今月のおもちゃ
Toys of this month
2008年1月
「酒田土人形・ねずみのり大黒」
大黒天は、農耕を司り、実りをもたらす神として篤い信仰を受け、豊漁を司る恵比寿と並んで古くから日本庶民に敬愛されてきました。大黒天の出身はインド。マハー(大きいの意)カーラ(暗黒の意)という名の勇ましい姿の武神、あるいは財宝の守り神が、いくつかの変転と伝播を経て、日本では満面笑顔の福の神となりました。
大黒天の使いとして知られるのがねずみです。この写真の土人形は、大きな白ねずみに乗った大黒が小槌を打ち振り、微笑んでいます。江戸時代、安永2(1773)年に発刊された『江都二色』という、当時、江戸で人気のあった手遊びを集めた本にも、大きなねずみに乗った大黒の人形が掲載されており、近世社会では、庶民が親しんでいたデザインのひとつと考えられます。
大黒とねずみを組み合わせる理由としては、米を食べるねずみを農耕神である大黒が監視しているという説、多産で増大するイメージを持つねずみを、作物が増える、つまり実りが豊かであることと結びつけて、農作の神様の使いとしたという説、大黒の名が象徴する「黒」が方角でいえば北、ねずみ(=子)もまた北を表わすことと関連づけられたという説・・・など様々です。
写真の土人形は、明治時代末期頃、山形県酒田地方で焼かれた土人形で、おっとりとした白ねずみの目つきと、大黒の素朴な微笑みが、なんとも穏やかな雰囲気をかもし出す逸品です。