日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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企画展

夏の企画展 「神戸人形と世界のからくりおもちゃ」

会期
2009年7月4日(土) 2009年9月8日(火)
会場
1号館
神戸人形・へべれけ(数岡雅敦作・昭和40年代)

からくり玩具といえば、精巧な江戸のからくり人形やゼンマイ仕掛けのディスプレイ・ドールなどが想い起されますが、本展でご紹介するのは、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカの各国から集まった、仕掛けもからくりも大変シンプルな玩具の色々です。

車を動かすと動物や人形が意外なしぐさをする玩具、オモリをゆらすと糸が引っ張られて楽しい動きをする玩具、重力そのままに物がころがり落ちる玩具、回転させることでユニークな動きをする玩具…。動く仕組に焦点をあてて、そうした玩具を分類してみると、よく似た仕掛け玩具が世界中で作られていることに気付かされます。またそれとは反対に、玩具の素材やテーマにはお国柄がよく表現されていることに驚かされるでしょう。 

本展では、日本のからくり玩具の代表として「神戸人形」をとり上げます。「神戸人形」は、明治時代中頃に神戸で誕生したからくり人形です。台の上の人形が手を動かし、首をふり、大きな口をあけて西瓜を食べたり、酒を飲んだり…。その滑稽な動きと繊細な仕掛けは、神戸っ子だけでなく、神戸を訪れる外国人観光客の人気をさらいました。実際、明治から昭和初期にかけて作られた神戸人形は、アメリカやヨーロッパの各地に多く残されています。

『江都二色』(北尾重政画/安永2・1773年刊)に描かれた江戸時代のからくり玩具いろいろ
郷土玩具の中でも特異な位置づけをもつからくり玩具「神戸人形」

明治時代の神戸人形は、柘植(つげ)などの材料が使用され、木肌の美しさを強調した作品が多く、「お化け人形」あるいは「布引人形」(観光地・布引の滝で売られていたため)とも呼ばれていました。
 昭和時代に入り、作品全体が黒い色で塗られるようになる頃には、「神戸人形」の名前が定着していきました。

神戸人形の作者として分かっているのは、創始期の野口百鬼堂、出崎房松、昭和初期に神戸人形を有名にした小田太四郎、そして戦後、数百種に及ぶ神戸人形を精力的に製作した数岡雅敦です。十数年間は製作者もなく、廃絶状態となっていましたが、平成15年より日本玩具博物館(兵庫県香寺町)では、「西瓜喰い」や「酒のみ」などの復元製作を行い、次代につないでいく活動を始めました。

本展では、「神戸人形」と、動かして楽しい玩具の色々を世界約40カ国から一堂に集め、約300点の作品を通して、玩具の中にみられる人間の知恵と奇知について考えてみたいと思います。

展示品総数 300点

①神戸人形

<神戸人形の創始>

 通説では、神戸人形の創始者は「淡路の人形師」とされてきましたが、確認できる最も古い作者は、神戸の長田神社(神戸市長田区)の参道筋で、商店を営んでいた「長田の春さん」であると思われます。春さんの作品は、木地のまま、あるいは茶系統の色合いが特徴で、ろくろ首や三つ目などのお化けのモチーフが目立ちます。この頃の神戸人形が「お化け人形」と呼ばれた所以です。これとは別に、明治35年頃には出崎房松が登場し、黒い作品も作られ始めます。
 ここでは、創始期の独創性あふれる作品と、作者の写真資料などをご紹介します。

野口百鬼堂製のおばけ人形(神戸人形)
創始期の神戸人形 展示風景

<神戸人形の興隆>

 大正から昭和初期にかけて、神戸人形を有名にしたのは小田太四郎で、カタログらしきものを作成し、販売先を外国にまで広げていきました。小田は職人を使って製作しており、カタログ写真には、63種類の神戸人形が見出されます。
 昭和4(1929)年には、神戸へ行幸された天皇に作品を献上しています。この頃から「神戸人形」の名は、内外によく知られるようになりますが、小田以外にも神戸人形の製作に取り組む人達は存在したと思われます。
 ここでは、昭和初期の神戸人形と小田太四郎の関係資料をあわせてご紹介します。

興隆期の神戸人形(小田太四郎製)展示風景

<神戸人形の再現>

 神戸人形は、太平洋戦争中に岡山へ疎開した小田太四郎によって戦後も作られますが、小田の死後、しばらくは途絶えます。その後、昭和30年代中頃から、神戸人形の復活に取り組む人が現れました。兵庫県加古川市に住む数岡雅敦(喜八)は、古い神戸人形を分解研究するなどして、その再現に成果を上げました。昭和時代の神戸人形は、数岡のほか、神戸市内の民芸店神戸センターと元町の玩具店キヨシマ屋が製作・販売を行い、復元の形をとりながら、伝承を受け継ぎました。数岡の作品は一体が8千円から8万円と高価で、普及にも限りがありましたが、神戸センター製やキヨシマ屋製の作品は、数岡に比べて細工もシンプルで、安価。普及版としての大きな役割を果たしました。

