NO.45
メリー・クリスマス!
                                             (2007.12.24 学芸員・尾崎織女)

 玩具博物館に今年もクリスマスがやってきました。恒例によって、12月の日曜日は、クリスマス絵本の朗読会と展示解説会を開催してきました。

 朗読会の読み物は、その時間、会場にいらっしゃる来館者の年齢や雰囲気をみて決めています。昨日は、ドイツの『クルミ割り人形』、メキシコのクリスマスパーティーに登場する「ピニャータ」が主人公となる『クリスマスのつぼ』、フランスのキリスト降誕人形「クレーシュ」がプレゼントとして紹介される『まりーちゃんのクリスマス』などを取り上げました。
 ちょうど、今年度最後の学芸員実習の学生さん達をお預かりしており、彼女たちに、朗読会の司会役を体験してもらいました。たとえば、展示品の中からクルミ割り人形を取り出して、どういうものかを紹介し、絵本の世界へとつないでいきます。緊張しながらも、実習生たちは、ちょっとした役割を笑顔で終え、朗読者にバトンタッチすることが出来ました。
 幼稚園児や小学校低学年の児童たちは小さな膝を並べ、まだお話の筋書きを追いかけるのが難しい年齢の子たちは両親の腕の中、引き込まれたような表情で絵本の世界に入っていきます。

  
▲クルミ割り人形の紹介をする実習の学生                      ▲朗読会のひとコマ          


 イブの今日は、古き良きアメリカの農村でのクリスマス風景を描いたターシャ・チューダー母娘作『こねこのクリスマス』や、アメリカの空をかけてやってくるサンタロースを描いた『クリスマスの前の晩』、そして朗読会の最後には、スウェーデンの贈り物配達人、トムテの独白で綴られる絵本『トムテ』を取り上げました。
トムテと『トムテ』(リードベリ詩、ウィーベリ絵
山内清子訳、偕成社1979年)▲

 トムテは、スウェーデンの農家の家畜小屋の隅に暮らす小さな妖精です。家人がトムテを大切に扱えば、家畜の世話をしたり、夜の見張りをしたりして、家を守ってくれます。何百年も生きて、家人の誕生から死を、その人生の風景を見守り続けてくれると信じられています。
 クリスマス(スウェーデンではユール)・イブには、日ごろのトムテの親切と恵みに感謝して、彼の分のおかゆを家畜小屋などにそっと出しておきます。おかゆは家人がトムテへの感謝を忘れないことの証です。おかゆを受けとったトムテはクリスマスの朝、また来年も家の守り番としてここに居ることを約束するように、家の戸口にプレゼントを置いていくと伝えられ、それが森の木の実や花などのささやかなものであっても、人々は心から喜んだといいます。

 『トムテ』は、19世紀後半、スウェーデンの詩人リードベリが書いたもので、大晦日になると毎年、ラジオなどでも朗読がなされるほど長く広く愛されている詩です。1960年代に画家のウィーベリが詩のイメージを描いて完成したのがこの絵本ですが、何百年も生きて、何代も家人の一生を見続けてきたトムテが発する「人はどこから来てどこへ行くのか」という哲学的な問いは、この季節、私たちの心にすうっと沁み込み、普段忘れがちな大切なことについて、考えさせてくれる余韻をもっています。
 もちろん、朗読者の力量もありますが、『トムテ』の美しい言葉と幻想的な絵は、小さな子どもたちの耳や目を自然に傾けさせてしまう力があると思います。実際に、『トムテ』の独白が終わった後、一瞬の静寂ののち、どこからともなく、子どもたちのはぁ〜とため息と、大人たちのウ〜ンといううなり声が聞かれました。

 イブの日とあって、今日は一日中、クリスマス展会場に出入りして楽しまれるご家族が何組もあり、また、遠く東京や静岡などから、朗読会や解説会のためにご来館された方々もおられました。おもちゃ館は朝から夕方まで大盛況で、たくさんの方々と点したキャンドルの火を囲み、暖かい気持ちでクリスマスを過ごすことができました。私たちスタッフにとっても、とても幸せな一日でした。

 関連企画展

世界のクリスマス


NO.44
クリスマスのかわいいお客さま
                                             (2007.12.4 学芸員・尾崎織女)

