「世界クリスマス紀行」 | 日本玩具博物館

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特別展

冬の特別展 「世界クリスマス紀行」

会期
2026年11月1日(日) 2027年1月24日(日)
会場
6号館

古代ヨーロッパをはじめ、北半球の多くの国々では、太陽が力を失い、地上の生命力が衰えた冬枯れの季節に光の復活を願い、新年の豊作を祈る祭を行っていました。キリストの降誕を祝うクリスマスは、冬至を過ぎてよみがえる太陽を讃える祭礼や収穫感謝祭など、土地の信仰をとり込むことを通して、大きな行事へ発展したものと考えられます。クリスマスに登場するキャンドルの暖かな灯や光を表現する造形の美しさ、また麦わらやきびがら(トウモロコシの皮)、カシの枝や丸太、木の実など、豊かな農作物や森の恵みを象徴するオーナメントの多様性からもクリスマスがもつ奥行の深さをうかがい知ることが出来ます。

きびがら(トウモロコシの皮)細工のキリスト降誕人形「ベトレム」 チェコ/1980年代

やがてクリスマスの行事は、キリスト教の広がりとともに世界各地へと波及し、それぞれの土地の信仰や冬の習俗と結びつくことで定着し、アメリカでもアフリカでもアジアでも、ユニークなクリスマスの造形が花開きました。

ヒョウタン細工「マテ・ブリラード」のなかのキリスト降誕人形「ナシミエント」 ペルー/1990年代

恒例となった当館のクリスマス展は、クリスマスオーナメントや人形、玩具を通して世界各地のクリスマス風景を描き、この行事の意味を探る試みです。本年は、世界55ヶ国のクリスマスに登場するオーナメントを、南欧、中欧、東欧、北欧、北米、中南米、アフリカ・中近東、アジア・オセアニアの8つの地域に分けて展示し、各地のクリスマス飾りの特徴を紹介します。本場ヨーロッパの伝統あるオーナメントはもちろん、メキシコやペルーなど、ラテンアメリカ諸国の民芸的なクリスマス造形や日本のクリスマス飾りのコーナーも見どころです。

新たな光を讃え、生まれ来る生命の輝きを祝い喜ぶクリスマス―――世界各地の民族色豊かなオ ーナメントを通して、多様な文化を包摂するクリスマスの懐の深さを感じていただければ幸いです。

   展示総数は、世界55ヶ国1100点



【南ヨーロッパのクリスマス】………イタリアをはじめとする南欧のクリスマスには、にぎやかな収穫祭「サトゥルナーリア」の薫りが遺されているといわれます。一方で、カトリック信仰に篤いイタリアは、「プレゼピオ」と呼ばれるキリスト降誕人形の発祥地であり、大小様々な降誕風景の箱庭を見ることができます。今もクリスマス・アドベントに入ると、イタリアやポルトガルでは「プレゼピオ」、スペインでは「べレーン」「ナシミエント」、フランスでは「クレーシュ」「サントン」などと呼ばれる降誕人形が教会や各家庭に飾られます。南欧各地のクリスマス・マーケットをめぐると、プレゼピオやクレーシュを作るためのマリアやヨゼフ、幼子イエス、天使、羊飼い、三人の博士、村人、動物たちの人形が数多く売られています。

キリスト降誕人形「プレゼピオ」 イタリア/1980年代

【中央ヨーロッパのクリスマス】………ドイツ、オーストリアなど中央ヨーロッパにおいても、クリスマス・アドベント(=待降節)の平均日照時間は1~2時間。冬枯れの町には寂しさを払うようにモミの木の緑とキャンドルの光があふれます。町の広場にはクリスマス飾りを売るマーケットがたち並び、細工をこらした数々のオーナメンが人々を温かく出迎えます。きらきら輝く麦わらの窓飾りや経木のツリー飾りは「光」のイメージです。

窓飾り・麦わら細工の太陽 オーストリア/1990年代

*ドイツのクリスマス*………ドイツのクリスマスにプレゼントを運ぶのは、聖ニコラウスやヴァイナッハマンと呼ばれる聖人ですが、地域によっては鬼を従えてやってきます。クリスマスツリーの本場とあって、豊富な造形が見られる地域です。クルミ割り人形や煙だし人形、ピラミッド型の燭台、キリスト降誕人形“クリッペ”など、ユニークなクリスマス飾りをご紹介します。

