日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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特別展

夏の特別展 「世界の鳥のおもちゃ~形と色と音色~」

会期
2012年6月30日(土) 2012年10月16日(火)
会場
6号館
切り紙細工:ヴィチナンキ 花と鶏(ポーランド)

「鳥」と聞いて、皆さんは何を連想されるでしょうか? 青空、さえずり、緑の木々、森、自由、平和、幸福・・・。北欧には、冬のさなか、庭の枝に麦穂を結びつけ、身近に鳥たちを集めて巡りくる春を予祝する風習があります。また、ヨーロッパはじめ世界各地には、鳥の声をまねた笛を吹き鳴らして鳥を身近に寄せ、さえずりの共演の中に春の陽光を喜びあう習慣が残されています。ここにおいて鳥たちは、春の喜びを象徴しているのでしょう。

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造形された鳥の歴史は古く、村の境の標柱にすえられた木の鳥(朝鮮半島)や、古代の棺に付けられた木の鳥(日本)、葬送の船を飾る鳥形(古代エジプト)などへとさかのぼれます。古代の人々は、鳥は霊魂をのせて、この世とあの世との間を行き来するものと考え、鳥の造形に託して、死者の霊魂を無事に送り届けてもらうようにと願ったようです。また鳥は、農耕民にとって、実りと幸せをもたらす穀物霊を運ぶものとも信じられていたからでしょうか、ロシアをはじめ、東欧の国々には「幸せの鳥」とか「平和の鳥」と呼ばれる、美しい翼を広げた木の鳥が作られ、古くから家々に飾られていました。     

ジングルバード(こけら葺きの鳥)上から時計回りにスウェーデン・チェコ・ルーマニア

鳥を題材にした造形、その長い歴史を背景に、世界各地で様々な種類の鳥が玩具化されてきました。中でも、餌をついばむ鶏、らんらんと目を輝かせるフクロウ、ヨチヨチ歩くアヒルなどは、人間との結びつきの深さを反映して、大変に人気のある題材です。

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本展では、鳥に託した人々の願いを探りながら、民族色豊かな鳥の造形を地域ごとに展示します。また、鶏やフクロウ、鳩、アヒルなど、鳥の種類によってグループをわけ、世界でそれらが愛される理由について探ってみたいと思います。
あわせて、「鳥ぐるま」「ついばむ鳥」「動く鳥・鳴く鳥」「鳥笛」と玩具の形態別にも展示し、世界の鳥の玩具に共通する要素を紹介します。同じ様式の玩具が国境をこえて、広く存在することの驚きや、世界の人々がそれぞれの美意識と遊び心で作った鳥たちの表情の豊かさを楽しく味わっていただければ幸いです。

展示総数 約800点(世界70ヶ国)

世界の鳥のおもちゃ展2012 展示風景


鳥の造形と人々の願い

鳥の造形や玩具の中に多く見られるのは、アヒル、鶏、鳩、フクロウ、孔雀などです。それらの造形の豊かさから、人間の暮らしに彼らがいかに親しく、また大切であったかがよくうかがえます。種類ごとに各国の鳥の造形を集めて、それぞれの鳥に託する人々の願いについて紹介していきます。

○鶏~太陽の化身~

高らかな鳴き声とともに朝を告げる鶏。恐ろしい夜のとばりを破り、明るい光を招く鶏に霊力を感じるとする民族は世界中にあり、鶏の造形物は、朝の象徴、太陽の化身、希望の光を招くマスコットとして、各地で愛されています。

世界の鶏 展示コーナー
鳥の卵殻を染めたり描いたりして作られるイースターエッグ(ドイツ・ポーランド・リトアニアなど)

○フクロウ~賢者のシンボル~

古代ギリシャで学芸を司る女神・アテネの使いであったフクロウは、賢者の象徴として重んじられてきました。逆に魔女の使いとして怖れる民族もありますが、夜を徹して、人々に襲いかかる悪霊を追い払ってくれる幸いの鳥と考える民族の方が多いようです。 

世界のフクロウ 展示コーナー(メキシコ・ミャンマー・南アフリカ)