 この時期、恒例となったクリスマス展に、博物館周辺のキリスト教系幼稚園から小さな子どもたちの来場が相次ぎます。20〜30人ぐらいのグループでの来館が多いのですが、そんなときには必ず、クリスマス飾りのお話をするようにしています。
▲メキシコ・ハリスコ州トナラのキリスト降誕人形
Photo by Haruhiko Shimauchi

 子どもたちは、幼稚園で、すでにキリスト降誕の物語を習っているので、各地の降誕人形を取り出して紹介すると、登場人物のことをよく知っていて私たちは驚かされます。時には、クリスマスに行う降誕劇の練習が始まっている幼稚園もあって、「ぼく、羊飼い!」「ぼくはメルキオールさま」「わたしは天使、羽根生えてるねん・・・」と、降誕劇で自分の担当する役柄について口々に話し出す子どもたちもいます。

 次に、クリスマスに飾られるオーナメントの中で子どもたちの目が釘付けになるのは、お菓子のツリー飾りでしょうか。チェコのパン細工・ヴィゾヴィーチェを「お煎餅!?」と思う子があったり、セルビアのきびがら細工のウサギのツリー飾りをしげしげと見ながら「ウサギの顔のところに飴ちゃんが入っとるぅ!」と嬉しそうにそっと教えてくれる子があったり・・・・・・小さい子どもたちの素直な発想はいつもおもしろくて、会場に居る大人たちの笑顔を誘います。
▲「お煎餅?!」チェコのパン細工・ヴィゾヴィーチェ
Photo by Haruhiko Shimauchi

 世界の国々に伝わるサンタクロースの色々な姿を紹介した後、キャンドルに火を点して、展示室の電気を消すと、口々に賑やかだった子どもたちはじっと炎を見つめて静かになり、周りが穏やかな空気に満たされます。そんなとき、暗い冬のさなかに祝われるクリスマスにとって、暖かい光がどれだけ大切なものなのかをそっと話すと、その言葉は子どもたちの中にすうっと、浸み込んでいくように感じます。
 それから、展示ケースの中からオルゴールを取り出して、音楽を流します。知っている曲だったりすると、誰からともなく、オルゴールに合わせてかわいい声の合唱になることがあります。
・・・・・・♪ 聖し この夜 星は光り 救いの御子は 御母の胸に 眠りたもう 夢やすく・・・・

 先日は、幼稚園の子ども達がクリスマス展会場を暗くして歌っている同じ会場に、何人か年配のサラリーマン男性が来館しておられました。静かにご覧になりたい向きには、大変、申し訳ないことになってしまいますので、ひと言お詫びを申しあげたところ、「最近、仕事に明け暮れていて、こんな風景に出合うことはなかなかないんですよ。ほっとしたというか、心が洗われたというか・・・。出張帰りだったのですが、ここに来られて本当によかったです。」と笑顔でおっしゃって下さいました。
▲展示解説会風景・・・・・・光のピラミッドに点火して

 博物館は、モノと出合う場であることに違いはありませんが、同時に、モノを囲んで、普段、接することのない様々な世代がそれとなく交流を図ることができる場でもあると思います。人は、様々な世代の様々な価値観の中でこそ、健全に育っていくものだと思います。小さな子どもやお年寄りや、そうした年齢層と普段はあまり接する機会のない働き盛りの大人たちが、同じキャンドルの火を囲んで、穏やかな時をともに過ごす……そうした体験は、たぶん博物館だからこそ可能なことなのではないかと、かわいいクリスマスのお客さまのたくさんの顔を見ながら、あらためて思ったことです。


NO.43
「日本絹の里」でちりめん細工展オープン!
                                             (2007.11.5 学芸員・尾崎織女)

 過日は、井上館長とともに群馬県高崎市にある『日本絹の里』へちりめん細工展の準備と開会行事に出かけていました。日本絹の里は、繭や生糸に関する資料や絹製品などを展示し、絹をつかった染色体験などを行い、絹をとりまく文化と蚕糸技術の継承にとりくむ
▲『暮らしの中のちりめん遊び』オープンの日
博物館施設です。昨年度末に、同館の企画担当者から、縮緬もまた絹織物であることから、「ぜひ、絹の本場で!」とお話があり、春から共同で企画を進めてきました。

