展示・イベント案内
exhibition「伝統手芸の世界」
- 会期
- 2018年3月3日(土)
- 会場
- 3号館
◆江戸時代から明治・大正時代にかけての裁縫お細工物約50点、当館の復興活動を通して今によみがえった平成のちりめん細工約250点、祖母から子へ子から孫へとその家庭や地域で伝承されてきた手まり約50点、そして繊細なびん細工約50点をご紹介しています。
●ちりめん細工●
*縮緬(ちりめん)は細やかな「しぼ」のある優しい風合いの絹織物。江戸時代後半、御殿女中や武家、また裕福な町家の女性たちによって、着物用に裁った縮緬の残り裂を利用して袋物や小箱が作られるようになりました。人形や動物、花などをかたどった袋物や小箱、懐中物を、今日、「ちりめん細工」と呼びならわしています。
*ちりめん細工は残り布を大切にする精神、美的感覚、手先の器用さなどを身につける手芸で、かつては日本女性の教養のひとつでもありました。題材になる花や動物、器物の形には、吉祥や魔除けを表現する伝統文様が見いだされます。
*明治から大正時代、ちりめん細工は女学校の教材に取り上げられ、女学生は作品づくりを競い合いました。日本玩具博物館は2000点に及ぶ当時の作品を収集保存しています。
*太平洋戦争による社会の混乱や戦後の生活様式の変化の中で一度は忘れられたのですが、ちりめん細工は伝える世界のすばらしさに気づいた日本玩具博物館では、30余年前より古作品や文献の収集を行い、また企画展や講習会を開催してちりめん細工の復興と普及に努めてきました。継続した博物館活動と愛好者の熱心な取り組みによって、ちりめん細工は日本手芸の一分野として広く認知されるまでに発展しています。
*ここでは、江戸時代から明治・大正時代にかけての代表的な作品を展示し、ちりめん細工の歴史を簡単に振り返ります。また、当館の復興活動をしてよみがえった平成のちりめん細工を季節ごとにご覧いただきます。
●手まりとびん細工●
*手まり……江戸時代、木綿が栽培されるようになると、全国各地に木綿布や木綿糸が普及し、普段使いの衣料の中心を担うようになります。やがて、母親や祖母たちは、暮らしの中で生じたぼろ布やくず糸も大切にとりおき、女児たちのために小さなまりを作りました。まりは、色糸で菊や椿などの花模様、星形や幾何学模様などをほどこして美しく仕上げられました。
*その模様は、地域ごとに異なる特色をもっています。手まりは、室内で転がしたり、弾ませたりして遊ばれましたが、明治時代に入ってゴム製のまりが出現すると、その普及に押されて、姿を消していきました。
*ここでは、各地に伝わる代表的な手まりをご紹介します。
*びん細工……びん細工は、口の狭いガラス瓶の中に、手まりや糸巻き、花、人形などのお細工物が入っています。誰もが、大きな作品を狭い口からどのようにして入れたか不思議に思われることでしょう。びん細工は、江戸時代の文政4年(1821)に長崎で作られたという作品が伝承されていますが、広く作られるようになるのは、ガラス瓶が広まった明治時代のことだと考えられ、明治後半には手芸の一分野として都市部を中心に流行したようです。
当館では、約30年前から折に触れて、びん細工作品を収集してきましたが、それが今では60点を超えました。「ちりめん細工」ともつながりの深い手芸であることから、今回、久しぶりに展示いたします。