「世界の船の造形」 | 日本玩具博物館

日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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特別展

夏の特別展 「世界の船の造形」

会期
2021年7月10日(土) 2021年10月24日(日)
会場
6号館東室&5号館

**今夏は、日本玩具博物館の「乗りもの玩具コレクション」の中から、「船」をとりあげ、世界約50ヶ国から特徴ある船のひな形や玩具、約300点を集めて、造形の魅力をさぐります。

**船は、人間がつくった乗りものの中でも、最も古い歴史をもっているといわれます。玩具の船もまた、遠い昔から身近にある素材で様々なものが作られてきました。木の葉や木の皮など、自然物を利用した船の玩具は、日本の子ども達が遊びの中で伝承してきたものであり、驚くほど古い歴史を持っています。

―――うなゐこが ながれにうくる 笹舟の とまりは冬の 氷なりけり(源仲正)

鎌倉時代後期に成立した『夫木和歌抄』にはこのような和歌が収められており、八百年ほど前の日本人も「笹舟」を知っていたこと、そのような草花遊びに歌人たちが心を寄せていたことがわかります。

そら豆のさやの舟・笹舟・イカの甲羅の舟


**大人達もまた、仕事の合間に、身近にある船をまねて、子どもの喜ぶ小さな船を作りました。運搬に使う船、漁業用の船、祭礼に登場する船などを模して作られるひな形の数々は、各地の船の特徴や暮らしの姿を伝えています。

**また、世界の船の玩具を見渡すと、ゼンマイ、ゴム、ロウソクの火、さらに電池を利用するなど、水上を走らせる仕掛けに工夫がこらされているのがわかります。それぞれの玩具に込められた知恵は、子ども達の心に科学的な視点を育んでいきます。

**本展では、日本を含むアジア、オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカーーと地域ごとに民族色豊かな船をご覧いただき、ユニークな造形をお楽しみいただく夏らしい展覧会です。新型コロナ感染症のパンデミックによって海外への旅もままならぬ日々、海や川を模した水色の展示室のなか、船のひな形や愛らしい玩具を通して、世界の国々の暮らしに思いをはせ、旅をお楽しみいただければと思います。

                          展示総数 約300点

世界の船の造形
―――本展でご紹介する船の玩具には、さまざまな性質がありますが、製作方法や流通範囲の観点から、大きく次の三つに分類できます。
 ❶遊び手が自らの興味によって手作りするもの
 ❷職人が家内工業的に製作し、「郷土」という狭い範囲で流通するもの
 ❸工場で量産され、広い範囲に流通するもの

―――また製作される目的によっても主に次の四つに分類できます。
 ❶子どもの遊び道具(=玩具)として
 ❷地域や国の歴史を留めるひな形(=ミニチュア)として
 ❸水上交通の安全や豊漁などを願って
 ❹旅行の思い出を留める土産品として  

このような船の玩具の成り立ちにもご注目してご覧ください。


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・・・アジアの船 
―――アジアでは、台湾の「竹筏」やタイの「サンパン」のように古代船さながらの形をもつ玩具や中国の「ジャンク」のように繊細な木造帆船のひな形も見られます。船の玩具の形を比べると、「ジャンク」と沖縄の「ヤンバル船」のように、国境を越える文化的つながりも見えてきます。
 台湾の南東沖に浮かぶ蘭嶼 (ランショ) 島に暮らすタオの人々は、トビウオ漁に「チヌリクラン」という名の船を使います船体を飾る赤と黒のウロコ模様は海を、船首と船尾の丸い目は彼らを守護する太陽を象徴するともいわれます。かつてタオ族の父親は潮待ちの間、息子のために船の廃材から本物そっくりの玩具を作りました。――船の玩具誕生の原点です。


・・・オセアニアの船 
―――太平洋に浮かぶ西サモアやフィジー、タヒチなどの島々には、荒波を受けても転覆しないように本船と副船を腕木で固定した「アウトリガー・カヌー」が見られます。左右に副船をもつ船は、「ダブル・アウトリガー・カヌー」と呼ばれます。
 南太平洋に位置する海洋国、パプアニューギニアでは、九月の独立記念日に、船による古代の部族間交易を再現する「ヒリモアレ祭」が催され、人々は古代船「ラカトイ」のひな形を手に舞踊を繰り広げます。ラカトイもアウトリガー・カヌーで、2枚の帆には樹皮をなめして作るタパ・ロスが張られています。


・・・アメリカの船 
――― 氷に閉ざされた北部アメリカでは、先住民の白樺の樹皮製「バーチ・バーク・カヌー」、中部アメリカでは、メキシコのプレペチャ族が造る素朴な木のくり船、また、南部アメリカでは、エクアドルやブラジルの筏船「ジャンガーダ」やなど、それぞれの国に、風土 に根ざした個性豊かな船の玩具が伝わります。
 ペルーとボリビアにまたがるチチカカ湖に浮かぶウロス島の人々は、「トトラ」と呼ばれるカヤツリグサ科の植物を束ねて「バルサ」を造ります。バルサは湖上の移動や漁などに使われる生活必需品。実物に忠実な小さな船はウロス島の観光土産として人気があります。


・・・ヨーロッパの船
――― ヨーロッパでは、優良な玩具メーカーによって、ゴム仕掛けやゼンマイ仕掛けで動く船、また風力で進む帆船など、子どもの科学への興味を誘う玩具が作られています。
 セーリングを楽しむ伝統が長いイギリスには優れたヨットの玩具が見られます。全長30㎝足らずの小さな船でありながら、本物のヨットの機能をすべて具え、海や川を美しく帆走する玩具もあります。ある日、男の子が浮かべた小さなヨットが、転覆もせず、百マイルを旅してアイルランド沖に漂っていいるのを発見された例もあります。