○鳩~緑の大地、平和のシンボル~

旧約聖書の物語「ノアの方舟」が神のおこした大洪水の世界を150日間さまよい、船がアララテ山の上に漂着した時、ノアは船からカラスと鳩を放ちました。やがて鳩はオリーブの枝をくわえてノアのもとに戻り、緑の大地の存在を知らせたのです。鳩は平和の象徴として、多くの国々で愛されています。

○アヒルと水鳥~偉大なる家族~

卵や羽毛を利用したり、時には食用としたりしながら、アヒルをはじめとする水鳥は、私たちの家族として古くから存在してきました。アヒルは暮らしの豊かさの表れとして、カモは夫婦和合の象徴として、世界中に数多くの造形が見られます。

メテペックのアヒルの貯金玉(メキシコ)

世界の鳥のおもちゃ

鳥が玩具になる時、人々がその鳥のどこに興味を抱いたかが強調されて面白い造形が生まれます。ついばむ鳥、羽ばたく鳥、ゆれる鳥、鳴く鳥、同じ仕組みの玩具が国境をこえて広く分布していることには驚かされます。

○ついばむ鳥

糸とオモリで鳥の首や尾が上下に動き、カタカタと餌をついばむ玩具は、世界各地に見られます。指で押して左右の鳥を交互に動かす仕組みの玩具も工夫されています。

リオデジャネイロのついばむ鶏(ブラジル)

○鳥ぐるま

鳥の胴部に車を付け、紐でひっぱるもの、長い持ち棒を押して動かすものなど、車のついた鳥の玩具を各地から集めて紹介します。車の回転にともなう鳥の動きが楽しく工夫されています。

鳥車のいろいろ(中国・インド・ルーマニア・チェコ・オーストリア・ドイツ・ギリシャなど)

○鳴く鳥

摩擦太鼓の仕組みを真似て作られる復活祭の「鳴く鶏」や、紐をもって振り回すことで鳥のさえずりを真似る「シンギングバード」や「尾舞鳥」など、鳥の鳴き声を発するユニークな玩具を集めてご紹介します。

○ゆれる鳥・羽ばたく鳥

枝の上で体ごとゆらゆらゆれる鳥の仕草、波の上をゆったりと泳ぎ水鳥の様子、バタバタと羽を動かし羽ばたく鳥の姿などを題材にした鳥の玩具の色々を集めて展示します。


世界の鳥笛

鳥の鳴き声を模した木や土の鳥笛を各国から集めて展示します。単音のみが響く笛、指孔を開閉させるカッコウ笛(二音笛)、簡単なメロディーを奏でるオカリナ、胴部に水を注いで振動させる水笛など、鳥笛のバリエーションを紹介します。

鳥の水笛(ハンガリー・ドイツ・ルーマニア)

高い音、低い音、やさしい音、かたい音

鳥笛の音色は、それを作る民族の、音に対する好みを伝え、また鳥の鳴き声に対する感じ方をもよく表わしています。ロシアや中国など、ユーラシア大陸の超高音の鳥笛や、ドイツをはじめとするヨーロッパの楽音志向の鳥笛、日本の自然音に近い穏やかな鳥笛・・・それらの音を比較しながら展示します。○単音笛/○二音笛(カッコウ笛)/○オカリナ/○水笛


世界の鳥の造形

 鶏、フクロウ、アヒル、鳩などは、どこの国々の造形にもよく見られますが、鳥によっては民族独自の感性と民間信仰などから、その地域で特別に愛され、玩具や造形にも登場する鳥があります。インドの孔雀、エジプトのイビス(トキ)、ブラジルのパパガイオ(オウム)、東西アフリカ諸国のホロホロチョウやサイチョウ、フラミンゴ、西ヨーロッパのコウノトリなど、このコーナーでは、地域ごとに分けて展示し、民族色豊かな鳥の造形をご覧いただきます。

アフリカの鳥 左=サイザル麻細工のフラミンゴなど(ケニア) 右=木の実細工のトキ・クラハシコウ(ジンバブエ)
日本の郷土玩具に見られる鳥たち


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