展示・イベント案内
exhibition秋の企画展 「世界の太鼓と打楽器・形と音色」
- 会期
- 2012年9月15日(土) 2012年11月13日(火)
- 会場
- 1号館
●小鳥のさえずり、川のせせらぎ、海鳴り、風が木々を駆けぬける音。自然の音はいつも私たちの身近にあって風景に奥行をもたらし、人間の情感を育み、音楽が生み出される環境を用意 してきました。人々が初めて自然に働きかけて創り出した音とはどのようなものだったのでしょうか。木切れを叩くだけで快い音が生まれ、落ちて乾いた木の実を振るだけで種がシャラシャラと音を奏でます。草の茎に息を吹き込む、あるいは木の葉に口をあてて息を送ることでかすれた音が漂います。子ども達の間に今も伝承されるペンペングサのがらがらや草笛、また世界各地の民族楽器の中にみられる石笛や木の実笛、うなり木、ひょうたんのマラカスなどは、はるか大昔の楽器の様子を今に伝えているのではないでしょうか。
●今回とりあげるのは、楽器の中でも有史以来の長い歴史をもつ「太鼓」と、さらに古く人間の誕生とともに生まれたと想像される「打楽器」です。
●「太鼓」は楽器の分類上、張られた膜(皮)の振動によって音の響きが得られる楽器で“膜鳴楽器”と総称されます。紀元前2000年頃にはメソポタミアやエジプトの地に存在していたと考えられますが、遺された“膜鳴楽器”は非常に稀少です。
●一方、「打楽器」は、その楽器自体がぶつかったり叩かれたり振られたりこすられたりすることで音を出すもので、“体鳴楽器”と総称されます。手拍子や足踏みなどとともに誕生し、木や石、骨、木の実などを地面に叩き付けたり、互いに打ち合わせたりしてリズムをとるものであることから、原始の世界から存在したものと考えられています。ラトル(がらがら)やベル、叩き鐘やゴング(銅鑼)、スリットドラム(割れ目太鼓)や木魚、木琴や竹琴、鉄琴、ウッドブロックなどがここに分類される楽器です。
●太鼓も打楽器もメロディーを奏でるものは非常に少なく、演奏においてはリズムをとる役割が強調されます。けれど、歴史的にみると、儀礼的な場面で登場し、その音によって悪霊を払い、精霊と交信する役割を担って発達したものも多く、また、トーキングドラムのように通信の手段として、またアメリカ大陸の先住民が伝えるドラムのように戦闘に際して役割を果たすものなども見られます。
●本展では、当館の3000点に及ぶ発音玩具と民族楽器コレクションの中から、太鼓(=膜鳴楽器)と打楽器(=体鳴楽器)、約300点を集めて、楽器の形態よる分類展示を行います。
●「でんでん太鼓」や「がらがら」、「ラトルウォッチ」など、子どもたちの発音玩具が登場するのは日本玩具博物館ならでは。民族楽器と発音玩具を比べながら、古代の打楽器の素朴な形態が子どもの発音玩具の中に保存されていることや、楽器として完成したものを単純化する中で発音玩具が誕生することなど、楽器と玩具との関係についても探っていきます。
造形的な面白さをご覧いただくと同時に会期中には展示品のいくつかを取り出して音を聴いていただく機会を用意し、また太鼓や打楽器に触れ合えるコーナーでは、自由に音を出してお楽しみいただきたいと思います。
■展示総数 約250点
●世界の太鼓~膜鳴楽器~●
世界の民族楽器の中から、皮や膜が振動して音を出す太鼓のいろいろを集めました。伝承される国や地域の枠を払い、形によって分類しています。鳴らす位置は様々。地面に置くもの、紐をつけて肩や首にかけて演奏するもの、脇に抱えて鳴らすものなどが考えられます。鳴らし方についても、直接、手で打つもの、スティックを使うもの、振りまわすもの、皮や膜を貫く棒をこすって鳴らすものなど、様々な方法があります。
<太鼓の形>
○ゴブレット型(片面太鼓)
中近東アラブ諸国で多く見られる太鼓の形態。陶器や木でゴブレット型が作られ、動物や魚の皮が張られます。
○円錐型と鉢型(片面太鼓)
土や木製の円錐型、鉢型に皮を張り巡らせて作られる太鼓です。アフリカや南アジアで多用されます。
○椀型と二つ太鼓(片面太鼓)
木や土の椀型に皮を張ったもので、紐で締めて音の高さを調整するものも見られます。
○長胴型(片面太鼓・両面太鼓)
○円筒型・樽型(片面太鼓・両面太鼓)
片面、両面とも世界各地で古くから見られる形です。アフリカや東南アジアにおいて、重要な位置を占める楽器です。両面太鼓の膜面は鋲でとめるもの、楔によってとめるもの、紐を張って音の高さを調整できるように作ったものがあります。子どものための小さな円筒型太鼓は世界各地に見られます。