 展示準備作業は、会場設営、資料開梱、展示、照明合わせ・・・と、スムーズに進み、『暮らしの中のちりめん遊び』展は、絹の里の4名の学芸スタッフと一緒に1日半がかりで立ち上がりました。
 吹き抜けになった会場中央のオブジェは、繭から幾筋にものびる絹糸と絹織物を表現しているそうですが、この展示のための造作であるかのように、ちりめん細工資料とよくマッチしています。
 オープンの日は、台風20号の余波で風雨が吹き荒れるあいにくの空模様でしたが、多くの方々が来場下さり、講演会も展示解説会も無事、盛況のうちに終えることができました。

 高崎は、蚕糸業で栄えた町らしく、駅に着くと、大小のダルマが出迎えてくれます。土産物店にもダルマたちがいっぱい! 郷土玩具愛好者の間で、「高崎」といえば、ダルマです。五穀豊穣、商売繁盛、選挙当選、受験合格・・・など、今では
▲駅の土産物店でもとめた七色の子だるま
1個=250円
何にでも利く縁起物として愛されていますが、この地方では、もっぱら、養蚕の守り、豊蚕を願う縁起物として愛されてきました。蚕が孵化することを「起きる」、繭をつくることを「上がる」ということから、張子のダルマ=起き上がり小法師と結びつけられたとも、またダルマの形が繭玉に似ていることからの発想とも考えられます。

 高崎ではダルマと並んで招き猫も有名です。彩色は華やかになったものの、今も昔ながらの木型から製作されているため、形は変わっていないようです。猫が蚕の天敵であるねずみを退治することから、ダルマと同様、養蚕の守りとも言われます。
 土産物店では、ダルマも招き猫も次々に買われていき、「彼らはけっこう人気者だよ」と地元の人たちが目を細めておられました。
▲高崎の招き猫 ▲蚕猫(中国・江蘇省無錫)

 そういえば、中国でも、養蚕の盛んな江南地方(長江下流域)では、「蚕猫」といって、ねずみを撃退すべく、蚕房においてまじないとした土製の猫がありました。当館では江蘇省や浙江省の蚕猫をいくつか所蔵しています。国が違っても発想は共通するのですね。
 
 ………ずいぶん、話がずれてしまいました。高崎でのちりめん細工展には、たばこと塩の博物館(東京・渋谷)でのちりめん細工展以降に収集した作品も展示しておりますので、関東・中部地方の皆さまには、紅葉狩りを兼ねて、養蚕の里、絹の里を是非、お訪ね下さい。






NO42
秋の展覧会                               (2007.11.1 学芸員・尾崎織女)

 ただ今、1号館では、秋祭りの季節にちなむ企画展『おもちゃで綴る祭』を開催しています。展示ケースの前では、日々、祭り好きの方々が、かつて子どもたちのものであった小さな神輿や山車の玩具に熱い視線を送り、また、各地の祭礼について熱心にメモをとる学生さんたちの姿も見受けられます。

 一方、6号館では、10月20日から『世界のクリスマス』が始まり、おもちゃ館にはひと足早いアドベントが訪れています。本年のクリスマス展は、二つのテーマを設けました。<クリスマスの造形>では、「クリスマス菓子とオーナメント」「自然素材のオーナメント」「キャンドルスタンドと光の造形」「キリスト降誕人形」「サンタクロースと贈り物配達人」の五つの項目で、クリスマス造形の意味を探ります。<世界クリスマス紀行>では、世界約45ヶ国のクリスマスに登場するオーナメントの数々を八つの地域に分けて展示し、各地のクリスマス飾りの特徴を紹介しています。

▲クリスマス菓子とオーナメントのコーナー

 展示室では、クッキー(レープクーヘン)やビスケット、無発酵パン(ヴィゾヴィーチェ)、砂糖菓子など、クリスマス菓子のオーナメントを見入る子どもたちも多く、また、毎年いらっしゃる方々には、今年新たに加わったツリー飾りやクリスマス人形などを展示ケースの中に見つけて、「わあ、これ、初めてね!」と目を輝かせておられたりもします。

