「木彫彩色の馬(ダーラナ・ホース)」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2010年6月

「木彫彩色の馬(ダーラナ・ホース)」

  • 1980年代
  • スウェーデン/木

 6月21日は夏至です。日本では梅雨の季節ですが、スカンジナビア地方では太陽の恵みに感謝する季節の到来です。多 くのキリスト教国では、サンクトハンス・アフテン(聖ヨハネの夜)とも言われる、クリスマスの次に盛大に祝われる夏至祭があります。スウェーデンの夏至祭は、白樺の葉や花輪を飾った十字架のメイポール(柱)が立てられ、民族衣装をまとった人々がその柱を中心に、踊りながら回る儀式が大切にされています。

 さて、今月はそのスウェーデンに伝承される民芸玩具の中から木彫彩色の馬「ダーラナ・ホース」を紹介します。
 ダーラナ・ホースが作られているダーラナ地方は、スウェーデン人の心の故郷ともいわれ、伝統的な夏至祭が多く残されています。今から約400年前、冬の夜に木こりが子どもたちのために作ったおもちゃが始まりだといわれています。馬は、農業の運搬に欠かせない従順な動物で、身近でかけがえのない存在だったためにモチーフとされたのでしょう。実際、ダーラナ・ホースは「幸せを運んでくる馬」と言われ、愛され続けています。19世紀にな ると、銅鉱山でとれる塗料で赤く色づけされるようになり、装飾的な模様はクルビッツ塗りです。松の木の伐採から完成まで1ヶ月以上かけて職人が手づく りするダーラナ・ホースは、1939年のニューヨークで開催された国際見本市で紹介され、世界的に知られるようになりました。

 今でもこの素朴な木彫の馬が世界中の人々に愛されるのは、森や湖とともに暮らしてきた素朴な感性が、現代を生きる私たちに大切なものを感じさせてくれる からでしょう。
 写真の木彫彩色の馬は、常設展示4号館「海外のおもちゃ・北欧」で展示しています。高さ10㎝です。