玩具博物館のクリスマス・アドベント・その3 | 日本玩具博物館

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学芸室から 2015.12.22

玩具博物館のクリスマス・アドベント・その3

12月4日の聖バルバラの祝日にお皿にまいた大麦は、小さな芽から葉をのばし、青々とした若葉が育っています。冬至に向かって日照時 間がどんどん短くなる季節に小さな生命の不思議を見守るというのはとてもいいものですね。この苗たちはクリスマスシーズンが過ぎたら、プランターに植え付けてみようかと思っています。

バルバラの麦が青々と葉を伸ばし始めました

アドベント・クランツに4本目のキャンドルが点った先週の日曜日は、お隣町にある兵庫県立福崎高等学校コーラス部の皆さん(5名と顧問の先生方)をお招きし、クリスマス展会場で、綺麗な歌声をご披露いただきました。天井からフィンランドの麦わら細工〝ヒンメリ″が揺れる展示会場に木造りの椅子を並べると、まるで小さな聖堂のよう。舞台側にはドイツ・エルツゲビルゲの天使のキャンドルスタンドが、キャロルが始まるのを今か今かと待っているような表情……。若い皆さんは最初、緊張した面持ちで、のちには優しい笑顔で、「きよしこの夜」「ジングルベル」「もろびとこぞりて」「荒野の果てに」「ひいらぎかざろう」「赤鼻のトナカイ」「サンタが街にやってくる」など、日本人によく親しまれたクリスマスソング を聴かせて下さいました。その暖かく清純な歌声に胸を打たれた…と多くの方々から笑顔のご挨拶をいただきました。たくさんのクリスマス・キャロルの演奏会がありますが、このひとときは、他のどこにもない素敵なものだったに違いありません。

福崎高等学校コーラス部によるクリスマス・キャロル。きよらかな歌声が展示室に響きました

クリスマス・アドベントには毎日のように嬉しいことがあります。12月19日(土)には、第2回目の「クルミの中の幼子」のワークショップを開きました。学芸室からNo.188でもご紹介いたしましたように、これはハンガリー伝承のツリー飾りで、クルミという素材の意味合いやクルミ殻と幼子イエスが結びつく理由、また近世までの赤ん坊の育て方などを知るための講座でもあるのですが、嬉しいことに、ご参加された方々は、みな、このオーナメントを非常に気に入り、たくさん作りたく仕方なくなってしまわれるようです。ご参加者にいくつかの材料をプレゼントしたところ、皆さん、ご自宅で作られた幼子のオーナメントを写真にとって届けて下さいます。どれもこれも個性的で非常に愛らしく、小さな生命への慈しみにあふれた作品ばかり。今年、ご紹介できたこと、本当によかったと嬉しく思っています。

さらに今日、嬉しかったことは―――。今年は、神戸新聞社からご依頼を頂戴し、1月1日より一年間のスケジュールで、同紙の3面に「おもちゃの四季」という小さなコラムを井上館長と一緒に書かせてもらっています。もういよいよ終了に近づいているのですが、今日は小さな姉妹がおばあさまと一緒に、12月22日付のコラム「聖ニコラウスの煙だし人形」の紙面を切り抜いて、その人形を探しにご来館下さいました。展示品の中に、まあるく口をあけて煙を吐き出す聖ニコラウス(ドイツのサンタクロース)をみつけ、〝かわいい…。でも、もっと小さいと想ってた…″と展示を観ておられるところに出会い、せっかくだから…と人形の胴部でお香をたいて、煙を吐き出す様子を観ていただきました。女の子たちは大喜び。おばあさまがそのコラムをずっとご覧下さっていたそうで、こうして、記事をきっかけに小さなお子さんまでもが興味をもってご来館下さることをとてもありがたく幸せに思いました。

神戸新聞のコラム「おもちゃの四季」とスクラップ帳
「聖ニコラウスの煙だし人形」の記事をみて人形に会いにきてくれた女の子

始まった頃は一年という長い月日に圧倒される思いでしたが、読者の方々からの嬉しいお便りなどにも励まされて、ふり返れば、あっという間に終わってしまったように感じられます。ここの文章は違った表現にしたらよかった…などと後で反省することも多く、また、あの玩具も入れたらよかった、この人形もご紹介すればよかった…と思ったりいたします。けれども、大切な紙面に一年間も場をいただきました神戸新聞社ご担当の方々に感謝の気持ちでいっぱいです。そしてご愛読下さいました皆さまに心よりお礼申しあげます。

  

最後にひとつご報告があります。玩具博物館の受付窓口に2011年春より設置させていただいておりました「東日本大地震被災地の文化財復興への義捐金」募金箱を2年9ヶ月ぶりに開封いたしました。これまでには、2011年5月31日には50,000円、同年クリスマスに10,000年、2013年3月11日に15,000円と3回にわたって皆さまからの義捐金を公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団へ送金させていただいたのですが、今回、クリスマス献金として、23,080円をお送りしております。

あたたかいお心で寄付下さいました皆さま、ありがとうございました。メリー・クリスマス! 多くの方々のお気持ちが被災地文化財の修復に関わる何かに生かされますように・・・。

(学芸員・尾崎織女)

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