日本玩具博物館 館長室・学芸室から

●館長室から
NO24
横浜人形の家を訪ねて                       (2007年9月23日 井上 重義)

 9月も半ばを過ぎ、朝夕はしのぎ易くなりました。今夏は猛暑の影響もあったのか入館者が大きく減少しましたが、秋の訪れと共に賑わいが戻ってきました。とりわけ1号館の企画展「おもちゃで綴る日本の祭」は秋祭りとも連動した催しで、来館者の評判も上々です。

 「館長室から」では、世界華商大会にまつわる当地への記念ツアーや夏休みのおもちゃ作り教室の報告を約束していましたが、その約束が果たせないままになりました。華商大会の記念ツアーは実施日が大会前日であり、参加者が少なく姫路コースは残念ながら中止になりました。夏休みおもちゃ作り教室はどの講座も定員オーバーの状況で、子どもたちは夏休みの大きな思い出を持ち帰ってくれました。

剣術人形を参考に子どもが作ったバトンガール。

<子どもたちの弾ける笑顔と手づくりの作品>

出来上がった木挽き人形を手に持って、記念撮影。


 当館資料による館外での展示は、この秋も日本モンゴル博物館で「世界の鳥~その色と形」、群馬県立の日本絹の里で「暮らしの中のちりめん遊び」が開催されます。今月の13日~18日まで、東京池袋の西武百貨店で開催された「第4回私の針仕事展」には、約300点のちりめん細工を出品しました。パッチワークが中心の催しで、当館資料は会場の3分の1ほどでした。予想外の入場者があり、連日5000人を超え、初日は入場制限までありました。パッチワークの世界の凄さに驚きましたが、大勢の皆様にちりめん細工の素晴らしさをご覧頂く機会を得て喜んでいます。

 池袋西武の展示撤収のために上京した機会に、久しぶりに横浜人形の家に行きました。同館とは「人形の社会的評価を高め、保存展示する」共通の使命や、アポロ社の故遠藤欣一郎コレクションを人形の家と当館とで受け入れた経緯もあり、設立母体の違いを越えて学芸員同士の太いパイプもあり、友好館として太い繫がりがありました。しかし昨年4月、同館に指定管理者制度が導入され、ブリキ玩具のコレクター・北原照久氏がプロデューサーに就任されましたが、残念ながら人形の家のベテラン学芸員全員が離れられ、その後、同館との連絡は途絶えました。その後どうなっているのか、同じ人形文化を守る館として気がかりでもあったからです。それに先般、千葉からの来館者から、横浜人形の家よりも当館の「世界の人形展」の方が素晴らしいと、気になる言葉を聞かされたからでした。
 横浜人形の家は変わっていました。約1年間の工事でリニューアルされ、「『横浜発・世界の人形ふれあいクルーズ』をコンセプトに、いつ来ても楽しく、何回来ても、新たな発見ができる施設として展開していく」とされていましたが、正直言って私は良くなったとは言いがたく、長年に亘り資料を守り続けていたヒト(学芸員)がいなくなったツケは大きいと思いました。展示品も人形の家は良質の資料を多数所蔵されているはずなのに、その資料が出ていないのです。世界の人形コーナーも確かに千葉の方が指摘されたとおりでした。「質も量も」、更に展示手法もです。とりわけ気になったのは展示ケース内の明るさです。人形は布や自然素材の材料が多く繊細です。いくら紫外線カットの光源を使っているといっても、長時間強い光に当てると退色は当然です。直近からスポットが当てられた人形が何点もあります。人形に対する深い愛情があれば、こんな展示にはならないはずだと私は思いました。
 聞けば複数おられた学芸員は1人になり、それも常駐でなく兼務と聞きました。ケース内だけでなく明るすぎる白っぽい館内、人形を見て心を癒したいと訪れる来館者も多いはずですが、その雰囲気からは程遠いものを私は感じ、何か寒々としたむなしさを胸に同館を後にしました。
 指定管理者制度は、地方自治体が「住民の福祉を増進する目的をもって、その利用に供するため」に設けている文化施設や体育施設、公園などの『公の施設』の管理について、「多様化する住民ニーズにより効果的、効率的に対応するため、民間の能力を活用しつつ、住民のサービスの向上を図るとともに、経費の節減等を図ること」が目的とありますが、その制度が本当に文化を守ることにつながるのか、私は大きな疑問を感じました。





