「玉とり姫」と「玉とり海女」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2012年1月

「玉とり姫」と「玉とり海女」

  • 昭和中期・昭和後期
  • 滋賀県東近江市・香川県高松市/土
小幡土人形・玉とり姫(滋賀県東近江市/昭和50年代)と高松土人形・玉とり海女(香川県高松市/昭和40年代)

  2012年の干支の動物は辰(=龍)。「龍」を創造した中国において、それは、水中に棲み、必要になれば天空を飛翔することができる霊獣と考えられてきました。人知人力の及ばない世界を自在に翔る龍には不老不死のイメージが託されます。また、日本において、大空を裂くイナビカリが龍の姿とされ、農作稲作に恵みをもたらす雨の神としての信仰も集めてきました。こうした龍に対するイメージを背景に、辰年には「龍」の郷土玩具が製作されます。

 京都府の伏見土人形(京都市)、滋賀県の小幡土人形(東近江市)、香川県の高松土人形(高松市)などでは、海に住む龍神と人間との関わりをテーマにした郷土人形が作られています。それは、香川県さぬき市志度に伝わる伝説に基づいたものです。

・・・・・・藤原不比等は、志度の海で龍神に奪われた「面高不背の玉」をとり戻そうと身分を隠して志度へ。そこに暮らす海女と不比等は契りをかわし、海女は赤ん坊(藤原房前)を産みます。不比等から玉の奪還を頼まれた海女は、“房前を藤原家の跡取りにすること”を条件に龍宮へとおもむき、玉を奪い返します。けれど、龍神に追われた海女は命を落とし、玉だけが不比等のもとに戻りました・・・・。

 悲しい伝説に取材した郷土人形ですが、小幡の玉とり姫も、高松の玉とり海女も、その表情に悲壮感はなく、龍神を手なずけたように、大らかな笑顔で表現されています。
 これらは、現在1号館で開催中の企画展「十二支の動物造形」に展示中です。