「世界のクリスマス物語」 | 日本玩具博物館

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特別展

冬の特別展 「世界のクリスマス物語」

会期
2009年10月24日(土) 2010年1月19日(火)
会場
6号館
オルゴール 聖ニコラウスとこどもたち(ドイツ)

キリスト教世界の人々にとって、クリスマス(降誕祭)はイースター(復活祭)と並んで、一年でもっとも大きな宗教行事のひとつです。クリスマスは、キリストの誕生を祝う行事に違いありませんが、その祝われ方をみると、ヨーロッパが古くから伝えてきた民俗的な祭礼の心がクリスマスの中に、深く溶け合っていることがわかります。

古代ヨーロッパでは、太陽が力を失い、地上の生命力が衰えた冬枯れの季節に、温かい光の復活を願い、新しい年の豊作を祈る祭を行っていました。これは冬至祭や収穫祭として今も各地に伝えられていますが、キリスト降誕の祝日は、太陽の復活を祝い、豊作を乞い願う土着の信仰をとり込むことを通して、大きな行事へと発展していったものと思われます。クリスマス飾りに登場するキャンドルの灯や光を象徴する造形の美しさ、また麦わらや木の実などの実りを表現するオーナメント(=装飾)の多様性からも、クリスマスがもつ意味をうかがい知ることが出来ます。  

やがて、クリスマスの行事はキリスト教の普及とともに世界各地へと拡がり、それぞれの地の民間信仰や冬の習俗と結びついて定着すると、アジアでもアフリカでもユニークな造形が花開きました。

ツリー飾り・麦わら細工のオーナメント(チェコ)

恒例となった当館のクリスマス展は、クリスマス飾りを通して世界各地のクリスマス風景を描き、この行事の意味を探る試みです。本年はテーマを二つ設けました。

<クリスマス物語>では、「クリスマスを待つ季節」「光の復活祭」「キリストの降誕」「サンタクロースの訪問」「クリスマスを彩る人形たち」の項目で、クリスマスにまつわる各地の伝説や物語を紹介します。また、<ヨーロッパ・クリスマス紀行>では、当館の「世界のクリスマス・オーナメント・コレクション」の中から、本場ヨーロッパのクリスマスツリー飾りに焦点を当て、ツリー発祥の地とも言われるドイツを中心に、「中欧」「北欧」「東欧」「南欧」と、4つの地域に分けて展示します。

 世界各地の民族色豊かなクリスマス飾りが一堂に―――。遠い国々のクリスマスに思いをはせながら、クリスマス行事の奥行の深さを感じていただければと思います。

展示総数 世界45ヶ国1000点

<一章・クリスマス物語>

 ここでは、クリスマスを彩るオーナメントや人形、おもちゃを通して、クリスマス行事の意味を見つめてみたいと思います。4つのクリスマス物語――「クリスマスを待つ季節」「光の復活祭」「キリスト降誕」「サンタクロースの訪問」――をお楽しみください。

クリスマス物語1・クリスマスを待つ季節

 クリスマスを迎える準備期間を待降節(アドベント)と呼びます。キリスト教世界の家庭では緑の葉で輪を作り、等間隔に4本の蝋燭を立てると、それを天井からつるします。「アドベント・クランツ」あるいは「アドベント・キャンドル」と呼ばれるもので、日曜日ごとに1本ずつ灯を点し、その灯の下で家族揃ってクリスマス・キャロルが歌われるのです。またドイツやデンマークでは、12月になると、子ども部屋に「アドベント・カレンダー」が飾られます。クリスマスの風景が描かれた絵の中に、1から24までの数字がついた窓があり、12月1日から毎朝、窓をあけていきます。めくる窓ごとに楽しい絵が描かれていて、クリスマスを待つ気持ちを高めてくれます。ここでは、クリスマスを待つ楽しみについて紹介します。

アドベントカレンダー 展示風景

クリスマス物語2・光の復活祭

 北半球において、12月21~22日といえば、太陽の照る時間が一年で最も短い冬至にあたります。冬至に向かって太陽の光は弱くなり、この日を過ぎると、春に向かって日照時間はどんどん延びていきます。この世に光をもたらす救世主と信じられるキリストの誕生日は、冬至を過ぎて再生した太陽を祝い、春への期待を膨らませる祝日でもあったわけです。クリスマス飾りの中に、光を象徴するものが目立つ所以です。このコーナーでは、光を美しく暖かく見せる工夫に満ちた各地のキャンドルスタンドを[はじめ、光をイメージしたオーナメントの色々を展示します。

マジョリカ焼きのキャンドルランプ・プレゼピオ(イタリア)

クリスマス物語3・キリストの降誕

 キリスト降誕人形は、中世の宗教熱の中、イタリアで作られ始めた箱庭ふうの人形です。馬小屋の飼葉桶に誕生したイエス、見守るマリアとヨゼフ、誕生の知らせを聞いてかけつけた羊飼い、東方から捧げ物を持ってやってきた三人の博士など、キリスト降誕の物語を人形によって表現していくものです。人形には作る民族の表情がよく映されています。イタリアでは「プレゼピオ」、英語文化圏では「クリブ」、ドイツでは「クリッぺ」、スペインでは「ベーレーン」と呼ばれます。ここでは、ヨーロッパをはじめ、世界各地で作られる民族色豊かな降誕人形を紹介します。

ベトレヘムのキリスト降誕人形(パレスチナ/オリーブの木製)

クリスマス物語4・サンタクロースの訪問

 サンタクロースは、紀元280年頃、今のトルコに生まれ、のちにキリスト教の司教となった聖ニコラウス(セント・ニコラウス=オランダ語でシンタクラウス=英語でサンタ・クロース)がモデルです。情け深く、貧しい人々を救け、子どもを可愛がったので、子どもや弱者を守る聖人として敬われました。

