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NO114
文化の日に寄せて・・・

                                      (2016年11月3日  館長 井上 重義)
当館の入り口の山茶花が咲き,兵庫県花のノジギクの白い花も咲き始めて秋の深まりを感じます。
探し出すのに苦労したオーストリアの降誕人形
6号館では恒例の特別展「世界のクリスマス飾り」が始まりました。今回の展示替えも先月24日~30日まで1週間をかけ、「神戸人形と世界のからくり玩具」の撤収と「世界のクリスマス飾り」の展示作業が行われました。いつもながら尾崎学芸員の陣頭指揮で5人のスタッフが連日夜遅くまで作業を続けました。男性は私一人だけに、主な仕事は6号館2階の収蔵庫から資料が詰まった段ボール箱数十個を1階に下ろし、作業が終わると収蔵庫に戻す作業です。膨大な資料を所蔵しているだけに今回も目的のものを探し出すのが大変でした。展示作業は30日夜遅くに完成。
アフリカの降誕人形など
その素晴らしい展示内容に私自身も感動しました。
今回の切り口は地域毎の展示です。アジア、南北アメリカ、アフリカ、南欧、
北欧、東欧、中欧と並んでいますが、各地域の特色がよく表現されています。これほどの世界各国のクリスマス飾りを所蔵展示する博物館は国内だけでなく、世界でも珍しいと思います。1977年から世界の玩具を収集し、当館で始めてのクリスマス展は1号館で1985年に開催。翌86年を除き、その後は毎年開催してきました。収集も何度もヨーロッパ各地に出かけ、輸入業者の協力や国際見本市などで収集。現在60カ国4000点を数えますが、収集可能なものは3割もなく、時期に恵まれて貴重な資料が収集できたのです。会期は来年の1月22日まで、ぜひご来館ください。

去る10月15日付の朝日新聞「私の視点」で、前の文化庁長官青柳正規氏が「文化庁の仕事ー移転よりも地域文化支援を」と題して、文化庁の京都転移には反対だと、問題点を書かれています。文化庁の予算が諸外国に比べて大幅に少なく約1千億円で職員定数は230人。この限られた財源やマンパワーが役所の引越しに使われ、本来の文化施策に影響が出ていることを心配され、地域文化を見つめなおすことの必要性と「文化の総点検」と「再構築」を全国で進めたいと書かれていました。
私は2013年12月に青柳長官宛てに文化庁が実施する「地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」について手紙を出しました。内容は募集要綱に「日常的に行うことが予定されている博物館資料を豊富に収集し、保管し、及び展示する等の事業は本事業の補助対象外となる」ことについての要望でした。それまで当館は博物館相当施設に認定されているため文化庁に申請して同事業を何度も受け、ポスターやチラシなどを制作しできました。それが所蔵資料での展示では応募できないと、自前の資料による特別展を開催している私立博物館にとっては大きな痛手であり、所蔵資料による展示でも申請できるよう検討をお願いしました。
さらに私は元日本博物館協会会長中川志郎氏が「公立館はまず箱物ありきですが、私立博物館はまずコレクションありきで優れたものが多い。民間の優れたコレクションと公立の優れた器とが合体したときに日本の博物館としてはかなり良いものになりうるのではないか」と申されていることから、当館のような豊富な資料を持つ私立館が公立館に資料を貸し出すことで公立館の活性化が図れるのではないか。そのような活動に文化庁の支援が得られないものかと提言もしました。しかし回答はなく、本年度の募集要綱も以前と変わりはありませんでした。
ここ10数年来、公立・私立を問わず博物館は厳しい状況下にあり、とりわけ「文化遺産を守る」との使命感から設立され、貴重な資料を所蔵する各地の私立博物館が次々と閉館になっている状況は、将来に大きな悔いを残すと思われます。公・私立を問わず、その所蔵する資料や活動内容を第三者機関が公平に検証し、公立館に劣らぬ活動をしている私立館に対しては、国や自治体や社会が支援する必要があるのではないでしょうか。
展示される世界の船

