日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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展示・イベント案内

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企画展

夏の企画展 「水遊びと縁日のおもちゃ」

会期
2005年7月2日(土) 2005年9月6日(火)
会場
1号館

日本の近代玩具の歴史は19世紀末に始まります。西洋に学びながら、ブリキや金属、ゴムなどの新素材が登場した明治時代、アンチモニーやセルロイドが新しい素材として脚光を浴び、アルコール燃料を使用した発明玩具が誕生した大正時代、プラスチック素材が主流となり、機構的にもフリクションから電動式が一般化した戦後、新媒体のテレビの影響でマスコミ玩具が日本中を覆うようになった昭和後期、そして電子ゲーム類が隆盛を極める平成時代と、この百年の間にも、玩具の世界は数度の変革を体験しています。

本展では、こうした近代玩具の歴史を踏まえながら、水遊びを彩ってきた玩具と縁日で売られた玩具を取り上げます。一つ目のコーナーでは、金魚や亀などを陶器やブリキ、セルロイドなどで作り、水に浮かべて遊ぶ浮き物玩具、水鉄砲や水ポンプに噴水遊びの玩具、また木やセルロイド、プラスチックの船、ブリキのポンポン船やモーターボートなどを、明治・大正・昭和・平成と、100年の歴史を追いながら展示します。

浮き金魚 セルロイド(大正末~昭和初期)・陶磁器(明治時代)・ブリキ(昭和20~30年代)

二つ目のコーナーでは、露店商が全国の縁日で売り歩いた木や紙、針金、セルロイド、ブリキなどで作られた素朴で繊細な玩具の色々を、コマ、けん玉、ヨーヨー、アクセサリー、鳴り物、当て物、針金細工、お面、ゲーム物など、種類ごとに分けて展示します。

展示総数約500点。遠い夏の思い出につながる玩具の数々をお楽しみ下さい。


<水遊びのおもちゃ~明治・大正・昭和・平成~>

夏季に売り出される水遊びの玩具は、古くから「水物玩具」と呼ばれました。江戸時代にも水車や水鉄砲などがあり、また竹製の手桶や焼き物の亀の子などは風呂の玩具としても人気がありました。幕末から明治にかけては、火消し道具・龍吐水(りゅうどすい)や雲龍水をまねた木製玩具もみられましたが、その後、金属、ゴム、セルロイドなどの新材料が加わり、水物玩具の世界はどんどん華やかになっていきます。
このコーナーでは、明治・大正・昭和・平成の夏遊びを彩ってきた水遊びの玩具「水物玩具」の色々を、時代の移り変わりとともに展示します。


■江戸時代から受け継がれた水遊びのおもちゃ
木船、火消しごっこの龍吐水と雲龍水の玩具、木の盥(たらい)や桶、土製の金魚や亀など、幕末から明治にかけて愛された水遊びの玩具を紹介します。
文化6(1809)年刊の『浮世風呂』(式亭三馬)には、「四十余りの男、六ツばかりの男の子の手をひき、竹でこしらへたる持ち遊びの手桶と、やきもののかめの子をもたせて・・・・(略)コレコレ兄さん、すべりなさんな、鶴さんはお持ち遊(=おもちゃ)を落とすまいぞ」とあります。焼き物の亀の子は水に浮かべて遊ぶ玩具で、鯉や金魚などの種類もありました。


明治・大正時代
磁器製の金魚や鯉、鳥の水笛、木製ポンプなど、従来の玩具に加え、金魚や船、盥(たらい)やジョウロなども赤字に金で彩色されたブリキ製玩具が都市部を中心に人気を博します。  明治後期には、「福助の太鼓たたき(水だし福助)」や理科玩具「ウイテコイ」、またアンチモニー製の水ピストルも流行しました。明治がブリキ玩具の時代なら、大正はセルロイド玩具の時代です。大正時代に入ると、浮き物玩具や噴水遊びなども、明るくて軽いセルロイド製が人々に歓迎されました。

福助の太鼓叩き 福助の背後に水車が設けられている


昭和時代戦前戦後
昭和初期は大正デモクラシーの余韻に満ちた穏やかな時代が継続していますが、日中戦争・太平洋戦争がはげしくなる昭和10年代に入ると、玩具の世界も非常時の統制を受け、内地向けの金属玩具製造が禁止され、金属の代わりに木や紙を使った代用品玩具が作られるようになります。
水遊びの玩具に再びブリキやセルロイド製がにぎやかに登場するのは昭和20年代中頃からです。ロウソクの火で動く「ポンポン船」や樟脳をつけるとミズスマシのように水面をすべる「ショウノウ船」が戦後時代の花形でした。ここでは、戦争前後の激動の時代に遊ばれた水遊びの玩具を展示します。

ショウチャンのボート(昭和初期)
ロウソクの火で動くブリキのポンポン船 (昭和20~30年代)
樟脳の欠片をつけて走らせるセルロイドの小さな船 (昭和20~30年代)


昭和時代
高度経済成長期
この時代を特徴づける素材はプラスチックです。ゼンマイ仕掛けの船や浮き物玩具もブリキやセルロイドにかわってプラスチック製が主流となっていきました。また一方、この時代に入ると、水鉄砲やバケツなど従来の玩具のモチーフとして、テレビアニメや漫画のキャラクターが多く用いられるようになります。


■昭和後期から平成時代
昭和60年代から現在に受け継がれる水遊び玩具を、玩具メーカーの商品を中心に展示します。素材は変わっても、また玩具に描かれる絵柄は変わっても、時代をこえて普遍的に愛される玩具の要素を探ります。


<縁日のおもちゃ~露店に並ぶ小物玩具の数々>

このコーナーでは、露店商が全国の縁日を回って売り歩いた木や紙、セルロイドなどの素朴で繊細な玩具の色々を、コマ、けん玉、ヨーヨー、アクセサリー、鳴り物、当て物、針金細工、面、ゲーム類などにわけ、種類ごとに展示します。
祭の日の露店や縁日に並ぶ玩具は、一般の玩具店の玩具とは流通の経路も違います。駄菓子屋の玩具と同じように、子ども達が小遣い銭で買える程度の価格で、小さく、壊れやすいものばかりでしたが、どれもが子どもの興味にそっと寄り添う要素を持っていました。時代をこえて愛される懐かしい玩具の色々をお楽しみ下さい。


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