 この聖ニコラウスが貧しい人々に贈り物をしたり、困っている人に金貨を授けたりしたという伝説と、古い時代より伝わる冬至祭に新年の豊かさを祈って、人々が贈り物を交換していた習慣が溶け合って、クリスマスにプレゼントを運ぶサンタクロースの物語が誕生したといわれています。国によってサンタクロースのイメージも様々。ドイツやオーストリアのサンタクロース(St.ニコラウス)には、生命の死と再生を司る来訪神のイメージがあり、北欧のサンタクロース(トムテやトントゥ)は、人々に豊穣をもたらす自然神のイメージがあります。トナカイのひく橇にのった明るくやさしいサンタのイメージは、19世紀にアメリカで形成され、日本のサンタに影響を与えました。

クリスマスのミルク粥をつくる小さなニッセたち(デンマーク)

      

<二章・ヨーロッパ・クリスマス紀行>

 ここでは、当館の「世界のクリスマス・コレクション」の中から、本場ヨーロッパのオーナメントを集めて、「北欧」「東欧」「中欧」「南欧」のクリスマス飾りの特徴を紹介します。太陽復活祭・冬至祭の色あいが濃い北ヨーロッパ、東方教会の薫り漂う東ヨーロッパ、樹木信仰を土台に、賑やかなクリスマス・オーナメントを発達させた中部ヨーロッパ、カトリック色が強く、キリスト降誕祭のオーナメントが数多く見られる南ヨーロッパ。それぞれの違いに注目しながら、クリスマス行事の奥行の深さを感じていただきたいと思います。

北ヨーロッパのクリスマス

 冬の間はほとんど陽がのぼらず、雪や氷に閉ざされる北欧にあっては、太陽の復活を願う古い民俗信仰とキリスト教がとけあった「ユール」と呼ばれる独特のクリスマスが祝われます。暗く厳しい冬、人々は窓辺にキャンドルを点し、清らかな行事の雰囲気を盛り上げて行きます。手工芸が発達した国々とあって、切紙細工や麦わら細工のクリスマス飾りが町中にあふれ、トムテやニッセという名の山羊を連れた妖精が活躍する北欧のユールは、幻想的な雰囲気に満ちています。

北欧のクリスマス

東ヨーロッパのクリスマス

 東欧では冬至祭や収穫祭に結びついた民族色豊かなクリマスが祝われます。チェコやスロバキア、ハンガリー、セルビアの麦わらやきびがら、木の実細工のツリー飾りには、収穫祭との深い結びつきが感じられます。ボヘミアグラスのツリー飾りは、伝統工芸の味わいを伝えています。

東欧のクリスマス

中部ヨーロッパのクリスマス

 ドイツ、オーストリアなど中央ヨーロッパにおいても、クリスマス・アドベント(=待降節)の平均日照時間は1~2時間。冬枯れの町にはモミの木の緑とキャンドルの光があふれます。町の広場にはクリスマス飾りを売るマーケットが立ち並び、細工をこらしたオーナメントの数々が人々を温かく出迎えます。輝く麦わらの窓飾りや経木のツリー飾りは「光」をイメージしたものです。

ツリー飾り・麦わら細工の光のオーナメント(オーストリア)と麦わら作の天使(スイス)

ドイツのクリスマス

 ヨーロッパの国々の中で、クリスマスツリー飾りやクリスマス人形を最も盛んに製作し、各町のクリスマス・マーケットが賑やかなのはドイツです。ドイツのクリスマス(ヴァイナッハテン)にプレゼントを運ぶのは、St.ニコラウスやヴァイナッハマンと呼ばれる聖人ですが、地域によっては鬼を従えてやってきます。クルミ割り人形や煙だし人形、「光のピラミ
ッド」の名で親しまれるキャンドルスタンドなど、他国には見られないユニークなドイツのクリスマス飾りの豊かさを紹介します。

ドイツのクリスマス 煙り出し人形・ツヴェッチゲンメンレなど

南ヨーロッパのクリスマス

 イタリアをはじめとする南欧のクリスマスには、サトゥルナーリアと呼ばれる賑やかな収穫祭の薫りが残されているといいます。また、カトリックが力をもつイタリアは、キリスト降誕人形の発祥した地であり、教育的な意味の加わったクリスマス玩具の色々を見ることができます。もともとクリスマスツリーを飾る風習がない地域だけに、近年のツリー飾りには、硝子や鋼線、針金などの工業材料を利用した工芸的なオーナメントが見られます。

キリスト降誕人形・プレゼピオ(イタリア)

自然素材のクリスマスオーナメント~収穫感謝の心~

 クリスマスオーナメントの中には、スウェーデンやフィンランド、ドイツ、スイスをはじめ、各地に見られる麦わら細工の飾り、ハンガリーやスロバキアなどに見られるきびがら(トウモロコシの皮)細工の飾りなど、収穫された穀物を象徴する造形も目立ちます。
また、林檎や胡桃などの収穫物をテーマにしたオーナメントも各地で作られていることに気づかされます。これらには、一年の実りを感謝し、来る年が豊かであることを願う心が込められたものと考えられます。

ツリー飾り・きびがら細工の兎(セルビア)と天使(ハンガリー)


<会期中の催事>
解説会
   日時=11月23日(祝)・29日(日)・12月6日(日)・13日(日)・23日(祝) 
      ※各日 14:00~
ワークショップ クリスマス飾り*ハートのオーナメントを作ろう
   日時=12月5日(土) 13:30~15:00
絵本朗読会
   日時=12月13日(日)・23日(日/祝) 
      ※各日 11:00~/13:30~


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