「十二支の動物造形~巳*蛇を中心に」 | 日本玩具博物館

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企画展

新春の特別陳列 「十二支の動物造形~巳*蛇を中心に」

会期
2024年11月16日(土) 2025年3月30日(日)
会場
2号館 特別陳列コーナー

「十二支」は、中国で後漢時代に誕生した暦法で、十二宮のそれぞれに十二の動物をあて、子、牛、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥を時刻および方角の名としたものです。この中国における「十二生肖」が日本に伝えられたのは古墳時代のころといわれ、日本でも非常に古い伝統を持っています。江戸時代には既に、生まれ年にあたる動物の性質がその人の性格や運勢などに関係するという信仰、自分の生まれ年に因んだ動物をお守りにする習俗などが見られ、日本の郷土玩具はこうした民間信仰を母体に誕生しました。
この十二支の中でも、特に日本人に親しまれて人気のあるものとそうでないものがあります。馬、牛、猿、鶏、鼠、兎などは、古くから縁起が良い動物と考えられて、おめでたい造形物や玩具にも数多く用いられてきました。それに対して龍、羊などは、日本の風土に馴染が薄いせいもあり、玩具の題材としては比較的少ないといえます。


令和7(2025)年の干支は乙巳(きのとみ)。水田での稲作を大切に守り続けてきた日本の農耕において、農耕の神は水神と関係が深く、一方、川の蛇行にも似た姿をもつ蛇は、水を司る天神(稲妻)とも習合して水神そのものと考えられてきました。また脱皮する生態から、蛇は生命の再生の象徴であり、生命力の強さを表現する生き物としてもあつい信仰を集めてきました。
民間信仰における蛇は、宇賀神(穀物霊)や弁財天(水を司る神)の使いであり、「巳成金(みなるかね)」といわれ、現世利益をもたらす生き物とも考えられています。富士神社が授与する「麦わらの蛇」は、井戸枠に吊るすと疫病除け、台所に吊るせば虫除けのまじないでもあります。神社の授与品には、神の使いとされる白蛇を題材にしたものも目立ちます。


本展では、日本の郷土玩具の中から蛇にまつわる玩具を集め、あわせて他の十二支に関わる玩具や縁起物を、干支の順を追って数点ずつ展示します。また、それぞれの造形を通して人々が十二の動物に託した願いについてもご紹介します。



≪戦前趣味人たちの年賀状帖≫
巳(蛇)の郷土玩具に合わせて展示するのは、戦前の郷土玩具収集家として活躍した村松百兎庵(むらまつひゃくとあん)氏のもとに届いた年賀状が整理された冊子です。兎玩具の収集で知られた百兎庵氏だけに、冊子は「真向い兎」の文様裂で装丁されています。
そこには、大正末期から昭和初期にかけて活躍した郷土玩具収集家をはじめ、村松と親交のあった趣味人(文芸などに熟達した人々)たちの名前が数多く見えます。またこれらの年賀状には、川崎巨泉や長谷川小信らの江戸文化を受け継ぐ浮世絵師たちの手によるもの、渋谷修ら前衛派の画家たちがデザインしたものが含まれ、当時の豊かで上質な美意識が伺えます。