NO.100
ドイツからのクリスマス・プレゼント                (2010.12.21 学芸員・尾崎織女)


聖ニコラウスのブーツ/ドイツ
Frohe Weihnachten! Merry Christmas! 曇り空の寒い朝、私の机の上にドイツからの小さな包みが届いていました。差出人はヒラ・シュッツさん! ヒラさんは、以前にもこちらのページでご紹介させていただきましたが、15年来、日独両国の玩具や人形について、資料や情報を交換しあってきた私たちの大事なミュージアム・フレンドです。クリスマスカードとともに届けられたのは、聖ニコラウス・デーのブーツと、『聖ニコラウスのミラでの伝説』について書かれた絵本でした。
ヒラ・シュッツさん、いつも、夢のある贈り物をありがとうございます! 彼女は、来年5月13日、バート・キッシンゲンの町に小さなおもちゃ博物館を開く計画で、現在、鋭意、ご準備中なのだそうです。オープンの暁には、日本からのお客さまにもたくさん訪ねていただきたいと思います。

ヒラさんによると、聖ニコラウス・デーの前の夜、つまり「12月5日の夜、ドイツの子どもたちは、部屋のドアの前にこのようなブーツを置き、聖ニコラウスがこの中いっぱいにプレゼントを詰め込んでくれるよう夢見ながらベッドに入る」そうです。 やわらなか羊毛から手作りされたブーツは、先がとんがっていて、メルヘンの世界に登場する妖精の靴のようです。

ご存じのように聖ニコラウスは、今、世界で活躍するサンタクロースのモデルとなった人物。紀元280年頃、小アジアのローマ帝国パタラの町に生まれ、のちに偉大な大司教として多くの人々から敬愛を受けました。無実の罪で囚われの身となった人を救ったり、貧しい家族や子どもたちに施しを行ったり、また漁師たちを海難から救ったり……と、様々な伝説が残され
聖ミクラーシュ
(=聖ニコラウス)/スロバキア
ています。この聖ニコラウスが弱者に贈り物を届けたり、困っている人に金貨を授けたりしたという伝説と、古い時代より伝わる冬至祭の贈り物交換の習慣が溶け合って、聖ニコラウスが没した12月6日(あるいは5日の夜)にプレゼントを運ぶ聖人の物語が定着していったといわれています。
セントニコラウス→ジンタクラウス(オランダ語)→サンタクロース(アメリカ合衆国で創出された名前)と、国により時代によって名前が変化しても、やがてプレゼントの日が違っても、クリスマスにおける贈り物は、これからも、聖ニコラウスの伝説とともに受け継がれていくのでしょう。

中沢新一氏は、『サンタクロースの秘密』の中で、クリスマスを“贈与の祭り”とし、ヨーロッパにおけるかつてのクリスマスは、“死者の霊と生者の間に贈与の連環を創出するための儀礼“でもあったと書いておられます。あるいは、“神が人間に救世主を贈与したことを祝う祭り”であると。ところが、サンタクロースの登場によって、クリスマスが、“生きている者同士による贈与の祭り”に変化していったと指摘しておられます。きっとそうなのでしょう。けれど、私たちの国に「お歳暮」があるように、新年には「お年玉」があるように、一年のカレンダーが終息して、また新たに何かが生まれ変わるこの時期、「モノ」にのせて人の心を動かし、世の中に目に見えないものの循環をつくりだしていく必要性を、私たち自身、心のどこかで感じているのではないでしょうか。新たな年が、物質的な豊かさをこえて、心豊かな日々であるように。幸せな世の中であるように…。

残り少なくなった2010年、12月の日本玩具博物館では、「クリスマス・プレゼント」をテーマに、クリスマス絵本の朗読会や解説会を開きながら、同じキャンドルの灯を囲んで、ご来館の方々と心愉しい時間をご一緒させていただいております。
皆様、今年も、物心両面にわたり、多くの贈り物を与え続けて下さりありがとうございました。贈られたものを返していけるようスタッフ一同、来年も頑張ってまいりたいと思います。どうぞ、お身体ご自愛下さり、暖かい年末年始をお過ごし下さいませ。




朗読会風景……『サンタクロースとぎんのくま』
の朗読に聴き入る子どもたち
展示解説会風景……光のピラミッドに見入る子どもたち


NO.99
麦わら細工のヤギづくり                         (2010.12.4 学芸員・尾崎織女)