尾崎学芸員が「学芸室から」のNO203〈8月19日付け〉で報告していますが、来年1月20日~12月28日まで1年間、神戸市より依頼を受けて当館の資料が神戸開港150周年記念事業として、神戸のKIITOで展示されることになりました。
私は1970年から14年間、神戸の山陽電鉄本社に勤務し広報を担当。多くの神戸の文化人の方と交流があり、神戸の町の気風が大好きでした。それに神戸在住の著名な郷土玩具収集家の遺品を受け入れたことから、神戸ゆかりの玩具や人形の収集にも早くから取り組んできました。神戸人形やクリスマス飾り、それに阪神淡路大震災後に受け入れた雛人形など、神戸ゆかりの数々の資料のほか、世界各地の船・人形や玩具、さらに日本の郷土玩具や近代玩具等の所蔵品も展示します。総数では2000点を超え、大阪や東京でも見ることができない密度の濃いい内容に、大きな反響があるものと予想しています。
神戸市の関係者の皆様に感謝し、全力投球で取り組んでいます。





NO113
夏休みの話題、いろいろ。

                                      (2016年8月27日  館長 井上 重義)
8月もあと数日。庭には優雅なオハグロトンボの姿が見られます。例年、当館では夏休みの子供たちを対象に「夏休みおもちゃ作り教室」を開
おもちゃ教室に参加の子どもたち
催してきました。今夏も5講座を開催しましたが、最後の講座が昨日無事に終了しました。参加者は親子約30名。江戸時代に流行ったご来迎を参考に、棒を押し上げると筒の中から美しい羽をもつ孔雀が出てくる玩具を尾崎学芸員の指導で作りました。午前10時から1時間半ほどで楽しい作品の数々が完成。子供たちはその仕組みを応用して、孔雀だけでなく、筒の中からロケットが出たり、打ち上げ花火に見立てたものなどを作り大喜びでした。この夏休みおもちゃ作り教室は1977年に5号館のランプの家が建って以来、30余年の歳月を積み重ねてきた当館の由緒ある事業です。
 例年大勢の子供たちでにぎわいますが、近年気になるのは応募者数が減少傾向にあることや参加者の低年齢化です。4・5・6年生の参加が
感想ノートには楽しかったの声が…。
減少しています。高学年は塾やクラブ活動などで忙しく、時間の余裕が少ないからというのが要因のようです。子供時代にモノを作ることの喜びや楽しさをしっかりと体験することが、いつの時代でも大切ではないでしょうか。

夏休みには例年、祖父母に連れられた子供たちが大勢やってきます。遠方から里帰りした子供が祖父母と一緒に来るのです。先日もコマ回しの上手な小1の子供と出会い、声をかけると奈良に住んでいるが夏休みや冬休みに祖父母宅に帰ってくると必ず当館に連れて来てもらっている。コマ回しは当館で覚えた、大好きですとニコニコ顔で話してくれました。6号館前の休憩所に置かれた感想ノートには来館した、子供たちの嬉しい声がいっぱい記されています。

今月初めに神戸で全国の高等学校家庭科の先生方の大会があり、終了後いくつかのコースに分かれて見学会か実施されました。当館にも8月2日、約50名の先生方が来館下さいました。尾崎学芸員の「伝承玩具について」の講話と私が江戸のからくり玩具「隠れ屏風」をお教えしました。好評で皆様に大変喜ばれました。
さらに大きな出来事は、京都で8月5日~7日まで「国際パズル会議」が開催されましたが、前日の4日に世界14ヶ国から96名もの皆さんがバ
国際パズル協会の皆さん
ス3台で来館され、約2時間滞在されました。皆さんにも「隠れ屏風」をお教えし、今から200年以上も前から遊ばれてきた日本の伝統玩具だとお話しすると大きな歓声が上がりました。当館の展示内容にも大勢の皆さんが感動されたと聞きました。

