一個人の力でこれだけのものを守り伝えるのは限界が来たと思います。社会が当館の資料の価値に気付き、社会の力で守り伝えていただきたいのです。そのためにはどうすればよいのか、模索する日々が続きます。
雅楽の五人囃の京雛セット


博物館冬の時代といわれる厳しい時代が続きますが、当館には明るいニュースがいくつかあります。この1月中旬には日本ヴォーグ社から私の監修で『ちりめん細工つるし飾りの基礎2』が出版されます。2年前に出た『ちりめん細工つるし飾りの基礎』の続編です。同書は増刷が続き9刷で63000冊出版され、手芸の世界に大きな影響を及ぼしています。さらに文渓堂からもこの2月に、当館のコレクションを基に尾崎学芸員が執筆した『ままごと道具』が出版されます。今年の夏には小倉城庭園で『ままごと道具展』、来年の春には東京の目黒・雅叙園の有名な『百段雛まつり』に依頼を受け、当館も出品することが決まりました。晴れの舞台での展示は大きな影響があると思います。

例年、年間の企画展・特別展の簡単な案内書を作っていましたが、当館友の会の会員様から運営に役立てて欲しいと多額の資金カンパがあり、それで40周年にふさわしい年間行事を紹介するA4サイズのチラシを1万3千枚製作しました。周辺の宿泊施設や播但連絡道路沿いの竹田城、生野銀山、姫路セントラルパークなどで配布いただき、入館者増につなげたいと考えています。
本年も変わらぬご支援とご指導を賜りますよう、心からお願い申し上げます。


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