日本玩具博物館の魅力を発信!2025~当館で「地域実習」を終えた学生たちからのメッセージ・その3 | 日本玩具博物館

日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

Language

ブログ

blog
学芸室から 2025.12.25

日本玩具博物館の魅力を発信!2025~当館で「地域実習」を終えた学生たちからのメッセージ・その3

12月9日から5日間の「地域実習」を終えた青山学院大学のコミュニティ人間科学部の3年生の学生さんたちからのメッセージ・その3をご紹介します。4号館1階に常設展示している郷土玩具の姿に目を向ける学生さんたちのレポートです。(学芸員・尾崎)

*************

おもちゃは遊び道具じゃない?!

内藤 琴美(ないとう ことみ)

おもちゃと言えば大半の人が、「子供の遊び道具」というイメージを抱くと思います。私も最初はそうでした。しかし、日本玩具博物館に地域実習で伺わせていただき、そのイメージが覆されました。ただの遊び道具じゃない。おもちゃは「文化の魅力」なんだ。たくさんの展示からおもちゃをそう伝えている点にこの博物館の大きな魅力を感じました。

日本の郷土人形の源流となった京都・伏見人形

特に私が興味深いと感じたのは「土人形」です。土人形は京都の伏見土人形を源流として、日本各地からやってきた人々がその型を写し取り、自分たちで作ることによって広がっていきました。地域に伝わるにつれて形が簡略化され、伏見から離れるほど輪郭がぼんやりしていくという特徴が生まれます。このように伏見土人形が派生してできた土人形の例として、青森県の下河原土人形があげられます。技法や形、題材が縁起物、人形、動物などである点において伏見土人形の特徴を色濃く引き継いでいるといえますが、彩色の仕方、表情などを見ると、その地域特有の特徴を感じ取る事ができます。

青森県弘前市の下河原(川原)土人形

一方で、福岡県の赤坂土人形のように、同じ土人形でありながら異なる背景から成立した例もあります。これは、筑後地方の赤坂焼の陶工が本業の焼き物の余技として作り始めたという背景があり、筑後地方の方言で「ててっぽっぽ(不器用、不細工な人)」と呼ばれるほど型のずれや歪みがそのまま残されています。このような「文化の魅力」を実際に目で見てその空気感を感じ取ることはここでしかできないと思います。

福岡県筑後市の赤坂土人形

今回の実習を通して、これまで関心の無かった地域の歴史に興味を持ったり、世界を知ることは日本の魅力に気付くきっかけになることを学んだり、たくさんの発見がありました。井上館長や尾崎さんやの玩具に対する想い、来館者に対する愛を感じ取り、とても心に残りました。価値ある体験を私たちに贈って下さり、心から感謝いたします。



大阪の郷土玩具について

篠原 匠(しのはら たくみ)

日本玩具博物館の4号館には日本各地から集まった郷土玩具が保管、展示されている。私は今回、自身のふるさとである大阪の郷土玩具について館長からお話を伺ったり、本をお借りしたりしつつ展示品を見学することが出来た。私がここに来る前のイメージとしては、大阪は古くから続く大都市なので郷土玩具の種類も多岐に渡ると考えていた。

しかし実際に展示品を見たり、お借りした本を拝見したりした印象としては、あまり種類が多くないという印象を受けた。また展示物も堺より北のものが多く、私の地元がある南大阪、いわゆる泉州地域のものを見つけることが出来なかった。泉州地域では長い伝統を持つ岸和田だんじり祭のような伝統的な文化も大切にされている。そのため古い文化を大切にする地域だというふうに考えていた。しかし郷土玩具という側面から見るとそうでもないように思えた。

住吉神社の授与玩具など

大阪というそこまで大きいとは言えない地域一つとっても、地域の中での差が生じているということがわかった。玩具博物館に訪れたことによって、地元の今まで目を向けていなかった部分にも目を向けることができ、見る角度を変えることで新たな発見をすることが出来るということが分かった。

玩具博物館には展示されているもの以外にも実に9万点にも上る所蔵品がある。それらから得られる学びはとても多く、またとても大きなものであると考えた。今回の体験は私の大学生活だけでなく、今後の人生にとっても大変有意義なものとなった。

来年はバイクで日本一周をする予定なので、近くに訪れた際は是非伺わせていただきます。五日間ありがとうございました。


*******その4へ続く******

バックナンバー

年度別のブログ一覧をご覧いただけます。