日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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企画展

冬の企画展 「独楽と羽子板」

会期
2006年11月25日(土) 2007年2月20日(火)
会場
1号館
郷土の独楽いろいろ

正月の遊びを楽しく美しく彩ってきたものに、凧、独楽、羽子板、双六、歌留多などがあります。これらは、長い歳月、日本の風土に磨かれ育まれたユニークな色と形をもっており、私たちの祖先が丹精こめて作り上げてきた美の遺産ともいえるでしょう。
古き良きものが時代の波の中で姿を消していくのは、寂しい世の習いかもしれませんが、時代をこえて受け継がれてきた玩具には、人の心をとらえる普遍的な何かがあるのでしょう。べーゴマ(べー・ブレード)のように現代の子ども達にも人気を博し、繰り返し、復活を果たしていく力を持っています。

本展は、正月の遊戯具の中から、独楽と羽子板を取り上げ、350点の資料により、地域によるバリエーションの豊かさに焦点をあてて展観します。コマと羽子板の起こりや遊び継がれてきた歴史にも簡単に触れながら、私たちが伝えてきた遊戯具について振り返ってみる機会にしたいと思います。  

展示総数 約350点  

押絵羽子板(明治末期)

【独楽(こま)】

独楽は「木の実がクルクル回転する…」そんな動きにヒントを得た古代の人々によって創造されたのではないかと思われます。世界で発見されている最も古い独楽は、今から4~5千年前のメソポタミアやエジプト古代遺跡から出土したものです。土、骨、貝殻、木、竹、石、木の実…様々な自然素材が回転を楽しむ小さな玩具に作られ、叩いたり、ひねったり、投げたり…様々な回し方が生まれ、互いに影響を与え合いながら今に伝えられたのです。このコーナーでは、「日本の独楽の歴史」「郷土の独楽いろいろ」「独楽の回し方いろいろ」の3つの項目で豊かな独楽の世界をご紹介します。

日本の独楽の歴史

独楽は、平安時代以前に中国から朝鮮半島を経て伝わったとされています。当時書かれた『倭名類聚抄』(931~38年頃)によると独楽は「こまつくり」と呼ばれ、孔のある形状から唸り独楽であったと考えられます。『今昔物語』(1058年頃)には「こまつぶり」とあります。形も機能も多くのバリエーションが誕生したのは、江戸時代のこと。博多独楽、貝独楽(バイ/べーゴマ)、お花独楽、銭独楽、叩き独楽、輪鼓など、独楽回しは発展して流行を極めました。

郷土の独楽のいろいろ

江戸時代、独楽は日本全国で地域性ある形と回し方が発展しました。東北地方には雪の上で回すのに適した「ずぐりごま」をはじめ、木地師たちの作る素朴な木地独楽があり、関東地方には、洒脱な形と華やかな色合い、からくりの要素をふんだんに折り込んだ美しい江戸独楽があります。
九州地方には、洋梨型の「けんかごま」や紐を使って空中で回す皿型の「ちょんがけごま」があります。地域ごとに特徴ある独楽の形を紹介します。

東北地方のずぐりごま
関東地方のコマ 展示コーナー
関西地方のコマ 展示コーナー

独楽の回し方のいろいろ

指先で軸をひねって回す小さな「ひねりごま」、両手で軸をもみ合わせて回す「もみごま」、糸をひっぱて回す「糸ひきごま」、糸を巻きつけ独楽を放り投げて回す「投げごま」、ムチで独楽を叩きながら回す「叩きごま」など、独楽の回し方のいろいろを紹介します。

【羽子板】

羽子板は、女児の正月の遊びとして人気のあった羽根つき(追羽根)の道具です。迎春厄除の意味を持ち、押絵などで飾り立てられた「飾り羽子板」と、羽根をついて遊ぶ実用的なものがあります。当館では、江戸末期から明治にかけて全国各地で作られ、やがて廃絶した郷土羽子板の数々を所蔵していますが、これらは、今では地元でも見ることの出来ない貴重なものです。このコーナーでは、日本の羽子板の歴史に簡単に触れながら、郷土羽子板の素朴で楽しい世界を紹介します。

日本の羽子板の歴史

室町時代頃の文献では、「羽子板」また「胡鬼板(こぎいた)」とも呼ばれています。この遊びは「おさなきものの、蚊にくはれぬまじなひ事なり…」(『世諺問答』1544年頃)とあり、ムクロジの種子に羽根を付け、蚊を食う蜻蛉に似せたものを板でつき、蚊退治、子どもの厄除としたのがその起こりであるという説を紹介しています。また、中国から伝わった正月の火祭り・左義長(さぎちょう)と結びつき、迎春厄除の意味をこめて書や扇子などと共に火に投られたという推測もなされています。羽根つき遊びが盛んになったのは江戸時代・元禄の頃からで、図柄 は吉祥を表す初日の出、鶴亀、福神などが登場します。

左義長羽子板 描き絵羽子板 展示コーナー
押絵羽子板 展示コーナー

郷土羽子板のいろいろ

江戸時代も終わりになると、日本各地に羽根つき遊びが広がり、害虫駆除や招福の護符ともみなされて流行し始めます。少女達の間では数え唄なども工夫され、各地独特の個性的な羽子板が登場しました。地域ごとに代表的な資料を展示します。

郷土羽子板 展示コーナー

【猪の郷土玩具】

「十二支」は、中国で後漢時代に誕生した暦法で、十二宮それぞれに十二の動物を当て、時刻や方角の名をしたものです。この中国における「十二生肖」が日本に伝えられたのは応神天皇の頃。時代を経て江戸期には既に、生まれ年に当たる動物の性質がその人の性質や運勢などに関係するという俗信、自分の生まれ年にちなんだ動物を守りにする習俗などが盛んになっています。郷土玩具はこうした民間信仰を母体に誕生しました。
亥(=猪)は気迫や力強い前進を象徴する動物として玩具化されてきましたが、十二支の動物玩具の中ではやや目立たぬ存在です。ここでは、2007年の干支を祝い、猪の代表的な郷土玩具を紹介します。

昭和10年亥年の年賀状と猪の郷土玩具展示風景



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