本日製作した「麦わらのヤギ」
古代、北半球の人々は、新たな年を迎える節目を「冬至」と考えていました。冬至に一度、死んでしまった太陽は、この日を境に、再び生命を盛り返していきます。冬至の日から2、3日後の日々を「永遠の太陽の誕生日」「太陽の祝日」と呼ぶ民族も多くありました。とくにスウェーデンやフィンランドなど、北欧の国々では、太陽の再生を祝して盛大な祭礼を行ったようです。新たな年の豊穣を司る神々や主神オーディン、あるいは雷神トールなどには、動物の犠牲(いけにえ)やたくさんの食べ物が捧げられました。ここに、“イエスの降誕際”としての「クリスマス」が溶け合い、北欧では、「ユール」という名の、この地域独特のクリスマスが祝われるようになったのです。
北欧のユールには、麦わらという素材がとても重要です。ユールが近づくと、農村部などでは、家の屋根や戸口に麦の穂束がつけられたり、麦わら細工のオーナメントが窓辺に飾られたりします。麦わらには実りをもたらした「穀物霊」が宿ると信じられ、家畜小屋に置いて動物たちの守りとなり、畑にまけば新たな年の豊作をもたらしてくれるといわれます。
当館のクリスマス展、北欧のクリスマスのコーナーではたくさんの麦わら細工のオーナメントをご紹介していますが、中でも、目をひくのが大小のヤギたちです。北欧の人たちは、麦わら細工のヤギ「ユーレ・ボック」をみれば、ユールを思い起こすといいます。ユールにヤギが登場することには、かつて、この季節になると、豊穣のシンボルであるヤギが大地の女神に捧げられていたことに関係がありそうです。

さて、今冬のワークショップでは、この「麦わら細工のヤギ」を取り上げました。スウェーデンやデンマーク、フィンランドなどで作られている麦わら細工を参考にして、私どもが小さなヤギづくりをご紹介するのは、今回が初めてです。本日は、午後から約20組の方々が麦束を縛ったり編んだりする作業に没頭し、個性的で可愛らしい作品が出来上がりました。町内の農家の方から頂戴した小麦わらは、今年、気温が低く、雨の多い梅雨を過ごしたせいか、いつもより堅くて、糸で縛っていく作業が少々難しかったのですが、お酢を加えたぬるま湯に一昼夜あまり浸けこんだ麦わらは、ずいぶんやわらかく粘りも出ていて、皆さん、いい作品を作って下さいました。
麦穂をひげに見立てた立派な雄ヤギ、脚を前後に広げて今にも駆け出しそうなヤギ、角をくるりと巻いたおしゃれなヤギ、角をピンとたてたトナカイのようなヤギ………。小学1年生の子どもたちも、手づくり大好きな大人の皆さんも、1時間半ほどかけて、素敵な作品を仕上げていかれました。
講座風景
完成した作品をもって記念撮影  皆さんの作品いろいろ
今日、ご紹介したのは高さが12cmほどの作品でしたが、「作り方がわかったので、今度は大きなヤギ作りに挑戦したい」とか、「毎年、ひとつずつ、いろんな種類の麦わら細工を作って何年もかけてクリスマスツリーを賑やかにしたい」とか……、参加者の皆さんは、とてもうれしいことを話し合いながら帰っていかれました。ご参加いただいた方々、楽しいひとときをご一緒して下さりありがとうございました。
作り方を画像で少しご紹介いたします。
毎年、このようなクリスマス飾りを取り上げ、作りながら、その意味や歴史についてもご紹介してもまいりますので、また来年のワークショップもご期待下さいませ。
@ 25本ほどの麦わら(25cm前後)を束ね、中央を木綿糸でしっかりしばる。
Aしばったところを起点に10本を下に曲げて前脚に、
15本を上に曲げて首をつくる。 
B背の長さを決めたら、木綿糸で結び、
そこから上へ3本の麦わらを三つ編みして
尾をつくり、10本を下に曲げて後脚にする。
Cひげをつける場合は首の頭をしばったところに麦穂をつけて、糸で結びとめる。
Dお尻に残った麦わらを切り落として 肢体を整える。
Eリボンを飾って出来上がり!


NO.98
姫路「サテライトミュージアム」2010                  (2010.12.1 学芸員・尾崎織女)
サテライト(satellite)は衛星。転じて“本体から離れて存在するもの”。
この度、姫路市域の10のミュージアムが、JR姫路「えきちか」に、本体からサテライトを飛ばして 合同で博物館施設紹介展を開催することになりました。

新しく建て替わる姫路駅周辺ビル群の一角に、「サテライト・ミュージアム」をつくるかどうかの実験的な催しで明日12月2日(木)から4日(土)まで、会場をオープンします。

この催しの企画者と姫路市と10のミュージアムと・・・・・・、喧々諤々、夏頃からミーティングを重ね、ずいぶん時間もかけてきたことでした。姫路市域では、このような試みは初めてのこと。積み重ねてきたミーティングでは、各施設の考え方や博物館活動に対する思いを伺う機会ともなり、私自身、よい勉強をさせていただきました。

予算がゼロに等しい中での決行ですから、主催者も参加する私たち博物館側も大変なことだらけですが、日本玩具博物館も午前中をかけて私たちの小さなサテライトを立てました。
今回のサテライトの中身は、本館で開催中の特別展『世界クリスマス紀行』のエッセンスをご紹介する小展示です。
もし、よろしければ、姫路「サテライトミュージアム」を覗いていただき、会場設置のアンケートにご意見ご感想をお寄せ下さい。
もちろん、本館へは、是非ともお越しいただきたく思っております。




 
日本玩具博物館の「えきちか」サテライトの様子(一部)