 今回、新たに展示しているものの中から、ツリーのオーナメントを一つご紹介しましょう。
 右写真は、ドイツ・バイエルン地方の町、ディッセン(Diessen)にある錫工房で作られた線細工(フィリグランfiligrane)のオーナメントで
▲フィリグランのオーナメント (ドイツ・バイエルン地方)
す。1796年、アダム・シュヴァイツァーによってこの地に設立されたバベット・シュヴァイツァー(Babette Schweizer)社が製作している伝統工芸品。同社は、カトリック信者にとって欠かせないロザリオや護符などを作る工房として発展しましたが、バイエルン皇太子の家庭教師たちとも親交のあったバベットは、王家のクリスマスツリーについてのアイディアを求められることもあったようです。1850年代、当時の吊りランプをヒントに生まれたのがフィリグランの錫製オーナメントだといわれています。確かに吊りランプを連想させる円形や円盤状の造形(クーゲル)や護符に似た造形もありますが、華麗に細工されたトナカイの橇や馬車、天使のオーナメントも見られます。鋳型の一部は当時のものを使用し、今もすべてが手作り。モミの木のツリーに飾り付けると、繊細でありながら重厚で、風格のある輝きを放ちます。

 この特別展にあわせて、ミュージアムショップも模様替えいたしました。ドイツやデンマークのアドベントカレンダー、ドイツの木綿レースのツリー飾りやデンマークの切り紙細工のモビールなど、本場のオーナメントをお分けしています。
▲ ミュージアムショップもクリスマスに模様替え

 また、11月下旬に入ると、下記の日程で展示解説会なども開催する予定です。

展示解説会  世界各地のクリスマス飾りの特徴について、代表的な展示品を取り出しながら、尾崎がご案内いたします。
 日時=11月23日(祝)・12月9日(日)・16日(日)・23日(日)・
      24日(祝) ※各回14時〜

絵本朗読会  クリスマスに登場する人形やオーナメントを主人公にした物語を本会場で朗読します。絵本の世界に親しみながら、クリスマス飾りの文化的背景を広げていただけることでしょう。朗読は昨年に引き続き、当館スタッフの倉主真奈が行います。 
 日時=12月22日(日)・23日(祝)・24日(日) 
 ※各回 11時〜/13時半〜
ご予定の上、今冬も、ぜひご来館下さい。





 関連企画展

おもちゃで綴る日本の祭





NO41
賑やかだった6号館、人形たちの平和な世界              (2007.10.5 学芸員・尾崎織女)

 10月9日で『世界の国の人形』展が終わります。今夏は、世界の国々から1000体の人形たちが集い、6号館展示室は喧しいほどの4ヶ月間でした。
 人形の表情、衣装、仕草―――その美しさ、奇抜さ、温かさ、素朴さ、畏さ、哀しさ、厳かさ……、一つ一つの作品にそれぞれのよさがあり、優劣はつけられない。
 人形の表情、衣装、仕草―――数え切れないほどのバリエーションがあり、どれもこれもひとつとして同じものがないから素晴らしい。

操り人形/ベトナム ズール族の人形/南アフリカ 水上人形/ベトナム ケベケベ人形/ザイール
張子のローザ/メキシコ 少数民族の抱き人形/中国 民族衣装の抱き人形/アルメニア ポングラッツ人形/ドイツ

 海外からの来館者は、多くの展示品の中からいち早く、自国の人形を見つけ、「これは、間違いなく、私たちの(あるいは祖先の)姿です。」と誇らしそうに微笑まれます。そして、先日も、校外学習で来館した小学3年生たちは、展示品の中に一つだけ加え置いた東北地方の「こけし」を、数多くの作品の中から見つけ出すことができました。「日本の人形は・・・これでしょ?」と。
 小さいながらに、作られる国や民族の文化をしっかり体現した人形の姿は、今、この地球に暮らす人々そのもの。だから、私たちは自分たちの小さな自画像を当たり前のように見つけ出すことが出来るのです。
 「展示が終わる時にね、み〜んな、手をつながせて、記念写真を撮ったらどうかしら?! 世界平和のポスターに使えるわよ!」 もうすぐ展示が終わると聞いて、観にこられた当館友の会の女性が笑いながら、そう言われました。
 他国の人形を愛でるように、形あるどの人形にも同様の愛情を注ぐように、互いの文化を尊重し、互いの存在をいつくしみ合うことができたら、どんなに平和な世の中でしょうか。来館者の皆さんが、一つ一つの人形たちを優しい笑みを浮かべてご覧になっておられる様子に接する度、しみじみと思ったことです。

