日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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展示・イベント案内

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企画展

冬の企画展 「猿のおもちゃ」

会期
2003年11月22日(土) 2004年2月17日(火)
会場
1号館
古賀土人形・鶏抱き猿(長崎県/昭和30年代)

江戸時代の終わり頃から明治時代にかけて全国各地で作られ始めた「郷土玩具」の中には、猿を題材にした土人形や張り子、練り物などが数多く伝えられ、宮崎県延岡の「昇り猿」、大阪の「千匹猿」、静岡県浜松の「柿のり猿」、岐阜県高山の「猿ぼぼ」などのように、今も、郷土の人々に親しまれているものがあります。

日和見猿(大阪府/昭和中期)

日本において猿は、古代より厄除け、魔除けの信仰を受け、農業の守護神として敬われてきた動物です。魔を弾き「去る」とか、厄を「去る」とかの言葉と「猿」をかけて、厄病除けの願いを込めた郷土玩具も目立ちます。また、庚申信仰から出た「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿も、郷土玩具のテーマとして親しまれてきました。

本展では、日本の郷土玩具の猿、約220点を一堂に集め、北から南へ地域ごとに展示します。また、その中から、猿に対する民俗信仰を表現する郷土玩具のいくつかを取り上げ、「庚申信仰と猿」「桃と猿」「身代わり猿と厄除け猿」などの項目で、造形の中に託された人々の願いを探ります。
これらに合わせ、シンバル・モンキーやポーター・モンキーなど、ブリキやセルロイドなどで作られた猿をテーマにした近代玩具、約30点を展示し、玩具化された猿のおもしろい動きと愛らしさをご紹介します。玩具の猿のユニークな造形をお楽しみいただくと同時に、玩具の世界を通して、猿という動物と私達との長く深い関わりの一端に触れていただければ幸いです。

展示総数 約250点

猿のおもちゃ展2003~2004展示風景


展示概要
【郷土玩具の猿~北から南へ~】
江戸時代の終わり、庶民階級が経済力を持ち、農村部にも商品経済が広がっていく頃になると、土や木や紙など身近にある材料を使って、専門的に、また農閑期を利用して季節的に、素朴な玩具が作られるようになります。これらは郷土と言われる狭い範囲で流通したものが多く、今日、郷土玩具の名で知られています。人々の生活の中から生まれ、愛されてきた郷土玩具は、子どもたちを喜ばせるおもちゃというに留まらず、郷土の信仰や伝説、美意識や幸福感を表現した小さな造形といえます。

尾崎清次著『育児上の縁起に関する図譜』(全三巻)に描かれた戦前の猿の玩具

猿は、郷土玩具の題材としてよく取り上げられた動物です。子ども達を病魔から守り、人々の厄を去り、長寿を願うものとして、猿の土人形や張り子、からくりおもちゃなどが贈答されました。このコーナーでは、北から南へ、郷土玩具が伝える猿のおもちゃをご紹介します。


【猿の造形】
庚申信仰と猿・・・・・・庚申信仰とは、中国の道教の説で、一年に六度ある庚申(かのえさる)の夜に、人間の体内にいる三尸という虫が、その人の眠っている間に身体から抜け出して、その人の冒した罪を天上の帝釈天に告げに行き、告げられた人は帝釈天の判定により寿命が短くなるというので、庚申の夜は眠らずに身を慎み、招福延命を祈って夜を明かします。この信仰の中心には猿田彦や帝釈天が祀られ、使いの者として「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿が登場します。庚申信仰は転じて、三猿に、農村部では五穀豊穣を、漁村では大漁や安全航海を、また無病息災や病気平癒を願いました。 

小幡土人形・三猿(滋賀県五個荘町/昭和40年代)


桃と猿・・・・・・桃と猿の組み合わせは中国から伝わる図像で、古くから親しまれてきました。京都府伏見や滋賀県五個荘の「桃とり猿」や和歌山の「桃もち瓦猿」などが有名です。桃は種に薬効があることなどから永遠の命を得る果物とされ、厄を去る猿が桃を取る姿は長寿を象徴しています。

伏見土人形・桃もち猿(京都府京都市/昭和30年代)


身代わり猿と厄除け猿・・・・・・赤い布で作られた猿は古代から作られている「這子」という身代わり人形に通じます。身の守りを念じて、厄除けに力を果たす赤い布で素朴な猿のぬいぐるみが数多く作られてきました。奈良や京都の「くくり猿」、竹の弾力を利用して小さな赤い猿を弾き去る「弾き猿」のおもちゃなども、身代わり猿を表現したものです。


【近代玩具の猿】・・・・・・明治時代以降、玩具が工場で量産される時代になっても、猿は玩具の題材として人気を博します。シンバルを叩いたり、靴磨きをしたり、でんぐり返りをしたり、荷物を運んだり・・・猿の愛嬌のある動きが強調された仕掛け玩具は、日本だけではなく、輸出用として様々なバリエーションが製作されました。このコーナーでは、1950~70年代の猿の近代玩具をご紹介します。

近代の猿玩具(昭和30年代)
ゼンマイ仕掛け 毬と猿(昭和30年代前半)


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