展示・イベント案内
exhibition春の特別展 「雛まつり〜まちの雛・ふるさとの雛~」
- 会期
- 2019年2月2日(土) 2019年4月14日(日)
- 会場
- 6号館
◆開館45周年を記念し、当館が永年収集してきた500組を超える雛人形コレクションから、江戸時代から大正時代にかけて、東京や京都・大阪で作られた雛の名品と青森から沖縄まで各地で作られた土雛や張子の雛、紙雛、押絵雛、掛け軸など総数160組の雛人形を一堂に展示しています。 全国で雛人形展が開催されるようになりましたが、その内容から全国屈指の雛人形展をご覧いただけます。
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◆雛飾りに人形や諸道具を飾るための雛段が見られるようになったのは江戸時代のこと。初期の頃は、毛氈などの上に紙雛と内裏雛だけを並べ、背後に屏風を立てた平面的な飾り方で、調度類も数少なく、簡素かつ自由なものでした。雛まつりが盛んになるにつれて、雛人形や添え飾る人形、諸道具の類も賑やかになり、雛段の数も次第に増えていきます。安永年間(1772~81)には4~5段、天保年間(1830~44年頃)には、富裕な町家の十畳座敷いっぱいを使うような贅を尽くした雛段も登場してきます。 そうして江戸を中心に「段飾り」が発展する一方、上方では「御殿飾り」が優勢でした。建物の中に内裏雛を置き、側仕えの官女、庭掃除や煮炊きの役目を果たす仕丁(三人上戸)、警護にあたる随身(左大臣・右大臣)などの人形を添え飾るものです。御殿飾りは明治・大正時代を通じて京阪神間で人気があり、戦後には広く西日本一帯で流行しましたが、昭和30年代中頃には百貨店や人形店などが頒布する一式揃えの段飾り雛に押されて姿を消していきました。
◆日本各地の裕福な町々では、江戸や京阪で飾られる雛人形に影響を受けながらも、幕末頃から地域独自の雛飾りを発展させていきます。江戸や京阪の人形屋から安価な頭を取り寄せて、地元で衣装を着付けたものが飾られ、また、城下町を中心に押絵の人形が雛飾りとして歓迎された時代もありました。一方、農村部では、粘土をこねて焼成する土雛が雛段を賑やかに彩りました。
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◆現在、私達は、五段あるいは七段に毛氈を敷き、屏風を立て廻して飾りつけるものが昔からのただ一つの雛の伝統だと思いがちですが、昭和初期頃までは関東と関西の違いのみならず、城下町や地方都市、農村部など、土地によって様々に異なる雛の世界がありました。本展では、そうした地方の雛飾りにも焦点を当て、祖先が愛してきた雛人形の多様性をご紹介します。
■展示総数 約160組
まちの雛
◆◆衣裳を着せた座り姿の雛人形は、江戸時代中頃から次第に豪華なものとなり、京都と江戸を中心に、雛を取り巻く産業も発達していきました。雛人形は、その様式によって、元禄雛、寛永雛、享保雛、有職雛、次左衛門雛、古今雛などの呼び名がありますが、いずれも毛氈の上に内裏雛を並べ、背後に屏風を立てた「屏風飾り」が基本になっていました。 雛段は、江戸時代、宝暦・明和(1751~72)頃には2~3段、安永(1772~81)頃には4~5段、さらに江戸末期になると、7~8段もの雛も見られるようになります。内裏雛を中心に、三人官女が添えられ、天明(1782~89)頃には、太鼓や笛を奏でる五人囃子も登場します。上方起源と思われる随身や桜・橘の二樹、また諸道具類も整えられて、江戸時代末期には富裕な階層においては、今日以上に豪華な段飾りが行われていました。
◆◆一方、一般の町家では箪笥などを利用した素朴な段飾りが多かったようです。 今日のように、価格によって製品が画一化し、人形と道具が一式揃えで頒布されるようになるのは大正中期頃です。それまでは、人形師や道具屋から気に入った品を買い集め、家ごとに個性的な飾りを行っていました。例えば、祖母の代の雛飾りに嫁いできた嫁の雛を合わせ、やがて女児が誕生すると流行りの雛道具や添え人形を買い足したりして、製作年代の異なる人形や道具が同じ雛段に飾られていました。明治から大正時代の雛人形は比較的大型で豪壮な印象があり、御殿飾りにも家の権勢を誇示するような堂々とした構えの作品が目立ちます
屏風飾りと段飾り
◆◆江戸時代、都市部の町家に雛まつりが定着していく時期の内裏雛は、座敷の床になった場所へ、一対あるいは数対が並べて飾られました。その背後には大和絵風の意匠をほどこした雛屏風が立てまわされていました。 添え人形や雛道具は少なく、“屏風飾り”と呼ばれています。時代が下り、添え人形や雛道具類がにぎやかになっていくにつれ、雛飾りは段数を増やしていきます。江戸の町で発展したこの飾り方を“段飾り”と呼びます。
御殿飾りと源氏枠飾り