話は変わりますが昨日の朝日新聞「社説余滴」山口宏子論説委員の『民間劇場の公共性』を読み、大きな衝撃を受けました。要旨は「この十数年で全国に公立劇場が増えた。が、それより前から現代演劇を支えてきたのは、東京でも関西でも、民間の劇場で、東京・下北沢を演劇の町にしたのは民間の本多劇場。オーナーの本田さんは建設や運営に公金が投じられる公立劇場を「税金劇場」、民間は「納税する劇場」と呼ぶ。民間劇場はこれはと見込んだ劇団に長期間公演させたり、大胆な演目を世に問うたり、思い切った運営が出来る。その自由さが人を育て観客の視野を広げ、文化を創造する。民間劇場が担っている「公共性」にもっと注目したい。社会全体で応援する手立てがないか、考えてみたい」と記されていました。民間劇場を民間博物館と置き換えると同じことがいえます。文化を発展させるには、公立と民間とを区別するのではなく、所蔵する資料や活動内容を客観的に評価して、公平に社会が支援することが文化の振興や発展に繋がるのではないでしょうか。

過日、イギリスのオックスフォード大学日本図書館から、東京の古書店を通じて当館が関係する書籍の購入依頼がありました。「開館40周年記念誌」「私の玩具遍歴」「企画展記録集」「江戸と明治のちりめん細工」など、計10冊を古書店に届けました。船便で送られているので届くのは少し先ですが、なぜ購入下さったのかなど、到着する頃に問い合わせたいと考えています。イギリス在住の知人からは「由緒あるオックスフォード大学図書館に日本玩具博物館の書籍が収められることは、内容と価値が認められたことであり、誇りに思われるとよい。おめでとうございます。」と嬉しい便りが届きました。




NO112
50年の歳月をかけた、
貴重な神戸人形コレクション

                                      (2016年6月21日  館長 井上 重義)
6月18日から6号館では特別展「神戸人形と世界のからくり人形」が始まりました。6号館の西室には世界各国から収集したからくり仕掛けの
大正時代の神戸人形
玩具400点、東室には神戸人形400点と合計800点もの作品が並び、来館者からは「すばらしい展示だ」と感動の声があがっています。とりわけ東室の神戸人形の展示は壮観で、来館者は「これほどの膨大な神戸人形を一堂に見るのは初めてです」と、驚かれています。

私が郷土玩具の収集を始めたのは1963年からです。そして、神戸の灘高校橋本武先生と出会い、その後、自宅にお伺いしていろいろとご指導をいただいていました。しかし神戸人形は1950年頃に作者が亡くなり廃絶。過去のものになっていました。
 ところが1964年の夏に先生は、神戸人形の復活に取り組まれている方が加古川市(神戸市の西約30㌔)の鶴林寺近くに住まわれているとの情報をキャッチされ、捜して欲しいと頼まれました。まもなく数岡雅敦さんを捜しあて、先生を案内しました。先生は聞き書きを日本郷土玩具の会会報「竹とんぼ」に発表され、
アメリカから里帰りした明治末期の神戸人形
神戸人形が蘇ったとして大きな反響があり、数岡さんは神戸人形作者として一躍有名になられました。ただ価格が1体8000円~8万円もする高価なものだけに、財政的にも余裕がない私は多くを収集することが出来ませんでした。

数岡さんは1989年に61歳という若さで亡くなられました。数年後、遺族から多数の作品が遺されているので引き取って欲しいと依頼があり、80体ほどを購入しました。さらに2000年にはニューヨーク在住の神戸人形収集家の遺族からも購入依頼があり、当館の友の会から支援を受けて46体を引き取りました。初代の野口百鬼堂、出崎房松や小田太四郎など、明治中期から昭和初期に作られた、神戸人形の歴史を辿る上では欠かせない貴重な資料の数々でした。その後も収集家の資料を引き取るなどして、半世紀に及ぶ歳月を経て、国内外にも例を見ない、500体を超す膨大な神戸人形コレクションが構築できたのです。

