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NO119
花々に囲まれた当館で端午の節句展始まる

                                      (2017年4月16日  館長 井上 重義)
当館周辺は真っ赤な桃の花や白い利休梅、それに黄色い山吹など、色とりどりの美しい春の花々が咲き競い、入り口の樹齢約40年の八重桜・関山も
入口に咲く八重桜関山
八分咲きです。そして昨日から6号館西室で、特別展「端午の節句~江戸から昭和の甲冑飾り~」が始まりました。来館された方から、こんな素晴らしい展示がされているとは思わなかった。「来て良かった」と早速にうれしいお言葉が寄せられました。数々の懐かしい展示物との出合いだけでなく、初めて接する貴重な資料の数々に驚かれ、感動されるのです。

端午の節句展には江戸時代末期~昭和初期までの甲冑(具足)飾り約30点が展示されています。京都や大阪の有名な人形店で販売された、当時の最高級品といえる作品が多く、恐らくこれほどの資料が一同に展示されるのは全国でも珍しいと思います。これらはその存在に気付き、私が約20年前か
江戸末期の甲冑飾り
ら購入してきたものが中心です。時期にも恵まれ、50点をこえる甲冑飾りの収集に成功したのです。やみくもに収集するのではなく、年代や制作者などが解るものに重点を置いてきたのが良かったと思います。このような内容の甲冑飾りコレクションを所蔵する博物館は、国内では類がないと思います。その着想と方向性が良かったのです。

6号館東室では雛の御殿飾りを中心とした展示が5月28日まで継続中です。明治中期から昭和初期までの御殿飾り6組が展示されていますが、これらも京都の大木平蔵製や大阪の谷本要助製など、当時の最高級の御殿飾りです。近年、当館の雛人形展の内容が知られるようになるにつれて、全国各地の雛巡りをされている方が来館下さるようになり、今年も北海道や山形などの遠方からも来られました。そして「これほどの内容の御殿飾りを見るのは初めてです」と驚かれます。先般、京都から伝統工芸に携わっておられるグループが来館され、京都でも見たことがないと驚かれました。檜皮葺の御殿飾りは大正バブルと呼ばれる好景気に沸いた一時期に作られた御殿飾りで、価格は小さな家が一軒買えたと伝わり、神戸や大阪などの一部の裕福な家庭で飾られたものです。当時の最高の工芸技術の粋を集めて作られたものですが、これらが文化財として認知されることはあり
各地の木造船が並ぶ海の博物館
ませんでした。当館はこの檜皮葺の御殿を8組所蔵しています。檜皮葺の御殿飾りがオークションなどに出ることは皆無といってよく、当館ならと寄贈いただいたことからコレクションが形成できたのです。ただ個人立の博物館がこれらの資料を保存継承することには限界が来ており、その価値を社会に認めていただき、社会の手で守って欲しいと考えています。そのためにはどうすべきか。模索する日々が続きます。

私立博物館は当館同様に特色ある貴重なコレクションを所蔵する館が多く、三重県鳥羽市にある海の博物館も館長の石原義剛氏が昭和46年に設立され、木造船など海に関する約6万点もの資料を持つユニークな博物館です。当館長室№106でも同館について触れていますが、石原館長は私立博物館は「国や行政に見捨てられ、漂流している」と厳しい現状を述べられていました。同館も平成5年に5万7千人あった入館者数が平成27年度は2万7千人に減少、約1300万円の赤字になり、昨年9月に同館から館運営が困難だとして、鳥羽市に対して施設などの買い上げを要望されていました。去る3月に鳥羽市が8600万円で買い上げることが決まり、この10月から鳥羽市立として再出発します。運営は、現在のスタッフがかかわるとの情報も流れていますが、現在、市として検討中と聞きました。貴重な文化遺産が散逸から免れ、後世に継承されることは喜ばしいが、広島県福山市の日本はきもの博物館に続き、ユニークな活動を展開されてきた私立の博物館が公的な支援がない中で次々に姿を消す状況は本当に残念であり、悲しい。