◆◆京都では、内裏雛を飾る館のことを御殿といいますが、その中に一対の雛を置く形式を「御殿飾り」と呼びました。 京阪を中心に、この様式の雛飾りが登場するのは江戸時代末期のことです。御殿は御所の紫宸殿(ししんでん)になぞらえたものと思われます。華やかな貴族文化への憧れが育んだ復古的な雛飾りといえます。御殿の屋根をとりはらって人形の表情を見やすくしたものを「源氏枠飾り」と呼んでいます。 江戸時代後期、天保年間頃に喜田川守貞が著した『守貞謾稿』には、京阪と江戸の雛飾りの違いが記されています。
「…京阪の雛遊びは、二段のほどの段に緋毛氈をかけ、上段には幅一尺五寸六寸、高さもほぼ同じ位の屋根のない御殿の形を据え、殿中には夫婦一対の小雛を置き、階下の左右に随身と桜橘の二樹を並べて飾るのが普通である。…江戸では段を七、八段にして上段に夫婦雛を置く。 しかし御殿の形は用いず、雛屏風を立廻して一対の雛を飾り、段には官女、五人囃子を置く。」 このような記述から、江戸時代の終わり、江戸の段飾りに対して、京阪では御殿飾りが一般的であったことがわかります。
ふるさとの雛
地方のまちの押絵雛
◆◆元絵を厚紙に映した型紙を部分ごとに切り取り、そこに綿をのせて布で包んだ部品を組み合わせて作る「押絵」の人形は、江戸時代後期には、都市部の武家や町家の女性たちに親しまれていました。それが、明治時代に入ると、地方の城下町にも広がりをみせ、女性たちが教養として、また暮らしの楽しみとして、様々な押絵の人形が作られるようになります。 明治・大正時代、豪華な段飾りや御殿飾りが届かない地方では、昔話や民話、歌舞伎などを題材に押絵が作られ、初節句の祝いとして贈り合う風習も見られました。 このコーナーでは、大分県日田市の「おきあげ雛」岩手県奥州市水沢の「くくり雛」姫路の「押絵雛」など、各地の押絵雛をご紹介します。
張子雛・土雛・木彫雛
◆◆江戸時代後期、衣裳雛が都市部の裕福な人々のものとして発展を遂げて行く一方、農村部などでは身近にある安価な材料を用い、自給自足的に雛人形が作られました。土製、反故の紙を利用した張り子製、家具類製作時にでる木屑に糊を混ぜた練り物製、また木製や裂製など、土地ごとにユニークな雛人形が製作されました。これらは、雛飾りが画一化する前の個性的な人形で、日本の雛人形史上に魅力を放っています。
雪国の雛
◆◆江戸時代末期、農家の副業として奨励された土人形作りは、東北地方では、宮城県仙台の堤人形を中心として各地に豊かな花を咲かせました。秋田県八橋や山形県酒田の土雛は、雪国に春を告げるような明るい色彩がまぶしく、福島県三春の張 子雛は、享保雛風の動的な姿態とユニークな表情が笑顔を誘います。
関東の雛
◆◆江戸後期の川柳に「村の嫁今戸のでくで雛祭」とあるとおり、江戸付近の農村では当時、浅草・今戸焼きの土雛が盛んに飾られていたようです。埼玉県鴻巣では木屑を糊でといた練り物製の雛、千葉県芝原では土玉の入ったイシッコロビナなどが作られました。また埼玉県や群馬県には、誕生や結婚の祝いに裃型の童子雛一体を贈るというこの地方独特の風習が残されています。
中部・東海の雛
◆◆土人形は型抜きをして製作されるため、同一文化圏には同じ型の土人形がよく見られます。岐阜県や愛知県の各地には、大きさや細部は異なりますが、よく似た形の土雛が残されています。いずれも濃い彩色と量感が特徴です。長野県松本には、 綿を含ませた布を型紙にのせていく押絵の雛人形が伝承されます。
関西の雛
◆◆約四百年の伝統をもつ京都府の伏見人形は、全国の土人形に影響を与えたといわれています。江戸時代末期の全盛期には窯元は五十余軒、種類は数百をこえ、土雛なども京土産として、西日本一帯へ流れていました。滋賀県小幡や兵庫県稲畑、葛畑などの土雛は伏見の系統をひくものです。
山陰の雛
◆◆鳥取県用瀬をはじめ、この地方には身の穢れを紙のヒトガタに託して川に流す「雛流し」の伝統行事があります。旧三月の節句に二対の紙雛を求めて雛段に飾り、一対は家に残し、一対は前年の一対とともに桟俵にのせて川に流します。また、島根県長浜には古今雛風の優美な土雛が残されています。
南国の雛
◆◆瀬戸内や九州地方には、両袖を前に重ねた型の土雛が多く見られます。九州にはこれと同じ形の衣装雛もあり、この地方の独自性と文化圏としてのまとまりがうかがい知れます。また、鹿児島県の糸雛や沖縄県のウメントゥと呼ばれる紙雛など、子どもの持ち遊びにも適した素朴な雛人形が個性をはなっています。
<会期中の催事>
●解説会
日時=2月10(日)・17日(日)・24日(日)・3月3日(日)・10日(日)・17日(日)
※各回 14時30分~ 40~50分程度
●ワークショップ 「折り紙のおひなさま」を作りましょう!
日時=2月10日(日)・17日(日)・24日(日)・3月3日(日)
①11時30分~ ②13時30分~
●ワークショップ 「貝合わせ」を作って遊ぼう!
日時=3月21日(祝/木) 13:30~15:00
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