今月のおもちゃ
Toys of this month「ペグ・ドール」
日米両国の文化に造詣が深いアメリカ人のルヤック女史がアメリカの手芸誌『PieceWork』にちりめん細工を紹介してくださったのがご縁で、1996年、アメリカメリーランド州ボルチモアで開催された「ドール・メイキング・コンフェレンス」に当館からちりめん細工のワークショップをもっていきました。その折、18世紀のアメリカが再現された町・バージニア州ウィリアムズバーグを訪れ、町のミュージアムショップでもとめたのがこの人形です。
「ペグ・ドール」とよばれるこの木製人形は、18世紀後半にイギリスで作られ始めたファッションドールの原型です。手足が動き、流行の衣装を着せ替えて楽しむ人形でした。南ドイツのオーバーアマガウ民俗博物館をはじめ、ドイツやイギリス各地の玩具博物館には大小さまざまなペグ・ドールが収蔵されており、18世紀から20世紀初頭にかけて、この人形がいかに愛されていたかがわかります。
バージニアは北部マサチューセッツとならび、新大陸植民地、そして独立後の新国家アメリカの政治、文化の中心地であり、ウィリアムズバーグは約2000の人口を有する、当時としては、大きな町でした。そして現在、町の一部(コロニアル・ウィリアムズバーグ)は、18世紀の町並みを復元した巨大な歴史博物館であり、その中で人々が当時のままの生活をおくっている生きた博物館でもあります。
バラの飾りをつけたチュールレースのショールや帽子、ヴィクトリア調の衣装からは、この人形がイギリスから持ち込まれたことを感じさせ、また、古き良き時代のアメリカの人々の様子を彷彿させてくれます。
この作品は、現在開催中の特別展「世界の国の人形」でご紹介しています。