日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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展示・イベント案内 exhibition

企画展

夏の企画展 「おもちゃで綴る20世紀」

会期
2001年6月30日(土) 2001年9月9日(日)
会場
1号館

日本における二十世紀は、日露戦争開戦前夜の明治後期から始まります。近代化を急ピッチで推し進め、教育や文化が中央集権的に統一され始めた時代、江戸庶民の間で言い継がれてきた「手遊び」という言葉も、国語統一の機運から「玩具」という書き言葉と宮中で発達した「おもちゃ」という話し言葉に収斂されていきます。それは、家内工業的に手作りされた地方色豊かな民芸おもちゃ(郷土玩具)と入れ替わりに、工場で大量生産される近代玩具が日本中に流通し始める、おもちゃの二十世紀の幕開けでもありました。

西洋に学びながら、ブリキや金属、ゴムなどの新素材、ゼンマイのような新しい動力を使ったものが登場し、軍国調の玩具が子どもの間でも人気を得るようになった明治時代、アンチモニーやセルロイドが新しい素材として脚光をあび、アルコール燃料を使用した発明玩具が誕生した大正時代、玩具輸出がドイツを抜いて第一位となった昭和戦前、高分子科学の発達によりプラスチックが主流となり、機構的にもフリクションから電動式が一般化した戦後の昭和、新媒体のテレビの影響でマスコミ玩具が日本中を覆うようになった昭和後期、そして電子ゲーム類の隆盛を極める平成時代……と、この百年に玩具の世界は、数度の大変革を体験したといえます。

一方、そうした近代工業玩具とは別に、子ども達には駄菓子屋玩具の世界がありました。紙メンコやベイゴマ、おはじきや当てものなどの駄菓子屋玩具は、一般の玩具店で売られる高額な玩具とは違い、子どもの小遣い銭で買える程度の安価で、小さく、壊れやすいものでしたが、子どもの興味関心に添うものでした。過去に駄菓子屋のブームは2回訪れています。大正末期から昭和10年頃と昭和20年代から30年代初めです。季節毎にかわるお菓子と玩具の多様さに心をときめかせ、学校が終わると仲間と駄菓子屋へ走っていく子ども達の姿は、自分達の社交場へ向かう喜びに満ち溢れていました。

日本の二十世紀の玩具は、近代的で商業主義的なものばかりと評価されがちです。確かに、「子どもの心に栄養をもたらすもの」という発想より、「売れるものをより多く作る」という発想が優先されてきたことは、否定できない玩具史の事実です。しかし、戦争中、軍国主義の嵐が吹き荒れる中にあっても情緒豊かな教育玩具が製作され、心あるデザイナーや主義をもつメーカーが時代に流されない玩具作りを行ってきたことも忘れてはなりません。

本展では、この百年にあらわれた玩具のいろいろを時代を追って展示し、玩具を通じて二十世紀をふり返ると同時に、時をこえて子ども達に愛される玩具、子どもの心と身体に栄養を与える玩具について考えたいと思います。

展示総数 約500点



①明治・大正時代………江戸時代の郷土玩具はまだまだ健在。そして、土や木のままごと道具、張り子の起き上がり小法師や経木のラッパ、きしゃご(貝殻のおはじき)、立版古など、自然素材を多用した玩具がまだまだ豊かであった時代です。それと併行して、ブリキや金属、セルロイドの玩具が工場生産され始め、新時代の玩具として人気を集めます。一方で、双六やカルタ、積み木など、新時代教育的な性格を伝える遊戯具なども目立ちます。

②昭和初~10年代………駄菓子屋玩具の全盛期、駄菓子屋の店先には、花はじき、姉様人形、きびがら細工、グライダー、活動写真、竹トンボ、知恵の輪、石蹴り、ベーゴマ、ぴょんぴょん駒など、楽しい小物玩具が勢ぞろいしています。戦時色が強まり、愛国心を高めるゲームや軍事に因む玩具が目だってきますが、一方で大正時代の赤い鳥運動などの影響を受けた情緒豊かな絵本や布製玩具、乳幼児玩具なども盛んに作られた時代でもあります。

③昭和20年代………戦後の日本、まだまだ生活は苦しいけれど、焼け跡から子ども達の歓声があがります。ターザンごっこや西部劇ごっこ、野球ごっこなどに興じる子ども達の間で、ブロマイド、日光写真、写し絵、着せ替え遊び、ブリキやセルロイドの玩具、針金細工などが人気を博します。占領下の日本では、輸出玩具には「made in occupied Japan」と明記することが義務づけられ、安価な日本製玩具が続々とアメリカへ送られていました。

④昭和30年代………家庭用電化製品が一般家庭に受け入れられる時代、昭和28年放映開始のテレビは、昭和34年の皇太子ご結婚をきっかけに大普及。その後、子ども達の生活にも大きな影響を及ぼし始めます。玩具は、テレビキャラクターをテーマにしたものが主流をしめるようになり、その素材もブリキやセルロイドから、プラスチックやビニールに移り変わります。ダッコちゃん、ビニール紐の当てもの、スーパーボール、チェリング、プラモデル、ワッペンシールなどが駄菓子屋で人気を博し、フラフープ、ボーリングなどの身体を動かすもの、三輪車や足こぎ自動車など大型の遊具も盛んに作られるようになります。

⑤昭和40年代………高度経済成長が続き、古いものが急速に失われた時代です。後半はオイル・ショックで景気が後退しますが、空き地が減り、子ども達の塾通いが始まります。怪獣もの、ウルトラマン、オバケのQ太郎、鉄人28号、鉄腕アトム、仮面ライダーなど、テレビの人気キャラクターが次々に玩具化され、子ども達の人気をさらいます。リカちゃん人形が登場したのもこの時代でした。

⑥昭和50年代………テレビゲームが流行し始め、室内遊びが増えて遊びが画一化する時代です。野外での遊びが減り、子どもが伝承してきた「原っぱ文化」の崩壊が社会問題となりました。宇宙戦艦ヤマト、機動戦士ガンダム、アラレちゃんなどのマスコミ玩具は相変わらず人気を続けています。

⑦昭和60~平成時代………おもちゃ屋にはハイテク玩具があふれ、テレビのヒーロー、ヒロインが変わらぬ人気を博しつづけています。駄菓子屋が消えてしまった現在、100円ショップやスーパーマーケットの玩具コーナーが、わずかながら駄菓子屋玩具の代わりをつとめているようです。一方、子どもの心の成長に栄養を与える玩具を社会に送ろうと、木や布を素材に、手作り玩具製作に取り組む玩具作家たちの姿もみられます。


⑨メンコの歴史/おまけの歴史………江戸時代の泥メンコや明治時代の鉛メンコを経て、明治後期に出現した紙メンコ、その100年の歴史を追って紹介します。絵柄には子どもたちのヒーローが描かれ、各時代の雰囲気をよく留めています。また、グリコのおまけを中心に、いろいろなメーカーのおまけやチョコエッグなど、小さな食玩を集めて、材質の変化や玩具の形の中に、時代感覚を探ります。