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    会期:12月2日(木)〜12月4日(土) 10時〜16時
    会場:姫路駅地下街本会場/入場無料
    主催:特定非営利活動法人スローソサエティ協会
          http://www2.memenet.or.jp/slowsociety/
    協力:株式会社姫路駅ビル
    後援:姫路市教育委員会

4年後に新しく生まれるJR姫路駅の北駅前広場は、大手前公園と同じくらいのスペースで、 西半分はバスやタクシーの乗り降りに、東半分は市民が楽しく使える広場になります。
この広場をどう活用するのかをさぐる社会実験第2弾として「えきちかサテライトミュージアム」が開催されます。
姫路〜播磨の文化・芸術・歴史・自然を紹介する各ミュージアムの魅力や開催中のイベントなどが一目瞭然で、こどもたちが楽しく遊んで学べる体験コーナーもあります。

参加ミュージアム:姫路文学館・日本玩具博物館・姫路科学館・姫路市立水族館・兵庫県立歴史博物館・姫路市立美術館・姫路市平和資料館・姫路市立平和資料館・姫路市書写の里美術工芸館・姫路市立手柄山温室植物園・姫路市立埋蔵文化財センター





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NO.97
新春の企画展準備中〜12年ぶりの兎たち〜               (2010.11.19 学芸員・尾崎織女)
日本玩具博物館では毎年、11月になると、新春の企画展の準備を始めます。テーマは、お正月の遊戯だったり、新年の干支の動物だったり…と年ごとに異なりますが、年賀状の図案を探して来館される方々が増える時期でもありますので、秋の企画展を急いで片づけて、早く緋毛氈を敷き詰めなくては…と少々焦る気持ちで日々を過ごしています。
展示を待つ兎たち

今回は、平成23・2011年の干支「辛卯(かのとう)」を祝って、兎の郷土玩具と、兎が軽く“飛び跳ねる”ことにつなげて、羽子板をたくさん展示しようと準備を進めています。昨夜は、収蔵庫から兎の郷土玩具を取り出しました。12年の長い眠りから覚め、薄暗い部屋を出た兎たちは、心なしか、まぶしそうに学芸室の机の上に並びました。本日は、干支の玩具の登場を心待ちにして下さっている方々から、「早く兎がみたい」と、お電話を頂戴しましたので、展示に先立って、出品予定の兎の郷土玩具について、ご紹介したいと思います。

日本の山野には、北海道のユキウサギとエゾナキウサギ、本州・四国・九州のノウサギ、奄美大島と徳之島のアマミノクロウサギ、主に、それら四種類が棲息しているそうです。里山を駆けまわる野兎は、農作物を荒らすものとして駆除の対象とされ、また、兎肉は、かつて牛馬の肉食をタブーとした日本人にとって、大切なタンパク源でもありました。こうした理由もあってか、兎は豊かさのシンボルとも考えられてきたようです。そして、卯(=兎)は、その姿形のかわいらしさと
当館の掲示パネルは、PCで作成した原稿を
プリントアウトして、作成します。
ユニークさから、絵画や工芸の意匠としても愛され、江戸時代後期になると、郷土玩具の題材としてもとりあげられるようになります。今回の展覧会では、兎の造形に着目し、「兎〜豊かさと吉祥のシンボル〜」「兎と伝説」「動く兎の玩具」の項目で展示します。

さて、兎の郷土玩具の中には、伝説や物語を題材にしたものが目立ちます。それは、「因幡の白兎」「足柄山の金太郎」「カチカチ山」などの子どもたちに親しまれている昔話だったり、“月には兎が住んでいて、餅をついている”という伝説だったり、また謡曲「竹生島」に歌われる“波兎”の景色だったり…。伝説をみると、兎は弱い動物でありながら、賢く、また未来を予言する能力をもつと考えられていたことがわかります。古来、白い動物は瑞兆(ずいちょう=良いことが起こる前兆)であると信じられていたことと、白兎が愛されたこととは関係があるのかもしれません。
「月には兎がすんでいる」という伝説をもつ国や民族は珍しくないといいます。中国の子どもたちに尋ねると、不死の仙薬を王さまから盗んで月へと逃げた嫦娥(じょうが)に仕えて、「月の兎が薬をついている」と教えてくれます。中国では薬のところが、日本に伝承されて、餅になったのでしょうか。
丸くなった兎の姿「玉兎」は、月そのものの象徴であり、満ち欠けを繰り返す月の姿は、女性の象徴でもありました。東京の郷土玩具、今戸焼の「月見兎」は、女性の“月のモノ”が正常でありますように…と願って、女性たちが買い求めました。月と兎と女性とのつながりがみえる郷土玩具のひとつです。
左から、稲畑土人形・兎と金太郎(兵庫県丹波市)/大阪張子・カチカチ山の舟(大阪府大阪)/伏見土人形・玉兎(京都府京都市)/久の浜張子・首ふり兎(福島県いわき市)/金沢張子・兎車(石川県金沢市)/今戸焼・月見兎(東京都台東区)
このように、郷土玩具の色や形、背景に広がる物語を通して、私たちの祖先が兎という動物に何を感じ、何を想い、どんな願いを託してきたのかが見えてくるようです。新春らしい企画展『干支のうさぎと羽子板』展は11月27日から。新収蔵の羽子板もたくさん登場します。どうぞご期待下さい。

