「世界のクリスマス」 | 日本玩具博物館

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特別展

冬の特別展 「世界のクリスマス」

会期
2013年10月26日(土) 2014年1月21日(火)
会場
6号館

古代ヨーロッパでは、太陽が力を失い、地上の生命力が衰えた冬枯れの季節に、暖かい光の復活を願い、新しい年の豊作を祈る祭を行っていました。これは冬至祭や収穫祭として今も各地に伝えられていますが、キリスト降誕の祝日は、太陽 の復活を祝い、豊作を願うという土着の信仰をとり込むことを通し て、大きな行事へと発展していったものと思われます。

クリスマス飾りに登場するキャンドルの灯や光を象徴する造形の美しさ、また麦わらや木の実などの豊かな実りを表現するオーナメント(=装飾)の多様性からも、クリスマスがもつ意味をうかがい知ることが出来ます。 やがて、クリスマスの行事はキリスト教の普及とともに世界各地へと拡がり、それぞれの地の信仰や冬の習俗と結びついて定着すると、アジアでもアフリカでもユニークな造形が花開きました。

恒例となった当館のクリスマス展は、クリスマス飾りを通して世界各地のクリスマス風景を描き、この行事の意味を探る試みです。本年はテーマを二つ設けました。<世界のクリスマス飾り>では、「キャンドルスタンドと光の造形」「クリスマス菓子とオーナメント」「自然素材のオーナメント」「キリスト降誕人形」「サンタクロースと贈り物配達人」の五つの項目で、クリスマス造形の意味を探ります。また、<ヨーロッパのクリスマス>では、「北欧」「中欧」「南欧」「東欧」の四つの地域に分けて、本場ヨーロッパの伝統的なクリスマスオーナメントをご紹介します。本年の展示では、昨冬、ベルギー、オランダ、フランスのクリスマスマーケットより収集した資料を初公開します。

世界各地の民族色豊かなクリスマス飾りが一堂に――。
遠い国々のクリスマスに思いをはせながら、
クリスマス行事の奥行の深さと文化の豊かさを感じていただければ幸いです。

展示総数 世界55ヶ国1000点

クリスマス飾り1・光の造形とキャンドルスタンド~光の復活を祝う心~

 北半球において、12月21~22日といえば、太陽の照る時間が一年で最も短い冬至にあたります。冬至に向かって太陽の光は弱くなりますが、この日を過ぎると、日照時間はどんどんとのびていきます。この世に光をもたらす救世主と信じられるキリストの誕生日は、冬至を過ぎて再生した太陽を祝い、春への期待をふくらませる祝日でもありました。クリスマス飾りの中には光を象徴するものが目立ちます。 このコーナーでは、光を美しく暖かく見せる工夫に満ちた各地のキャンドルスタンドをはじめ、光をイメージしたオーナメントの色々を展示します。

ツリー飾り・光のオーナメント(ドイツ各地)

クリスマスの飾り2・クリスマス菓子とオーナメント

  クリスマスに飾られるオーナメントの中には、ドイツのレープクーヘンやシュプリンジェール、ヨーロッパ圏のジンジャークッキーのように、数多くの菓子が登場します。それらの菓子には、生命の源を支える麦はもちろん、薬効のあるスパイスや豊かな実りを象徴する木の実がふんだんに使われています。これらは、冬枯れの季節、私たちが必要とする栄養を考慮した食べ物であると同時に、あの世から戻ってくる祖霊や、土地に眠る霊への捧げ物でもありました。ここでは、チェコの小麦パン細工やセルビアの砂糖菓子のツリー飾り、ドイツの胡桃とプラムの人形「ツッヴェッチゲンメンレ」、フランスの公現節の王様ケーキの中の小さな陶器製人形(フェーヴ)などを紹介します。

お菓子のオーナメント展示コーナー

クリスマス飾り3・自然素材のクリスマスオーナメント~収穫感謝の心~

 クリスマスオーナメントの中には、スウェーデンやフィンランド、ドイツ、スイスをはじめ、各地に見られる麦わら細工の飾り、ハンガリーやスロバキアなどに見られるキビガラ(トウモロコシの皮)細工の飾りなど、収穫された穀物を象徴する造形も目立ちます。また、林檎や胡桃などの収穫物をテーマにしたオーナメントも各地で作られていることに気づかされます。これらには、一年の実りを感謝し、来る年が豊かであることを願う心が込められたものと考えられます。

きびがら細工の聖ミクラーシュ(スロバキア)とチェルト(チェコ)

クリスマス飾り4・キリスト降誕人形~生命をいつくしむ心~

 キリスト降誕人形は、中世の宗教熱の中、イタリアで作られ始めた箱庭風のクリスマス飾りです。馬小屋の飼葉桶に誕生したイエス、見守るマリアとヨゼフ、誕生の知らせを聞いてかけつけた羊飼い、東方から捧げ物を持ってやってきた三人の博士など、キリスト降誕の物語を人形によって表現していくものです。人形には作る民族の表情がよく映されています。