数岡雅敦作の神戸人形
百年を超える歴史を持つ神戸人形は、その動きの奇抜さやユニークさだけでなく、その造形的な面白さも特筆されるべきものです。明治末期から昭和初期にかけて作られた神戸人形は、神戸にやってきた外国人観光客から高い評価を受け、多くが海外に持ち帰られました。ところが地元には古い時代の神戸人形が遺されていないことなどもあり、神戸人形が世界に誇れるからくり人形として高い評価を受けることはありませんでした。私は橋本先生との出会いや1970年~84年まで神戸の山陽電鉄本社でPR誌を編集してきたご縁もあり、神戸が好きな街でした。いつの日か神戸人形が輝くときが来ることを夢見て50年間、神戸人形を追い求めてきたのです。

廃絶した神戸人形の復活にも取り組み、2003年には町内在住の工芸作家の協力を得て酒飲み、西瓜食い、面冠り、釣鐘お化けの4点を復元できたのです。しかし、作者の事情で制作は2年前にストップしていました。作って下さる方を捜していたところ昨秋、神戸在住で人形劇美術の専門家の吉田太郎さんと出会い、制作を引き継いでくださることになりました。古作品の補修や新たな神戸人形の制作にも取り組まれ、神戸人形は再び蘇りました。
 神戸人形は神戸が世界に誇れるユニークなからくり人形です。ぜひ、一人でも多くの神戸市民の皆様にご覧いただき、神戸人形100年の歴史と共に、世界に誇れるユニークな文化遺産であることを認識いただける場になることを切に願っています。


NO111
外観が蘇り、美しくなりました。

                                      (2016年6月17日  館長 井上 重義)
梅雨の季節にはいり、館内の庭のところどころに美しいアジサイの花が咲いています。HPのトップ画面の外観の画像でもお気付きのことと思いますが、5月中旬からとりかかっていた1号館・3号館・4号館の外部壁面の塗装工事が完了し、白壁の建物が青空に映えて見違えるほ
塗装工事が完了し、美しくなりました。左から4号館、3号館、1号館、2号館。
ど美しくなりました。
実は4号館は1979年に地元の大工さんにお願いして建てていただいたのですが築後37年も経ち、白壁に汚れが目立つだけでなく壁にも何箇所か亀裂が入り、雨漏りの恐れが出てきました。そのようなことから塗装業者にお願いして工事に入っていただきました。4号館が完成後、1号館と3号館も汚れが目立つことから、併せて塗装工事を行い、今月4日に完成しました。

正面の1号館が完成したのは1977年です。現在の2号館に続き2棟目でした。博物館は大切なモノを収蔵する施設であり、土蔵風にするのが日本の博物館にはふさわしいと考えるようになり、地元の大工さんにお願いして建ててきたのです。以後1979年に4号館、1985年に3号館、
6号館への小道。左が4号館、右が3号館です。
1989年に6号館と蔵造りにして建て、1992年には最初の建物(現2号館)の西側道沿いに土蔵風の建物を建てて現在の外観になりました。1号館・3号館・6号館の壁面には平瓦を貼り付けていますが、これは当館から東へ約4キロの船津町で210年前の江戸時代文化年間から作られ、姫路城にも使われた神崎瓦を使っています。

4号館の周囲には工事以前、四方竹や黄金竹や黒竹等いろいろな竹を植えていたのですが塗装工事の関係もあり伐採。さらに大きな樹木も剪定して、すっきりしました。6号館に行く小道も雰囲気がよくなり完成後、何人もの方から「姫路城が連想される素敵な雰囲気ですね」と嬉しいお言葉をいただきました。明日からは6号館で「神戸人形と世界のからくり人形」も始まります。24年前の景観がよみがえった当館にぜひご来館下さい。お待ちしています。