話は変りますが、かねてから制作に取り組んでいた「ちりめん細工の小さな袋と小箱」が今月20日に発売されます。出版元は朝日新聞出版。定価は1300円+税です。内容は小さな袋物や小箱が中心です。袋物は小さな巾着袋、五角袋、檜垣文様袋、矢羽根文様袋、透かし籠袋ほか計13点と小箱が計10点です。現在、ちりめん細工といえばつるし飾り用の作品と思われがちですが、この小袋や小箱は実用的な作品です。また江戸や明治期の小さな作品も24点紹介されています。ぜひご覧下さい。









NO118
「日本と世界 おもしろ玩具図鑑」が出版。

                                      (2017年3月17日  館長 井上 重義)
昨年の11月から編集作業に取り組んできました『日本と世界 おもしろ玩具図鑑』が、神戸新聞総合出版センターから届きました。まもなく書店にも並ぶと思います。A5判で191ページのオールカラー。定価は1800円です。この本は平成27年の1年間、地元の神戸新聞のコラム欄に『おもちゃの四季』と題して私と学芸員尾崎織女が交互に執筆した原稿を基に、季節を切り口にしていたのを加筆修正
して「日本の草花で作る玩具」「今に伝わる江戸時代の玩具」「各地の郷土玩具」「近代玩具」、さらに「世界の玩具いろいろ」と項目毎にまとめたものです。連載当時は画像が3㎝角ほどだったのですが、それが数倍もの大きさになり、見て楽しい迫力満点の本になりました。日本の玩具や世界の玩具をこのようにまとめた本は前例がないのではと思います。それができたのは当館が長年にわたり、文化財として評価されることなく、消える運命にあった玩具や人形の数々を収集してきたからです。ぜひ手に取っていただきますようご案内申し上げます。

当館がミシュラン・グリーンガイドに二つ星として評価されたことは、昨年末の館長室NO115でも報告しましたが、詳細がわかるにつれてその評価の大きさに驚いています。全国の博物館や美術館が評価されているのですが、★★★三つ星は全国で6館(東京国立博物館・久保田一竹美術館・飛騨高山美術館・京都国立博物館・ミホミュージアム・九州国立博物館)。★★二つ星は全国で32館。★一つ星は全国で54館です。その二つ星に当館が選ばれたのです。二つ星に選ばれた館は北海道と東北で2館(仙台市立博物館・土門拳記念館)。東京は11館(江戸東京博物館・東京現代美術館・出光美術館・サントリー美術館・森アートミュージアム・三鷹の森ジブリ美術館ほか)。信越と中部は8館(彫刻の森美術館・河口湖ミューズ館・三島由紀夫美術館・徳川美術館・北斎館・日本浮世絵博物館・金沢21世紀美術館)。近畿は5館(楽美術館・奈良国立博物館・神戸市立博物館・竹中大工道具館・日本玩具博物館)。中国地方は4館(大原美術館・広島平和記念資料館・足立美術館・山口県立萩美術館)。四国と九州は2館(豊島美術館・福岡アジア美術館)です。当館がどのような基準で評価されたのかは不明ですが、フランスから専門家が調査に入られた結果でした。

庭には黄色いマンサクの花が咲き、土佐水木の花も始めました。交通至便とはいえない当館に本当に全国から御来館くださるようになりました。そして「来てよかった」と喜びのお言葉を再三いただきます。それに最近、香港からといわれる来館者が目立ちます。お聞きすると当館のことが旅行のガイドブックに載っているそうです。



