展示・イベント案内
exhibition開館30周年記念◇夏の小テーマ展 「七夕飾り」
- 会期
- 2004年6月19日(土) 2004年8月24日(火)
- 会場
- 2号館 L字コーナー
★七夕の夜、短冊に願い事を書いて笹竹につるし、屋外に立てて天の川をのぞむ習俗は、今でも日本各地に伝承され、私たちは、七夕といえば、サラサラと鳴る笹竹の飾りや七夕の棚に供えた胡瓜や茄子の動物、朝一番で芋の葉に浮かぶ露をとって墨をすり、短冊に願い事をしたためたことなどを想起します。
★七夕の習俗は中国から伝来し、万葉の昔から日本人に知られていましたが、七夕が庶民のものになっていく千年の歴史の中で、祖霊祭としての「盆行事」や、実りの秋を前にした「豊作祈願」などとも結びついたと考えられています。
★『七夕の紙衣と人形』(石沢誠司著/2004年7月刊)によると、七夕は、奈良・平安時代の頃には、大陸から渡来した高級織物の織機や織り手を祭る宮中行事であったものが、室町時代に入ると、和歌や管絃、立花、香道などもとり込んだ芸能祭のような色合いを帯びていき、私たちが今日、知るところの笹竹の飾りが盛んに行われるようになるのは、江戸時代後期、七夕行事の担い手が寺子屋の子ども達の手に移ってからのことだといいます。
★高度経済成長期を境に一気に廃れ、家庭における七夕行事は今では大変めずらしくなりましたが、この小テーマ展では、各地に伝承されたユニークな七夕の飾り物を集めてご紹介し、日本の七夕の豊かな世界を垣間見ていきます。今回ご紹介するのは、着物に見たてた紙衣や人形、川に生える真菰(まこも)や藁で作る馬の造形です。展示総数約50組の小展示ですが、富山県黒部市尾山の「七夕姉さま」や岐阜県高山市松之木の「七夕馬と糸車」など、他では見られない資料も登場します。
★七夕の紙衣と船
【姫路の七夕さんの着物と七夕の舟(兵庫県姫路市大塩・的形・白浜)】
*姫路では市川が播磨灘に注ぐ地方に「七夕さんの着物」という男女一対の素朴な紙衣が伝わっています。竹ざおを紙衣の袖に通して飾られ、子どもが着物に不自由しないように願われました。飾るのは8月6日の夕刻からで、翌朝には川へ流されます。また、姫路市の港町・飾磨を中心とする地域には、昭和中期頃まで七夕の舟が見られました。天の川を渡る二星を運ぶ乗り物、あるいは盆を迎えるにあたっての精霊舟とも考えられます。
【生野の七夕さん(兵庫県朝来郡生野町)】
*銀山で栄えた生野町の中心地でも、姫路と同じような形の紙衣が飾られました。二本の笹竹飾りの間に苧がら(皮をはいだ麻の茎)を渡して、一対から数対の「七夕さん」を吊るし飾りました。生野町では昭和30年代頃にこの風習は廃れ、復活が待たれています。明治時代の資料を展示します。
【仙台の七夕飾り(宮城県仙台市)】
*大きな吹流しをつけた商店街の大・七夕飾りが有名ですが、仙台の伝統的な飾りは、紙で作った七つ道具(短冊・紙衣・投網・巾着・吹流し・折り鶴・屑篭)を笹竹に並べて吊るすものです。七つ道具を吊るした昭和30年代と現在のミニチュア七夕飾りを展示します。
★七夕の人形
【松本の七夕人形(長野県松本市)】
*松本の七夕人形は、は、男女一対の紙雛型や木製で着物を着せて飾る人形、流し雛型の紙人形など数種類があり、全国的に知られています。人形を飾る日は、ひと月遅れの8月7日前後、木や紙で作られた男女一対の人形は、子どもが初めて七夕を迎える祝いとして、親戚や近所から贈られ、着物を着せかけると、風通しのよい軒に吊るして飾られました。子どもの成長や健康を願い、また着物が増えるようにと祈りながら。
【尾山の七夕姉さま(富山県黒部市尾山)】
*七夕が近づくと、女の子は姉さま人形を、男の子は満艦飾に仕立てた船を作り、8月7日の夜、尾山地区を流れる泉川に浮かべ流します。「七夕流し」と呼ばれ、江戸時代の終わり頃から続くユニークな七夕行事です。この行事に登場する大型の姉さま人形を今回、初公開。昨年、尾山在住の古老に製作していただいたものです。
★七夕の馬
【高山の七夕馬と糸車(岐阜県高山市松之木】
*松之木町には、大八賀川の両岸に屹立する男岩と女岩を結んで大しめ縄をはり渡し、男児が生まれると藁馬を、女児が生まれると藁の糸車を縄に吊るす「七夕岩」の行事が、古く江戸時代元禄年間より伝わっています。この結界とも思われる大しめ縄は、七夕と盆行事とのつながりを伺わせます。地元で製作していただいた藁馬と糸車を、小さく作ったしめ縄に吊るして展示します。
【関東の七夕馬】
*牽牛・織女の二星が巡りあう時、その背に乗せて天の川を運ぶ七夕の馬が各地で作られてきました。関東地方を中心に、真菰、藁、菅などで男女一対の馬を作ってお供えし、牽牛・織女の再会を祈ります。大正時代に収集された千葉県や茨城県の七夕馬をご紹介します。
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同時開催の企画展 → 夏の企画展*2004「世界のからくりおもちゃ」