再興期の神戸人形(数岡雅敦製)展示風景

②仕掛けのつまったおもしろ玩具

 つまみを動かすと、人形が拍手をしたり、牛が口を動かしたり、メリーゴーランドが回転したりする仕掛け玩具、風の動力で音を立てながら回転する玩具などを紹介します。ブラックボックスをあけて、カムやクランクの装置を見せる玩具は、動く仕掛けのおもしろさと美しさを子ども達にわかりやすく提示する意図が込められています。

<つまみを動かすと>

イギリスの玩具デザイナーによって製作された仕掛けのわかるからくり玩具やドイツのエルツ地方で古くから伝承されてきた素朴なからくり玩具の数点を紹介します。

つまみを回すと犬が口をパクパク、しっぽをくるくる回すからくり人形(イギリス)
つまみを回すと音を立てながメリーゴーランドが回転するエルツ地方のからくり玩具(ドイツ)

<運動人形>

 両手で棒を左右に動かすと、二つの人形や動物が動き出しています。交互にノコギリを動かすもの、槌を叩くもの、逃げるネズミを追いかける猫など、単純ですが、物語性にあふれた玩具です。

小さな大工さん(デコア社製 スイス)

<かくれ屏風>

 数枚重なった板が布や紙のテープでつながれています。折り畳んだ板のあけ方によって、全体の形や板の向きが変わります。日本では「かくれ屏風」と呼ばれて、江戸時代から人気のあった玩具ですが、ヨーロッパでも「ヤコブのはしご」の名で人々に親しまれてきました。

<竹のバネを使って>

 竹のバネ(しなり)を利用した仕掛け玩具は湿潤なアジア地域独特のもので、特に日本では古くから盛んに作られてきました。米喰いネズミ、弾き猿、鯉登り、跳ねガエルなどの日本の郷土玩具とインドのものを紹介。

③糸や紐の仕掛けの玩具

 ここに展示するのは、部分と部分を糸や紐でつないだ玩具で、糸をひっぱったり、糸につながるつまみを動かしたりすると、思いがけない動きが楽しめます。人形劇に登場するあやつり人形や竹のバネを利用した玩具などが見どころです。左右の糸を交互にひっぱると、上へ人形がのぼっていくものやH型の下部を握ったり緩めたりすると、人形が体操する玩具など、世界各地で同じものが作られていて驚かされます。

<糸をひっぱると>

 人形が手足を動かすハンペルマンやジャンピングジャック(ドイツ・オーストリア・イタリア)、左右交互に糸をひっぱると人形が上へのぼっていくもの(スイス・スウェーデン・ケニアなど)、糸をひくと中の糸車が転がり、するすると動き出す動物玩具(ミャンマー・フィリピンなど)を展示。 

*糸をひっぱると、ゆりかごの蓋をあけて赤ちゃんをあやすからくり人形(オーストリア)

<糸がゆるんだり引っ張られたり>

 台の下のつまみを押すと、糸ゆるんで人形や動物がぐにゃぐにゃと動く小さな仕掛け玩具(ドイツ・ルーマニア)、糸を張ったりゆるめたり すると、鉄棒体操する人形(メキシコ・カメルーン・フランスなど)を展示。

体操人形(メキシコ)

④オモリと糸の仕掛け玩具

 糸につながるオモリをゆらすと、鶏が餌をついばんだり、人形が太鼓を叩いたり、クマがお手玉をしたりする愉快な仕掛け玩具です。ついばむ鶏は、ヨーロッパに古くからある伝承玩具ですが、近年になってアジアや中南米、アフリカ諸国でも民族色豊かなものが作られるようになりました。

<ついばむ鶏>

動かして餌をついばむ動作をします。木と木が触れ合うコツコツという音がリアリティを高めています。世界中で作られるほどに、この玩具には人の心をとらえる魅力がつまっているのでしょう。

ついばむ鶏(イギリス)

<オモリをゆらすと>

持ち手をとってオモリが回転するように動かすと、人形や動物たちが手や足を動かして生き生きとした動作を繰り広げます。中でも、ロシアのボゴローツクで作られるクマの玩具は、音楽を奏でたり、ダンスをしたり、大工さんの真似事をしたり…と愛らしく楽しいものばかりです。

⑤車とクランクの仕掛け玩具

 車を転がすと、鳥がはばたいたり、兎が木琴を叩いたり、蛙が口をパクパク動かしたりする仕掛け玩具の色々を紹介します。中には車の回転運動を往復運動に変えるクランクの装置が使われているものもあります。紐をひっぱって車を転がすもの、長い棒を押して動かすものに分けられますが、いずれも歩き始めた幼児に歩くことを楽しくさせる玩具です。

車を転がすと戦士が盾と剣を動かして闘うしぐさをするからくり車(ジンバブエ)
車を転がすと、アヒルが鳴きながら羽根を動かし、がらがらが回転する仕掛け車(中国)


<会期中の催事>
実演解説会
   日時=7月26日(日)・8月2日(日)・9日(日)・13日(木)・14日(金)・
      8月15日(土)・16日(日)・23日(日)・30日(日)
      ※各日13:30~ 30分程度
夏休みおもしろおもちゃ教室 からくりをテーマにした楽しい玩具作り

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