コレクション
collection日本の近代玩具
家内工業的に手作りされてきた地方色豊かで呪術的な性質をもつ玩具(=「郷土玩具」)に代わって、近代の合理的思想にもとづく「近代玩具」が誕生したのは明治時代。ブリキやゴムなどの新素材も登場しました。セルロイド製の人形や玩具、ゼンマイという新動力を使った玩具が工場で量産された大正から昭和初期、プラスチック素材が主流となり、機構的にもフリクションや電動が一般化した昭和中期、テレビの影響でマスコミ玩具が日本中を覆い、コンピュータ―制御による玩具が登場した昭和後期、多様のメディアの影響を受けて玩具の流行がつくられるようになった平成時代…と、近代玩具は時代とともに移り変わっていきました。いつも子どもたちの傍らにある玩具は、小さなものでありながら、色や形、材料やテーマにも時代の精神がふんだんに表現されているため、これらを通して、私たちは、自らの生活史に触れることができます。当館では開館以来、50年の歳月をかけて収集してきた近代玩具、約15,000点を所蔵しています。
明治の流行玩具
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明治に入り海外との交易が始まると、新たな素材、「ブリキ」できた玩具が輸入され、鮮やかな彩色の人気とともに、国内でも盛んに作られるようになります。
また、明治20年代にはいると幼児教育の大切さが説かれ、“教育”という文字を冠した玩具が注目を受けました。遊びながら集中力、器用さを養い、家庭生活を学ぶ教育的玩具の人気が高まります。
玩具の大正デモクラシー
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大正時代は芸術性の高い児童雑誌が相次いで創刊され、童話や童謡の創作運動が展開する中で、情感豊かなデザインの玩具が目立つようになります。また、玩具にはセルロイドやゼンマイなどの新素材、新動力が用いられ、工場で大量生産が始まります。とくにセルロイドは軽くて水に強く、海水浴文化の広まりも影響して、水あそびの玩具が多く誕生しました。
昭和初期のモダン玩具
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大正時代から引き継がれた明るい色彩のやさしい木製玩具が人気を呼びます。この時代、西洋風のファッションや暮らしへの憧れが「モダン」という言葉で表現され、洋装の人形ままごとのティーセットなど、玩具にも影響を与えます。
戦時中の玩具
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太平洋戦争が近付くと、子どもの遊びにも戦争が影響をあたえ、玩具の中にも戦時色が加わります。ブリキやアルミなどの金属製の玩具製作も禁止され、材料統制の中で自然素材へと回帰していく玩具や情勢を反映した玩具は、当時の子どもの世界を伝えています。
輸出された玩具
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第二次世界大戦後、占領下の日本では<made in occupied Japan>と記された精巧ながらも安価な日本製玩具が続々と海外へ送られていました。独立後も日本の玩具製品の技術と品質の高さは人気をよび、輸出用には国内よりもいち早く、ソフトビニールやプラスチックの新素材、電池仕掛けも導入されていました。
戦後の駄菓子屋玩具
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戦後の復興の中、昭和20年代から30年代にかけて駄菓子屋ブームが訪れました。子どもの小遣い銭で買える駄菓子屋玩具は、素朴で単純なものが多いですが、子どもたちの心をとらえる要素が詰まっています。
高度経済成長期の玩具
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戦前から人気を集めたブリキやセルロイド玩具が隆盛を迎えます。動力もゼンマイに加え、日本で考案された車輪の摩擦を利用して進むフリクション、さらに電動へと大きく変化していきます。また、テレビが一般家庭に急速に普及し、アニメやバラエティ番組、アイドルなどのマスコミ玩具が一気に広まります。
昭和後期から平成の流行玩具
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ゲーム機器の発展が玩具界に大きな変革をもたらし、さまざまな玩具が電子化の影響をうけます。マンガ・アニメが子どもの世界に定着し、キャラクター玩具の人気も不動のものとなります。その一方で、木製玩具や手作り玩具、テーブルを囲んで皆で遊ぶアナログ玩具も、平成時代には再注目を集めます。