NO110
特別展「端午の節句~京阪地方の武者飾り」から。

                                      (2016年5月1日  館長 井上 重義)
庭に咲くシャガの花
ゴールデンウイークの真っ只中です。新緑の季節になり、当館も緑に覆われました。
6号館では先月23日から特別展「端午の節句~京阪地方の武者飾り」が始まりましたが、西室での展示です。東室では御殿雛の展示が継続しており、明治から昭和初期にかけて、京阪神の裕福な家庭で、女児と男児の健やかな成長を願い、雛祭りと端午の節句に飾られた人形の数々が一堂に並びました。
内容からいえば明治や昭和初期に京都や大阪・神戸の有名な人形店で販売された、当時の最高クラスの雛や武者人形などです。ご覧になられた方は、「こんなすばらしい雛人形や武者人形や甲冑飾りを見るのは初めてです」と、感動のお言葉を再三いただきます。これほどの資料が一堂に展示されるのは国内でも珍しいと思います。

一昨日はオーストラリアから、当館のことを英文雑誌で見たと来館された青年が、端午の節句飾りをご覧になり、「こんなすばらしい展示
展示中の甲冑飾り(左と中央:大阪のひなや友七製、右:京都の大木平蔵製)
を見たのは初めて、来てよかった」と感動されました。本日もまたイタリアから女性が来館され、「すばらしい展示に感動しました」とうれしいお言葉をいただきました。両名とも、大きなリュックを背負っての一人旅です。日本各地を回る途中に交通至便とはいえない当館に、わざわざ立ち寄って下さったのです。本日も数組の外国人来館者があり、このところ当館も外国人が目立ちます。
国内も全国から、わざわざ来館下さる方が多いのです。一昨日は朝の9時前、駐車場に練馬ナンバーの車が止まり、お尋ねすると当館が目的で来館下さったことがわかり、開館時間前でしたが入館いただきました。そして昨日も福島県いわき市からご夫婦がマイカーで来館になり、「楽しみでちりめん細工を作っています。来たかったのが念願かないました。すばらしいです」と嬉しいお言葉をいただきました。ちりめん細工を作られる方にとって、当館がメッカ的な存在になりつつあるようです。

博物館にとって大切なことは、「来て良かった」といわれるための魅力的なコレクションの形成です。開館以来、その充実に取り組んできました。成功例の真似ではなく、当館でないと見ることができないコレクション群を構築するために歳月をかけ、全力投球で頑張ってきたのです。それが輝いてきました。
当館では開館当初、雛人形や端午の武者飾りは庶民が飾った土人形や張子人形などの郷土玩具が中心で、全国から集めていました。高価な衣装雛や武者飾りの収集は対象外でした。その流れが変わったのが1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災です。2月にはいると被
 帯屋源兵衛家旧蔵の御殿飾り(谷本要助製)  可愛い雛道具も共に寄贈いただきました
災地の文化財救出活動が本格化しましたが、対象は「文化財として認知されたもの」で玩具や人形などは対象外と知り、当館の使命からもそれらの救済を検討。4月から被災地の節句人形の引き取り活動を行いました。その過程で知ったのが上質の雛人形や武者飾りなどが、文化財として認知されていない現状でした。以来、当館では裕福な階層の家庭で飾られてきた雛や武者人形の収集に取り組んできました。結果として、明治時代から昭和初期にかけて京都や大阪で作られ、京阪神の裕福な家庭で飾られた豪華な御殿飾りが20数組も集まりました。寄贈品が大半ですが驚くような資料が集まってくるのです。今年になっても大阪の帯屋源兵衛家が所蔵されていた桧皮葺の立派な御殿飾り(谷本要助製)の寄贈を受けました。
端午の節句に飾られた江戸や明治期を中心とする甲冑飾りも20年前から精力的に収集してきました。これらは寄贈で集まることは少なく、目に留まったものを購入し、約50点を収蔵しています。それが先月、神戸から大正末期のすばらしい座敷飾り一式(今月のおもちゃ参照)の寄贈を受けました。結果、国内でも屈指といえる端午の節句飾りコレクションが構築できたのです。
甲冑飾りは飾ることを目的としてプロの手で作られたものです。実用品の甲冑と比べると、豪華で繊細で美しいのです。しかしこれらが文化財として評価されることはありませんでした。オーストラリアから来館された青年は、この甲冑飾りのすばらしさに感動されたのです。
来年の端午の節句には、所蔵の江戸から昭和初期までの甲冑飾りの展示を考えています。

