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blog日本玩具博物館へのクリスマスプレゼント
浦添市美術館の幸喜明子学芸員からのメッセージ
●昨秋、沖縄県の浦添市美術館からご依頼を受け、「なつかしの日本の郷土玩具展」(会期=2023年9月17日~10月29日)に全面協力させていただきました。同展では、近世から近代にかけての日本の手遊び文化の姿を今に伝える玩具を取りあげ、「日本の郷土玩具~北から南へ」「戦前の琉球玩具の世界」「日本の郷土凧~古今東西ふるさとの凧、大空の共演」の3つの柱で構成しました。浦添市美術館の3つの展示室に総数約500点の玩具資料を広げていただき、ご担当の幸喜明子学芸員をチーフとして、沖縄県では初めてともいえる郷土玩具展に取り組めたことは、昨年のよい思い出として心に刻まれています。
●中でも、第二展示室にご紹介した「戦前の琉球玩具」の数々は非常に貴重なもので、長い時を経て、沖縄へ里帰りさせることが叶いました。昭和20(1945)年、太平洋戦争の戦場となった沖縄では、連合国軍、日本軍、そして民間の人々合わせて、20万人もの尊い生命が失われ、同地が伝えてきた生活文化の多くもまた激烈な打撃を受けました。玩具についても例外ではなく、戦前の琉球玩具はほとんど遺されていないため、同展は意義深いものであったと主催館の皆さまからも喜んでいただきました。
●当館開館50周年にあたり、幸喜学芸員からお心のこもったメッセージを頂戴しましたので、こちらでご紹介させていただきます。
「なつかしの日本の郷土玩具展」
幸喜 明子(浦添市美術館学芸員)
幸 開館50周年おめでとうございます。香呂駅のかわいい電車、抜ける風に美しい柿の実、見えてくる美しい白壁と瓦、可愛らしい独楽のマークを掲げた博物館をみて日本玩具博物館への旅は電車に乗るときから始まっているのだな、と感じたことをよく覚えています。こだわりが詰まった博物館と、愛情の詰まった玩具達、井上館長の迫力ある解説を聞き、本の中でしか出会わなかった憧れの玩具達を目の前にして、博物館に必要なのは情熱と優しさだと再確認できた場所でもありました。尾崎学芸員や井上さん御一家、スタッフの方々など、皆さまのあたたかさに支えられての50年、人が集まる場所には理由があるのだと実感し、「また来よう」と自然と思える場所でした。これからの50年も幸せと笑顔あふれる時間になりますよう心よりお祈り申し上げます。
そして、一番伝えたいご報告です。先日まで当館で開催していた「第15回沖縄ねんりんピック かりゆし美術展」で郷土玩具展をモチーフにした作品が出品されていました。搬出の際にご本人とお話ができました。展覧会で玩具達をみて感動し、どうにか形に残しておかなくてはと紅型染にされた作品なのだそうです。「本当に素晴らしい玩具を見る事が出来て嬉しかった、よくぞ残っていてくれたと嬉しくなりました」とのお言葉もいただきました。
作品名:「レトロなおもちゃ達」 作者:榮野川盛治氏(うるま市)
「郷土玩具展」では遠く離れた沖縄へ貴重な玩具を展示いただいたこと、重ねて御礼申し上げます。会場へは多くの博物館関係者が来場し、今もなお図録をみて喜ぶ方や急いで購入する方などが絶えずどれだけ意義深い展覧会だったのかと示し続けています。
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●展覧会でご一緒した博物館施設ご担当者からのメッセージは、とても嬉しいものです。さらに、思いをこめてご協力した企画展が、来場者の心に響くものであったと知らされることは、なりよりもありがたい励ましです。幸喜さんからの温かいメッセージと、沖縄在住の榮野川盛治さんが地元の郷土玩具を作品として取りあげてくださったことは、50歳を迎えた日本玩具博物館へのステキなクリスマスプレゼントになりました。―――心より感謝申しあげます。
中学生アーティストからのプレゼント
●もうひとつ、当館にいただいたクリスマスプレゼントを紹介させていただきます。
去る日曜日、博物館学の授業の一環で学生さんたちのご指導のために来館されたM先生とともに、中学3年生のお嬢さん・Sさんが見学にいらっしゃっていました。そして、学生さんたち向けの即席講座やクリスマス展の展示解説会にもご一緒してくださり、玩具を囲むひとときを過ごしていかれました。
●その一週間後、Sさんから、なんと自作の絵画を額装してお贈りいただいたのです! 作品が目の前に現れた瞬間、画面から私たちが親しんでいるおもちゃたちが生き生きと立ちあがってきました。文化人形も姉様も、ポッペンも花独楽も狐面も愛国イロハカルタも・・・それぞれの特徴がよく描かれており、同時にそれぞれのおもちゃたちに与えられた装飾的な輪郭と美しい文様にはSさんの個性が感じられて、彼女がつくっていかれる独特の世界にすっかり魅入られました。
●Sさん、日本玩具博物館へ作品に託してメッセージをお届けくださりありがとうございます。この絵の主役である文化人形を展示している2号館に飾らせていただきました。ご来館の皆さまにはぜひ、近くでご覧くださいませ。
(学芸員・尾崎織女)
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