日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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展示・イベント案内 exhibition

特別展

春の特別展 「雛まつり~お雛さまと雛道具~」

会期
2011年2月5日(土) 2011年4月12日(火)
会場
6号館
東室に並んだ御殿飾り雛(大正~昭和初期)

500組をこえる日本玩具博物館の雛人形コレクションの中から、様々な時代や地域の雛人形を取り出して紹介する特別展は、当館、春の恒例行事となりました。当館の収蔵資料の中には、人形の命を次代に伝えてほしいと寄贈されたものも多く、特に、阪神淡路大震災の被災地から引き受けた雛人形群が大きな位置を占めています。

江戸時代の資料も充実してきた本年は、雛飾りに表現される時代色に着目し、江戸中期から昭和中期までの雛飾りの移り変わりを約50組の資料によって展観いたします。

雛人形につながる人形の起源は遠く、平安時代にさかのぼりますが、3月3日の上巳(じょうし)の節供(句)に雛遊びを行ったり 、雛人形を飾ったりするようになったのは、江戸時代に入ってからのことです。初期の頃は、毛氈などの上に紙雛と内裏雛だけを並べ、背後に屏風を立てた平面的な飾り方で、調度類も数少なく、簡素かつ自由で、各自思い思いに飾って祝う様子が、文献にあらわれる絵図から伺い知ることができます。

雛祭りが盛んになるにつれて、雛人形やそれに付随する添え人形、諸道具の類も賑やかになり、雛段の数も次第に増えていきます。安永年間(1772~81)には4~5段、天保年間(1830~44年頃)には、富裕な町家の十畳座敷いっぱいを使うような贅を尽くした雛段も登場してきます。

そうして江戸を中心に「段飾り」が発展する一方、上方では「御殿飾り」が優勢でした。建物の中に内裏雛を置き、側仕えの官女、庭掃除や煮炊きの役目を果たす仕丁(三人上戸)、警護にあたる随身(左大臣・右大臣)などの人形を添え飾るもので、御殿を京の御所に見立てたところから、桜・橘の二樹も登場してきます。御殿飾りは明治・大正時代を通じて京阪神間で人気があり、戦後には広く西日本一帯で流行しましたが、昭和30年代中頃には、百貨店や人形店などが頒布する一式揃えの段飾り雛に押されて、徐々に姿を消していきました。

屋根のない御殿飾り源氏枠飾り(昭和初期)


一方、江戸後期の頃から豪華になった雛道具は、黒漆塗りに牡丹唐草の蒔絵を施した大名道具的な調度品を映し、家の勢力を競うシンボルとしての要素が強まります。また、京阪地方では雛段には台所道具や身近な生活道具類が飾られました。白木のままの素朴な道具類は、女児の雛遊びを豊かにすると同時に、家庭教育的な役割を担っていました。

本展では、江戸後期から明治・大正・昭和の代表的な雛人形と雛道具を展示して、雛飾りの移り変わりを展観します。特に、今春は、江戸・明治時代の享保雛、古今雛にくわえ、有職雛一対を展示しますので、雛人形の様式の違いにも注目いただきたいと思います。各時代の雛飾りに託された夢や憧れに思いを巡らせながら、日本玩具博物館の雛まつりをお楽しみ下さい。

展示総数 約50組800点

    

①江戸時代の雛人形  

立ち雛、享保雛、古今雛など、江戸時代に現れた雛人形の様式の色々をご紹介します。同じ享保雛、古今雛でも、江戸と京阪では表情や衣装の形態などに違いが見られます。人形は、年齢によって眉や鉄漿(おはぐろ)、結髪の形などをきちんと区別して作られています。人形や雛道具の細部にも注目してご覧下さい。

江戸末期の江戸型古今雛と江戸で発達した五人囃子

②明治・大正時代の雛人形

 今日のように、価格によって製品が画一化し、人形と道具が一式揃えで頒布されるようになるのは大正中期頃です。それまでは、人形師や道具屋から気に入った品を買い集め、家ごとに個性的な飾りを行っていました。例えば、祖母の代の雛飾りに嫁いできた嫁の雛を合わせ、やがて女児が誕生すると流行りの雛道具や添え人形を買い足したりして、製作年代の異なる人形や道具が同じ雛段に飾られていました。

 明治時代の雛人形は比較的大型で豪壮な印象があり、御殿飾りにも家の権勢を誇示するような堂々とした構えの作品が目立ちます。それが大正に入ると一転。百貨店が制作した小型の段飾り雛や御殿飾り雛の一式揃えが都市部で流行し始めます。剛健で優美な明治と繊細で軽快な大正、ふたつの時代の雛人形を比べながらご観覧下さい。

明治時代の京都製古今雛と雛道具

 この時代の雛飾りの見どころの一つとしては、雛段の下方に置かれる勝手道具や竈(かまど)など、庶民的な道具類です。京阪神の都市部の富裕な町家などで飾られたもので、大名道具的な調度類とは違い、井戸や流し場、洗濯道具や清掃道具なども揃えられ、当時の家庭の様子や女性の暮らし方を知る上でも興味深い資料です。

雛の勝手道具(明治末~大正時代)


③昭和時代の雛人形

 さらに画一化された段飾り雛一式揃えが、爆発的に普及するのは昭和中期のことです。関西の御殿飾り雛も地方都市の簡素な衣装雛も、それまで農村部で盛んだった土雛も瞬く間に姿を消し、雛段から地方色が失われてしまいます。また、各地で進む核家族化を象徴するように、雛飾りは一家のものから個人一代のものに変わっていきました。

段飾り雛(左=大正時代 右=昭和10年代)

 高度経済成長期の人々は、視覚的なきらびやかさに豊かな暮らしへの夢を託しましたが、人形の細部を江戸・明治の作品と比較するとき、大量生産された昭和の雛人形は、明らかに消費財の性格を帯びてきます。それは、かつて、ひと握りの階級に属していた特権的な生活文化が、多くの人々に等しく手渡されていくことの裏返しなのでしょう。

 木目込み人形の段飾り、団地雛と呼ばれた小さな雛人形など、昭和の時代感覚を表わす作品も展示しています。戦後の一般家庭の懐かしい雛飾りをお楽しみ下さい。

5号館・ランプの家

中庭を見渡せる縁側があり、桜茶(セルフサービス)をご賞味いただいている5号館・ランプの家。6号館で開催中の春の特別展「雛まつり」の特設会場として、こちらの館では、昭和時代の御殿飾りや段飾りを展示中です。

ランプの家の御殿飾り(昭和20~30年代)

 開催期間中は、季節を追って、ロウバイ、サンシュ、マンサク、桃、アンズなど中庭も花が競います。懐かしの昭和時代の雛が皆様をお待ちしております。


<会期中の催事>
解説会
   日時= 2月13日(日)・3月6日(日)・ 20日(日)・21日(月/祝)
      ※各日 14:00~