「世界の仮面と祭りのおもちゃ」 | 日本玩具博物館

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企画展

夏秋の企画展 「世界の仮面と祭りのおもちゃ」

会期
2016年7月2日(土) 2016年11月15日(火)
会場
1号館

私たちの心の中には、何か別のものに変身したいという願望があります。特に子ども時代にはその気持ちも強く、例えば、超能力をもった正義の味方や美しい物語のお姫様などに憧れ、空想の世界が暮らしの中にあふれています。テレビのアニメのヒーローやヒロインに憧れる平成の子どもの心も、秋祭の露店で武将のセルロイド面をもとめた昭和初期の子どもの心も、縁日で天狗や鬼の張子面をもとめた明治の子どもの心も、現実とは異なる世界、あるいは人間を超えた存在に、畏れながら憧れるという点で共通しています。玩具の世界における“お面”の豊かさはそうした心を表現しているようです。

この夏は、世界各地の民族仮面や芸能に用いられる被り物などを集めて、生きている仮面の豊かな世界を訪ねます。日本や東南アジアの国々をはじめ、アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパの各地で伝承される民族色あふれる仮面には、未知の自然に対する畏れや、人間の力を超えた存在への憧れが込められているようです。

ところで、世界を見渡してみると、仮面をもつ民族と仮面をもたない民族があることに気づきます。「前者は、農耕などを生業とし、一箇所に定住して暮らす人たち、後者は各地を移動しながら暮らす人たちである」という説があります。定住民は異界の存在を設定しやすく、外からの力とバランスをとりながら世界観を作り上げているということでしょうか。

仮面展の準備風景~東南アジアの仮面
展示準備風景~中南米の仮面

本展では、成人式や葬送儀礼、収穫祭などに用いられる精霊や祖霊の仮面、民俗芸能に登場する歴史的ヒーローたちの仮面など、ユニークな仮面造形を地域ごとに展示します。さらに、祭礼や仮面舞踊などを題材にした人形や玩具を仮面の傍に配して、各地の祭礼の風景にも触れていただこうと思います。

世界各地に「鬼」の仮面がありますが、同じ「鬼」であっても、作る民族が違えばその表現は異なります。仮面に選ばれる素材の普遍性や、作る民族の色と形のユニークさを感じていただきながら、私たち人間がなぜ仮面を求めるのか、子どもたちがなぜ仮面を愛するのかについても、思いめぐらせていただければと思います。


世界の仮面とまつりの玩具

 あらぶる神を鎮める祭、悪霊を退散させる祭や、豊かな実りに感謝し、生活の安定を願う祭、現実の秩序を打ち破り、新たな世界を創造するための祭など、世界の祭には色々な性格があります。それらに登場する仮面を地域ごとに紹介します。そこには、未知の自然に対する畏れや人間の力を超えた存在への憧れといった感性が表現されています。

アジア

私たちが属するアジアは、土着の神々を敬い祀る仮面の儀礼、芸術的に高められた仮面舞踊、娯楽性の高い仮面演劇など、様々な種類の民俗芸能があり、豊かで表現力の強い仮面が伝承されています。そうした文化を背景として、日本、中国、韓国、インド、ネパール、ブータン、インドネシア、ミャンマー、タイなどでは、子どもの遊戯のための仮面や観光土産化した仮面などもまた盛んに作られています。アジアが伝える神、精霊、人、動物の仮面造形を紹介します。

タイ・ラオス・インドネシアの仮面と祭礼玩具

アフリカ

アフリカの造形が20世紀のヨーロッパ芸術家に影響を与えたことは よく知られています。アフリカの仮面が世界の芸術家に啓示を与えたのは、精霊や神という目に見えない形、あるいは超自然への畏れという形にならない感情が生き生きと表現されていたからでしょう。ギニア湾岸諸部族の精霊を表現した仮面やコンゴ民主共和国(旧ザイール)の祖先の面などは、人々にとって今も生きて魂をもった存在です。
  

ミンガンジの仮面舞踊人形(旧ザイール)


アメリカ・ラテンアメリカ

広大なアメリカ大陸には、先住した民族の文化と、世界各地から移民が持ち込んだ文化、それらが混合した文化があります。北方民族の皮製仮面、ホピ族のカチナ人形、アマゾン諸部族の仮面など、アメリカ先住民の仮面を中心に紹介します。ブラジル・ワウラ族の魚祭の面やメイナコ族のひょうたん面などは、子どもの造形に共通する大らかさが感じられます。

中南米の仮面展示風景

ヨーロッパ

ヨーロッパといえば、都市部の仮面舞踏会が有名ですが、農村部古い時代の仮面の祭が今も行き続けています。ここに展示するルーマニアの仮面人形は、鬼や動物たちが太鼓を打ち鳴らして悪霊を追い払い、新年の農耕神を招く年越祭を模したもの。秋田県の男鹿半島に伝わる「なまはげ」の祭に共通する素朴な仮面祭です。

ルーマニアの年越祭・ビフライムの仮面人形

子どものつくる草花仮面

子どもたちが伝承する草花遊びの中には、ホウノキの面や西瓜の面、エノコログサのヒゲなど、人間の変身願望から生まれた自然の玩具が残されています。中には、南九州の十五夜行事に使われるヘコシダの被り物や石垣島の来訪神の姿にも似たヤラボーの葉のお面など、地域社会の民俗行事とのつながりを感じさせるものもあります。

ハクモクレンの葉の仮面

仮面の題材の共通性と民族性

仮面の題材を大きく分けると、異形の人間、霊力のある動物、精霊や神、それらが合体したものの4つが考えられます。ここでは、国や地域の枠を取り去り、同じ題材の仮面を集めて、その共通性と民族性を探ります。

「鬼」=日本、インド、メキシコなど
「獅子」=日本、中国、インドネシア、タイ、ラオスなど 
「虎とジャガー」=日本、ミャンマー、メキシコ、グアテマラ、キューバなど
「異形の人」=韓国、インドネシア、グアテマラ、ブラジルなど
「動物」=日本、インド、メキシコ、グアテマラなど
「太陽」=ネパール、メキシコなど。



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