今月のおもちゃ
Toys of this month
2007年11月
「あやつり人形・St.ミクラーシュと煙突掃除のおじさん」
筆者はクリスマス待降節(アドベント)のヨーロッパを旅したとき、街中で煙突掃除人の仮装行列を目にしました。黒い衣装を着て練り歩く一団は、掃除用の大きなブラシを担ぎ、顔も手も煤で真っ黒。子どもたちは大喜びで駆け寄ります。煤だらけの彼らに触れると、病気にならず、新しい年には幸せがやってくるというのです。
暖炉と煙突のあるヨーロッパの暮らしに、煙突掃除はなくてはならない職業ですが、冬の街をパレードする彼らには、何か別の役割がありそうです。
ヨーロッパの人々は、紀元前の大昔から、森の恵みを受けて暮らしてきました。特にハシバミやミズナラからとれる木の実は、数千年にわたり、貴重な栄養源になっていたようです。クリスマスの頃、暖炉でそれらの丸太を燃やす行為には、収穫を感謝する心が込められました。
飛び出す火の粉には、樹木の生命が宿ると信じられ、暖炉の炭や灰が生命の源として畑にまかれたり、治療薬として使用されたりもしたのです。焼ける樹木に対するそんな民俗信仰をふり返ると、煤をつけた煙突掃除人の身体に触れることの意味がよくわかるのです。
写真は、チェコの首都・プラハの人形劇に登場するあやつり人形で、この国のサンタクロース「St.ミクラーシュ」と、黒い衣装の煙突掃除のおじさんを表わしています。二人は煙突の上で、子どもたちに届けるクリスマスの贈り物や新年の夢について話し合っているのでしょうか?