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日本玩具博物館の魅力を発信!2025~当館で「地域実習」を終えた学生たちからのメッセージ・その2
●12月9日から5日間の「地域実習」を終えた青山学院大学のコミュニティ人間科学部の3年生の学生さんたちからのメッセージ・その2をご紹介します。若い人たちのまなざしは、展示ケース外に露出展示された品々、またケースのなかの小さな小さな郷土玩具へと及んでいます。(学芸員・尾崎)
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*館内のあちこちに息づく玩具たち*
*菅野 美波(かんの みなみ)
◆クリスマス展示のある6号館に初めて入ったとき、天井から麦でできたシャンデリアのようなオーナメントがたくさん吊るされているのを目にして、「素敵な飾り!」とすぐに心が惹かれました。また、4号館の1階にある椅子に腰かけ、何気なく上を見上げると、大きな角凧や鳥凧が視界いっぱいに広がっており、思わず見入ってしまいました。展示棚の上にも多くの玩具が並べられており、そこからは、「この博物館に大切に保管されている玩具たちをできるだけ多く、来館者の目に入るところに置いておきたい」という想いも込められているのではないかと感じました。これらの点から、ガラスケースの中だけでなく、天井や壁、展示棚の上など、ふと視線を向けた先にあらゆる玩具が目に入り、楽しめる空間構成こそが、日本玩具博物館の大きな魅力なのだと思いました。




◆尾崎さんにお話を伺うと、「こういったものが目に入ってきた方が、『わっ』という驚きや、『ほっ』という安心感、あたたかさを感じてもらえるのではないか」という意図があると教えてくださいました。実際に館内を歩いていると、自然と穏やかな気持ちになり、その効果を実感しました。さらに、麦わら細工のモビールであるヒンメリについても教えていただきました。
◆ヒンメリは中世のころにフィンランドの農村で生まれた家庭内の手工芸で、その素材となる麦わらには実りをつかさどる穀物の精霊が宿り、幸せを呼ぶ力があると信じられてきました。ヒンメリは「天空」を意味し、ゆらゆらと揺れるとき、聖霊が空間を清めてくれると考えられているそうです。材料として使われるライ麦や小麦が、当時の人々の暮らしや食と深く結びついている点も印象的でした。こうした背景を知ったことで、意味や祈りが込められた文化として、より深く鑑賞したいと思いました。ラトビアのプズリスには、私たちも工作体験させていただいたクリスマスオーナメントが付いており、華やかさがあり、魅力的だと感じました。



※5日間本当にありがとうございました。貴重な体験やお話、おしゃべり、どれもとても良い学びになりましたし、楽しかったです!
*小さな玩具から、世界を旅する*
*小倉 咲貴子(おぐら さきこ)
◆向かい合う小さな「桃午」。一見そっくりな二頭ですが、表情や色の濃淡、背に乗せた桃の形は絶妙に異なり、その違いはそれぞれの愛くるしさを引き立てています。

◆これは岡山県岡山市で生まれた「吉備の桃午」という土人形です。手のひらにすっぽりと収まってしまうほどの小ささとは裏腹に、桃を乗せた午というパッと目を引く見た目をしています。
◆実習二日目の土人形の展示品目録を作成しているとき、この桃午を見た実習仲間たちは、「かわいい」と思わず口にし、一瞬にして二頭の虜になっていました。岡山市出身である私は、同じ土地で生まれたこの桃午がとても誇らしく、自分のことのように嬉しく感じました。

◆これをきっかけに、他の土人形にも興味を持ち、土人形は伏見人形を起点として全国各地へと広がっていったことを知りました。多くの人の手と時間の中で受け継がれ、広がる過程での形の揺らぎや均一ではないその質感からは、作り手の思いを感じます。またきっとそれは土人形に限らず、日本玩具博物館にあるすべての玩具にいえることでしょう。一つひとつの玩具は、誰かの暮らしの中で生まれ、願いや祈りが込められ、大切にされてきた存在です。日本だけでなく、世界各地の玩具もまた、それぞれの文化や生活を映し出しています。

◆日本玩具博物館では、そんな小さな玩具一つから、地域を越え、国を越え、世界へと想像を広げていく体験ができます。手のひらに収まるほどの玩具が、気づけば広い世界へと連れて行ってくれる——まさに、小さな玩具から、世界を旅することができる場所だと感じました。
**********その3へ続く*************
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