展示・イベント案内
exhibition夏の特別展 「アジアの国のおもちゃ」
- 会期
- 2001年6月9日(土) 2001年10月9日(火)
- 会場
- 6号館
●●●世界の玩具の歴史を振り返るとき、製作者と消費者の関係において、三つの種類が考えらます。一つ目は「自家製玩具」。作り手は子どもであり、また両親や近隣の大人や年長者で、使い手は家庭を中心とした小さな環境の子どもたちです。これは古代から現代へと連綿と受け継がれてきた玩具の世界の基本と思われます。二つ目は、工場における大量生産の「近代玩具」で、流通範囲も広く、時代の文化に裏打ちされていますが、地域性や民族性が希薄です。この二つの間にあるのが、「民芸玩具(市の玩具fairing)」と呼ばれるもので、作り手は小さな工房、祭りの露店や町の市場などで売られ、狭い地域にのみ流通する民族(民俗)色豊かな玩具の世界です。これが三つ目に当たりますが、一つ目と二つ目の過渡期に現われ、日本でいえば郷土玩具がこれに分類されます。
●●●アジアでは今、急速に人工的な素材の近代玩具が子どものもとに流れ込み、世界の商業主義に巻きこまれた様相を呈しています。けれども、一歩踏み込めば、生活に根ざした民芸玩具や自家製玩具がまだまだ健在で、各地それぞれの信仰や美意識、幸福感や子ども観を表現した民俗的な造形が顔をのぞかせます。土や木、動物の皮や骨、椰子の葉や紙など、身近な素材を使って手作りされた玩具のいろいろは、私たちにアジアの国々の豊かな形と色の世界を知らせてくれます。
●●●本展では、インド・スリランカ・ネパール・ミャンマー・タイ・ラオス・ベトナム・インドネシア・フィリピン・中国・韓国などアジア各国の玩具を人形、動物の玩具、乗り物の玩具、ままごと道具、発音玩具、からくり玩具、遊戯とゲームなど、項目ごとに展示し、自然観や宗教観に裏打ちされたアジア世界の造形感覚のバラエティーをご紹介致します。表現力の強いアジアの玩具が大集合の楽しい展覧会です。
■展示品総数 約800点
①アジアの人形………音楽を奏でる人、子守りをする人、調理をする人、働く人、各地の民族衣裳を身にまとい自然に調和して生きる人々、ヒンズー教や仏教、ラマ教、イスラム教などの世界観の中に生きる人々……人形はアジアの人々の暮らしを映しとっています。東南アジアでは、民族芸能に取材した人形が目立ちます。また、祭りや儀礼に登場し、神や精霊の依り代としての意味が与えられた素朴な人形も見受けられます。
②ままごと道具………小さな茶道具や調理道具など、各地の食文化を映す「ごっこ遊び」の道具です。古くは祖先をまつる儀礼の中で登場した小さな食器もあり、伝承の長さを感じさせます。石や土、木、竹、植物繊維などで作られた民族色豊かな小さな食器の色々をご紹介します。
③動物のおもちゃ………インドの象やラクダ、ミャンマーの張り子の馬や牛、中国の虎や猿、インドネシアの蛇など、アジアの動物玩具は、身近にいる動物たちがユニークな形で表現されています。魔よけの霊力をもつ動物玩具で遊ぶことで子どもたちを厄災から守ろうとした大人たちの心がうかがえ、また躍動感ある表現からは、「生きとし生けるもの」の生命を尊いと考える仏教的な思想も感じられます。
④仮面と人形芝居………アジアには、土着の神々を敬い祈る仮面の祭り、芸術に高められた仮面舞踊、娯楽性の高い仮面の芝居など、豊かで表現力の強い仮面文化を誇っています。また、アジアは影絵人形や人形劇などが古くから発達した地域で、子どもの遊びにも影響を与えました。
⑤祭りのおもちゃ………インドのジャガンナート祭やスリランカのぺラヘラ祭、ネパールのナヴァドルガー祭など、各地の有名な祭りで売られる玩具の色々を仮面や人形芝居とともに展示します。仮面舞踊や影絵劇などももとは、祭礼に奉納される神事から発達したものがほとんどです。
⑥乗り物のおもちゃ………東南アジア各地に見られる素朴な馬車や牛車、南アジアの象やラクダの乗り物などはミニチュアになって、子どもたちに遊ばれています。アジアの各地に航行する船を模した玩具、子どもの好きな自動車や飛行機の玩具など、新旧の交通文化が混在するアジア社会の乗り物玩具を紹介します。
⑦コマと凧………コマや凧の発生を中国とする説もありますが、むしろアジア各地で同時多発的に生まれたものではないでしょうか。子どもの伝承玩具からは、その昔、人々の身近にある骨や木や木の実などでコマが作られ、また木の葉で凧が作られた様がうかがえます。一方、アジアのコマの回し方や形、凧の形や絵柄を見る時、互いの地域のつながりの深さがよくわかります。
