日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2010.10.31

オーナメントの色を見つめて~「世界のクリスマス紀行」より~

行楽シーズン真っ盛り。日本玩具博物館も、各地からたくさんの観光バスをお迎えしています。日曜日の今日は、午前中に3件、午後に1件の団体でのご入館があり、館内は秋らしいにぎわいに包まれました。1号館の「玩具にみる日本の祭」では、日本各地の祭礼玩具を展示していますので、来館者ご自身のふるさとの祭を懐かしく話し合っておられる様子に接したり、また、地元の屋台の謂われや歴史について、私たちがあれこれお教えをいただくこともあり、展示室は静かな語らいにあふれています。

6号館で開催中の秋冬の恒例展「世界クリスマス紀行」は、今年も好評です。今日、展示室に立っていると、バスでご来場の方が、スペインのガラス玉のオーナメントの色が綺麗だと話しかけて下さいました。
「一本のクリスマスツリーの飾りが青一色っていうのは、とてもお洒落で、すがすがしいものですね。」と。

バージンブルーのオーナメント(スペイン)


「これは、バージンブルー、マリアさまを象徴する色なんです。スペインに暮らす多くの人たちは、聖母マリアを敬慕する気持ちが深いようで、クリスマス飾りの中に、このブルーが繰り返し登場してきます。」そんなふうにお話しすると、「まぁ…、この色が綺麗だから、というだけじゃないのね。意味があるのね。」と、きらきらした目で、ガラス玉の色を見つめておられました。
                           
スペインの北東ザラゴザという町には、聖母マリア(Madre de Dios)をまつる教会、エルピラールのバシリカ(La Basilica del Pilar)があり、マリアを敬慕する世界の人たちに、とても重要な巡礼の地になっているそうです。エルピラールのマリアは、スペインという国の守護聖人。ですから、スペインにおいて、マリアさまを表す「青(バージンブルー)」は、クリスマス(=ナビターNavidad)において、意味のある色なのだと思います。

クリスマスに登場する「キリスト降誕人形」を見てみましょう。馬小屋に誕生する幼子イエスの様子を箱庭風につくったものですが、スペインでは、ベレンまたはナシミエント、イタリアではプレゼピオ、フランスではクレーシュと呼ばれ、親しまれています。胸に手をあて、幼子を見守るマリアが身にまとっているローブは青色、バージンブルーです。高さ5cmにも満たない小さな像にも、それが誰とわかる色が選ばれているのです。

展示品にじっくり接していると、そこに込められた意味が見えてきます。たとえば、ツリー飾りの中の「赤」や「黄金」という色は何を象徴しているのか、展示室でクリスマスの色を見つめていただきたいと思います。そこから、各地のクリスマス行事への探求が始まるかもしれません。

(学芸員・尾崎織女)

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