日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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企画展

開館30周年記念◇春の企画展・2 「和の布遊び・ちりめん細工」

会期
2004年4月10日(土) 2004年6月29日(火)
会場
1号館
椿花袋とうぐいす袋

「ちりめん細工」は江戸時代からの歴史をもつ伝統手芸です。ちりめんは細やかな「しぼ」をもつ優しい絹織物で、300年ほど前の江戸時代から現在に至るまで、日本の着物の材料として愛好されてきました。そのちりめんの残り布を利用して作られたお細工物を「ちりめん細工」と呼んでいます。江戸時代の後半、御殿 女中や武家や商家など裕福な家庭の女性達によって、美しく小さな袋物や小箱が生まれました。ちりめん細工は小さな布裂も大切にする心、美的感覚、手先の器用さを身につける手芸で日本女性の教養のひとつでもありました。モチーフとして選ばれる花や動物、また器物の形には、日本人が伝えてきた吉祥や魔よけの文様が見出されます。

ちりめん布いろいろ(明治~大正時代)

明治時代に入ると、ちりめん細工は女学生の教材として取り上げられ、女学生達は伝承に基づき、意匠をこらしたお細工物作りを競い合いました。『裁縫おさいくもの(明治42年)』『続裁縫おさいくもの(明治45年)』『裁縫おもちゃ集(大正6年)』〈いずれも大倉書店〉などは、女学校の教科書として書かれたちりめん細工の手引書として有名です。花や動物の袋物は香入れや琴爪入れとして、玩具や人形の袋物は子どもの御守りとして使用されたようです。東海地方には、ちりめんの袋物を嫁入り箪笥の上にのせて持参する風習も残されています。花嫁の幸福を予祝する縁起物であると同時に、裁縫の腕前を婚家に披露する意味もあったのでしょう。

こうして江戸時代から明治、大正、昭和と作り伝えられてきたちりめん細工ですが、戦争による世の中の混乱や生活様式の変化の中で、いつしか忘れられた存在になりました。日本玩具博物館は、ちりめん細工が伝える世界の素晴らしさに気付き、30年前より古作品や文献資料の収集を行い、また1986年よりは博物館活動の一つとして展示や講習会を行って、復興と普及に努めてきました。その成果をまとめたものとして昨年11月に『和の布遊び・ちりめん細工』(当館館長・井上重義著/雄鶏社刊)を上梓。ひき続き本年2月には、現代の暮らしに生かすちりめん細工を提案するものとして『ちりめん細工・季節のつるし飾り』(当館館長・井上重義著/雄鶏社刊)を出版いたしました。本展では、これらに掲載された作品を中心に、季節感あふれるちりめん細工作品の数々をご紹介致します。

展示総数 約350展


展示概要
<季節のちりめん細工>………花鳥風月や四季の風物詩を折りこんだ作品に、節句ごとのつるし飾りを合わせて、春夏秋冬、季節ごとにちりめん細工の世界をたどります。

ちりめん細工展2004 展示風景


○春から初夏………桃の節句のつるし飾り、山桜袋、土筆袋、うぐいす袋、ちゃぼ袋、ひよこ袋、雉袋、雛の香袋、桜袋の柱飾り、端午の節句飾りなど。
○夏………七夕のつるし飾り、朝顔袋の柱飾り、顎紫陽花袋、朝顔香袋、孔雀袋など。
○秋………菊袋の柱飾り、菊花袋、遊び童人形、お猿のさげ飾りなど。
○冬から新春………お猿っこのさげ飾り、お正月のつるし飾り、鶴亀のつるし飾り、宝尽くしのつるし飾り、水仙袋の柱飾り、五色つらつら椿、ひさご袋、越後獅子袋、福助つなぎ袋、羽子板袋など。

ほおずき袋と菊花袋(2000年代)


○おもちゃと袋物…座敷犬、狸のお手玉、傘ゴマ、串馬、とんだりはねたり、桃とり猿、市松袋花散らし、奴の巾着、六角文様御守り袋など。

桃とり猿(2000年代)


<江戸と明治のお細工物>………当館が所蔵する江戸から明治時代にかけて作られたお細工物コレクション約1000点の中から、花や動物、袋物や巾着、人形、玩具や小箱など、代表的な作品を紹介します。これらは、香袋として、御守りとして、小さな宝物入れとして、あるいは琴爪入れとして使用されていました。
○花と動物の袋物……ちりめん細工には、季節感のある作品が目立ちます。中でも四季を映す花や実、鳥や蝶、流水や魚を題材にした作品は、江戸時代からくり返し製作されてきました。自然を題材にした作品を展示
○袋物や巾着………明治42年刊『裁縫おさいくもの』は、ちりめん細工を女学校の教材として採用する目的として、手指の技術の向上、美的鑑識力の発達、ものを大切にする心の養成をあげています。小さな残り布も無駄にせず、配色や形の美しさに配慮する感覚、それらを暮らしに生かす知恵と技を育てようとしたのです。つまみ細工、きりばめ細工、押絵などの手法を駆使して作られた袋物の色々をご紹介します。
○人形とおもちゃ……身にふりかかる禍(わざわい)から人々を守ってくれるという人形の心は、ちりめん細工の世界に継承されています。大正時代には、「子どもにとって安全で教育上価値のある玩具を布で製作する方法を明らかにする」趣旨で『裁縫おもちゃ集』が書かれましたが、でんでん太鼓や目くりだし、犬張り子型のおもちゃなど、各地で遊ばれていた郷土玩具の形をとり入れて、やさしい布の玩具が作られました。

『裁縫おもちゃ集』の口絵


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