NO109
企画展「ちりめん細工とつるし飾り」が好評です。

                                      (2016年3月8日  館長 井上 重義)
庭には早春に咲くユキワリイチゲの白い花が咲き、マンサクや椿の木々の花も咲いて春の訪れを告げています。4号館北のサクランボ、東の利休梅、西の花桃のつぼみも大きくふくらみ、間もなく春爛漫の季節を迎えます。
椿の花に彩られた6号館への小径
6号館の特別展「雛まつり」に続き、1号館では企画展「ちりめん細工とつるし飾り」が先月27日から始まりました。当館でしか見ることができない資料が展示されていることから連日、遠方からも大勢ご来館下さいます。
ちりめん細工展は昨年春の6号館の特別展に引き続いての開催ですが、展示内容はつるし飾りに重きをおいた展示です。この度、出版された『基礎からわかるちりめん細工のつるし飾り』に掲載された作品を中心に、これまでに日本ヴォーグ社から出版された『ちりめん細工つるし飾りの基礎』と『ちりめん細工つるし飾りの基礎2』に掲載されたつるし飾りと傘飾りなどが一堂に並び、ボリューム感あふれた華やかな展示になり
つるし飾りが並ぶ企画展
ました。大勢の皆様から、「思っていた以上に素晴らしい展示内容で、遠方からわざわざ来た甲斐があった。」と喜びの言葉を再三いただきます。
入館者数は20年ほど前から減り続け、年間6万人あった入館者は2013年には2万人を割るほどになっていましたが、その後、一昨年・昨年と増え続けて、年間入館者数は昨年2万3千人になり、回復の兆しが見えてきました。
雛人形展はこのところ地域おこしと連動して、各地で雛めぐりが盛んにおこなわれるようになりました。来館された方からは、「ひな人形展を各地によく見に行きますが、この館の雛人形の展示は別格ですね。こんな素晴らしい雛人形展は初めてです。」と嬉しいお言葉をよく賜ります。江戸時代の雛人形が何組もずらりと並び、明治期からの御殿飾りが11組も見ることができるのは全国でも珍しいと思います。また例年同じものが展示されるのではなく、今年度も初公開の御殿飾りが4組展示されていますが、そのうちの1組は京都の大木平蔵作の明治後期に作られた
神戸の灘の造り酒屋旧蔵の御殿飾雛
豪華な御殿飾りです。江戸時代から続いた神戸の灘の造り酒屋で飾られていたものです。縁あって昨秋、ご寄贈いただきました。
昨春には依頼を受けて、東京の目黒雅叙園での「百段雛まつり」展に当館所蔵の雛人形を貸し出しましたが、ご覧になった群馬の方が先日、遠路ご来館下さり、「本当に来てよかった。」と喜びのお言葉をいただきました。数日前にも「館長さんですね!」とお声をかけてくださる方があり、「大阪の吹田からこの20年間、車を運転して雛人形とクリスマス展を毎年欠かさず見に来ていました。高齢になり来年からは無理と思います。長い間楽しませていただきありがとうございました。」とお土産まで頂きました。そのお言葉に胸が熱くなりました。
さらに先月、イギリスのケンブリッジ大学にお勤めの日本女性が来館され、帰国後メールをいただきました。「展示は美しく、深く、わかりやすく、そして楽しく、隅から隅まで心を奪われました。これから何十年、何百年と残していただきたい博物館です。貴館が復活されたちりめん細工が日本から世界へと広く知られるようになりますことを熱望しております。」さらにちりめん細工の英語版の出版も提案下さり、話が進みそうです。私もかねてから日本女性の手の技と美意識とを広く海外の皆様にも知っていただきたいと考えていました。嬉しい話に喜んでいます。