トナラ焼のキリスト降誕人形(メキシコ)

クリスマス飾り・5~サンタクロースと贈り物配達人~豊かさを祈る心~

 サンタクロースは、紀元280年頃、今のトルコに生まれ、のちにキリスト教の司教となった聖ニコラウス(セント・ニコラウス=オランダ語でシンタクラウス=英語でサンタ・クロース)がモデルです。情け深く、貧しい人々を救け、子どもを可愛がったので、子どもや弱者を守る聖人として敬われました。この聖ニコラウスが貧しい人々に贈り物をしたり、困っている人に金貨を授けたりしたという伝説と、遠い昔、冬至の祭に新年の豊かさを祈って、人々が贈り物を交換していた習慣が溶け合って、クリスマスにプレゼントを運ぶサンタクロースの物語が誕生したといわれています。国によってサンタクロースのイメージも様々。ドイツやオーストリアのサンタクロース(ザンクト・ニコラウス)には、生命の死と再生を司る来訪神のイメージがあり、北欧のサンタクロース(ニッセあるいはトムテ)は、人々に豊穣をもたらす自然神のイメージがあります。トナカイのひく橇にのってやってくる明るくやさしいサンタのイメージは、19世紀にアメリカで形成され、日本のサンタに影響を与えました 。

トナカイにのるサンタクロース(アメリカ合衆国)

北ヨーロッパのクリスマス

 冬の間はほとんど陽がのぼらず 、雪や氷に閉ざされる北欧にあっては、太陽の復活を願う古い民俗信仰とキリスト教が融合した「ユール」と呼ばれる独特のクリスマスが祝われます。厳冬、人々は窓辺にキャンドルを点し、清らかな行事の雰囲気盛り上げて行きます。手工芸が発達した国々とあって、切紙細や麦わら細工のクリスマス飾りが町中にあふれ、トムテやニッセという名のヤギを連れた妖精たちが活躍する北欧のクリスマス は、ファンタジックな雰囲気に満ちています。

北ヨーロッパのクリスマス飾り(スウェーデン・フィンランド・デンマーク)

東ヨーロッパのクリスマス

 東欧では、冬至祭や収穫祭に結びついた民族色豊かなクリマスが祝われています。チェコやスロバキア、ハンガリー、セルビア、リトビアの麦わらやキビガラ、木の実細工のツリー飾りには、収穫祭との深い結びつきが感じられます。また、小麦パンをかたく焼き締めて作られるオーナメントやチェコ、ポーランド、ルーマニアなどに見られる硝子細工のツリー飾りは、東欧伝統工芸の素晴らしさを伝えてくれます。

東ヨーロッパのガラス細工のオーナメント(ルーマニア・ポーランド)

中央ヨーロッパのクリスマス

 ドイツ、オーストリアなど中央ヨーロッパにおいても、クリスマス・アドベント(=待降節)の平均日照時間は1~2時間。冬枯れの町に 光のピラミッド(ドイツ・エルツゲビルゲ) は寂しさを払うようにモミの木の緑とキャンドルの光があふれます。町の広場にはクリスマス飾りを売るマーケットがたち並び、細工をこらしたオーナメントの数々が人々を温かく出迎えます。きらきら輝く麦わらの窓飾りや経木のツリー飾りは「光」をイメージしたものです。

ドイツのクリスマス

 ドイツのクリスマスにプレゼントを運ぶのは、St.ニコラウスやヴァイナッハマンと呼ばれる聖人ですが、地域によっては鬼を従えてやってきます。クリスマスツリーの本場とあって、豊富な造形が見られる地域です。クルミ割り人形や煙だし人形、“光のピラミッド”の名で親しまれるユニークな燭台、キリスト降誕人形“クリッペ”など、ユニークなドイツのクリスマス飾りを一堂にご紹介します。

ドイツのクリスマス飾り(ツリー飾り・オルゴール・煙り出し人形)

南ヨーロッパのクリスマス

 イタリアをはじめとする南欧のクリスマスには、“サトゥルナーリア”と呼ばれる賑やかな収穫祭の薫りが残されているといいます。また、カトリックが力をもつイタリアは、キリスト降誕人形の発祥した地であり、教育的な意味の加わったクリスマス玩具を見ることができます。イタリアやポルトガルでは“プレゼピオ”、スペインでは“ナシミエント”“べレーン”と呼ばれるキリスト降誕人形を中心に展示します。

キリスト降誕人形(イタリア・スペイン)


<会期中の催事>
解説会
   日時=11月24日(日)・12月8日(日)・15日(日)・22日(日)  
      ※各回 14:00~
ワークショップ・その1 壁飾り*麦わら細工「光の天使」を作ろう
   日時=11月30日(土) 13:30~15:00
ワークショップ・その2 ツリー飾り*フェルトとビーズのオーナメントを作ろう
   日時=12月1日(日) 13:30~15:00
絵本朗読会
   日時=12月23日(日) 11:30~/13:30~


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