NO23 
手づくりの楽しさを子どもたちに      
~夏休み面白おもちゃ教室始まる~                 (2007年7月27日 井上 重義)


 子どもたちにとって楽しい夏休みがやってきました。緑に囲まれた当館は蝉の鳴き声に包まれ、一歩、館内に入れば、子どもたちの楽しい歓声が聞こえます。

牛乳パックの船 今年も恒例の「夏休み面白おもちゃ教室」が始まりました。当館では毎年、夏休み期間中、1号館と6号館で開催の企画展・特別展に関連したおもちゃ作り教室を開催していますが、今年も世界の「船展」と「人形展」に因んだおもちゃ作り教室が始まり、本日は、その第1回目の「牛乳パックで作る船」教室。それぞれに素晴らしい船が完成。子どもたちは目を輝かせて大喜びでした。帰宅後、船を浮かべて遊ぶ姿が目に浮かびます。
 牛乳パックを縦に半分に切って船体を作り、それに割り箸を固定して、水車を輪ゴムで留めて、ゴム動力で水上をスイスイ走る船です。ゴム動力で水車を回転させて走る玩具の木の船は古くからヨーロッパやアメリカにもあり、同じ原理ですが、違いは材料です。牛乳パック、割り箸、竹串、折り紙、輪ゴムと、身近な材料で作るところがミソです。問題は強度です。すぐ壊れるようなものではいけないからです。牛乳パックに割り箸を固定する方法も課題でしたが、ホッチキスで留めることで解決しました。割り箸を持って振り回しても牛乳パックは外れません。

 私は鍛冶屋の息子に生まれ、子どもの頃はよく手伝いました。そんな影響からか、モノ作りが大好きです。博物館設立後、子どもを取り巻く環境が変化し、テレビで宣伝して売る玩具が大流行する中で、おもちゃは買ったもので遊ぶ時代になり、作ったもので遊ぶことが失われているのに気付きました。作る場所もなく、身近に鋸も金槌も小刀などの道具も、竹や木などの材料もありません。それならと講座風景考えたのが、今の身の周りにある道具と材料を使った伝承玩具作りです。牛乳パック、トイレットペーパーの芯、ストロー、割り箸、厚紙、凧糸、輪ゴムを材料に、玩具についての知識を生かして江戸時代の玩具などの作り方を考えました。道具もハサミ、カッターナイフ、ホッチキス、キリなどで充分です。江戸時代から伝わる、吹き矢、木挽き人形、鯉の滝登り、ご来迎、剣術人形、かくれ屏風、風車などを作りました。強度もそれなりにあり、作ったもので遊べて子供たちも大喜びです。そんなおもちゃの作り方を考えたのは実は20年以上も昔。1991年には身のまわりの材料で作る『伝承手づくりおもちゃ』(草土文化)を出版、身近な材料で子どもの喜ぶおもちゃが作れることを大勢の皆様に知っていただきました。その本の掲載作品をベースに改良、新しく考案して、作品の数も増えました。おもちゃ教室ではそれらを中心に教えています。

 各地の博物館では現在、ものづくり教室などの体験活動が盛んですが、当館のように江戸時代の玩具を数多く教えているところは全国でも例がないと思います。江戸のおもちゃを作った子どもたちは、「昔の人は賢い」「すごい」と感動します。楽しかったと毎年参加してくれる子どもが多いのです。今年も申し込み不要の「江戸のからくり玩具かくれ屏風」(7月29日、8月5日・19日)教室を除き、どの講座も満席ですが、その半数は昨年参加した子どもたちです。基本を教えた後は、子どもたちの個性が輝く作品が仕上がるよう指導していますが、子どもたちの感性の豊かさにしばしば感動させられます。今年も思い出の詰まった楽しい作品の数々が誕生するでしょう。
 おもちゃ教室の様子をこれからも何度か紹介したいと考えています。

作品を持って、参加者の記念撮影

世界の船のおもちゃ



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