NO108
春の特別展「雛まつり」が始まりました。

                                      (2016年2月8日  館長 井上 重義)
当館入り口の蝋梅が満開になり、美しい椿の花が咲き、各地の博物館から雛祭り展の案内が届く季節になりました。当館でも去る6
満開になった入口の蝋梅
日から6号館で恒例の特別展「雛まつり~京阪の雛飾り~」が始まりました。当館は500組を超える膨大なひな人形コレクションを所蔵しているだけに、年毎にいろんな角度から雛人形に焦点を当てた展示をしており、今年は京阪の雛人形をテーマにした展示です。
昨年はこの季節、東京の目黒雅叙園で瀬戸内雛紀行が開催され、要請を受けて当館からも江戸期から大正期頃までの御殿飾りや雛人形たちを多数出展。晴れの舞台での展示は大きな反響がありました。その関係から当館での雛人形展は久々に全国各地の郷土雛などを中心とした展示でした。
今回の展示では京阪で作られた江戸期や明治期の衣装雛や御殿飾りがずらりと並び、来館された方々から早速、このような内容の雛展は初めて見た「素晴らしい展示だ」と、感動のお言葉をいただいています。

初公開の灘の蔵元で飾られていた大正期の御殿飾り
昨年、目黒雅叙園で展示されて脚光を浴びた御殿雛や江戸期の古今雛をはじめ、西室では江戸から明治期に作られた衣装雛17組が江戸製と京阪製とに対比されて展示され、東室は京阪で明治期から大正期にかけて飾られた御殿飾りと源氏枠飾りが8組展示され、うち2組が初公開です。その1組は灘の蔵元で飾られていた豪華な京都の丸平製の御殿飾りです。また5号館には昭和20年~30年頃の御殿飾りが2組展示されており、新旧の雛の御殿飾りがこれほどの内容で展示されるのは全国でも例がないと思います。

華やかな御殿飾りの陰に隠れて存在感が弱いのですが、ぜひご覧いただき
雛の勝手道具
たいのが東室の御殿飾りの側に飾られた2組の大型の勝手道具です。明治から昭和初期にかけて関西の裕福な家庭では雛人形と共に雛段の下に台所道具が飾られました。これらは雛祭りの期間中、女児が触って遊んだもので、遊びを通して家事や作法を学ぶ道具でした
ネズミ捕り
。今では見かけることがない懐かしい道具がずらりと並び、その内容にも驚かれると思います。写真は7~8㎝ほどのネズミ捕りです。こんなものもかつてはひな壇に並んだのです。

出版された「基礎からわかる
ちりめん細工のつるし飾り」
この欄の前号でちりめん細工の新刊が出ると申し上げましたが、先月末から書店に並び始めました。題名は「基礎からわかるちりめん細工のつるし飾り」、定価は1400円+税。初版は13000部です。八重桜袋・牡丹袋・ばら袋・がく紫陽花袋・鉄線袋・菊袋・梅袋などの美しい花々や出目金袋・蝉袋・犬張り子・おしどり袋ほか、20作品の作り方や数々のつるし飾りが紹介され、愛好者の皆様に喜ばれそうです。また掲載作品は今月27日から1号館で開催の企画展「ちりめん細工とつるし飾り」で展示されます。
併せてちりめん細工にかかわる嬉しいお知らせです。先月、読売新聞東京本社から取材があり、去る2月3日の読売新聞夕刊(全国版)にカラー写真で全5段という大きな扱いで、ちりめん細工と復興に取り組んできた私が紹介されました。問い合わせも多く大きな反響がありました。




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