日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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企画展

春夏の企画展 「なつかしの人形~昭和時代の人形遊び~」

会期
2017年3月4日(土) 2017年6月27日(火)
会場
1号館

日本人形といえば、「雛人形」など静かに飾られる鑑賞用のものが目立ちますが、子どもたちが持ち遊ぶ愛玩用の抱き人形や手遊び人形もまた、日本の人形文化をよく伝えます。これらの人形が繰り広げる遊びの世界には、「着せ替え遊び」あり、「ままごと遊び」あり、「ごっこ遊び」あり、人形を中心とした模倣遊びを通して、子どもたちは、人や物に対する愛情を育て、衣食住に関する知識を身につけ、暮らし夢を描きながら、社会性を身につけていきます。

『キンダーブック』(昭和14年刊)に描かれたママゴト(今村佳子画)・・西洋風の抱き人形で遊ぶ子どもたち

今回は、昭和時代の子どもたちに愛された抱き人形や手遊び人形、ファッションドールなどの中から、髪型や衣装、履物を着せ替えて遊ぶ人形の数々を、時代を追って展観する試みです。

大正時代のハイカラ趣味の余波を受け、昭和時代初期は西洋風のファッションや暮らしに憧れを広げた時代です。その頃に流行した文化人形を経て、戦後のセルロイドやソフトビニールのミルクのみ人形、小さな人形の家、さらに昭和30年代にアメリカ合衆国からやってきたバービーやタミー、40年代の日本オリジナルのファッションドール「リカちゃん」など、昭和時代の少女たちを夢中にした
人形遊びの世界をたどります。なつかしの人形たちに、是非、会いにいらして下さい。

展示総数………約350点

   

第一節 姉さまと市松人形~近世の人形遊び~

「姉さま」は、婦人の髪の形をまねて縮緬紙(ちぢらせた和紙)で髷(まげ)を作り、千代紙などの衣装を着せた紙人形。手足を省略し、表情も描かれないものが多く見られます。折紙の技術を生かし、髪型に重点が置かれるのが特色です。飾って楽しむ人形ではなく、女児の普段のままごと遊びに使う手遊び人形として 親しまれてきました。

一方、市松人形は、桐塑などで作られた手足に胡粉を塗り、ぬいぐるみの胴部と布でつないだ人形で、江戸後期の頃より子どもの抱き人形として親しまれてきたものです。女児が誕生すると、その子のお守りとして市松人形を求め、女児はその人形と共に成長儀礼を過ごすような風習も昭和初期頃までの関西地方に残されていました。市松人形には魂が宿るとして、我々が特別な感情を抱く理由ではないでしょうか。

姉さまと市松人形

第二節 大正末から昭和初期の人形たち

大正時代は、「児童文化の時代」と呼ばれます。『赤い鳥』などの芸術性の高い児童雑誌が相次いで創刊され、童話や童謡の創作活動が展開されると、詩情豊かな人形が登場してきます。舶来物にも関心が集まり、キューピーや西洋風俗をまねたセルロイド製人形が人気を博しました。「大正デモクラシー」と呼ばれる自由な時代風潮の中で、大正から昭和初期は、子どもの心を育てる道具として人形や玩具を位置付ける考え方が強調され、それらに情操の豊かさが求められました。ここでは、セルロイドのキューピーや、異国情緒あふれる抱き人形などをご紹介します。

大正末から昭和初期の人形展示コーナー
大正末から昭和初期の児童雑誌に描かれた人形遊び

  

第三節 昭和中期の人形たち・1

昭和20年代、戦争から復興し始めた日本では、ブリキやセルロイド製の欧米向けの人形や玩具製造が盛んに行われますが、世の中が落ち着いてくると、国内の少女たちのための抱き人形や手遊び人形も作られます。それは人形師の手になる人形より、工場で量産される欧米風の人形が主流でした。昭和20年代後半から30年代には、セルロイドやソフトビニールのミルク飲み人形や小さな和製ドールハウス(人形の家)、ぬいぐるみのファッションドールなど、欧米の暮らしへの憧れを反映した人形が人気を博します。

ここでは、戦後の復興期から高度経済成長が始まる前の時代を彩った人形たちをご紹介します。

ミルクのみ人形展示コーナー

   

第四節 昭和中期の人形たち・2

昭和30年代後半から昭和40年代にかけて、日本は高度経済成長の時代に突入し、生産や流通において画一化されたシステムが導入され、家庭の経済力が向上していきます。それに従い、日本の玩具会社は海外市場から国内市場へとターゲットを移し、国内の少女が喜ぶ人形作りを目差しました。折しものTVブー  ムを受け、TVキャラクターを題材にした人形も人気を博し始めます。

一方、昭和30年代後半、アメリカ合衆国から上陸したファッションドール「バービー」や「タミー」が一世を風靡します。昭和40年代に入ると、日本の少女たちの好みにもっと照準を合わせた人形を…と、玩具会社はそれぞれにファッションドール製造を企図します。株式会社タカラが昭和42年、「リカちゃん」人形を発売し、大人気商品となるのですが、以降、3度のモデルチェンジを経て、現在の少女にも愛され続けています。リカちゃんは本年、発売50周年を迎えます。

アメリカのタミーちゃん展示コーナー(昭和30年代後半)
リカちゃん展示コーナー(昭和40年代後半)

 

第五節 昭和後期の人形たち

高度経済成長時代を境に、近代的な量産人形の中に、「リカちゃん」「ジェニー」「こえだちゃん」「キティ」…といったメーカー・オリジナルのキャラクターが力をのばし、また、TVアニメの主人公なども普段遊びの人形の題材として盛んに作られるようになっていきます。

社会の物質的豊かさを表すように、人形の家具や持ち物もバリエーションが広がり、賑やかになっていきますが、遊びの手が自分を人形に同化させ、想像の世界に心を羽ばたかせるという、「人形遊び」の本質的な部分は、昔とまったく変わってはいないように思われます。

このコーナーでは、昭和50~60年代、さらに平成時代へとつながる人形遊びの世界をご紹介します。

ジェニー展示風景(昭和60年代~平成初期)


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