エルツゲビルゲのシュビップボーゲン・ザイフェンの聖歌隊 ドイツ/1980年代

【東ヨーロッパのクリスマス】………東欧では、冬至祭や収穫祭に結びついた民族色豊かなクリマスが祝われています。チェコのパン細工のオーナメント「ペルニーク」やポーランドの「ピエルニク」、また、スロバキアのきびがら細工、チェコやハンガリー、ベラルーシなどの美しい麦わら細工などからは、この季節に各地で行われてきた収穫感謝祭との深い結びつきが感じられます。

ツリー飾り・パン細工のオーナメント チェコ/1990年代

 セルビアの「パドニャック」と呼ばれるオークの木の枝と麦穂を束ねたオーナメントは、クリスマスから新年にかけて、家々の門などに飾られるもので、正月を迎える日本のしめ飾りを想わせます。クリスマス行事のなかに、新たな太陽とともに始まる年が豊かであるようにと願う古い信仰が横たわっています。オークは木の実を生み出す森の王様。麦作が行われる以前のヨーロッパにおいて、木の実は大切な冬の食べ物だったのです。そのオークと麦わらの組み合わせは、人々を養う栄養の象徴といえます。チェコの繊細な硝子細工のツリー飾りやハンガリーのレース細工などは東欧伝統手工芸の美を伝えています。


【北ヨーロッパのクリスマス】………冬の間はほとんど日が昇らず、雪や氷に閉ざされる北欧にあっては、太陽の復活を讃える古い民俗信仰とキリスト教が融合した「ユール」という名のクリスマスが祝われます。人々は窓辺にキャンドルを点し、清らかな行事の雰囲気を盛り上げていきます。室内で過ごす時間の長さから、木工芸や手芸が発達し、クリスマス飾りのなかにも、切紙細工や麦わら細工、白樺の皮細工や柳の皮細工などが数多く見られます。家の守り神として親しまれるトムテ(スウェーデン)やトントゥ(フィンランド)、ニッセ(デンマーク・ノルウェー)、パカピック(エストニア)たちが愛らしい人形となって登場し、「ユール・ボック」などと呼ばれるヤギが麦わらで細工されて町中を彩ります。

【中南部アメリカのクリスマス】………中南部アメリカの国々では、南欧が支配した時代にもたらされたキリスト教と土着信仰とが融合し、民族色豊かなクリスマスが祝われます。先住民が製作した降誕人形(メキシコ・コロンビア・ペルー)や植物繊維を編みこんだツリー飾り(エクアドル)、毛糸細工やブリキ細工のオーナメント(メキシコ)、“ピニャータ”と呼ばれるクリスマス行事用のくす玉ななど、ヨーロッパとはひと味違ったクリスマス造形を紹介します。南欧の影響を受けた地域らしく、キリスト降誕人形が盛んに飾られ、また1月6日の公現節(エピファニー)に登場する三人の博士を題材にした造形も目立ちます。

メテペックの生命樹のキャンドルスタンド メキシコ/1980年代 ※ランプの家に展示

【北部アメリカのクリスマス】………家族団欒を大切にするアメリカのクリスマスは、手作りの味わいに満ちています。オーナメントやアドベント・カレンダーも家庭独自のものが選ばれ、温かな雰囲気が漂います。ヨーロッパの聖ニコラウスの祝祭をベースに、クリスマスのプレゼント配達人“サンタクロース”を誕生させ、世界各国に広めた国らしく、北アメリカのクリスマス飾りには、ユニークな姿態のサンタクロース人形が目立ちます。

キリスト降誕人形「クリブ」 アメリカ合衆国/1990年代


【中近東・アフリカのクリスマス】………聖書の読めない人々にクリスマスのメッセージを伝えるために中世イタリアで始められたキリスト降誕の箱庭風人形飾りは、カトリックの普及とともにアフリカへ入ると、土地の人々をモデルに、またその地の伝統工芸をベース にユニークな造形へと変化を遂げました。パレスチナやイスラエル、ヨルダン、エジプトといった中近東地域、タンザニア、ケニアの東アフリカ地域、ジンバブエや南アフリカ、マダガスカルの南アフリカ地域、カメルーンやナイジェリアの西アフリカ地域のそれぞれからキリスト降誕の風景を表す人形群を紹介します。