NO.96
玩具と母子をめぐるお話〜日本助産師会の会合に参加して〜   
(2010.11.4 学芸員・尾崎織女)
文化の日、日本助産師会兵庫支部の大会が神戸市内のホールで開かれました。助産師会の事務局より「玩具(おもちゃ)と母子にまつわるお話」をするようにとのご依頼を受け、大会に参加させていただきました。戦前は「産婆」、戦後になると「助産婦」、そして2002年以降「助産師」と呼ばれるようになった女性たちは、出産を助けるだけでなく、親となるための準備や新生児の健康相談など、多くの職務をこなし続けておられます。
赤ん坊を見守る「這子(ホウコ)」
…日本のぬいぐるみ人形の元祖
ホールに入り、演台に立つと、老若50人の助産師さんたちが満面の笑顔で迎えて下さいました。その笑顔は、みな、きりっとしていて、芯の強さと温かさにあ
『江都二色』
(安永2年の玩具絵本)に描かれた「這子」
ふれています。昭和30年代後半生まれの私は、母方の祖母の家でベテランの“助産婦さん”によって誕生し、大きく育つまでの間は何かとお世話になったそうです。会場の皆さんの笑顔に、何かほっと懐かしいようなものを感じたのは、私の助産婦さんを思い出したからでしょうか。ご挨拶をすませた後、以下のような内容でお話をさせていただきました。

1.玩具(おもちゃ)という言葉が明治政府によって採用されたこと。それまで「手遊び」や「手守り」と呼ばれていた玩具には、呪術的な要素がたくさん詰まっていたこと。
2.「天児(アマガツ)」「這子(ホウコ)」「犬筥(イヌバコ)」「犬張 子」「でんでん太鼓」など、出産を見守り、子育てにかかわる伝統的な人形や玩具について。
3.赤ん坊を魔物から守るために、衣類にほどこされた魔除けとまじないについて。
4.高松の「ほうこうさん」、東京の「疱瘡よけミミズク」、会津の「赤べこ」、鴻巣の「赤もの玩具」など、病魔を払い、健康を祈る玩具とその物語について。玩具に赤が多いことの意味について。
 テーマごと、現在に残される人形や玩具、文献資料をご紹介しながら、全体として、玩具の世界が表現する近世的な自然観や子ども観、人生観などをお伝えしようと試みました。





一ツ身の祝い着
背中に付けられた押絵の背守り
香川県高松の張子人形
「ほうこうさん」、子どもの熱病
快癒を願う
東京都の郷土玩具
疱瘡除け・張子のみみずく
東京都の郷土玩具
安産の守りともなる犬張子


助産師の方々からは、「ほっこりとした温かい世界に触れ、気持ちが温かくなりました」、「昔、知らずに行っていた風習に、疱瘡除けの意味があったこと、今初めて知ることができました」、「科学の力一辺倒では子どもは生まれないし育たないこと、おもちゃの世界が教えてくれていたのですね。自分たちの仕事にも誇りがもてます」………というような言葉を次々にかけていただいて、私は嬉しい気持ちでひとときを終えました。

命の誕生にかかわり続けて、20年、30年、40年、50年、60年…の職業婦人の皆さんは、日々、自己研鑽を怠らず、まだまだこれから勉強していきたい、と前向きでいらっしゃいます。「自身の職業に誇りをもち、ぴんと背筋を伸ばして、日々、学んでいくこと」――その姿勢が人間の品格をつくりあげるのだと、人生の先輩方から、素晴らしくパワフルな姿を通して教えていただきました。たとえば、昨日は助産師の皆さんでしたが、日本玩具博物館の玩具たちは、こうして、様々な分野で活躍なさっておられる方々と私たちをつなぎあわせてくれるのです。



NO.95
オーナメントの色を見つめて〜バージン・ブルー〜          (2010.10.31 学芸員・尾崎織女)

行楽シーズン真っ盛り。日本玩具博物館も、各地からたくさんの観光バスをお迎えしています。日曜日の今日は、午前中に3件、午後に1件の団体でのご入館があり、館内は秋らしいにぎわいに包まれました。1号館の『玩具にみる日本の祭』では、日本各地の祭礼玩具を展示していますので、来館者ご自身のふるさとの祭を懐かしく話し合っておられる様子に接したり、また、地元の屋台の謂われや歴史について、私たちがあれこれお教えをいただくこともあり、展示室は静かな語らいにあふれています。

ツリー飾り・バージンブルーのガラス玉
(スペイン)


