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NO120
世界の玩具と人形の収集を始めて40年
     ―――― 当館6号館と神戸KIITOで世界の玩具の特別展を開催


                                      (2017年6月17日  館長 井上 重義)
梅雨の季節に入りました。当館入り口には、黄色いビョウヤナギの花が咲き、庭のあちこちには可憐な色とりどりのアジサイの花が咲いて
3号館出口の紫陽花
います。
先月28日で6号館の特別展「端午の節句と雛人形展」が終わり、撤収と夏の特別展「世界の民族楽器と音の出るおもちゃ」の展示作業が約1週間続き、連日大変でした。さらに11日夕刻からは神戸KIITOのTOY&DOLL COLLECTIONの夏の企画展の準備に追われていました。いずれも撤収作業に続いての展示作業が大変でしたが無事に完了。6号館の「世界の民族楽器と音の出るおもちゃ」は8日からご覧頂き、KIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)の「神戸人形~ミナトマチ神戸生まれのからくり人形~」と「世界の乗り物玩具」は14日から展示が始まりました。いずれの展示も、他では見ることができない展示内容だけに好評です。

6号館の「世界の民族楽器と音の出るおもちゃ」は、世界60カ国から収集した1000点にものぼる資料
世界各国のガラガラ
の数々が展示され、その量と質に私自身が感激しました。さらにKIITOの「世界の乗り物玩具」も現在では入手不可能な乗り物玩具が50ヵ国から200点がずらりと並びました。集める時期と環境に恵まれたからですが、よくぞ収集できたものだと、私自身、過去を振り返って感動の連続でした。
私が世界の玩具の収集を思い立ったのは当館を開館して3年目の1977年でした。2年後の1979年が国際児童年と知り、それを記念して世界の玩具展が開催できないものかと考えたのです。そんな折、幸いなことに北海道教育大学の伊藤隆一先生が『世界のおもちゃ』を出版され、世界の玩具事情を知ると共に、先生とも知り合いになってご指導を頂きました。
さらに70年代中頃から、わが国でヨーロッパの木の玩具ブームが起き、その関係から東京で開催された国際見本市やギフトショーにはヨーロッパや北米各国から木の玩具が続々と出展され、私は再三出かけて入手しました。さらに当時、東京にはヨーロッパ、アフリカ、中南米、
世界各国の汽車
東南アジア、インドなどの民芸品を扱う専門業者が数社もあり、貴重な玩具や人形が入手できたのです。

1979年の国際児童年には入手した300点の玩具で「世界のおもちゃ展」を開催、大きな反響がありました。伊藤先生もはるばる札幌から来館くださり「国際児童年にふさわしいすばらしい展示だ」とお褒め下さいました。さらに1985年には先生からお誘いを受けて北欧各国の玩具事情を調査するツアーにご一緒し、約2週間いろいろと勉強させていただきました。そして世界各国から自然素材で作られた玩具や人形が急速に姿を消している状況を知り、その後、ヨーロッパ各国やアメリカ、ブラジル、中国などにもでかけ、精力的に収集してきました。またドイツやメキシコなどにも協力者ができた結果、世界160カ国から3万点もの、世界でも例がないといわれるほどのコレクションを構築することに成功したのです。
残念なのは伊藤先生が2000年に過去の人になられたことで、お元気ならばご協力いただき、さらに充実したコレクションが構築できていたと思います。
世界の玩具や人形の収集活動の記録は『日本玩具博物館開館40周年記念誌』(2014年刊)に尾崎学芸員が詳細を発表しています。ご希望の方は在庫がありますのでご連絡ください。


NO119
花々に囲まれた当館で端午の節句展始まる

                                      (2017年4月16日  館長 井上 重義)
当館周辺は真っ赤な桃の花や白い利休梅、それに黄色い山吹など、色とりどりの美しい春の花々が咲き競い、入り口の樹齢約40年の八重桜・関山も
入口に咲く八重桜関山
八分咲きです。そして昨日から6号館西室で、特別展「端午の節句~江戸から昭和の甲冑飾り~」が始まりました。来館された方から、こんな素晴らしい展示がされているとは思わなかった。「来て良かった」と早速にうれしいお言葉が寄せられました。数々の懐かしい展示物との出合いだけでなく、初めて接する貴重な資料の数々に驚かれ、感動されるのです。