 1000体一同の記念写真はいくらなんでも無理でしたが、今日、展示風景のすべてを画像資料に収めました。先月は、館内外の秋の展覧会を3つもオープンし、さらに引き続いて、群馬県立の博物館「日本絹の里」で開催する『暮らしの中のちりめん遊び展』(10月27日〜12月10日)の準備……と、学芸室はてんてこ舞いしていたのですが、また、9日の夜からしばらくかけて、4ヶ月間の汚れをぬぐい、人形たちを収蔵庫やそれぞれの常設展示場所へ戻す作業を行います。そして、次の特別展『世界のクリスマス』を、スタッフ総出で用意いたします。今月は何といっても、子どもたちの遠足シーズン。幼稚園や小学校の学年単位での来館がぐんと増える時季ですから、一日も早く6号館をクリスマスオーナメントで満たし、季節を先取りしたいと意気込んでいるところです。


NO.40
夏のおもちゃ館だより2                    (2007.8.25 学芸員・尾崎織女)

 『夏休み面白おもちゃ教室』のスケジュールがすべて終わり、6号館2階の講座室は、再び、展示準備の作業場に替わりました。詳しくは、トップページでもご案内させていただいたように、9月13日から18日まで、西武池袋本店の西武ギャラリーで開催される『私の針仕事展』(日本ヴォーグ社主催)にご協力して、当館が所蔵するちりめん細工資料、約200点を出品いたします。
収蔵庫から登場した資料を確認し、展示シミュレーションしていく

 先日から、学芸室には今年度一期目の博物館学芸員実習生を受け入れており、展示準備作業は、収蔵庫から繰り出してきた収蔵品を開梱することから始めました。一点一点、薄用(葉)紙で梱包された資料を取り出しながら、実習生は、その手の技の細やかさと造形の斬新さに感嘆をあげながらの作業でした。
 資料がすべて登場したところで、いつものように、展示ケースの寸法に合わせて仮に作ったスペースの上に、サイコロ台なども置いて、展示シミュレーションしていきます。日本玩具博物館には、江戸・明治の古作品や文献資料などの出品が求められているので、昔の女性の針仕事の技をしっかりと見ていただける内容でまとめ、クラシックな雰囲気が漂う展示風景をつくっていこうと思っています。
 去る春に、たばこと塩の博物館で開催した『ちりめん細工の世界展』以降に収蔵した資料も出品し、また、グルーピングも新たな内容としておりますので、関東方面の方々には、どうぞご期待下さいませ。


 さて、当館の学芸員実習最終日は恒例によって、実習生作成によるクイズラリーを開催しました。今回は、1号館の『世界の船のおもちゃ』と6号館の『世界の国の人形』から出題する企画展クイズとし、ぜひ、注目してほしい展示品にスポットを当てた内容を選んでもらいました。実習生が選んだのは、「ヤミ族のカヌー(台湾)」「バリ島のダブルアウトリガー・カヌー(インドネシア)」「ポンポン船(日本)」「ズール族の人形(南アフリカ)」「煙だし人形(ドイツ)」「トラブル・ドール(グアテマラ)」などです。クイズラリー実施時間には煙だし人形の実演も行い、子どもたちも目を輝かせて楽しむことのできる面白いものだったと思います。

 実習日誌の最後のページにはこのように綴られていて、指導担当者として、とてもうれしく感じましたので、彼女の許可を得て、掲載させていただきます。
 <実習を終えて> ・・・・・
資料の登録方法、展示ケース内整理、梱包、開梱、キャプション(題箋)作りなど、学芸業務について、たくさん体験させていただきました。初めてのことばかりで至らないことが多くありましたが、丁寧に指導していただき、感謝しています。
日本玩具博物館は、設備が整った博物館とはいいにくいかもしれませんが、ここに来るとほっとする博物館だと思います。そして、来館される世界中の方々とつながりをもち、そのつながりを大切にされている、玩具だけでなく、人にも愛情が注がれているということを感じとることが出来ました。これによって、世界にひとつしかない博物館となっているのだと思いました。実習で学んだことを活かし、社会に出ても頑張っていきたいと思います。
                                    ・・・・・・・・・・
クイズラリー実施風景 「煙だし人形」のしかけに驚く子どもたち