6号館で開催中の秋冬の恒例展『世界クリスマス紀行』は、今年も好評です。今日、展示室に立っていると、バスでご来場の方が、スペインのガラス玉のオーナメントの色が綺麗だと話しかけて下さいました。
「一本のクリスマスツリーの飾りが青一色っていうのは、とてもお洒落で、すがすがしいものですね。」と。
「これは、バージンブルー、マリアさまを象徴する色なんです。スペインに暮らす多くの人たちは、聖母マリアを敬慕する気持ちが深いようで、クリスマス飾りの中に、このブルーが繰り返し登場してきます。」そんなふうにお話しすると、「まぁ…、この色が綺麗だから、というだけじゃないのね。意味があるのね。」と、きらきらした目で、ガラス玉の色を見つめておられました。
                           
スペインの北東ザラゴザという町には、聖母マリア(Madre de Dios)をまつる教会、エルピラールのバシリカ(La Basilica del Pilar)があり、マリアを敬慕する世界の人たちに、とても重要な巡礼の地になっているそうです。エルピラールのマリアは、スペインという国の守護聖人。ですから、スペインにおいて、マリアさまを表す「青(バージンブルー)」は、クリスマス(=ナビターNavidad)において、意味のある色なのだと思います。

クリスマスに登場する「キリスト降誕人形」を見てみましょう。馬小屋に誕生する幼子イエスの様子を箱庭風につくったものですが、スペインでは、ベレンまたはナシミエント、イタリアではプレゼピオ、フランスではクレーシュと呼ばれ、親しまれています。胸に手をあて、幼子を見守るマリアが身にまとっているローブは青色、バージンブルーです。高さ5cmにも満たない小さな像にも、それが誰とわかる色が選ばれているのです。



↑ ベレン(スペイン)
   幼子イエスを見守るマリアとヨゼフ
  ↑ プレゼピオ(イタリア)
  幼子イエスを見守るマリアとヨゼフ。
乳香と没薬と黄金を捧げる東方の三博士。

↑ クリブ(エジプト)
 幼子イエスを見守るマリアとヨゼフ。
乳香と没薬と黄金を捧げる東方の三博士。

展示品にじっくり接していると、そこに込められた意味が見えてきます。たとえば、ツリー飾りの中の「赤」や「黄金」という色は何を象徴しているのか、展示室でクリスマスの色を見つめていただきたいと思います。そこから、各地のクリスマス行事への探求が始まるかもしれません。


NO.94
『世界クリスマス紀行』展オープン!                  (2010.10.26 学芸員・尾崎織女)
日本玩具博物館6号館では、恒例の世界のクリスマス展が先週土曜日、無事オープンしました。今回のテーマは『世界クリスマス紀行』。ヨーロッパや南北アメリカ大陸はもちろん、アジアやアフリカのクリスマス飾りも登場して、地域色豊かな会場に仕上がっています。各地
▲北欧のクリスマス/東欧のクリスマス
域の展示ケースを“木枠のガラス窓”に見立て、窓越しに世界の家庭のクリスマス飾りを観歩く様子をイメージしながら展示を行いました。

たとえば、壁に這わせたモミの木に麦わら細工のツリー飾りを吊るしたり(スウェーデン)、窓枠いっぱいにガラスのオーナメントを飾ったり(オーストリア)……、そうすることで、クリスマスの部屋に奥行と広がりをつくろうと試みました。また、中南米のコーナーでは、天井から切り紙細工の旗を吊るしたり、クリスマス習俗を描いた民画を壁に飾ったりして(メキシコ)、クリスマスのパーティー会場を演出してみました。

会場を開けた日、明るい秋の庭から展示室へと入ってこられた方々から「うわぁ〜、綺麗〜!」という歓声があがります。何日も深夜作業を続けて、少々疲れた私たちの心に幸せが踊る瞬間です。
 
今回、会場に立っていると、「北欧のクリスマス」と「東欧のクリスマス」に来館者の目が集中しているように思われます。
ここでは、深い冬の雪に閉ざされる国々に発達したシンプルかつ繊細な手工芸を、素材や種類ごとに展示しています。麦わら細工、きびがら細工、切り紙細工、レース編み、刺繍、木の実細工、パンや菓子細工……。そこには、商業的な匂いはなく、家庭的な暖かさと民族信仰的な祈りが漂っていて、観る人を穏やかな気分で満たしてくれます。


▲麦わら細工のツリー飾り(チェコ)
今日は、チェコの農村部に伝わる麦わら細工のツリー飾りをご紹介しましょう。麦わらには、その年、畑に麦を実らせた穀物の霊が宿っているといわれ、ヨーロッパ各地のクリスマスには、豊かな収穫の喜びが込められた数々の麦わら細工が登場します。チェコのオーナメントは、ライ麦や小麦の麦わらの先端部を使い、一昼夜ほど、水に浸して柔らかくした後、編んだり紐で縛ったりして作られます。ベル型やハート型、球型の他、かご型、白鳥やかたつむりをかたどったものも見られます。球型は太陽や星を、カゴ型は木の実(=冬の栄養)を象徴しています。中でも面白いのは、蹄鉄(ていてつ)型で、ツリー飾りのほか、壁飾りとしても少し大きなものが作られています。「この形にはどんな意味があるのですか?」と、今日も来館者からご質問を受けました。

