「七夕に捧げる造形~人形と紙衣、船と馬」 | 日本玩具博物館

日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

Language

展示・イベント案内

exhibition
企画展

ランプの家*夏季テーマ展示 「七夕に捧げる造形~人形と紙衣、船と馬」

会期
2024年6月20日(木) 2024年8月31日(土)
会場
ランプの家

七夕の夜、短冊に願いごとを書いて笹竹につるし、屋外に立てて天の川をのぞむ習俗は、今でも日本各地に伝承され、私たちは、七夕といえば、サラサラ風にゆれる笹飾りや七夕棚に供えた胡瓜や茄子の動物、朝一番で芋の葉に浮かぶ露をとって墨をすり、短冊に願いごとをしたためたことなどを想い起こします。

七夕は古代中国で発展した初秋の儀礼です。天の二星(牽牛星・織女星)に織物の上達を祈るもので、「乞巧奠(きっこうでん)」と呼ばれていました。それが奈良時代の宮中に伝わり、やがて、祖霊祭としての「盆行事」や、実りの秋を前にした「豊作祈願」などとも結びつき、日本独自の発達を遂げていきます。
織物に加え、和歌や管絃、立花、香道などの巧(=上達)を乞い願う芸能祭のような色合いを帯びるのは室町時代のこと。さらに、私たちが今日、知るところの笹飾りが盛んに行われるようになるのは、行事の担い手が寺子屋の子ども達の手に移ってからのことのようです。江戸時代中期の寺子屋では、七夕がくると、硯を洗い、稲の朝露で墨をすって、七夕の和歌を梶の葉や短冊にしたため、手習いの上達を願いました。江戸後期に入ると、紙すきの普及によって七夕の短冊は都市部の庶民の間でも盛んに行われるようになったと考えられます。

「宝永花洛細見図」(1704年序)より七夕―寺子屋で梶の葉や短冊に書をしたためる子どもたち
「江戸砂子年中行事 七夕之図」(豊原周延/明治18・1885年ころ)――たくさんの短冊や切り紙細工の投網がつるされた笹飾りが描かれている

昭和30~40年代、高度経済成長期を境に七夕行事は画一化され、残念ながら郷土色や家庭における儀礼の味わいを失っていきましたが、令和時代の今も、日本の各地で地元の伝統を守り、次代へ受け継ごうと懸命に取り組んでいる地域もみられます。
本展では、天の二星に見立てた人形や愛らしい紙衣、稲わらや茅(チガヤ)などを細工した馬、また天の川を渡る船など、各地に伝承されるユニークな七夕の飾り物を集めて展示します。私たちの祖先が伝える七夕行事の豊かな世界に触れていただく機会となれば幸いです。


展示風景をご紹介します。当館の七夕コレクションのなかから、長野県松本市の「七夕人形」のいろいろ、京都の紙衣「七夕さん」、東京都大宮八幡宮の「乞巧守」、兵庫県姫路市の「七夕さんの着物」、同じく姫路市の「七夕船」、岐阜県高山市の「松之木七夕岩」行事の模型、千葉県安房地方の「カヤ馬と牛」など、各地に伝承される七夕飾りが集っています。各地の紹介パネルをご覧いただきながら、ランプの家の佇まいのなかで、夏から初秋の風情をお楽しみください。

月遅れの七夕(8月7日)に8月4日(日)午後から8月7日まで、ランプの家の縁側に姫路地域の七夕飾りを展示いたします。

昨年度(2023年度)の月遅れの七夕飾り