「端午の節句~武者人形と甲冑飾り~」 | 日本玩具博物館

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特別展

初夏の特別展 「端午の節句~武者人形と甲冑飾り~」

会期
2021年4月17日(土) 2021年6月27日(日)
会場
6号館東室

平安時代以前に中国から伝わった端午の節句(節供)は、旧暦五月五日の節目に、身を清らかにして神に供物を捧げ、健康を祈る行事でした。中心的な役割を果たしたのが、香気が強く、辟邪の力があるとされた「菖蒲」で、菖蒲酒や菖蒲湯、菖蒲葺きなど菖蒲にまつわる多くの儀礼やしつらえが端午を彩ってきました。

日本玩具博物館の新暦5月5日。端午の魔よけとして、当館の屋根に菖蒲と蓬を並べ置きます

武家が興隆した中世から近世、この菖蒲が「尚武」(=武を尊ぶの意)の語音に通じることなどから、菖蒲尽くしの節句は武家の祝儀と結びつき、男子の将来を祝福する行事へと変容します。やがて江戸の庶民たちは、武家をまねて家々に勇ましい武者飾りをほどこし、男児の成長と幸福を願う節句まつりへと展開してみせました。私たちの祖先は、本家の中国とは異なる日本独自の節句文化を育ててきたといえます。

江戸中期は、家の門口に菖蒲兜、毛槍、長刀などの武具や幟を並べ立てる屋外飾りが主流で、そこに武者人形を屋内に飾る風習も加わります。後期になると、屋内外の造り物は大型化し、都市の富裕層は、豪華な飾り付けで家の権勢を競い合いました。

本展では、近世における節句飾りの要素を受け継ぎ、幕末から明治・大正・昭和時代に町家で親しまれた武者人形や甲冑飾りの様式をご紹介します。関東地方が質実剛健な甲冑飾りを好んで発展させたのに対し、京阪地方では優美な武者人形が長く愛されてきました。そのような地域性にも着目し、約50組の武者飾りを通して、私たちの祖先が育んできた節句飾りの特徴をご覧いただきます。

展示総数 120種類

端午の節句飾り2021 展示風景

武者人形
江戸後期から明治・大正時代、和漢の歴史物語に登場する大将と従者を鎧姿で人形化した一式が、京阪地方を中心に人気を博しました。なかでも、神功皇后(応神天皇の母)と忠臣の武内宿禰、また太閤秀吉と家来の加藤清正は、特に愛された主従の組み合わせです。国体意識の高まる明治・大正時代、国の武運長久を祈り、男子の成長と出世を祈念するにふさわしい人物像と考えられたためでしょう。
このような武者人形を主役に、軍扇や陣笠、陣太鼓や白馬などを添え飾る様式は、昭和時代以降、甲冑を主役とする座敷飾りに押されて退潮していきます。
本展では、明治・大正時代に京阪地方で飾られた大型の武者人形をご紹介します。

武者人形「太閤秀吉と清正」 明治末期
明治時代の武者人形飾り
豊かな表情――従者たち  明治30~40年代
豊かな表情——釣鐘を背負う弁慶  昭和初期

甲冑飾り
太鼓胴型の鎧櫃の上に鎧と兜(=甲冑)を合わせ飾るようになるのは江戸後期。甲冑飾りは、本物をまねた祝祭向けの造形ですが、江戸では黒の小札に白や浅葱色の縅を用いた渋い作品がほとんどでした。一方、京阪で好まれたのは、金の小札に緋色の縅を用いた華やかな色調の甲冑飾りです。
大正時代に入ると、百貨店などがプロデュースする座敷飾りが大都市部で人気を呼びます。それは、緑色の毛氈を敷いた段飾りの上段に矢襖や金屏風を立て回して甲冑を、二段目以降に提灯、弓矢、太刀、陣太鼓、陣笠、酒器、柏餅と粽などを添え飾る様式です。戦後、高度経済成長期を経て量産され、全国各地へ大普及をみます。その陰で、節句飾りにみられた地域色は失われていきました。
本展では幕末から昭和時代へと続く甲冑飾りの移り変わりをご覧いただきます。

幕末~明治時代の甲冑飾り 
大阪製の甲冑飾り 明治前期
明治から大正時代の甲冑飾り(京阪神地方製)

鯉のぼり
今や端午の節句の象徴とされる鯉のぼりですが、誕生したのは思いの外遅く、江戸の町人文化が独自の発展を遂げる江戸後期(19世紀)まで待たねばなりません。発想のもとになったのは、滝が連なる竜門の激流を上りきった鯉だけが竜(=皇帝の象徴)に転身するという中国の伝説です。鯉のぼりは竜門を越えて天に放たれた鯉であり、江戸庶民はその奇抜な造形に目を輝かせたことでしょう。地方都市へも鯉のぼりが普及した明治時代、勤勉と忍耐を徳目として立身出世を目指す時代精神は真鯉を重んじました。昭和時代に入って鯉が家族を増やすまで、鯉のぼりといえば真鯉一旒のみ。本展では、明治時代の空を泳いでいたいくつかの鯉のぼりをご紹介します。

展示室の天井に明治時代の紙鯉(兵庫県朝来市生野町の町家より寄贈いただいたもの)を泳がせました

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