NO. 251

                                       (2019年9月12日 学芸員・原田悠里)
 8月の終わりに一度涼しくなったと思ったものの、また真夏に逆戻りしたような暑い日がつづいていますが、みなさまには、お変わりありませんでしょうか。玩具博物館は賑やかな夏休みが終わり、館内は少し落ち着きを取り戻しています。夏休みのおもちゃづくり教室の様子や、スティールパン演奏会当日の様子など別途イベント案内にてご紹介していますので、よろしければご覧ください。

 さて、6号館横のテラス(おしゃれに呼んでいますが、休憩コーナーです^^;)に、置いている感想ノートに、夏休み中に来館くださった、小学校1年生の女の子からままごと展への嬉しい感想とご質問をいただきましたのでご紹介したいと思います。かわいくて元気そうな女の子の絵と丁寧な文字でしっかりと書いてくれていますが、画像だと文字が小さいかもしれませんので、以下そのまま書き起こしてみますね。

かんちょうさんへ
はくぶつかんのむかしのままごとセット、それにせかいのままごとがほんとうにおもしろかったよ。

ぎもん
Q.なんでだいしょうじだいのままごとセットは、こまかくじょうずにできてるの?
Q. おんなのこだけでなくおとこのこもあそんでいましたか?
Q. どうやってここまでのあいた(間?)ままごとのしんかをつげてきたんですか?
Q. いろいろなくにのままごとをどうやってあつめたのですか?
かんちょうさん。おしえてくださいっ!!

大正時代の雛の節句の勝手道具の細やかさや、ままごと道具の変遷など、資料をしっかりと観察してくれているからこそ湧き上がる質問と、疑問を伝えてくれていて嬉しいです。
小学校の名前と学年、名前も書いてくださっているので、答えをお手紙にしてお送りしたいと思っていますが、同じ疑問をもってくださる方もいらっしゃるかもしれませんので、ここでもお答えさせていただきます。

Q. なんでだいしょうじだいのままごとセットは、こまかくじょうずにできてるの?
A. たいしょうじだいのままごとセットをつくった人は、どんな人だったのでしょうか?
むかしはおうちのだいどころどうぐは、木やきんぞくのしょくにんさんがつくっていました。そのしょくにんさんが、こどもようにちいさいサイズでひとつひとつつくったので、こまかくてじょうずなままごとどうぐになったのだとおもいます。
ざんねんながらつくったひとのなまえや、なんにんの人でつくったのか、わからないことがまだまだたくさんあります。またあらしいことがわかったらはくぶつかんのホームページでもしょうかいしますね。

Q.おんなのこだけでなくおとこのこもあそんでいましたか?
A.きっとおんなのこも、おとこのこもいっしょにあそんでいたとおもいます。
ままごとあそびでは、おかあさんやくやおとうさんやく、こどものやく、おきゃくさんのやくなど、いろんなやくになりきってあそんだりするとおもいます。としのちがうおともだちや、おとこのこもいっしょにあそんでいたのではないでしょうか。むかしのえほんやままごとセットのはこにも、おとこのことおんなこがいっしょにままごとあそびをしているようすが、かかれていますので、よかったらまたはくぶつかんにみにきてみてください。

Q.どうやってここまでのあいた(間?)、ままごとのしんかをつ(と)げてきたんですか?
てんじをよくみてくれて、ままごとどうぐがどんどんしんかしてきたことをはっけんしてくれてとてもうれしいです。
ままごとセットは、ほんもののだいどころがモデルです。だいどころのどうぐに、あたらしいどうぐがとうじょうしたり、でんきをつかうようになったりすると、ままごとどうぐにもほんものそっくりのものや、おなじうごきをするものがくわわっていきます。
もしまた、おもちゃはくぶつかんきてくれたときには、ざいりょうのしんかもみてください。木や土でできたままごとセットから、ブリキやアルミというきんぞくのざいりょうになって、プラスチックというざいりょうがつかわれるようになって、いろもかたちもかわっていきます。

Q. いろいろなくにのままごとをどうやってあつめたのですか?
ちょくせつがいこくにいって、あつめました。そのときは、どんなまちでつくられたのか、どんなふうにあそぶのか、そのくにのひとにおしえてもらいます。
また、がいこくのはくぶつかんにおねがいして、にほんのままごとセットとこうかんしてもらったり、がいこくのおもちゃをうるおみせのひとに、おねがいして、かってきてもらったこともあります。

もしほかにも、ままごとのぎもんやおもちゃについて、きになることがあったら、ぜひまたがんぐはくぶつかんにきてください。
おまちしています^^

 秋は小学校の校外学習で、多くの小学生が訪れてくれるので、子どもたちがもともと持っている好奇心によりそうようなご案内ができるようにしなければなと、あらためて思わせてくれた感想ページでした。



NO. 250
日本と世界のままごと道具―おろしてひいて薬味と香辛料はかかせない!
                                       (2019年7月25日 学芸員・原田悠里)
◎7月13日より6号館にて夏の特別展「日本と世界のままごと道具」が始まりました。
 まねごと遊びの代表のひとつであるままごと遊びの世界を広げるままごと道具は、当館のコレクションの中でも一ジャンルを形成するほどの資料数があるのですが、意外にも6号館全てでままごと展をするのは初めてです。広い展示空間に人形サイズや子どもサイズで種類も多いままごと道具をどのように展示するかな?ということで、日本のままごとコーナーでは、雛まつりに登場する小さな台所道具やお茶道具を取り上げ、ハレの日のままごと遊びについて紹介する一方、明治・大正・昭和・平成、と時代を追ってままごと道具の移り変わりをたどります。そして世界のままごとコーナーでは、約40の国と地域の民俗色あるままごと道具を、アジア、ヨーロッパ、北米•中南米、中近東•アフリカと地域ごとに集めました。
日本のままごと道具 雛の勝手道具と昭和40年代のままごと道具(ママ・レンジをはじめ、ママシリーズもご紹介しています。)
   
