「馬の郷土玩具」 | 日本玩具博物館

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企画展

新春の 「馬の郷土玩具」

会期
2025年11月15日(土) 2026年3月31日(火)
会場
2号館 特別陳列コーナー

令和8(2026)年の干支は「丙午」。午(=馬)年を祝い、馬の郷土玩具200点を展示いたします。
十二支の動物で時刻や方角、あるいは年月を表わす考え方は、中国で形成され、古墳時代の日本に伝わりました。長い歳月を経て日本人の暮らしに深く根を下ろし、江戸時代には庶民の間でも親しまれるようになりました。これらの動物のなかでは、造形物として人気のあるものとそうでないものがあります。「巳(=蛇)」や「未(=羊)」などは古くからあまり好んで作られませんが、「丑(=牛)」や「戌(=犬)」、「申(=猿)」などには多彩な造形が残されています。わけても「午(=馬)」は、軍事、運輸、農業他、あらゆる産業、さらに宗教や民間信仰における人間との深いつながりを反映して、最も多く作られる動物といってよいでしょう。

江戸時代の終わり、庶民階級が経済力を持ち、農村部にも商品経済が浸透していくころになると、土や木や紙など身近にある材料を使って、専門的に、また農閑期を利用して季節的に素朴な玩具が作られるようになります。これらは祭礼などとも結びついて発展し、郷土という範囲で流通したものが多いことから、今日、「郷土玩具」の名で知られています。人々の生活のなかから生まれ、愛されてきた郷土玩具は、子どもを喜ばせる玩具にとどまらず、郷土の信仰や伝説、美意識や幸福感を表現した小さな文化財といえます。

愛馬の守りとして作られ始めた東北地方の木馬、神や霊魂の乗り物として節句行事や祭礼に際して作られた藁馬や茅馬、祭礼における愛馬の晴れ姿をうつしとった飾り馬の玩具、乗馬を模した春駒の玩具、明治時代以降にデザインされた馬車をかたどった玩具や馬乗り軍人を表わす土人形など、日本の郷土玩具のなかには、かつての日本人がいかに馬を大切にし、愛してきたかを証立てる作品が数多く残されています。



本陳列では当館の郷土玩具コレクションのなかから、馬の郷土玩具の性格に焦点をあてて、種類ごとに展示します。それぞれにユニークな玩具の姿を楽しんでいただき、あわせて、人々の馬という動物に寄せる愛着や馬の郷土玩具に託した願いについても思いを巡らせていただければ幸いです。

展示総数 200点

A.木の馬~神馬・愛馬の守り~………八幡馬、木ノ下駒、三春駒など、日本を代表する木の馬は揃って東北地方にあります。昔から馬産地として人間と馬の関わりが密接であったためでしょう。こうした木の馬は、馬市で手放した馬の形見として、また愛馬を災厄や病気から護るお守りとして刻まれ始めたといわれています。

B.土の馬・紙の馬~神馬・神の乗り物~………古くから白馬は神の乗り物として大切にされ、神社の祭礼には賑やかに飾りたてた馬が奉納されました。京都府伏見の飾り馬をはじめ、神馬をテーマに作られた土や紙の馬の造形を紹介します。

C.藁の馬~節句や祭礼のためのつくりもの~……正月や盆の行事、あるいは端午や七夕の節句には、藁や真菰などで作られた馬が登場します。訪れる農耕神の乗り物と考えられたためでしょうか。郷土玩具の世界では、男児の健康と出世を祈る八朔馬(福岡県芦屋町)や養蚕祈願に奉納される桐原の藁馬(長野県長野市)、縁結びの縁起と結びついた忍び駒(岩手県花巻市)などが有名です。

D.人と馬~馬とともに生きた人々~……馬の頑健さや賢明さから、人々は軍事、運輸、農業等に馬を用いてきました。馬に乗った武者や軍人への憧れから生まれた玩具、子どもが健康に育つよう願いを込めた馬乗り童子の人形、農作や運搬に用いた馬を表わした玩具など、人間とのつながりの深さを表現した造形の色々を展示します。 
 

E.首馬・春駒・馬車~子どもの玩具~……台車に馬を乗せて転がすもの、馬の首にまたがって騎馬ごっこを楽しんだ春駒や首馬など、古くから子どもたちに親しまれてきた馬の玩具の色々を紹介します。