コレクション
collection世界の民族玩具
日本玩具博物館では、世界約160の国と地域の玩具資料、約30,000点を収蔵しています。その多くが、木や土、紙や骨など、産地それぞれ、身近な自然から作られた品々です。世界の玩具収集においては、現地へ出向いて情報取集を行いながら、その地に伝承される民族色豊かな品々を求め、また、世界各国の民芸を扱う専門業者や個人の協力を得て、収集のフィールドを広げてきました。欧米の人形玩具博物館やコレクターとの交換収集なども当館独自の方法です。
そうして形成した世界の玩具コレクションを展観してみると、国が違っても同じ仕組みの玩具があったり、同じ動物玩具であっても造形、色彩感覚の違いが表れていたり…。お国柄、土地柄を反映して作られた玩具からは、各地の文化や生活の様子を知ることができます。
1.地域性
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アジア
アジアの国々では、古くから伝わる祭りや民族芸能の中から生まれた玩具が個性的な光をはなっています。玩具を与えることで、子どもたちを悪霊から守り、その健康な成長を願う風習も各地で生き続けています。だるまやヤジロベエをはじめ、日本のおもちゃと共通するものも多く見つけることができます。
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オセアニア
オセアニアは、商品として売られている玩具や人形の種類が少ない地域ですが、貝殻や樹皮などの自然素材をたくみに利用した手づくりの動物、船などがみどころです。一方、オーストラリアやニュージーランドの都市部では、おもちゃ作家や優れた玩具会社による手作り玩具も生まれています。
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アフリカ
商品としての玩具より、子どもたちは、石や木ぎれ、動物の骨など、自然の中にあるものを玩具にして遊ぶことが多いようです。大人たちが日々の暮らしで使用する道具を小さく作った玩具や、祖先像や祭の神像とも共通する人形などが目立ちます。アフリカの玩具造形は、人々の暮らしの豊かさへの祈りを背景に花開いていると思われます。
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ヨーロッパ
ヨーロッパは、玩具産業が早くから発達した地域です。家内手工業的に生産される産業革命以前の姿を伝える民芸玩具には郷土性と宗教的情操にあふれた品々が多く見いだされます。一方、ドイツやイタリア、イギリス、ロシアなどの近代玩具には、子どもの精神に栄養をもたらす道具として玩具を位置づけていこうとする人々の熱意が感じられます。
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中南米
中南米には、先住民が伝える宗教心に満ちた厳粛な造形に大航海時代以降、南ヨーロッパからの入植者がもたらした装飾性に富み、色彩豊かな美的感覚が融合して生まれた民芸的な玩具が数多くみられます。それらは、征服と抑圧の歴史から生まれた悲しみを秘めた造形でありながら、明るさと楽しさにあふれており、この対峙が中南米民芸玩具の魅力といえます。
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北米
オートマティック玩具の本家といわれる北米でも、シンプルな手作り玩具が大切にされてきました。研究所や幼稚園をもち、子どもたちの遊びを専門家が観察・調査して、玩具製作を行う玩具会社もあります。広大な森林資源を背景に生まれたカナダの大らかな木製玩具も見どころです。
2.普遍性と文化の波及
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こま
紀元前数千年の大昔に、すでに今と変わらぬ姿の石や土や木のこまが存在していたことを各地の出土品が教えてくれます。しかし、こまがいつ、どこで、誰によって発明されたのか、今のところ明らかにされていません。木の実が枝から落ちてクルクルと回転する、そんな動きに霊感を得た古代の人々が創造したのでしょうか。
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けん玉
けん玉は古くから世界中で広く親しまれています。世界のけん玉を集めてみると、その形は様々。大きく分けると、皿(盃)に球を受け止めるカップ&ボール型とけん先に球を刺し入れるピン&ボールに分類できます。素材も木製だけでなく、骨やヤシの葉など、その土地の生活文化に根差したものが用いられています。
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凧
世界の国々には、ユニークな形の凧が伝承され、子どもだけでなく、大人の遊び道具として、時には漁や運搬のためなどにも活躍しています。南洋の国々に遠い昔から伝承されている、木の葉の凧はその始まりの姿を物語っているようです。
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クリスマス玩具
キャンドルの灯や光を象徴する造形、麦わらや木の実などの豊かな実りを表現するオーナメント(=装飾)など、クリスマスを彩る造形の多様性から、クリスマスが持つ意味を伺い知ることができます。またサンタクロースをはじめ、プレゼントを持った様々な姿の贈り物配達人は、翌年の豊作と幸せをももたらしてくれる存在として、地域ごとに少しずつ形を変えながら好んで人形化されてきました。