NO.39
夏のおもちゃ館だより                                        (2007.8.19 学芸員・尾崎織女)

 お盆を過ぎても去らない暑さの中、皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。猛暑お見舞い申しあげます。お盆の一週間、7月から断続的に開催してきた「夏休み面白おもちゃ教室」をお休みさせていただき、私たちは、9月13日から日本・モンゴル民族博物館(兵庫県豊岡
▲展示シミュレーション風景・
コウノトリとヨーロッパのおもちゃのコーナー
市但東町)で開催される企画展『世界の鳥〜その色と形〜』の準備作業に、汗をふきふき、没頭していました。

 モンゴル博物館のある豊岡市は、ご存知のように、コウノトリの町として有名です。世界の鳥の玩具の中には、コウノトリを題材にしたものもヨーロッパなどに見られることから、コウノトリをはじめ、世界の鳥の造形物や玩具の色々を紹介しようという企画につながりました。鳥の種類別、地域別、それから鳥の玩具の機能別(動く仕組)に展示構成することとし、いつものように、展示ケースに見立てたスペースの中でシミュレーションして展示空間を鳥たちで埋めていきました。
 お盆明けの17日には、モンゴル博物館の学芸スタッフが来館され、一緒に梱包作業などを行い、無事に約300組の資料の搬出作業を終えたところです。

 ヨーロッパの国々で、コウノトリは新婚夫婦のもとへ赤ちゃんを運ぶと信じられているため、玩具のコウノトリも、亜麻布に包まれた赤ちゃんをくわえていたり、背負っていたり…と面白いものが見られます。会場には緑の木々も登場し、コウノトリやカモメ、オウムなどのモビールも数多く展示される予定で、様々な鳥のさえずりが聞こえてきそうな展示室になることでしょう。コウノトリの町で開催される世界の鳥の造形展は、私たちのおもちゃ館での展示とは、またひと味違ったものになると思いますので、どうぞご期待下さい。会期は、来る9月13日から12月4日までです。





▲鳥のおもちゃ梱包風景(6号館2階にて)

  
日本・モンゴル民族博物館のホームページ:http://www3.city.toyooka.lg.jp/monpaku/index.html

 鳥の玩具たちを送り出した後は、梱包作業場を講座室に模様替えして、夏休みおもちゃ教室を再開しました。今日は日曜日。11時、14時、14時30分の3回、「作りたい人、この指とまれ!」と呼びかけ、江戸時代のおもちゃ「かくれ屏風」を作りました。講師は館長と学芸スタッフのもちまわり。14時からの部には、ヨットでセーリングしながら世界を旅しているというフランス人家族も大喜びで参加されました。
▲『江都二色』に描かれた「かくれ屏風」。松風独楽
(ぶんぶんごま)に手車(ヨーヨー)の絵も見える


 「かくれ屏風」は、安永2(1773)年に出版された玩具絵本『江都二色(えどにしき)』や、嘉永6(1853)年に上梓された風俗誌『守貞漫稿(もりさだまんこう)』にも紹介された江戸時代の人気玩具です。
 数枚の板が布や紙の帯でつながっていて、屏風のたたみ方、開き方によって模様が消えたり、現われたりするカラクリが人気の秘密。そして、例えば「ちちんぷいぷい…模様よ、消えろ!」とオマジナイをかけるなどして、相手に屏風の開き方を気付かれないようにするのが、遊び方のコツですが、この素朴な玩具は、電子ゲーム時代の現代にあっても、小さな子も大きな子も、大人だって驚きの笑顔に変えてしまう不思議な力を秘めているのです。
▲スペインのヤコブの梯子(Jacob’s ladder)

 ヨーロッパ圏では、同じ仕組の玩具が「ヤコブの梯子(Jacob’s ladder)」と一般的に呼ばれており、当館でも十数カ国のものを所蔵していますが、教室にご参加されたフランス人は、「日本のものは、模様が付けられているので、とても面白い!」と拍手して下さいました。

 ぎらぎらと照る太陽の中、庭に繁茂する緑を背景に、真っ黒に日焼けした子どもたちの賑やかな声が響き渡る・・・・いつもどおりの夏休み風景が繰り広げられるおもちゃ館です。それにしても、今年の8月は、温帯ばなれした暑さですね!