⑧けん玉とボール………アジアのけん玉にはピン型に玉をさし入れるものより、椀型に玉を受け入れるものが目立ち、その形を見ると、植民地時代以来、宗主国の影響を受けてきたことがわかります。コマや凧と同じく、けん玉やボールもまた、世界中に見られる普遍的な玩具ですが、素材的にも造形的にもアジアは独特の世界をもっています。例えば、東南アジア一帯に見られる籐を編んで作るセパタクローは、美しい手作ボールです。
⑨動くおもちゃ………アジアに特徴的な竹バネを利用した玩具や、中国の繊細なからくり玩具、日本の郷土玩具に見られる糸からくり玩具など、動きの楽しい玩具を展示します。
⑩がらがらと音の出るおもちゃ/楽器のおもちゃ………木の実や編んだ椰子の葉の袋に小石や砂を入れた素朴な音のがらがらや、松脂を使った鳴き蝉、でんでん太鼓、土笛など、日本にも共通する発音玩具のいろいろをグループごとに展示します。また、芸能や祭礼などで演 奏される民族楽器の玩具もまとめて紹介し、展示室に音色の体験コーナーも設けます。
⑪遊戯盤とゲーム………世界中にみられる盤上ゲームの中で、アジアで遊ばれる将棋やバックギャモン、ダイスゲームなどを数種類紹介します。
<会期中の催事>
●展示解説会「アジアのおもちゃはおもしろい!」
日時=7月8日(日)・15日(日)・20日(金/祝)・29日(日)
8月13日(月)・19日(日)・9月23日(日)・10月7日(日)
※各日 11:00~/14:00~ 45分程度
会場=6号館特別展示室
解説=当館学芸員・尾崎織女
●アジアの玩具作り
①アジアの体操人形
・日時=7月27日(金) 10:00~12:00
・会場=6号館2階講座室
・講師=当館館長・井上重義
②中国・インドのはばたく鳥
・日時=8月10日(金) 10:00~12:00
・会場=6号館2階講座室
・講師=当館館長・井上重義
③アジアの糸仕掛け玩具
・日時=8月24日(金) 10:00~12:00
・会場=6号館2階講座室
・講師=当館館長・井上重義
※夏休みおもしろおもちゃのワークショップ
「松風ごま」「かくれ屏風」「鳴くニワトリ」など
・日時=7月28日(土)・29日(日)
8月4日(土)・11日(土)・13日(月)・14日(火)・
15日(水)・18日(土)・19日(日)・25日(土)
※各日 11:00~/14:30~
・会場=6号館2階講座室
・講師=当館学芸員・尾崎織女/坂野千夏&学生スタッフ
●アジアの遊戯伝承会
①アジアのおもちゃ遊び
・日時=8月3日(金) 10:00~12:00
・会場=6号館2階講座室
・講師=池田宜弘氏(アジアこどもプロジェクト代表)
②アジアの室内ゲーム
・日時=8月17日(金) 10:00~12:00
・会場=6号館2階講座室
・講師=池田宜弘氏(アジアこどもプロジェクト代表)
③アジアの屋外遊び
・日時=8月17日(金) 13:30~15:30
・会場=駐車場西の公園
・講師=池田宜弘氏(アジアこどもプロジェクト代表)
●アジアの形と色
①アジアのおもちゃを描こう
・日時=8月5日(日) 10:00~15:00
・会場=6号館2階講座室&特別展示室
・講師=市瀬俊治氏(民画絵師)
②座談会「アジアのおもちゃ収集てんまつ記」
・日時=9月9日(日) 13:30~15:30
・会場=6号館2階講座室
・講師=柊澤玄樹氏(アジアの郷土玩具収集家)
当館学芸員・尾崎がお話を伺う形で進めます
●アジアの音の世界を楽しもう
①インドネシアの竹楽器を奏でよう
・日時=8月12日(日) 10:00~15:00
・会場=6号館2階講座室&特別展示室
・講師=福本聖美氏(兵庫大学短期大学部講師/音楽療法士)
②インド音楽・神さまのメロディーとリズム
・日時=8月26日(日) 13:30~15:30
・会場=6号館2階講座室
・講師=クルブジャン・バルガヴァ氏(タブラ奏者)
藤井千尋氏(インド古典声楽家)
田中峰彦氏(シタール奏者)
田中理子氏(タンブーラ奏者)
③中国胡弓と揚琴・河の流れと鳥の声
・日時=9月24日(月/祝) 13:30~15:30
・会場=6号館2階講座室
・講師=鳴尾牧子氏(二胡奏者)
山本敦子氏(揚琴奏者)
寺田瑞穂氏(笛子奏者)
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