日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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企画展

夏の企画展 「世界の動物造形」

会期
2015年6月13日(土) 2015年11月17日(火)
会場
1号館

どこの国でも、いつの時代でも、人々は動物に対して限りない愛着を抱いてきました。古くから身近にいる動物、ある時代に渡来した珍しい動物、空想上の動物……、人々は、 そのそれぞれに様々なイメージを与え、造形することを通して、自分達の夢を表現してきたのです。
動物の玩具は、子ども達の動物に対する興味や愛情の深さを反映して、遠い昔から世界中で作られてきました。たとえば、ペルシャのスサの遺跡からは、紀元前1100年頃に作られた「ヤマアラシ車」が見つかっていますし、エジプトでも「口をパクパクあけるワニ」が出土しています。その他、エジプトのライオン車(B.C.2000年頃)など、紀元前の動物玩具は、ヨーロッパ各地の博物館に 所蔵されており、それらを通して、私たちは当時の造形を知ることが出来ます。そして興味深いことに、そうした玩具は、今、世界各地で作られている様々な動物玩具とほぼ同じ造形を示しています。イタリアのワニ車やアメリカのライオン車、中国やメキシコ、ロシアの土馬などがその例です。
このことは、動物玩具がいかに長い時を人間とともに生き続けてきたかを示唆し、また、人間にとっての玩具の重要性を教えてくれます。

本展では、8000点をこえる世界の動物玩具コレクションの中から、民族性豊かなものを選び、地域ごとに特色のある動物玩具の表情を紹介します。人々の暮らしの中から誕生し、各地の宗教の思想を基盤にして作られ続けてきた玩具は、民族の美意識や価値観までも語ってくれます。また、子どもたちに人気の高い馬、象、犬、亀など、動物の種類ごとに展示し、国境をこえて普遍的に愛される動物の造形を紹介します。

展示品総数 500点

  

①大昔の動物造形

 紀元前の遺跡から出土した素朴な動物玩具を図や写真でご紹介するともに、それらと形状を同じくする現代の玩具展示します。時をこえて人間の傍らに存在し続けてきた玩具について考えます。 

古代の動物玩具のかたち、紹介コーナー


②世界の動物造形

 国によって身近に生息する動物が違い、また同じ動物でも、それらに託したイメージやおもちゃの意味に民族の特性があります。このコーナーでは、世界各地の動物玩具を地域別に紹介します。

アジアの動物

 中国の兎や猿のように古くからの伝説に結びついた動物や、インドネシアの蛙やバングラデシュの虎など身近で親しまれてきた動物たちが、民族独自の信仰や美意識を背景にして造形されてきました。魔除けの霊力をもつ動物の玩具で遊ばせることで、子ども達を災厄から守ろうとした大人たちの心が伺え、ミラー(鏡)の欠片をあしらうことでその力を強調したものも見られます。
トカゲや蛙などの小動物に対する観察の鋭さや細部まで行き届いた審美眼には、生きとし生けるものの生命を尊いと考える仏教的な思想も表現されています。

ミラーワークの象(インド)
アジアの動物玩具と動物造形

オセアニアの動物

 海によって他の大陸と隔絶されたオセアニアの国々には、コアラ、カンガルー、カモノハシ、キーウィ等、この地域独特の動物が棲息し、愛らしく玩具化されています。オーストラリアのアボリジニーの動物造形には、狩りの豊かさや動物繁栄への祈りが込められています。

中近東・アフリカの動物

 大草原を疾走するキリン、象、縞馬、ライオン、ヒョウ、水辺のワニやカメなどが様々な素材で形づくられています。木、石、動物の皮、植物の繊維を利用し、天然の塗料を使って作られた動物の数々は、放置すればそのまま大地に溶けていくような優しい造形でありながら、強い生命力をたたえています。多産の象徴であったり、部族の祖先を表わすものであったりする動物が、子どもや家の守りとして使われ、またサンブル地方の小さな土製動物のように、子どもの遊戯の相手となる素朴なものも見られます。世界各地の芸術家に霊感を与えたアフリカの造形感覚は、生活の中にある小さな玩具の中にも息づいています。

リーフ地方のラクダ(モロッコ)
中近東・アフリカの動物玩具展示コーナー

ヨーロッパの動物

 ドイツやフィンランド、スウェーデンなどには、洗練されたデザインの美しい動物玩具が数々残されています。また、ロシアには、古くから人々の友として親しまれてきたクマの玩具や造形が目立ちます。

バガロツカエ村のクマ(ロシア)
ヨーロッパの動物玩具展示コーナー

北米の動物

 古き良きアメリカ時代を感じさせる素朴な木の動物玩具、豊かな森林を背景に生まれたカナダの大らかな動物玩具を中心に展示します。カナダ北部やアラスカ地域に住む北方民族のアザラシやカリブーの毛皮で作られたやさしい動物玩具もみどころです。

中南米の動物

  中南米の国々では、各地の先住民族が古くから伝える信仰に満ちた造形感覚と、侵略してきたスペインやポルトガルなど、ラテン系ヨーロッパ人の装飾性に富んだ美意識、また世界各地から移住してきた人々の様々な文化が混合し、融和的に花開いたユニークな造形が数多く見られ、特に、メキシコやブラジルは知られざる民芸の宝庫といわれています。祭礼によく登場する霊獣ジャガー、太陽の化身である鶏、楽器や生活用具に加工されるアルマジロ、豊穣のシンボルである牛、身近に棲息して人々に愛されるアリクイやリャマ、ホロホロ鳥、オウムなどが、ふくよかな体躯とカラフルな色彩で表現されています。人々は、これらを作り、遊び、身近に置くことで、それぞれにもっている豊かな生命力や繁殖力、悪魔を退ける霊力などを得ようとするのでしょうか。

木彫彩色の動物(グアテマラ)
北米・中南米の動物玩具展示コーナー

 

③世界で愛される動物玩具~馬・象・犬・虎・亀~

 世界の動物玩具の中で最も多いのは馬、それから、象や犬なども古くから子どもたちに愛され続けています。不思議に目立つのは亀の玩具です。ゆったりとした動きや、甲羅の中に隠れてしまう様子などが子どもの心をとらえるのでしょうか。
このコーナーでは、民族や国境をこえて子どもに愛される動物玩具の普遍性について考えます。 

アジアのトラたち
世界で愛される象の玩具展示コーナー
世界で愛される亀の玩具展示コーナー


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