日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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展示・イベント案内

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特別展

夏の特別展 「世界の民族楽器と音の出るおもちゃ」

会期
2017年6月11日(日) 2017年10月22日(日)
会場
6号館
展示風景

小川のせせらぎ、山鳥のさえずり、木々の間を駆け抜ける風の根、海鳴り…。自然の音はいつも私たちとともにあって風景に奥行をもたらし、人間の情感を育み、そして音楽が生み出される環境を用意してきました。

人間が初めて自然に働きかけて創り出した音とはどんなものだったのでしょうか。その答えの一つは玩具の世界にあるといわれます。木切れや石を叩くだけで快い音が生まれ、リズムが創造されます。地面に落ちて乾燥した木の実を振るだけで種がシャラシャラと小さな音を奏でます。葦の茎に息を吹き込むだけで厳かな音が響き、そこに孔を作ればメロディーが生まれます。子どもの間に伝承されてきた草笛、ペンペングサのがらがら、木の実の笛やがらがらなどは、はるか大昔に誕生した楽器の原型であり、音に関わる文化の母体となってきたと思われます

世界各地の打楽器いろいろ

本展では、世界各地に伝承されるがらがらや笛を集めて、豊かな発玩具の世界を紹介します。また、世界約60ヶ国からやってきた民族楽器を「叩く」「振る」「吹く」「弾く」「こする」という音を出す行為によってグループ分けして展示し、発音玩具と対照させてご覧いただきます。展示総数約1000点の賑やかな展覧会。展示室のあちこちに、自由に音を楽しんでいただけるよう楽器や発音玩具をちりばめました。人間の暮らしに音が果たす役割を考えながら、世界各地の発音玩具や楽器の形と音色をお楽しみ下さい。

「叩く」楽器展示コーナー

展示総数 約1000点

  

おもちゃの中の音

「発音玩具」とひと口にいっても、がらがらや太鼓のように、発音を目的にした玩具、カタカタ車や鳴りゴマのように、音が玩具の動きに付随するもの、さらに卓上ピアノやメロディーハーモニカのように、楽器をまねた玩具・・・と様々な要素を含んでいます。

このコーナーでは、発音を目的とする玩具の数々を「振る」「叩く」「吹く」「弾く」「こする」の5つのテーマに分けて紹介します。同じ形態の玩具であっても、湿潤な国、乾燥地帯、常夏の国、寒冷地・・・それぞれに異なる音色を発します。玩具の音は、単純であるからこそ、民族の音に関わる個性をわかりやすく表現ひているのではないでしょうか。そして、それらは、音楽を演奏するための「楽器」の母体 ともなる豊かな音具の世界を見せてくれます。

世界のでんでん太鼓(左からインド・日本・日本・中国・ケニア・チュニジア)…同じ形態ですが、音は国によってずいぶん異なります。

「振る」玩具

世界各地のがらがらを集めました。がらがらは、人間が初めて出合う発音玩具といえるでしょうか。ヨーロッパや北米のものは、その色と形、手触りや安全性はもとより、赤ん坊にとっての音の快さを研究しながら製作がなされています。

アジア、アフリカ、中南米各地の民族色豊かなものには、遠い昔から伝承されてきた民族の形と音が感じられます。これらの多くは、もともと宗教的な儀礼や祝祭の中に登場し、激しく鳴らすことで、悪霊や禍(災い)を追いはらう役割をもっていました。今もがらがらの音には、赤ん坊を災いから守り、元気な成長を願う心が込められています。がらがらに加え、でんでん太鼓、マトラカ(ラトルウォッチ)、セミ(ローカストシンガー)、尾舞鳥など、振り回して音を出す楽器を集めました。これらの玩具は、風の音や虫の声、鳥の鳴き声などに似た自然音と発します。そして、かつて精霊や神と交感するために使われた儀礼用の音具(うなり木)にも通じる響きがあります。古い時代の道具の形をそのまま保存 するのが、玩具の世界の一つの特徴です

振りまわす玩具~世界のラトルウォッチ・ローカスとシンガーなど~展示コーナー

「叩く」玩具

拍子木やカスタネット、太鼓など、叩いて音を出す玩具を集めました。木切れや石を打ち合わせるだけでも、音遊びは生まれますが、ここでは、楽器を模倣した玩具や、叩いて音を出す楽しさ、リズムを刻むことの楽しさを教えてくれる玩具の色々を展示します。

「吹く」玩具

笛は、いつの時代のどこの国の人たちにも愛される音具です。中国では4千年前に動物の骨を管にした笛が作られましたし、日本でも自然に孔があいた石の笛が珍重され、また、土を焼いて孔をあけたオカリナがすでに弥生時代に登場しています。
ここでは、土や木、竹、木の実などをを使って作られた笛の玩具を世界各地から集めました。各地の笛にまつわる民俗信仰をみると、かつて人々は、笛の音には邪悪な獣を威嚇する霊力、目に見えない悪霊を追い払う不思議な力が宿ると考えていたようです。そして、各地に伝承される笛の音色は、土地によって異なる人間の声や言葉にも似ているといわれています。