蹄鉄は、主に馬の蹄に装着されるU字型の器具(horseshoe)のこと。馬を守るための蹄鉄がヨーロッパに登場するのは、ギリシャ・ローマの時代ですが、やがて、使用できなくなった古い蹄鉄は、家や家畜小屋の扉のまわりに打ちつけると、住人や家畜を災厄から守ってくれる魔除けの標章ともなっていきました。蹄鉄が「お守り」となった理由について、デズモンド・モリス著『世界お守り大全』(東洋書林)には、いくつかの説が紹介されています。
▲蹄鉄型の壁飾り(チェコ)


@蹄鉄に使われる鉄は、古代の貴重品であり、超自然的な霊力をもつと考えられたため。
A蹄鉄の形は“女性”を象徴するもので、建物に置かれた蹄鉄は、悪霊を混乱させるから。
B蹄鉄の形が、守護の力をもつという“新月”を連想させるから。


キリスト教における題材のみならず、民間に伝わる魔除けや招福の造形が、クリスマス・オーナメントに作られることは非常に興味深いことと思います。『世界クリスマス紀行』展では、世界各地に伝わるクリスマス造形の意味についてもご紹介しておりますので、「なぜ、この形が、なぜ、この人形がクリスマスに登場しているのか?」――今、一歩、ガラス窓の中をのぞきこんでご覧いただくと、より面白く、クリスマス行事をとらえていただけることと思います。



NO.93
じっくり見るということ                    (2010.9.4 学芸員・尾崎織女)


雨のない日々です。しおれてしまいそうな草木が可哀想だと、毎朝のようにスタッフのK子さんがたくさんの水を撒き、玩具館の庭には、いっとき涼風が立ちこめます。今朝は、庭の石畳の道に出来た水溜りにアゲハチョウやアオスジアゲハが集まり、羽根をひらひらさせて水を飲む様子が綺麗でした。真夏以上に激しく照りつける太陽は、あっという間に石畳を乾かしてしまいますが……。
 酷暑の九月をいかがお過ごしでしょうか。お見舞い申しあげます。


夏休みが終わって初めての週末。熱い夏を過ごして真っ黒に日焼けした小学3年生の男の子たちが、遊びのコーナーでビー玉レースに歓声をあげています。遊んでばかりで時間を過ごす子どもたちに、「何に興味があるか?」と尋ねると、意外にも「コマ!」と答える子があったので、4号館の世界の民芸玩具コーナーへ誘いました。
世界のコマのいろいろ

 「このお部屋には世界の国々のおもちゃを展示しています。コマはコマでも、糸ひきゴマ、投げゴマ、ひねりゴマ、もみゴマ……形も回し方も違います。いろんな国のコマを全部探して、いくつあったか答えて下さい」と展示ケースの中を覗き込むよう促しました。

3人の男の子たちは探し始めました。やがて、「ねぇ、トルコっていう国の“これ”もコマ?!ヘンな形している。」と驚いたような声があがります。「いっぱいある。あり過ぎる…。手分けして探そう!」

中国、韓国、タイ、インド、ラオス、パキスタン、トルコ、チュニジア、ブラジル、メキシコ、イタリア、ギリシャ、ドイツ、イギリス、フランス、スイス・・・・・・。
答えは、58個。
「みんな回してみたいな。」
「僕は、ブラジルのコマが好き。」
「僕は、スイスの茶色のコマがかっこいいと思う。」
「こんないろいろあるって知らんかった。」
「日本のコマは、どこの国のコマともかたちが違う。」
………そんなふうにして、どんどん興味の窓を開いていく子どもたち。

先日、博物館学芸員実習で一週間ほど受け入れた学生さんが、実習日記に書いておられた言葉が印象に残っています。「私は実習を通して、資料をじっくり見ることが出来るようになったと思います。じっくり見られるようになると、他の資料と見比べたり、ユニークさがわかったりして、様々な発見がありました。また、よく見られるようになると、博物館の面白さがぐんと増していきました。」と。

与えられる情報に受け身でいることばかりに慣れてしまうと、自分から一歩近づいて「じっくり見る」ということをしなくなってしまうのかもしれません。形、色、素材、模様、どんな音がするのか、どんな匂いがするのか、どんな意味があって、どんな人が作り、どんな人が使ったのか……。見ることで、物の持っている情報をキャッチし、多くのことを理解し、想像できる力というのは、経験や学習によって養われていくものですが、けれど、一歩踏み込み、対象をじっと見つめている時間の濃密さによっても培われていくものだと思います。

1990年代以降、触ったり、聞いたり、味わったり……、日本の博物館施設は、展示にかけて、見る以外のことをプラスしようと頑張ってきました。しかし、ちょっとした動機づけひとつ、何でもないクイズひとつで、ケースの中、触れられない展示品を、しっかり見ようと一歩も二歩も近づいていく子どもたちのまなざしに接するにつけても、私たちは「物をしっかり見る」という行為をもっと大事にするべきなのではないか、そのための努力と工夫こそ博物館の基本として大切なことなのではないかと、あらためて思う今日この頃です。



NO.92
たくさんの寄贈資料に囲まれて・・・               (2010.8.12 学芸員・尾崎織女)