NO117
なつかしの人形展オープン。

                                      (2017年3月4日  館長 井上 重義)
4号館から6号館への小道の東側に、春の訪れを告げる白い可憐なユキワリイチゲの花が咲きました。椿の花も庭のあちこちに咲き、春の到来を告げています。
さて3月3日は雛祭りの日として知られていますが、今も地方に行けば、雛祭りは旧暦の3月3日に近い、ひと月遅れの4月3日に雛人形を飾り、女児の健やかな成長を祝うところが多いのです。当館がある播州地方もそうです。3月3日だと桃の花も咲いていないという季節感も大きく影響していると思います。当館での雛人形の展示も例年、2月初旬から4月初旬までの約2ヶ月間。今年は4月9日までです。
雛人形の展示は現在、全国各地で町おこしの一環として地域あげて開催されるところが増え、本当にいたるところで雛の展示が行われるようになりました。そして集めた雛人形をピラミットのように積み上げ、見せ方を売りにする地域や施設も増えています。

そんな時代だけに、当館が心がけているのは、雛人形の時代による変遷や江戸(東京)や京都・大阪で作られた雛人形を対比して展示し、その違いを
今年の圧巻は昨年入手の大型屏風前の江戸期の古今雛の展示
認識いただき、さらに三人官女には年齢の違いがあることの説明や、段飾りや御殿飾りなどについての解説もあります。ご覧になれば雛人形の歴史やその特徴などがよく理解できる展示になっています。さらに展示の雛人形がそれぞれの時代を象徴する質の高いものです。口コミで広がっているのでしょうか、来館者は関東などからもあり、そしてこんな素晴らしい雛展は初めてです。「来て良かった」と嬉しいお言葉を再三いただきます。

さらに本日から、1号館で春の企画展「なつかしの人形」が始まりました。昭和初期のキューピーや文化人形、昭和30年頃のミルク飲み人形、50年前の昭和42年に発売された初代のリカちゃんから昭和47年発売の2代目リカちゃん、次いで3代目・4代目と現代まで続きます。さらに「美智子さまきせかえ」や「メイコ着せ替え」などの着せ替え遊びも。子ども時代に遊んだ懐かしい人形たちとの出合いに、皆さん喜ばれ、大いに盛り上がっています。これらの資料もいつの日か輝く日が来ると収集してきたものです。大勢からのご寄贈もあり、本当に充実したコレクションが形成できました。
「雛人形」と「懐かしい人形」との出合いに、ぜひご来館ください。
美智子さんの着せ替え人形(昭和34年)  昭和初期の文化人形 リカちゃんスーパー(昭和52年)と2代目リカちゃん
神戸のKIITOでの展示も先月22日から、春の企画展「世界の国の人形たち」と「雛飾りと端午の節句飾り」が始まりました。世界の人形は、アジア・オセアニア・中近東・アフリカ・南北アメリカ・ヨーロッパと民族色豊かな人形たち250点が並び、雛飾りと端午の節句飾りは明治末期から大正時代にかけて神戸の資産家の家庭で飾られた御殿飾りや段飾り雛、それに大正時代に神戸・北野町の家庭で飾られた大型で豪華な端午の節句飾りです。いずれも当館が寄贈を受け大切に保存していたもので、初めての里帰り展です。神戸でこれほどの貴重な資料が一堂に展示されるのは初めてです。ぜひ一人でも多くの方にご覧いただきたいと願っています。
中南米の人形 明治末期の京都・大木平蔵の檜皮葺御殿 大正末期の端午の節句飾り



NO116
雛人形展の季節になりました。

                                      (2017年2月15日  館長 井上 重義)
昨年の年末以降、神戸開港150年記念展のKIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)の展示と当館での雛人形展の準備。さらにはこの3月に出版予
神戸市長も出席された開会式のテープカット
定の『ちりめん細工の小袋と小箱』(朝日新聞出版)と『日本と世界おもしろ玩具図鑑』(神戸新聞総合出版センター)の2冊の本の編集作業とが重なり、仕事に追われる毎日でした。
 KIITOでは先月25日から当館所蔵品約2000点を展示する「TOY&DOLL_COLLECTION」がスタートし、さらに当館でも去る4日から6号館で「雛祭り~雛と雛道具~」が始まりました。いずれの展示も大変な作業でしたが、他では見ることができない当館ならではの魅力的な展示です。
 ひと息ついたとはいえ、20日からはKIIITOの春の企画展の展示替えと当館1号館の「なつかしの人形~昭和
「世界の伝承玩具」(KIITO)の展示
時代の人形遊び~」の展示と、大きな仕事が引き続き迫っています。そんな次第で館長室の更新も2ヶ月ぶりになりました。

