KIITO便りNo.2
夏の展示が始まりました/盲学校の生徒さんの来館         (2017.6.23  学芸員・原田悠里)
6月11日の閉館後から3日間(梱包を含めて5日間)の怒涛の展示替えを終え,6月14日からKIITOでの「TOY & DOLL COLLECTION」夏の企画展「世界の乗り物玩具」「神戸人形〜ミナトマチ神戸のからくり人形」が始まりました!ぐんと爽やかに,楽しい展示空間に替わりました。世界の乗り物玩具コーナーは,緑の展示台にちりめんの反物が雲のようにゆれ,雲の切れ目から飛行機やヘリコプターが旋回しています。玩具としてデザインされた乗り物たちは造形豊かでカラフル!
世界の乗り物玩具展示コーナー
グレーが基調のシックな展示空間にずらりとならぶ,麗しい木肌に黒の神戸人形。1体1体の表情とユーモラスな動きに,きっとみなさま魅了されると思います。お気に入りの一体を見つけてみてください。
日曜日毎のギャラリートークでは,神戸人形の歴史やからくりのおもしろさを実演を交えながらお話していきます。ぜひこの機会に神戸人形の魅力を堪能していただけたらと思います。神戸人形作家・吉田太郎氏が作ってくださった神戸開港150周年記念限定150個の神戸人形「船乗り」も残り少なくなってきておりますよ〜「TOY & DOLL COLLECTION」でしか買えませんよ〜
ギャラリートーク風景   
 
吉田太郎氏の 
150周年記念神戸人形 
・船乗り 
神戸人形展~数岡雅敦の神戸人形コーナー
**神戸市立盲学校の生徒さんたちとおもちゃ**
さて,今回もおもちゃが“つないでくれた”来館者さまとの楽しいひと時をご紹介したいと思います。
まだ春の企画展開催中の6月2日,神戸市立盲学校の生徒さんがお越しくださいました。3名の生徒さんにそれぞれ先生がつかれていて,主任の先生,そして教育実習の2人の学生さんの計9名のご来館でした。全盲の生徒さん,モノの光を感じることができる生徒さんとお聞きし,どのように楽しんでいただこうか
中国の京劇遊びに触れてみる…。
と,思い巡らしておりました・・・・・・そうよ!これだけ魅力的なおもちゃが並んでいるのよ!ふれていただけるものをいくつか取り出しながら,かたちや素材を確かめてもらいつつ,遊んでいただこう!と。
やはり遊べるコーナーは大人気です!ビー玉落とし,だるま落としは,仕組みを何度もさわりながら1つ1つの段階を確かめ,遊んでくれていました。お皿の数を数えながらドイツのけん玉と日本のけん玉の違いはどこかな?と一緒に考えてみたり。鳴りごまの音は大きすぎてびっくりさせてしまいましたが,中国の京劇遊びでは,銅製の盆を軽快にたたいて,その響きを楽しんでくれていました。実際に人形にも触れてもらい,人形の底についている馬のタテガミがお盆の振動で動くんだよと伝えると,強さ,速さを変化させながら,たたいてくれました。
小さい音も聞き逃さない生徒さんたち,郷土玩具のコーナーでは,鳩笛や竹笛,でんでん太鼓で音のあてっこもしてみました。神戸人形の舞台では,片手でつまみを回しながら,もう片手で人形がどんな動きをするのか1つ1つ確かめ,それぞれの生徒さんが一番お気に入りの神戸人形を何度も動かして遊んでくれました。
主任の先生によると,“つまみをまわす”という動作はあまりないので,新鮮なのでは,とのこと。


触れて聴いて動かして、おもちゃを楽しむ盲学校の生徒さんたち
音楽がすきな生徒さん,歌がすきな生徒さん,近代玩具のコーナーでは,70年前のちっちゃな卓上ピアノで演奏してくれたり(「ドの音がおかしいよ」と教えてくれました!),たいやきくんの人形とともに「およげ!たいやきくん」1番を完璧に歌いあげてくれました♪ これには先生方も「よぉ知ってるやん!」とびっくり! 最後はETに触れてもらい,「指がひとつ長いね!」という声に,「そうそう!その指にタッチしてみよっか」と生徒さん1人ずつ人差し指をタッチして「ト・モ・ダ・チ」交信をして終わりました♪
初めてふれるモノ,初めて知るモノに「これはなんだ?」と最初はおそるおそる真剣な表情の生徒さんたちも,しっかり触れて,聞いてみて,どんなモノかがわかると,たちまち笑顔になっていく様子に,わたしも嬉しくなって,あれもこれもと伝えたくなってしまい,あっという間に1時間がすぎてしましました。おもちゃ文化の本質と魅力をあらためて肌で感じることができました。