日本海を進む台風の雨が心配されましたが、播州地方は暗い雲に覆われた程度。3時を過ぎた頃には青空も見え、館の周囲の林からクマゼミやアブラゼミが賑やかな合唱が聞こえています。いつの間にか「盆帰り」の季節。館内には、三世代で来館されるご家族、仏花を携えたご家族の姿も目立ち始めました。夏休みも後半に入りましたが、皆さまにはいかがお過ごしでしょうか。

今春から夏、日本玩具博物館は、5つの大きな玩具コレクションの寄贈を受けました。学芸室では、そのボリュームの大きさに驚き戸惑いつつ、収蔵場所の確保に途方に暮れつつ、少しずつ収蔵登録を進めています。一つは、昭和初期から10年代のミニチュア玩具コレクション(約100組)、もう一つは、昭和初期の上方趣味人たちの間で交換された絵葉書集(約3000枚)、あとの三つは、すべて郷土玩具のコレクション(全体で約1000点)です。
故・T氏のコレクション・・・・ほんの一部です。

今、私が収蔵登録中のコレクションは、故・T氏(岡山県)が精力的に蒐集された全国の郷土玩具、約500点です。T氏が夢中で集めておられた昭和30年代から40年代頃の作品はもちろん、戦前(昭和初期〜10年代)に作られた土人形や既に廃絶して久しい産地の資料なども数多く含まれていて、整理しながら、私自身、よい勉強になっています。

九州、四国、中国、近畿、東海、中部、甲信越、関東、東北…と大まかな地域に分けたら、コンディションを点検し、産地や材質、項目ごとに分類して「日本玩具博物館収蔵品カード」の中に必要事項を書き込んでいきます。一点につき一枚のカード。そこには、製作年代や製作者、方量(寸法など)画像、入手の経緯、入手日、登録日、特記事項などを明記します。玩具一点一点に作るカードは、将来に向けて、病院のカルテのような役割を果たします。

「日本玩具博物館収蔵品カード」・沖縄の郷土玩具
博物館で収蔵登録を終えたモノが価値をもつのは、そのモノが「保存」の対象になるから。つまり、今を生きる私達だけではなく、未来に生きる人たちに向けて存在を約束されたものになるからです。博物館の資料とに私達が特別の敬意を払うことは、未来へ文化を伝承することだと思います。

それにしても、日本の郷土玩具がずらりと集まると、カラフルです。日本各地の都市部や農村で、暮らしの中から誕生し、日本庶民に育まれた造形物が、非常に明るい色彩をもっていることは、他国の趣味家たちの注目をひく点でもあります。郷土玩具一点一点の彩色を見ていくと、青、赤、黄、白、黒の五色が欠かせません。この五色は、中国に端を発する自然哲学「五行思想」につながるものと考えられるでしょうか。
すなわち、万物は、木・火・土・金・水の5つの元素から構成され、この5つの元素の盛衰生滅によって万物が変化し循環するという考え方。
故・T氏のコレクション・・・・山形県相良土人形(明治末期)

木・火・土・金・水が、それぞれに春・夏・変わり目・秋・冬という季節を表わし、東・南・中央・西・北の方角をも象徴します。さらに、この5つは、青・赤・黄・白・黒の五色にも対応していますので、5色を使って彩色されたものは、私達が生きる世界そのものを表現して、それらが身近にあるとき、招福の力を発揮すると近世の人々は考えていたようです。

郷土玩具の色とりどりは、ただ美しさや明るさを求めたからではなく、例えば、5色の力によって、これらを傍に置く人の魔を除き、幸せを呼び込むことが出来ると、私達の祖先は感じていたはずです。

学芸室の8月は、たくさんの寄贈資料に囲まれて過ぎていきそうです。亡きひとの生涯の思いがこもった品々を、私達の博物館を選んでお寄せ下さったご遺族の方々のお心を想い、大切に整理を進めたいと思います。新しく受け入れたコレクション群の整理が完了しましたら、こちらのページでも、また館報でも順次ご報告し、機会をとらえて展示の中でご紹介してまいります。




NO.91
子どもたちのおもちゃ館               (2010.7.22 学芸員・尾崎織女)


長雨の梅雨が明け、スカイブルーの空の下で夏休みが始まりました。陸海空の乗りもの玩具を集めた『世界乗りもの玩具博覧会』は、子どもたちにも人気があり、消防自動車や飛行機の玩具が並ぶ展示ケース前面のガラスは、小さな手形、指形がいっぱいです。「手にもって遊びたい」――ガラスの手形からはそんな声が聞こえてくるような……。
船の展示をみる子どもたち