○砂時計型(片面太鼓・両面太鼓)
東アジアの小鼓に代表される形態です。西アフリカ諸国には、砂時計型の両面太鼓に紐を巡らせて、脇でその紐を締めたり緩めたりすることで音の高さを変化させながら演奏する「トーキングドラム」が見られます。これは離れた者との交信に使用されたものと伝わります。
○枠型(片面太鼓・両面太鼓)
タンバリンやベンディールドラムに代表される円形の枠をもつ太鼓に代表されます。中近東に起源をもつものと考えられています。
○瓢箪太鼓(片面太鼓)
○摩擦太鼓(片面太鼓)
膜面を貫く棒や紐を指や布などで上下にこすったり回したりして音を出す太鼓です。ヨーロッパや中南米によく見られます。
○でんでん太鼓
日本において江戸時代から赤ん坊をあやす玩具として知られてきたでんでん太鼓(豆太鼓・振り鼓)は、ネパールの宗教儀礼に登場する「ダマル(ダムル)」と呼ばれる楽器が起源であると考えられています。奈良時代、中国を経由して日本に伝えられた振り鼓は、仏教儀礼の中で使用され、それがやがて民間のでんでん太鼓に発展していきました。でんでん太鼓と同族の玩具や楽器は、インド、インドネシア、タイなど他のアジアの国々にも見られ、また、中南米やアフリカの国々にも伝承されています。同じ玩具(楽器)でありながら、作られる国によって材質も音質も様々です。
●世界の打楽器~体鳴楽器~●
世界の民族楽器の中から、その楽器自体がぶつかったり叩かれたり振られたりこすられたりすることで音を出すものを集めました。こちらも、伝承される国や地域の枠を払い、形によって分類しています。
<打楽器の形>
○割れ目太鼓(スリット・ゴング)と木魚
共鳴器になる空洞の木や竹製ドラムに横長の割れ目(スリット)を入れた太鼓です。バチでリズミカルに叩いて音を響かせます。
○叩き鐘
○クラッパーと拍子木、シンバルとカスタネット
二つの木片、竹片、金属片などを互いに打ち合わせて音を響かせる楽器の仲間を集めました。非常に単純、かつ原始的な楽器でありながら、民族音楽の演奏用打楽器として、民族舞踊のリズム楽器として、また宗教儀礼における聖なる音として、長く世界中に親しまれてきたものといえます。
○パーカッションボード
○木ベルと竹ベル(アンクルン)
○竹太鼓
○竹琴・木琴・鉄琴
木琴や竹琴、鉄琴(メタロフォン)、石琴などは、音階が作られたバーとそれを叩く撥、叩いた音を共鳴させる器(箱)で構成される楽器です。南アフリカの木琴バラフォンの共鳴器には瓢箪が使用され、やわらかく優しい音色が響きます。
○ウッドブロック
○ラトル/カタカタ
器の中に土玉や小石、種、砂などを入れて音を出すもの、逆に器の外に土玉や小石、種などを打ちつけて音を出すもの、がらがらには、この2種類の形が見られます。アメリカ大陸などに伝承されるがらがらは、特別の魔力をもっていると考えられ、その聖なるがらがらは、音を立てながら自ら運動するものとも信じられてきました。それは、瓢箪や木の実や種、動物の皮やひづめなど、植物や動物素材を組み合わせて作られていました。その他、伝承のがらがらには、籐や竹、イグサや葦、棕櫚、椰子の葉など、植物繊維を編んで作られたものが広く世界中に見られます。音の魔力によって子どもに近づき魔物を追い払おうとしてものと考えられます。
○ラトルウォッチ
ラトルウォッチ(がらがら時計)あるいはラトルトラップと呼ばれる鳴り物は、ヨーロッパ社会で古くから使用されてきました。子どもたちは、これを持って振りまわし、大きな音立てては鳥を追っていましたし、復活祭には、鳴らされない教会の鐘に代わって、子どもたちが振りまわすラトルウォッチの音が時刻を知らせていました。中南米の国々では、これがカーニバルに登場します。メキシコでマトラカと呼ばれるこの鳴り物を手に、人々はカーニバルの雰囲気を盛り上げていくのです。
<会期中の催事>
●解説会 実演解説会~世界の音を聴く~
日時=9月23日(日)・10月8日(月/祝)・14日(日)・28日(日)・
11月3日(土/祝) ※各日 14:30~
●演奏会1 西アフリカの音色とリズム by ベノワ・ミロゴ
日時=10月21日(日) 13:30開演
●演奏会2 西アフリカのドラム「ジャンベ」「ドゥンドゥン」の響き by ティーダ
日時=11月4日(日) 13:30開演
●演奏会3 カリブのドラム「スティールパン」の音とリズム
by パンチアウト・スチール・オーケストラ
日時=11月11日(日) 13:30開演
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