KIITO便りNo.1
おもちゃ文化と来館者をつなぐ         (2017.5.25  学芸員・原田悠里)
みなさま,はじめまして! KIITO会場の「TOY&DOLL COLLCTION」を担当しております新米学芸スタッフの原田悠里(はらだゆり)です。
毎日,三ノ宮駅からフラワーロードを海にむかって南にゆっくり20分ほど歩いて,「TOY & DOLL COLLECTION」会場のKIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)へ出勤しています。KIITOでは,神戸開港150周年を記念した神戸港と神戸文化の企画展「神戸 みなと 時空」が開催され,当館も「TOY & DOLL COLLECTION」として,約3000点のコレクションを展示しています。オープンから4ヶ月,日々会場を見守りながら,おもちゃ文化と来館者の方々を“つなぐ”ことができればと奮闘しています。
そんなKIITOでは日々、うれしいできごとがおこります。そんな中から2つをご紹介いたします。


**感激!おじいさまとの再会!?**

「TOY & DOLL COLLECTION」では、季節の企画展コーナーを設け、1年間の展示に合わせて、新春、春、夏、秋と冬4回の展示替えを行います。春の企画展「雛飾りと端午の節句飾り」(6月11日まで)では、明治・大正時代から神戸のご家庭で受け継がれてきた、御殿飾りや古今雛段飾りととともに、高さ1.2mの甲冑飾りと諸道具、座敷幟を展示しております。迫力のある華やかさ,そして繊細な日本の工芸技術が結集した端午の節句飾りは,宮内省御用達の神戸・上田人形店によるものです。
先日,その上田人形店ゆかりのご家族がお越しくださいました。


上田人形店を始められた上田クマスケ氏のお孫さんにあたるご姉妹です。実は,新聞でこの展覧会をお知りになった妹さまが先にお見えになり,「実家の方にも残っていない大きな節句飾りです!」と涙ながらに感激され,「必ず,名古屋の姉を連れてきます!」とおしゃっていました。お約束通り,先日,お姉さまとご一緒にお越しくださったのです。
おじいさまの上田クマスケ氏は,大阪で人形作りや道具づくりの修行をされ,節句飾りを作り始め,その後,ご姉妹のおばさまにあたるクマスケ氏の娘さん夫婦とともに,上田人形店を続けられていたそうです。
妹さんは入ってこられるなり,お姉さんに早く節句飾りを見てもらいたいようでソワソワ。神戸人形や世界の人形に目をむけるお姉さんの腕をつかんで,「先に飾りをみて!連れて行くから目をつぶって!」となんとも十代のご姉妹のようなご様子でした。―――「あらー!」と目を輝かせて喜ばれたお姉さん。「この小槌はおばさんが作ったものよね〜」,「この台座の装飾はやっぱり素敵だわ」と思い出が尽きないようで,わたしもいろいろとお話を聞かせていただきました。本当にお二人とも感慨深かそうに仲良くご覧になっておられました。
「おじいちゃんが上から見て笑ってるわ。」「おじいちゃんたちに会えたみたい!」と喜ぶお二人に,せっかくだからとそれぞれのカメラで写真をお撮りしたのですが,「あれ?同じカメラですね。」とお伝えすると「えー!神戸と名古屋でまったく別々に買ったのよ。いやーすごいわね〜」と,離れて暮らしていてもいくつになっても仲良しご姉妹さまでした。


上田人形店(神戸市兵庫区にありました)ゆかりのご家族ご来館
**夫婦それぞれの神戸人形物語**

台湾からご夫婦がいらっしゃいました。奥様は台湾人のピアニスト,旦那さまは骨董屋めぐりが趣味で,オペラ歌手のような歌唱力をもつ(!)イタリア人。
メインディスプレイコーナーに展示中の神戸人形
楽しんでいただけたらと神戸人形のコーナーでいくつか動かしてご案内していたところ,奥さまが小田太四郎のオリジナル作品,目が飛び出す『シルクハットの紳士』を
「シルクハットの紳士」
(昭和初期/小田太四郎製)
見てびっくり! 子どものころにおばあさまからもらわれた目が飛び出す人形にそっくりというのです。なんでも奥さまのおじいさまは東京大学へ留学され,おばあさまは東京歯科大学を出られて,台湾で初めての女性歯科医師になられたというお2人ともすごい方だった
日本玩具博物館版「西瓜喰い」
のですが,孫である奥さまに日本のおもちゃをたくさん送ってくださったそうです。こまやけん玉とともに目が飛び出す神戸人形もあって,その思い出がよみがえり,とても感激されていました。

旦那さまにも,旅行で訪れたロンドンの骨董屋さんで,今も忘れられないものがありました。とてもとても高くて買うことができなかった,と。それをここで見つけました!と興奮気味に話す先には神戸人形が―――。日本玩具博物館版の『西瓜喰い』を買われ,「I’m happy! So happy!!」とKIITO中に響く歌声で『O sole mio(オ ソーレ ミーオ)』を一節!「子々孫々までこのおもちゃを伝えていくよ!」と投げキッス(さすがイタリア人!)を残し,ご夫婦ともに大満足で台湾に帰って行かれました。


記念撮影(右からご来場のご夫妻、原田、受付スタッフの西台女史)
上田家のご姉妹,台湾のご夫婦ともにそれぞれが心深く大切にされていたモノに,当館の展示を通して再び巡り会え,つながることができた瞬間に立ち会えたことはとても嬉しい体験でした。