日本玩具博物館の夏は、子どもたちの季節です。家族に連れられて来館してくる子どもたちは、神妙な表情で世界の船の展示を見たり、プレイコーナーで列車を走らせたり、館内にいくつもの笑い声があふれます。私たちの学芸室は、ヨーロッパの木製玩具を自由に触って遊べる12畳ほどのプレイコーナーに接しています。ドイツの玉ころがし、チェコの動物車、フィンランドの引き車、ラトビアの木馬、スウェーデンの列車……。学芸室の壁一枚を隔てて、チンチロリン♪チンチロリン♪……と、ビー玉がシロフォンを鳴らす愛らしい音が響いてきます。
そして、「これ、ムッチャ楽しいな。こんなおもしろいとは思わんかった
ぁ」と話す声、兄弟でけらけら笑いながら、何かの競争をし、やがて玩具を取り合って喧嘩する声、そこに、時々「もっとここに居るぅ〜」と抗議の声が交じります。「もう半日も遊んでいて、飽きないの
大人気の“レールのある町”(スウェーデン)
?お腹すいたから帰ろうよ。」とお母さんが誘えば、「イヤぁー!!」と大粒の涙をこぼして泣き出す小さな子どももあります。

日本玩具博物館が展示室の一角に、2箇所のプレイコーナーを設けたのは、開館後まもなく、まだ、博物館における「体験」とか「ハンズ・オン」とかいう概念が一般的ではなかった頃のこと。以来、四半世紀以上にわたって、わが館の小さなプレイコーナーは、海外の木製玩具や、日本の木地玩具に自由にさわり、その仕組について考察したり、工夫や熟練を必要とする玩具の面白さを実感したりする場所として、子どもたちに愛され続けてきました。

2箇所のプレイコーナーに設置している玩具を大きく分類すると、
@物体が移動する玩具 

A糸とオモリの仕掛け玩具 
B自分の世界を作る玩具 
C知恵や巧緻性を養う玩具 
D転がして遊ぶ玩具 
“玉ころがし”(ドイツ)に夢中

Eハンマートーイ 
F身体を動かす玩具
の7種類が考えられます。もちろん個人差がありますが、どのような年齢層の子どもにどのような玩具が愛されるのか、子ども個々人が、気に入った玩具に対して、どのような遊び方をするのか、そして、人間の成長に玩具がどのように関わっているのか……。プレイコーナーで日々接する子どもたちの様子は、私たちに数多くのことを教えてくれます。

これまでに何度か、地元の大学の幼児教育科の学生さんたちにお手伝いいただき、来館者のご理解をいただいた上で、子どもたちがプレイコーナーの玩具で遊ぶ様子を観察させてもらったことがありました。「年齢」「ひとつの玩具で遊ぶ時間」「発する言葉」「遊び方の工夫」「ルール作り」…などの項目で、子ども一人一人の様子を記録させていただいたのです。来館する子どもの年齢層は、生後数ヶ月の乳児から小学校高学年の児童まで幅広いのですが、海外の木製玩具のコーナーでよく遊ぶのは、2歳終わり頃から小学校中学年、日本の木地玩具のコーナーで遊ぶのは、5歳前後から小学校高学年という結果になりました。3歳から5歳頃の子どもたちは、“シロフォン付き玉の塔”や“カップのビー玉レース”など、物が移動する玩具で1時間近く遊びます。ビー玉が坂道を転がってシロフォンを鳴らす、その繰り返しを飽きることなく見つめる眼差しは、まるで哲学者のよう。幅広い年齢層に人気があるのが、スウェーデンBRIO社の“レールのある町”。20個以上の車両を磁石でつなぎ合わせ、思いどおりの列車を作ること、その列車を、複雑なレールにのせて、手と口を使って走らせて遊ぶ楽しさは子どもたちにとって格別らしく、変声期を迎えたような男の子たちまでが、満ち足りた表情で列車を連結させていたりするのです。

プレイコーナーに立っていると、子ども連れで来館された親御さんから、また、子育てを終えた世代の来館者からも、様々な感想をいただきます。
「この子が見かけ単純な“玉転がし”でこんなに夢中で遊ぶとは思いませんでした。」
「この子に、こんな長い時間、ひとつの玩具と付き合う集中力があるとは思いませんでした。」
「小さな子には、単純な仕掛けの、手触りの温かい玩具がいいのだとわかりました。
とても穏やかで平和な顔をしているのですもの…。」
「いくら、次を観に行こうと誘っても、動かないんです。普段、買ってやる玩具はすぐに飽きてしまうのに…。」
「子どもがものすごく幸せそうに遊ぶから、親の私たちも幸せな気分になりました。」
「今の子どもは、コマ回しなど好きではないと思っていましたが、ここで、皿コマとか鳴りコマとか、
一生懸命回しているのを観て、子ども自体は、昔と変わらんと思いました。変わったのは環境ですね…。」
…………etc.

そんなふうに、私たちにとっての夏は、来館者の方々と一緒に、子どもと玩具のかかわりについて考える季節です。
今日は、6号館2階の講座室を「おもちゃ作り教室」に模様替えし、乗りもの玩具のワークショップなどの準備を行いました。玩具博物館の教室は屋根裏部屋にあり、長机がずらりと並ぶ寺子屋風。学校とはひと味もふた味も違う不思議空間でのエコロジカルな玩具作りを、多くの方々に楽しんでいただきたいと思っています。夏休みは、博物館学芸員を目指す学生さんたちを何度かお預かりしますので、おもちゃ作り教室は、さらに楽しくなることと思います。



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