・・・アフリカの船
――― ナイジェリアやコンゴの木のくり船の玩具が古代から続く素朴な川船の形を示す一方、タンザニアの「ダウ船」やアウトリガー・カヌー「カウラ船」などは、海のルートでつながるオセアニアとの深い関係を伝えています。
 コンゴ民主共和国のモンゴ族は、漁労によって暮らしています。櫂を手に川へと繰り出し、モンドリ籠で魚を捕る様子が楽しくも写実的に表現された玩具は、この地の暮らしを温かく伝えています。

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ノアの方舟
―――このコーナーには、旧約聖書の『創世記』に描かれる「ノアの方舟」を題材にした玩具を世界各地から集めました。それは・・・人類が次第に堕落していくことを怒った神は、大洪水を起こして地上の生物を滅ぼそうとしますが、“正しい人”ノアには方舟を作らせ、その舟にノアの家族と一対ずつの動物たちを乗せて難を逃れさせました。50日間、大洪水の中をさまよった後、ノアは舟から鳩とカラスを放ちます。やがて鳩がオリーブの枝をくわえてノアのもとに戻り、緑の大地の存在を知らせたのです――という物語です。
 キリスト教国において、安息日である日曜は、玩具を使う遊びが禁じられていましたが、 「ノアの方舟」には聖書的な含みがあることから、日曜日に遊んでもよい玩具として歓迎されていたのです。
 方舟は、タバナクル(テント式神殿)を想わせる形で、高さ:幅:全長が3:5:30。大型船舶建造の折に用いられる安定の比率だったと伝えられます。 方舟の玩具を通して、人々が思い描いていた方形の舟の形をご覧ください。

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・・・日本の船
――― 和歌山や高知で捕鯨に使用された鯨船、房総半島周辺のカツオ船など、四方を海に囲まれた日本には、多くの漁船の玩具が伝わり、今では見られなくなった遠い昔の船の形が郷土玩具の中に保存されています。
 高知(土佐)は、江戸時代・寛永(1624-44)の頃から捕鯨が盛んな土地柄。かつて室戸岬の漁師は、出漁を待つ手すさびに折れた(ろ)や(もり)などを削り、自らがあやつる船の形をまねて小さな鯨船を作りました。父の帰りを待つ子どもたちのために。漁師の内職として継承されていたものがやがて商品化され、高知県を代表する郷土玩具となって今に伝わります。―――他の地域においても、玩具の船はこのようにして始まったのではないでしょうか。
 ここでは、漁船を中心に運搬船や観光船、また渡し舟や屋形船などの川船をあわせ、日本の郷土玩具の世界が伝える船の造形をご紹介します。


日本の船のイメージ
――― 日本人にとって、船はどのようなイメージをもつものでしょうか。人や物の輸送手段、漁労をはじめとする産業の手段、また軍事防衛の必需品・・・など、実用目的をこえて、「海の彼方(彼岸、異界・・・)から豊穣や幸福をもたらしてくれるもの」―――私たちの祖先は、船にそのようなイメージを描いてきたと想われます。郷土玩具の世界に伝わる「宝船」などの造形には、豊かさへの願いが託されてきました。 
 また、京都の祇園祭の船鉾や名古屋の黒船車などのように、船は、「神々の乗り物」としてイメージされてきたのではないでしょうか。ここでは、そのような船の造形を各地の祭礼玩具を通して見ていきます。
 さらに、八朔の節句(8月1日)に登場する尾道の田面船や端午の節句に遊ばれる鹿児島県坊津の唐カラ船など、子どもの節句行事に贈答された地域色豊かな船の玩具をご紹介します。


懐かしい昭和時代の船のおもちゃ
――― ブリキのおもちゃが歓迎された明治時代、セルロイドの全盛期である大正から昭和初期、戦前戦中の物資統制時代、そして戦後のブリキやプラスチック時代。それぞれに時代に子ども達の心をとらえた近代の船のおもちゃの中から、昭和・平成時代の懐かしい資料を選んで展示します。郷土玩具の薫りを残す昭和初期の屋形船や木船、昭和時代を通じて縁日の人気ものだったポンポン船、ゼンマイ仕掛けで走るモーターボートなど、大人の皆さまには、子ども時代の思い出につながる船の玩具をお楽しみ下さい。


ボトルシップ in 5号館らんぷの家

「ボトルシップ」(ship in a bottle)は、帆船などの船のひな形を、その寸法よりも小さな開き口をもつ瓶(ボトル)の中に収める手工芸をいいます。18世紀末、あるいは19世紀初頭ころに、イギリスの船乗りが、船上にある材料と飲み終えた酒瓶を用いて作ったのが始まりともいわれています。
日本には大正時代に伝わっており、習志野俘虜収容所には、当時、ドイツ兵が作ったとされるボトルシップが遺されています。広く、人々の趣味の工芸として広まったのは昭和時代に入ってからのことです。作り方には、マスト以外の船体を瓶の外で組み立てて置き、瓶の中でマストを立て起こすものと、小さな船を細かく分解した状態のパーツを瓶の中で組み立てるものがあり、後者には高度な技術が必要とされます。
ここに展示するボトルシップは、香寺町内の個人から寄贈を受けたもの。 故・炭谷克美氏が趣味として楽しまれた1990年代から2010年代の作品です。——スパニッシュガレオンやサンタマリア、エスメラルダ、ガゼラ・プリメイロ、ポラッカ、サー・ウィストン・チャーチル、ロイヤリスト、ジャンクなど、ガラス瓶のなかの小さな船たちがそれぞれの世界を物語っています。6号館東室の展示と合わせてどうぞお楽しみください。

ボトルシップin らんぷの家・展示風景


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