KIITOでの展示は、常設展が「世界の船」「日本の郷土玩具と近代玩具」「神戸人形」ですが、季節毎に企画展示があり、現在は新春の企画展として19
日(日)まで「世界の伝承玩具」と「ちりめん細工」を展示しています。伝承玩具の展示では世界各地のコマやけん玉、ヤジロベエなどが並び、ちりめん細工は会場のKIITOがかつて生糸の検査場だったことから神戸で初めて「ちりめん細工」を開催しました。ただ来場者の評判は上々なのですが、会場が三ノ宮駅から南へ徒歩で約20分もかかることや人の流れがないことなどから来場者が大変少ないのです。それをどうすればよいかが大きな課題です。
「ちりめん細工」(KIITO)の展示

 ただ、この22日から始まる春の企画展示の「世界の国の人形たち」は国際港都神戸にふさわしい展示であり、さらに「雛飾りと端午の節句飾り」も、神戸が経済的に大きく発展した大正時代に飾られた雛人形と端午の飾りが一堂に展示され、神戸では過去になかった展示だけに大きな
「雛飾り」展(KIITO)で展示される
灘の造り酒屋の御殿飾り
話題を呼ぶのではないかと思います。雛人形は舞子の旧家と灘の造り酒屋で飾られた立派な御殿飾りですが、当時、家が1軒買えたと聞きました。さらに須磨の旧家で飾られた京都の大木平蔵製の雛人形や宮内省御用達の神戸・上田人形店で売られた勝手道具など、神戸ゆかりの雛飾りたちの里帰り展だけに、大勢がご来場下さるのではないかと期待しています。

当館6号館での「雛祭り~雛と雛道具~」も、江戸時代から昭和初期までの雛人形32組が一堂に並ぶ素晴らしい展示になりました。西室には江戸時代~明治時代の享保雛と古今雛と立雛など17組が美しい雛屏風の前に並び、東室には明治~昭和初期までの御殿飾り6組と段飾り3組が時代を追って展示されています。手前味噌になりますが、私自身が感動するのはその質の高さです。西室には江戸時代に滋賀の呉服屋で飾られていたと伝わる享保雛、江戸の桃柳軒玉山の古今雛、明治初期に東京から京都へ玉眼(ガラス目)の手法を伝えた玉翁の古今雛、有名な京都の大木平蔵の古今雛など、当時の最高クラスの雛人形がずらりと並びました。それに東室の御殿飾りや段飾り、雛道具の数々も当時の最高級品です。
 私自身も、これほどの内容での雛人形展は国内でも珍しいのではないかと思います。江戸期の雛人形などは大半が購入資料で永年の蓄積の結果ですが、檜皮葺の御殿飾りなどは市場に出ることはなく、大半が寄贈品です。今回も大阪の江戸時代から続く旧家から寄せられた御殿飾りを初公開していますが、来館された皆様から「こんな素晴らしい雛人形展を見るのは初めてです。来てよかった」と喜びの声を再三いただきます。
 5号館のランプの家でも大正から昭和初期の御殿飾りと段飾りを展示しています。ぜひご来館ください。
初公開の大きな屏風をバックに飾られた
江戸時代の古今雛
初公開の大阪製の
大正時代の御殿飾り
京雛の段飾り
最後に嬉しいニュースです。婦人画報の4月号から来年3月号までの1年間、同誌の目次頁に当館所蔵の世界の玩具が「お伽の国の歳時記」として紹介されます。4月号はイースターエッグ。尾崎学芸員が毎号解説いたします。


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