また、笛の玩具には、「吹く」動作によって身体の健康を作るだけでなく、子どもの心に安定をもたらし、精神の健康にもまた大きな働きがあると考えられています。

吹く玩具~世界の土笛~展示コーナー

「こする」「弾く」玩具

張り詰めた糸や弦を弾いたり、こすったりして音を出す玩具を紹介しています。松脂をつけて糸をこすると鶏の鳴き声が生まれるユニークな玩具や、楽器をまねて作られた素朴な発音玩具など、子供の知恵と笑顔が浮かび上がる玩具の数々です。

鳴くコオロギ(中国)

日本の発音玩具

近代以前の日本で作られ、庶民に愛された発音玩具の色々を、『江都二色』(安永2年刊)や『うなゐの友』(明治24~大正2年刊)などの文献とともに紹介します。猩々のからくり笛や風車笛、でんでん太鼓など、多機能でカラクリの様子をもった 近世の発音玩具は、日本文化の特徴をよく表わしています。

日本の発音玩具展示コーナー

世界の民族楽器

ここでは、世界各地に伝わる民族色豊かな楽器を「振る」「叩く」「吹く」「弾く」「こする」という音を出す行為によって5つに分類し、発音玩具と対照させました。各地の楽器、それらを使って奏される音楽は、神々との語らいであったり、祖先への供養であったり、娯楽であったり、恋愛表現であったり、と様々な意味をもっています。一方、楽器をまねた玩具もまた、子どもたちのために世界中で作り愛され、自国の音色と音楽文化は遊びの世界においても継承されていくのです。

楽器の始まり

ペンペングサのがらがらやカラスノエンドウ笛など、自然中から人々が発見した発音玩具は、木の実に孔をあけた笛、木切れを組み合わせたクラッパー、植物の鞘と種のがらがら、木の実の殻を打ち合わせるリズム楽器など、素朴で単純。民族楽器に共通する性格をもっており、楽器の始まりの形について知らせてくれます。ここでは、世界各地に伝承される「始まりの楽器」を思われる資料の色々をまとめて展示します。

「振る」楽器

振り動かすと、楽器の中で何かがぶつかり合って音を出すのが「振る」楽器です。がらがらもこの仲間に分類されます。展示品の中で、チリやペルーなどのレインステックは、雨乞いのため、雨の音を表現する楽器。自然の音をまねて作られた要素がよく伺えます。

「叩く」楽器

ものを打ったり、叩いたりして音を出す楽器や玩具を集めました。この中でもっとも原始的な楽器は、拍子木やカスタネットでしょう。リズムを作りだす世界各地の革張り太鼓、木魚や割れ目太鼓(スリット・ゴング)などに加え、メロディーを作り出す木琴、竹琴、鉄琴などもここに展示します。その土地特有の音色と音階は、西洋楽器や西洋音階に慣れ親しんだ 私たちに、世界の音楽の多様性を知らせくれます。

竹太鼓(インドネシア・フィリピン)
バラフォン(西アフリカ)・ガンバン(インドネシア)

「吹く」楽器

呼吸によって閉じ込められた空間の空気を振動させて音を出す楽器を集めました。人間の息がそのまま管の中の空気を振動させるアジアの横笛や中南米のパンパイプス、リードを使って音を出すタイの瓢箪笛やインドのチャルメラ、唇の振動によって音を作るオーストラリアのデジャリドゥ、鼻息で音を出すピオデナリースなど、奏法の多様さにも驚かされます。

「吹く」楽器展示コーナー

「弾く」楽器

弦を振動させ、共鳴器で音を拡大する楽器を集めました。世界の「弾く」楽器の
形は、それぞれに美しく、見るだけでも楽しいものばかりです。板の上の弦を親指で弾いて奏でるアフリカ各地の親指ピアノ、人間の口が共鳴器になっているアジア各地の口琴などがこのコーナーの見どころです。

堅琴“サウン”(ミャンマー)
「弾く」楽器展示コーナー

「こする」楽器

ものをこすり合わせて音を出すもの。中南米のギィロやスクレイパーなどは、雑音性が高く、楽音からは遠く隔たった音色ですが、大自然のざわめきにも似た素朴さが、大昔から世界各地の人々に愛されてきました。
このコーナーにでは、始まりの楽器を思わせる木の実や瓢箪の楽器も見受けられます。

摩擦太鼓(ブラジル・コロンビア)


<会期中の催事>
解説会
   日時=7月2日(日)・16日(日)・8月13日(日)・
      9月3日(日)・10日(日)・24日(日)・10月8日(日)・22日(日)  
      ※各回14時~ 40分程度
演奏会 中国大陸の笛*形と音色~おもちゃの音をまじえて~
   日時=10月1日(日) 13:30~/15:00~ ※各回30~40分
   お話&演奏=寺田 瑞穂氏(中国笛奏者)



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