▲おもちゃ教室風景「かくれ屏風」作り(6号館2階にて)


NO.38
長島美術館訪問                                        (2007.7.24 学芸員・尾崎織女)

 鹿児島市にある長島美術館で日本玩具博物館コレクションによる『なつかしのおもちゃと四季のちりめん細工』展が始まりました。先週は、館長と担当学芸スタッフと鹿児島へ出かけ、美術館の方々と一緒に3日間にわたって準備作業を行いました。

 長島美術館は、錦江湾にそびえ立つ桜島を真正面に望む海抜110mの高台にたち、椰子や蘇鉄など、亜熱帯樹の葉々が青空を切り取る素晴らしい自然景観の中にあります。長島企業グループ創立者の故・長島公佑氏が蒐集された1000点の美術品を収蔵し、展示室はピカソやルノワール、シャガール、ロダン、マイヨールなどヨーロッパ絵画・彫刻の巨匠の作品、新大陸先史美術品、それに系統だった薩摩焼のコレクションを7つの展示室に展観されています。
 海から吹く湿った風と熱い日差しに包まれた庭園に立ち、亜熱帯の植生と調和的に設計された建物を目に収めて、私たちはそのスケールの大きさに息をのみました。・・・・・・ここは、日本だろうか?!と。

長島美術館入り口  美術館庭園・・・画面右側に桜島をのぞむ
 開館は平成元年と聞きます。バブル経済期に計画された美術館・博物館を、地方自治体がどんどん建設していた時代です。けれど、多くのそうした施設と長島美術館が異なるのは、蒐集された美術資料が先ずあって、それらのために施設がつくられたということ。照明の方法であったり、作品の位置や空間のレイアウトであったり、展示される数量であったり、展観の動線であったり・・・・・・展示品を魅力的に見せるための素敵な工夫を展示室の随所にみつけると、この美術館企画運営者の作品への愛情に触れる気がします。そうして愛されている品々が幸せそうに暮らす家を観覧すると、見る側もまた幸福に満たされるのです。
 
 日本玩具博物館の近代玩具とちりめん細工作品約500点のゲストハウスは、世界に認められた美術品たちが穏やか暮らす、この家の第7展示室です。展示作業の様子と出来上がった展示風景の一部を画像でご覧下さい。

展示品の開梱作業 小展示台、アクリル台を整える 展示ケースの中での展示作業
 長島美術館の長島館長はじめ、細やかな心くばりができるスタッフの皆さんとの共同作業も楽しく、オープン前日には、日本玩具博物館らしい要素を盛り込んだ展示が完成しました! 初めて企画から担当した当館学芸スタッフの井上が、心を込めて懸命に展覧会づくりに励んでくれ、その意味でも今回の仕事は、私にとって嬉しいものとなりました。
 第7展示室入口から 昭和初期〜10年代のおもちゃ展示コーナー
ちりめん細工・迷子札のいろいろ スポットライトをあびた昭和初期の木馬

 このように、日本玩具博物館の資料たちは、ここでも、誇らしそうにひとつの世界をつくっています。まとまった数の近代玩具が歴史を追って展示されるのも、ちりめん細工が紹介されるのも、鹿児島では初めてのこととあってか、オープン前日からマスコミ関係の取材などもどんどん入っていました。
 この夏、当館の玩具たちは、南国の方々とどんな出会いを果たしてくれるでしょうか。

 お近くにお住まいの方はもちろん、旅の計画をたてていらっしゃる方にも、ご訪問をおすすめいたします。
桜島を一望できる館内のレストラン「カメリア」では、『なつかしのおもちゃと四季のちりめん細工』展にちなんだお料理も用意されるそうです。ぜひとも、お出かけ下さい。


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