日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2007.07.24

長島美術館の「なつかしのおもちゃと四季のちりめん細工展」

鹿児島市にある長島美術館で日本玩具博物館コレクションによる「なつかしのおもちゃと四季のちりめん細工」展が始まりました。先週は、館長と担当学芸スタッフと鹿児島へ出かけ、美術館の方々と一緒に3日間にわたって準備作業を行いました。

長島美術館は、錦江湾にそびえ立つ桜島を真正面に望む海抜110mの高台にたち、椰子や蘇鉄など、亜熱帯樹の葉々が青空を切り取る素晴らしい自然景観の中にあります。長島企業グループ創立者の故・長島公佑氏が蒐集された1000点の美術品を収蔵し、展示室はピカソやルノワール、シャガール、ロダン、マイヨールなどヨーロッパ絵画・彫刻の巨匠の作品、新大陸先史美術品、それに系統だった薩摩焼のコレクションを7つの展示室に展観されています。
 海から吹く湿った風と熱い日差しに包まれた庭園に立ち、亜熱帯の植生と調和的に設計された建物を目に収めて、私たちはそのスケールの大きさに息をのみました。・・・・・・ここは、日本だろうか?!と。

開館は平成元年と聞きます。バブル経済期に計画された美術館・博物館を、地方自治体がどんどん建設していた時代です。けれど、多くのそうした施設と長島美術館が異なるのは、蒐集された美術資料が先ずあって、それらのために施設がつくられたということ。照明の方法であったり、作品の位置や空間のレイアウトであったり、展示される数量であったり、展観の動線であったり・・・・・・展示品を魅力的に見せるための素敵な工夫を展示室の随所にみつけると、この美術館企画運営者の作品への愛情に触れる気がします。そうして愛されている品々が幸せそうに暮らす家を観覧すると、見る側もまた幸福に満たされるのです。
 
日本玩具博物館の近代玩具とちりめん細工作品約500点のゲストハウスは、世界に認められた美術品たちが穏やか暮らす、この家の第7展示室です。展示作業の様子と出来上がった展示風景の一部を画像でご覧下さい。

長島美術館の長島館長はじめ、細やかな心くばりができるスタッフの皆さんとの共同作業も楽しく、オープン前日には、日本玩具博物館らしい要素を盛り込んだ展示が完成しました! 初めて企画から担当した当館学芸スタッフの井上が、心を込めて懸命に展覧会づくりに励んでくれ、その意味でも今回の仕事は、私にとって嬉しいものとなりました。

このように、日本玩具博物館の資料たちは、ここでも、誇らしそうにひとつの世界をつくっています。まとまった数の近代玩具が歴史を追って展示されるのも、ちりめん細工が紹介されるのも、鹿児島では初めてのこととあってか、オープン前日からマスコミ関係の取材などもどんどん入っていました。この夏、当館の玩具たちは、南国の方々とどんな出会いを果たしてくれるでしょうか。
お近くにお住まいの方はもちろん、旅の計画をたてていらっしゃる方にも、ご訪問をおすすめいたします。桜島を一望できる館内のレストラン「カメリア」では、「なつかしのおもちゃと四季のちりめん細工」展にちなんだお料理も用意されるそうです。ぜひとも、お出かけ下さい。

(学芸員・尾崎織女)


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