キリスト降誕人形「クリブ」 ジンバブエ/2000年代

【アジアのクリスマス】………ヒンズー教や仏教などを信仰する国々にあっても、国内のキリスト教徒のため、あるいは輸出用として、ユニークなクリスマス飾りが製作されています。ヨーロッパでは、ツリー飾りには赤い林檎、トナカイ、馬、鳩、モミの木がモチーフとなるところ、南アジアではパイナップル、象、魚、クジャク、ヤシの木など、身近な題材が登場するあたりには、文化の融合と土着化が感じられます。

ツリー飾り・ぬいぐるみのオーナメント タイ/1990年代
バリ島の翼のはえたサンタクロース(あるいはシンタクラウス) インドネシア/1980年代

【日本のクリスマス】………日本で最初にクリスマスの祝会が行われた記録が残るのは、戦国時代のこと。「ナタラ(Natal)」と呼ばれ、ポルトガルから伝えられましたが、その後の長い鎖国時代を経て、ナタラ(クリスマス)は急速に姿を消していきました。日本にクリスマスが再上陸したのは、幕末から明治初期の頃です。最初は、一部のキリスト教徒が行う“キリスト降誕祭”でしたが、明治末から大正時代には、年末を彩る都市部の風俗として、クリスマスは日本人に愛され始めます。それは、キリストの降誕を祝う日というよりも、“サンタクロースがプレゼントを運んでくる”楽しい日という位置づけをもっていました。サンタさんは、すでに歳末セールの旗頭としての活躍をしています。
 今、日本のクリスマスは、冬の生活文化の一部となり、宗教の枠をこえて、私たちの暮らしに根を下ろしています。異国の祭であるはずのこの行事を私たちはなぜ、喜ばしく受け入れたのでしょうか。そこにはクリスマスが様々な異文化を包摂する冬の祭礼の普遍的な祈りと願いを提示しているからではないでしょうか。

大正時代のサンタクロースの絵 『コドモノクニ』 第三巻十二月号(大正13年刊)より

*日本のクリスマスツリー……商業ディスプレイとして、初めてクリスマスツリーが登場したのは、日露戦争に突入した明治37年のこと。「明治屋」によって行われ、話題を集めたそうです。クリスマスの電飾を始めて行ったのは、「三越」百貨店であったといわれています。ツリーを飾り、クリスマスを祝う習慣は、まだ日本の町々に広く普及していたわけではありませんが、実はその頃、「経木モール」や「硝子ボース」などの日本製クリスマス関連商品は、主に神戸港から欧米各地へと輸出され、外貨獲得に力を果たしていたのです。戦後になると、アメリカ文化への憧れから、クリスマス熱が上昇し、ツリー飾りは都市部を中心に国内にも普及し始めます。銀紙やアルミ箔をきせた紙製の星やベル、モールを細工したサンタクロースやJ形の「キャンディー・ケーン」などに加え、昭和30年代には色とりどりの電飾や白い綿の雪をセットした箱入のツリー飾り一式が人気を博します。

昭和20~30年代のクリスマスツリー 経木モール・ホイルブーツや星・硝子ボール 


<会期中の催事>
展示解説会(ギャラリートーク) 自由参加制(入館料が必要)
恒例の展示解説会では、世界各地のクリスマス飾りの特徴について、当館学芸員が展示品を取り出してご案内いたします。ドイツをはじめ、各国のキャンドルに火を点して、クリスマス行事の意味についてお話しします。下記の日時、展示室にお集まりください。
日時・・・12月6日(日)・13日(日)・20日(日) (各回14時30分~1時間程度)

クリスマスのワークショップ1麦穂の天使 申し込み制(定員15名程度)
麦わらには実りをもたらす穀物霊が宿るとされ、収穫に感謝し、新たな年の豊穣を祈るクリスマスには、多くの麦わら細工が飾られました。今回は、中欧やUSAのオーナメントモデルに麦穂の天使を作ります。
 日時・・・12月12日(土) 13時30分~15時
 会場・・・6号館2階講座室
 持ち物・・長めの縫い針・ハサミ
 参加費・・500円(入館料は別途必要) 

クリスマスのワークショップ2麦わら細工・光のオーナメント 申し込み制(定員20名程度)
リトアニアやスペインなどに伝わる麦わら細工のオーナメントを参考に麦わらの輝きが美しい光のオーナメントを作ります。ワークショップでは3つ製作して大きなツリーに飾り付けます(作品はお持ち帰り下さい)。
 日時…12月13日(日) 11時~12時30分
 会場・・・6号館2階講座室
 持ち物・・ハサミ・定規(長さ15cm程度)
 参加費…300円

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