   世界のままごと道具 ヨーロッパコーナー 
◎さて、その展示作業中、頭の片すみで気になっていたことがありました。それは、明治末から昭和30年代ごろまでの日本のままごと道具の多くに、“おろし金”があるということです。調理器具や台所用品が詳細に再現されている雛の勝手道具にはもちろんのこと、昭和初期から30年代の陶器製、ブリキ製ステンレス製のままごとセットにも、選ばれし調理器具のようにおろし金があります。
大正時代の雛の勝手道具。よ~く見ると必ずあります。銅製のおろし金!
昭和10年代、20年代、30年代、40年代ごろのままごと道具セットにも、陶器製、ブリキ製、ステンレス製のおろし金!
 わたし自身、夏は冷しゃぶやうどんに大根おろしとおろしショウガ、おそばにはわさびを、秋は秋刀魚におろしポン酢、冬はみぞれ鍋、風邪をひけばしょうがやりんごもすりおろしたり、おろし器も3つ持っているおろし好きなのですが、日本ではすでに奈良時代から生姜やわさびは食用と薬用として親しまれ、小泉和子氏の著書『台所道具いまむかし』(平凡社/1994)によると、陶器製のおろし器やすり鉢が10世紀以降の各地の遺跡から出土しているそう。包丁、しゃもじ、おたま、それらに比べると限定的な調理器具だと思うのですが、古くから日本の食文化に必要不可欠な道具だったことがわかります。また、江戸時代中期に編纂された百科辞典『和漢三才図会』には、「薑擦(わさびをろし)」という名前で、ままごとセットの中に見られるものと同じ、持ち手がついた台形型の両面使いのおろし器が描かれています。細かい目の表側ではワサビやショウガをおろして、裏側の粗い目では大根をおろす、と説明されています。おろし器は少なくとも1000年近く形が変わらず、脈々と料理に使われ続けてきた薬味は、世界中の料理も身近になり、食事や調理も多様化した現在も、日本人の舌が求める味なのでしょうね。
そう考えてみるとすりおろすというのは、海外の料理ではあまりお目にかからないなと思いながら、世界のままごと道具を見渡すと気になるのが、香辛料にまつわる調理道具です。
◎今回展示している国の中では、中国、タイ、インド、メキシコ、チュニジア、タンザニアのままごと道具の中に香辛料を挽いたり、潰すための道具が見受けられます。さまざまな香草や香辛料を使う中国各地の料理やタイ料理やインド料理、その土地のままごと道具には、皿型や臼、すり鉢状の深い道具と砕くための棒やな、香辛料に合わせた調理器具が必ずあります。スペインの色彩に影響を受けたメキシコのカラフルな食器類の中に置かれた、存在感のある石製のメタテ(すり皿)とモルカヘーテ(すり鉢)は、中米の先住民が作り続けてきたメキシコ料理、トルティーヤの生地になるとうもろこしの粉やナツメグを挽いたりつぶしたりするためにはかかせません。ブリキや陶器で作られたままごとセットでも、メタテとモルカヘーテは今も使われている石製に忠実に作られています。チュニジア料理は地中海沿岸のヨーロッパの食文化に影響をうけつつ、香辛料をふんだんに使った刺激が強い料理が特徴です。コーヒーと紅茶の産地、タンザニアでは日常的に木の実をすりつぶしたティータイムを楽しむそうです。また、各国のままごと道具によく見られる壺類は、香辛料を保存するためにも使われているそうです。
インドのままごと道具 香辛料を挽いたり砕いたりするさまざまな道具が見られます。 タイの調理器具
メキシコのままごと道具には黒い石で作られたメタテとモルカヘーテが見られます。  タンザニアとチュニジアの香辛料つぶしは
それぞれ伝統工芸の黒檀彫と真鍮製です。
 子どもたちにとっても食べること、食卓、台所、食材は身近な風景、ままごと道具の中には、子どもの世界で日常を再現するために必要な道具が揃えられているように感じます。そして素材の味を生かす和食にかかせない薬味をおろすおろし金、味の決め手となる香辛料づくりにかかせないスパイスミル(香辛料を挽く道具)、それぞれのお国の食文化も背景に見えるままごと道具展、ぜひお越しくださいませ。

◎さて夏休みも始まりました。毎夏恒例の夏休みおもちゃづくり教室、今年も開催します。今年は江戸時代から親しまれてきた日本の伝承玩具から“からくり”をテーマに「かくれ屏風(びょうぶ)」(7月28日(日)/8月14日(水)/8月15日(木))「木びき人形」(8月3日(土))「ご来迎(らいごう)」(8月11日(日))「鯉の滝のぼり」(8月17日(土))「剣術人形」(8月24日(土))を手作りします。江戸玩具とからくりおもちゃなんていう自由研究もいいかもしれませんよ〜。子どもたちにはこの夏に行きたいところ、やりたいことがたくさんあると思いますが、もしおもちゃの歴史や、からくりおもちゃを作ってみたいと思ったらぜひ玩具博物館に来てみてくださいね。


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