端午の節句展には江戸時代末期~昭和初期までの甲冑(具足)飾り約30点が展示されています。京都や大阪の有名な人形店で販売された、当時の最高級品といえる作品が多く、恐らくこれほどの資料が一同に展示されるのは全国でも珍しいと思います。これらはその存在に気付き、私が約20年前か
江戸末期の甲冑飾り
ら購入してきたものが中心です。時期にも恵まれ、50点をこえる甲冑飾りの収集に成功したのです。やみくもに収集するのではなく、年代や制作者などが解るものに重点を置いてきたのが良かったと思います。このような内容の甲冑飾りコレクションを所蔵する博物館は、国内では類がないと思います。その着想と方向性が良かったのです。

6号館東室では雛の御殿飾りを中心とした展示が5月28日まで継続中です。明治中期から昭和初期までの御殿飾り6組が展示されていますが、これらも京都の大木平蔵製や大阪の谷本要助製など、当時の最高級の御殿飾りです。近年、当館の雛人形展の内容が知られるようになるにつれて、全国各地の雛巡りをされている方が来館下さるようになり、今年も北海道や山形などの遠方からも来られました。そして「これほどの内容の御殿飾りを見るのは初めてです」と驚かれます。先般、京都から伝統工芸に携わっておられるグループが来館され、京都でも見たことがないと驚かれました。檜皮葺の御殿飾りは大正バブルと呼ばれる好景気に沸いた一時期に作られた御殿飾りで、価格は小さな家が一軒買えたと伝わり、神戸や大阪などの一部の裕福な家庭で飾られたものです。当時の最高の工芸技術の粋を集めて作られたものですが、これらが文化財として認知されることはあり
各地の木造船が並ぶ海の博物館
ませんでした。当館はこの檜皮葺の御殿を8組所蔵しています。檜皮葺の御殿飾りがオークションなどに出ることは皆無といってよく、当館ならと寄贈いただいたことからコレクションが形成できたのです。ただ個人立の博物館がこれらの資料を保存継承することには限界が来ており、その価値を社会に認めていただき、社会の手で守って欲しいと考えています。そのためにはどうすべきか。模索する日々が続きます。

私立博物館は当館同様に特色ある貴重なコレクションを所蔵する館が多く、三重県鳥羽市にある海の博物館も館長の石原義剛氏が昭和46年に設立され、木造船など海に関する約6万点もの資料を持つユニークな博物館です。当館長室№106でも同館について触れていますが、石原館長は私立博物館は「国や行政に見捨てられ、漂流している」と厳しい現状を述べられていました。同館も平成5年に5万7千人あった入館者数が平成27年度は2万7千人に減少、約1300万円の赤字になり、昨年9月に同館から館運営が困難だとして、鳥羽市に対して施設などの買い上げを要望されていました。去る3月に鳥羽市が8600万円で買い上げることが決まり、この10月から鳥羽市立として再出発します。運営は、現在のスタッフがかかわるとの情報も流れていますが、現在、市として検討中と聞きました。貴重な文化遺産が散逸から免れ、後世に継承されることは喜ばしいが、広島県福山市の日本はきもの博物館に続き、ユニークな活動を展開されてきた私立の博物館が公的な支援がない中で次々に姿を消す状況は本当に残念であり、悲しい。


話は変りますが、かねてから制作に取り組んでいた「ちりめん細工の小さな袋と小箱」が今月20日に発売されます。出版元は朝日新聞出版。定価は1300円+税です。内容は小さな袋物や小箱が中心です。袋物は小さな巾着袋、五角袋、檜垣文様袋、矢羽根文様袋、透かし籠袋ほか計13点と小箱が計10点です。現在、ちりめん細工といえばつるし飾り用の作品と思われがちですが、この小袋や小箱は実用的な作品です。また江戸や明治期の小さな作品も24点紹介されています。ぜひご覧下さい。



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